クワガタ~スズメバチ等の覚書

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朽木屑を運ぶオレゴンルリクワガタ♂

キベリハムシ・4-新成虫

2018-06-30 14:30:13 | キベリハムシ

*タイトルに№がある記事は
 「カテゴリー」から入ると飼育・観察過程等が繋がります。


昨年産卵したキベリハムシの卵は

今年3月下旬ころから孵化が始まり

何度か脱皮を繰り返した後

6月24日に新成虫が出てきました。






↓ 孵化・脱出痕(2018年4月9日)



キベリハムシの飼育場所は物置ですが

せっかくのチャンスですから

一部を室内に置き

蛹化・羽化の様子を見たかったのですが

なかなかそのタイミングに出くわさず

とうとう蛹化・羽化の様子を見ることなく

新成虫の出現となりました。


↓ 室内ではPカップに入れて観察








↓ 2018年4月9日



孵化した幼虫は、柔らかい新葉を好んで食すようで

複数の個体がそれに付いていました。

また、成長した葉を食べるときは

裏側に付いていることがよくありました。


↓ 新葉を食べる(2018年4月10日)






↓ 2日で完食


↓ 葉の裏側に集まる(2018年4月10日)







幼虫のお尻の先は吸盤のようになっているみたいで

葉などから全足が離れても落下することはありません。


↓ 脱走中


↓ 2018年4月20日


↓ 2齢へと脱皮中(2018年4月24日)


↓ 2齢幼虫(2018年4月28日)








↓ 軟らかいところを好んで食べる


↓ 初齢幼虫(2018年4月28日)


↓ 脱皮の準備か?(2018年4月28日)


↓ 週に1回餌補充




天敵はアマガエル

幼虫の天敵は「アマガエル」でした。





屋外では、幼虫が逃げ出さないよう

容器をネットで覆ってはいたのですが

わずかな隙間からアマガエルが2度も入り込み

殆どの幼虫が食べられてしまいました。







急いでネットの改良を行い対応した結果

その後アマガエルの浸入はなくなりました。


↓ 脱走・保護ネット



何度か脱皮を繰り返した幼虫は

やがて姿を消します。

それは、蛹化のために土に潜っていくのです。





気が付けば葉に付く幼虫は全くおらず

不安な一時期がありましたが

6月のある日

突然成虫が葉に付くようになります。


↓ 容器底は蛹化のための土


↓ 終齢幼虫はやがて土に潜っていく


↓ 新成虫の出現!








6月30日現在、3頭の新成虫が現れています。

あと何頭出てくるのかはわかりませんが

活動を開始した新成虫は

メス単独で

今年も産卵を始めるものと思います。


キベリハムシ・3-孵化

2018-04-08 00:19:35 | キベリハムシ

キベリハムシの孵化



*タイトルに№がある記事は
 「カテゴリー」から入ると飼育・観察過程等が繋がります。


先日、Kさん宅のキベリハムシが孵化したとの連絡がありました。

それは、昨年隣町で偶然発見された野外個体からの卵で

我家にも同じ由来の卵塊が沢山あり

翌日確認してみると

枝や容器の蓋、側壁に幼虫がうじゃうじゃいました。

孵化した幼虫は体長2~3ミリ程度で

よく見ないとただのゴミ、よく見ると幼虫です。


↓ 黄色い幼虫(中央枝先)


↓ 中央の黒いのが幼虫


↓ 容器蓋に付く幼虫





これらの幼虫は

恐らく3月下~4月始めにかけて孵化したものと思われますが

まだ孵化していないであろう卵塊も沢山あります。

卵塊の管理は自然温で

気が付いたときに水をかける程度のことしかしておらず

一時期はかなり乾燥させたこともありましたが

それでも孵化は始まりました。


↓ 孵化が近いと思われる卵塊 

↑↓ 卵が浮き出ている


↓ 孵化後と思われる卵塊




成虫の寿命

キベリハムシの寿命は長く

飼育下では5か月以上生きます。

2017年7月12日に採集された親虫は

秋になっても活動を続けます。

そして、気温の低下とともに動きは鈍くなり

最後を迎えます。

それでも自然温で年末まで生存する個体がいたため

温度管理をすればもっと活動を続けられたように思います。

また、餌となるビナンカズラは冬でもあります。


↓ 2017年9月


↓ 最短で死亡した個体:2017年11月1日


↓ 2017年12月末の姿






生涯同じ食べ物

孵化した幼虫は食べ物がなかったせいか

容器から出ている個体がいくつもいました。

キベリハムシは完全変態の昆虫ですが

生涯同じものを食べます。

既知されているのはマツブサと

「ビナンカズラ」というツル系の植物です。

幸い近所にビナンカズラの群生地があるため

早速に食料を確保しました。


↓ 近所のビナンカズラ群生地




↓ 庭に植えたビナンカズラ(昨年大胆な剪定)



食料も確保できたので飼育環境を作り直します。

卵塊の付いた枝を適当な長さにカットして土に刺し

羽化した幼虫の餌となるビナンカズラを近くに置きました。


↓ 卵塊の付いた枝を立てて孵化を待つ


↓ ビンに水を入れ切り花状にしたビナンカズラ




遺伝子交流のない世界

多くの生物は雌雄がおり、接合によって次の子どもが生まれます。

キベリハムシは、今から100年以上前に

貨物とともに神戸の港にやってきたといわれていますが

これはあくまでも推察で

本当のことは誰にもわかりません。





大陸原産のキベリハムシは本来雌雄がおり

有性生殖(接合)によって子孫を残しています。

ところが日本のキベリハムシはメスしか見つかっておらず

また、飼育でもメスだけで子孫を残すことがわかっています。





日本(兵庫県中心)に分布するキベリハムシの先祖となった個体の

その時の数や成長ステージを知ることは困難ですが

仮に1系統だけの先祖からはじまり

自分だけの遺伝子を100年以上も残してきたのなら

どの地域に分布する個体も

減数分裂をスキップして発生した「クローン」なのかもしれません。





そうなると、異なる地域の個体であっても

遺伝子的には何ら変わらないわけで

皆同じということもありえます。





遺伝子交流のない世界と、限られた食性と

低い飛翔能力で生きる日本のキベリハムシにとって

分布拡大はそう簡単なことではないように思えます。


キベリハムシ・2-産卵・防衛

2017-10-07 12:24:43 | キベリハムシ

今年の7月上旬から飼育しているキベリハムシが

沢山卵を産んでいます。

*「キベリハムシ・1」の続きです




産卵



↓ 産卵中 泡状の物を出しながらその中に卵を産む(10月2日)








↓ 産卵場所は、枝の分岐箇所を好む傾向が強い



卵塊はやや硬く、外見が褐色で木の枝と同化しており

注意して探さなければ見逃してしまいます。

卵塊の中は更に褐色で

崩すと「ししとう」のような匂いがしました。


↓ 容器の蓋にも産みつけている


↓ 枯葉にも


↓ 生体・卵塊、大きさ比較


↓ 薄青色は、ま新しい卵塊


↓ 半日経過 色が変わってきた


↓ 5頭のメスから22個の卵塊を確認(10月7日現在)



防衛手段

キベリハムシは、比攻撃的で、飛翔が下手で

体も柔らかい大型のハムシですが

外敵から身を守るための手段はいくつか身に着けています。


↓ あまり動かない、動きも遅い



容器内での成虫は相対的に高所にいることが多く

枝先に近い葉っぱをよく食べており

容器のフタをそっと開けても落下することがあります。

高所(枝先近く)にいることで振動(異変)を感じやすく

外敵から最短で遠くに離れる(落下)

ということでしょうか?


キベリハムシを意図的に高所から落下させると

飛翔はしますが下手くそで、鳥類に例えると「ニワトリ」レベルです。


↓ 夜間はフタに付いていることがよくある


↓ 贅沢な食べ方



また、成虫は触ったり刺激を与えると

黄色い体液を出します。

この体液は青臭く、嫌な臭いで防衛します。


↓ 黄色く青臭い液を出す


↓ 落下したときは偽死状態


↓ しばらくすると動き始める


↓ 起き上がれないときは羽を使う


↓ ツルツルした垂直面でも容易に登る



紫外線照射

キベリハムシは金属的な光沢のある濃紺色に

黄色の縁取りをあしらった綺麗なハムシです。

緑の葉に付く黄色い縁取りは、人の目には目立って見えます。


紫外線領域で情報のやり取りをしている同種異種からは

どのように見えているのでしょうか?





太陽光は紫外線を降り注いでいます。

そこで、紫外線を照射してみました。

*照射機器:MANASLUーLIGHT(LONG WAVE 3650Å)


↓ 可視光


↓ 紫外線照射











機器による紫外線照射では

照射体に接近するとほぼ黒に見えましたが

照射距離を離すと 

紺色の部分は黒っぽく目立ちませんが

上翅や胸部の側縁縁取り・脚部・触覚等が

可視光で見る黄色より薄く鮮やかに見えました。

もしかしたら外敵等には

その姿が木々の隙間や枝、或いは葉脈のように

見えているのかもしれません。




一見、ひ弱に見えるキベリハムシですが

神戸に入って以来、メスだけで子孫を残し

落下・偽死・体液などの防衛手段をもって

したたかに、ひそかに、*分水界を超えました。



*分水界=異なる水系の境界線


キベリハムシ・1

2017-07-12 23:55:15 | キベリハムシ

今日、Kさんから画像が届きました。




「これ、キベリハムシ?」

「あっ! どこにおったん?」

「〇〇〇、けどこの周辺は数日の間に整備されるんです。

消えてしまう前に発見できた個体を回収しておきます」


私は、急いでビナンカズラを採りに行き

受け入れ準備を済ませました。


キベリハムシは、100年ほど前に中国南部から

神戸港に貨物と共に上陸し

メスだけで子孫を残してきたました。

そして、ゆっくりゆっくり時間をかけて

県内を中心に分布を広げた外来種です。


↓ 体調13~15mm程度で青藍色に輝く


↓ 総勢11頭


↓ 日本ではメスしか発見されていない


↓ 飛翔能力は低い



間違いなくキベリハムシです。

Kさんによると

その周辺は明日にでも整備される予定だそうで

ぎりぎりの確保だったようです。

また、キベリハムシが食べていたと思われる葉は

ビナンカズラではなく↓の葉でした。


↓ ビナンカズラ(北斜面自生物)






↓ 早速食事




↓ これだけ食べました



Kさんは、キベリハムシと相性がよく

過去にも違う場所で発見されたことがあります。

偶然にも私は食草の確保がしやすいので

久しぶりに飼育をすることにしました。


驚きのキベリハムシ

Kさん 今回もありがとうございました。