ウンナンイッカククワガタ(以下ウンナンイッカク)の幼虫が採れました。
昨年末から年明けにかけて野外材割採集という2ペアを入手し
山で拾った材を容器に投入していました。 *今回は画像多し
↓ 収斂進化:小さいのが雲南省のクワガタムシ、大きいのがベトナムのカブトムシ
↓ 大きめの材を立て置き、2ペア投入 2023年12月
↓ 4ヶ月後、親虫は材の下で☆に・・・
↓ 親虫は死亡
↓ 材底部空に穿孔痕
↓ 底部穿孔口
↓ 人為的に作った誘導穴にも穿孔 2023年12月14日撮影
↓ 誘導目的で人工的に削った間口部分
細長にもほどがある
2024年4月20日、セットから4ヶ月ほど経過したので割り出してみました。
*幼虫画像はすべて同一幼虫です
まず、上部にあった穿孔穴は、奥へ60㎜ほど穿孔していましたが
付近から卵や幼虫の発見はありませんでした。
次に底部の穿孔穴をたどると樹皮近くで食痕が現れました。
↓ くすんだ腐食部で食痕が現れた
食痕は、カミキリムシの幼虫が作ったような感じに細く
その先には透明で細長いものがフリーズした状態でいました。
?・・・「これはクワガタムシか?」
クワガタムシの幼虫を見てそう思うのは初めてです。
とても小さく、繊細そうな幼虫を取り出します。
↓ 幼虫発見
↓ えっ?
ウンナンイッカククワガタ 幼虫を検索すると、少しだけ画像を見ることができますが
実物がここまで細長いとは思っていませんでした。
ニジイロとかツヤハダとか、マダラクワガタとか
古いタイプのクワガタムシを含めても、ウンナンイッカクの幼虫は
これまで見てきたクワガタ幼虫のどれにも当てはまらないほどのスタイルで
ちょっとした衝撃でした。
また、幼虫の頭色は薄いオレンジで、体内には黒っぽいものが詰まっており
食性もうかがえました。
↓ 見間違う種が見当たらない、スタイル抜群
↓ 五円玉の穴に入るくらいの大きさ(2齢?)
↓ 体内内容色は、朽ちた部分と同じ色
今日の割り出しで得られた幼虫は画像の1頭のみです(画像はすべて同一個体)
まさか採れたのはこの1頭だけ? そうでないことを願いながら
割り出し途中の材塊と、割り出し材片をマットに埋め戻しました。
これらの管理温度は、他種との関連で年通15〜24℃くらいです。
↓ ここにも食痕あり
↓ 食痕のある材塊をマットで埋めて管理
↓ 採りこぼしも想定して割り出し材片も管理する
角について
イッカククワガタの胸部は
頭部あたりから胸部中央付近にかけて斜めに切断したような形で側縁を伴います。
頭部には上に向かって湾曲した太短い角が1本あり、胸部にも突起状の小さな角が1本あります。
↓ 頭角に毛の生える系統
↓ 前胸前方の突起部はモンゴルのcylindricumに比べ鋭角(雲南省野外個体)
↓ オオアゴは小さい(オス)
↓ 大きさ比較:ツヤハダ・ウンナンイッカク・チビクワガタ
下画像のサイカブトはベトナムの個体(不明種)で、体長は57㎜ほどありますが
別種にもかかわらずウンナンイッカクとよく似た形をしています。
こういった現象は同様の生態的地位に付いた他種にも起こることがあり
「収斂進化」と呼ばれています。
↓ ウンナンイッカクのオス15㎜前後・ベトナムのサイカブトOryctes sp.のオス57㎜台
↓ 手前がクワガタムシ、奥がカブトムシ
↓ 種は違えど角の役割はほとんど同じはず
↓ 両種とも胸の最上部には突起がある
↓ 胸部頂点にも小さな角(突起状)
↓ 頭角はメスにもある
↓ メスの飛翔 撮影:2022年4月19日
飼育当初、この不思議な形に何が秘められているのかわかりませんでした。
ある日、容器内を覗くとオスとメスが接近した状態でいました。
暫くしてオスはメスを攻撃し始め、頭角ですくい上げられたメスは
オスの斜めになった胸部とその側縁に当てはまり
頭角と胸角によって完全にロックされて動けません。
なるほど、この奇妙な形態は相手を(同種)挟み捕えるのにちょうどよい形のようで
類似するサイカブトも同じ要領で戦っていることが想像できました。
そして、極小クワガタとはいえ、実際の戦いは力強いものでした。
↓ 頭角と胸角で挟んで持ち上げる
↓ ロックされた状態
↓ 最後は投げ落とされる
なかなかうまくいかないウンナンイッカクの飼育ですが
その過程で角の使い道を見ることができたのは大きな収穫でした。
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