はじめに
この記事には最後に『おまけ』があります。
クワガタの蛹室について書いていますので、その部分だけでも読んでみてください。
シェンクリングの羽化
昨年7月13日に卵・初~2齢幼虫で割り出したシェンクリングが羽化をはじめました。
幼虫の管理温度は約15~24度の範囲で穏やかな季節感を持たせました。
メスは割り出しから7か月前後で羽化、オスは10か月ほで羽化しています。
↓ 2020年1月羽化 49㎜台
↓ 2020年2月3日
↓ 最初はカワラ菌床800cc
途中の餌交換(菌床)は同じ製品が品切れであったため
仕方なくヒラタケ菌床を使いました。
私のよく使用する菌床は『品切れ』というのが珍しくなく、欲しい時にない。
これは困ります。客が逃げてしまいます。
↓ ヒラタケ菌床1500cc
投入した幼虫は不安をよそに異なる菌床への拒絶反応らしきものもなく
特にオスは 蛹室のような空間で居食いするという感じでした。
↓ 室内にとどまりほとんど移動しない
今日現在で3♂4♀が羽化しており、大きな個体は出ていませんが
餌交換時の♂体重と羽化時の体長は次のようになりました。
内心ではもう少し大きく育つと思っていたのですが
75mmにすら到達しない途中結果となりました。
菌床にかかった費用を考えるとマットでもよかったかな?
そんな思いのGW中盤です。
『おまけ』
メスの人工蛹室はNG?
5月に入り、気温の上昇とともに飼育ではクワガタムシの羽化シーズンを迎えています。
また、最近では蛹を羽化させるために
人工的に作られた蛹室が用いられることも珍しくはありません。
クワガタムシのメスの体内腹部末端付近には「菌嚢」と呼ばれる器官があり
そこでは、幼虫が食べた餌を分解〜栄養吸収するのに有用な
共生酵母が生育されています。
また、それらの菌類は産卵時に卵に付着し
孵化した幼虫がそれを受け継ぐと考えられています。
「生物の科学 遺伝vol.72 2018 No.4 [特集Ⅰ]クワガタムシ研究最前線」
発行:株式会社エヌ・ティー・エス
によると
幼虫の糞で固められた蛹室には
菌嚢由来の共生酵母が付着していると考えられており
クワガタムシのメスは羽化後に菌嚢を露出させて蛹室壁にこすりつけ
蛹室作成時に排出した共生酵母を再び菌嚢に取り込んでいるらしいのです。
そのため人工蛹室で羽化したメスは体内に共生微生物を取り込めず
それを次世代に伝えることができなくなるそうです。
ということは・・・
↓ 菌嚢は表皮組織で、脱皮・羽化の時に脱ぎ捨てられる
↓ 人口蛹室で羽化したヒョウタンクワガタ
↓ 本来の蛹室で羽化したシェンクリング ♀
そういえば羽化した新成虫が(雌雄の記憶はなし)
お尻を蛹室壁にこすりつけている場面を何度か見たことがあります。
その時は何をしているのか判りませんでした。
↓ 羽化後のシェンクリング ♀
メスを人工蛹室で羽化させることはあまりないと思いますが
共生酵母のことなど考えると
人工蛹室はどうやらオスだけにしておいた方がよさそうです。
↓ ティッシュ蛹室で羽化するグランディスオオクワガタ
最後に
「生物の科学 遺伝vol.72」は、2年前に発行されたものですが
特集Ⅰ「クワガタムシ研究最前線」は全51ページにわたります。
私には読みこなせていない部分もありますが
飼育と直接結びつく内容のオススメ本です。
参考文献:
2018年7月1日発行.
「生物の科学 遺伝vol.72 2018 No.4 [特集Ⅰ]クワガタムシ研究最前線」
発行: 株式会社エヌ・ティー・エス,
参考URL:
クワガタムシ・コガネムシ類における昆虫-菌類の
共生関係の解明と保全生物学的応用
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14J09621/2016/