クワガタ~スズメバチ等の覚書

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朽木屑を運ぶオレゴンルリクワガタ♂

ジャワ島東部のDorcus〜・4-正体現る

2021-08-21 13:38:57 | ジャワ島東部のDorcus

*カテゴリーから入ると飼育過程等に繋がります。

去年の春のこと

オークションでジャワ島東部 Mt. Gumitir産とする

パリーオオクワガタ(野外個体)を見つけ

その産地と形態に興味が湧き

出品数5ペアのうち2ペアを落札して15か月が過ぎました。

そして、それらのメス(持ち腹)から生まれた子供が

菌床を食べて羽化を終えました。

 

↓ ジャワ島 Mt. Gumitir産パリーとして販売された野外個体 59㎜(?)と60㎜

 

これらのオスにあてがわれていたメスは27㎜と33㎜で

当時、画像を撮る前に汚れを落とそうとしたのですが

27㎜メスの汚れが落とせなく

また点刻等にも少し違和感を覚えはしたものの

もしかしたら大きさによる違いや、個体差なのかもしれないと思い

清掃途中でカメラを向けました。

 

↓ 左:27㎜ 右:33㎜

 

二つのミスと、結果

下画像は、33㎜メスと27㎜メスから得られた各最大オスです。

左は、Dorcus ritsemae  右は、Dorcus reichei

つまり、33㎜メスはパリーオオクワガタで

27㎜メスはライヒラタクワガタだったということ。

 

↓ 左:33㎜メスからの子供64㎜台  右:27㎜メスからの子供52㎜台

 

羽化したパリーオオクワガタの形態はスマトラ島あたりの個体に似ます。

そして、ライヒラタクワガタに関しては

ジャワ島での記録がないと私は認識しており

それが正しければこのライヒラタクワガタの産地は

ジャワ島以外のどこかということになります。

もしかしたら、スマトラ島産だったのかもしれませんが

結論することもできず

産地違いの可能性と、同定違いであったという事実が

ややこしく尾を引く結果となりました。

 

27㎜メスからの子供(ライヒラタ)

これをパリーオオクワガタとみて飼育すると

体はやや細長く見え、幼虫の頭が小さく成長も遅い。

最初は2齢か終齢かさえわかりませんでした。

「なんかおかしいなぁ〜」と思いながら飼育を続けました。

パリーオオクワガタの飼育経験者なら同じことを感じたと思います。

 

↓ 蛹化2021年2月 やや小型なのに内歯の位置が中央付近 ?これは・・・

⇩ 2021年3月16日羽化(蛹化から23日で羽化)

↓ ⇩部にも内歯が・・・

↓ 正体現る! 四つ歯! 

↓ ライヒラタクワガタ(四つ歯)

⇩ ⇩ 上翅は弱い筋状

↓ 51㎜強 

 

↓ 腹面

↓ メスの最大個体は、20㎜後半

↓ 上翅・前胸ともに点刻が密で明瞭、深く感じる

↓ 腹面 腹部の微毛が多い

 

33㎜メスからの子供(パリーオオクワ)

前記の幼虫とは明らかにタイプが異なりました。

見るからに一般的なパリー系の容姿でした。

 

↓ 2020年12月14日 オス 

↓ 2021年4月羽化  

↓ 64㎜強 内歯は中央より先端側に位置

↓ メスの最大は37㎜強

⇩ ⇩ 前胸の点刻は側縁付近で多い

 

最後に

巻頭にも書いたとおり

これらの親虫はオークションで入手しました。

出品されていたのは関東の専門店です。

今回の事象は、

採集から販売までの過程で何らかの手違いが生じたものと想像しますが

それ以上のことはわかりません。

以前から、ジャワラベル(集積)には?品が稀にあると聞いてはいたので

恐らくそれを引いたのでしょう。

また、ドルクス属のメスは同定の難しいものがおり

この手の間違いはあっても不思議ではありませんが

最近ではあまり聞かない事象となりました。

 

↓ 昨日現在、ライヒラタ2オスのみ飼育中

 

2020年の春に出品された野外個体5ペアのうち4ペアは私とTさんが落札し

それらと、その子孫が外部に流出することはありません。

残りの1ペアは(小さなペア)競り合いの末、そこそこの金額で落札されていきました。

おそらく私たちと同じような興味考えで競り合い、落札されたことと思いますので

少し安心しています。

今回は、パリーオオクワガタのように

分布する地域が違うと形がダイナミックに変化するクワガタの

産地ミスが引き起こす混乱を実感した飼育でした。

以上、カテゴリー「ジャワ島東部のDorcus〜」をこれにて完結します。

 

 


ジャワ島東部のDorcus〜パリー?・3

2020-08-10 22:02:21 | ジャワ島東部のDorcus

記事「ジャワ島東部のDorcus〜パリー?」の続きです。

 

これまでのあらすじ

今年のGWに見慣れない顔つきの

Dorcus系クワガタムシ野外個体をネットで見つけ

2ペアを購入しました。

産地は、ジャワ島東部のMt. Gumitir

パリーオオクワガタとして販売されていました。

 

ジャワ島東部に分布するパリーオオクワガタといえば

東ジャワパリーこと Dorcus  ritsemae ritsemae が知られています。

確かに当該個体は、Dorcus  ritsemae の系統には見えますが

前者とは異なる特徴を有して見え

また、他亜種とも異なるように感じたため

急激に興味が湧き、飼育を始めたものです。

 

 ↓ ジャワ島東部 Mt. Gumitir産 59・60㎜ 野外個体

↓ こちらが既知種 東ジャワパリー Dorcus  ritsemae ritsemae

↑ ジャワ島東部  Mt.Argopuro.産 62㎜ 野外個体

 

パリーオオクワガタ Dorcus  ritsemae は

棲息地(多くは島)によってその姿がダイナミックに変化します。

仮に陸続きであっても異なる山塊に分布し

隔離された環境であれば

形態に差異が出てもおかしくはありません。

 

↓ Mt. Gumitir

↓ 母虫は野外個体33㎜と27㎜の2頭  持ち腹(2産卵セット)

 

割り出し

前記事では割り出しが早すぎたため

卵と初齢初期の幼虫を確認したところで終了しました。

あれから50日ほどが経過し

本日、本格的な割り出しを行いました。

 

↓ 27㎜メスのセット

↓ 27㎜メスからは15頭

↓ 菌床へ投入

↓  ↓  ↓

↓ 33mmメスセット

↓ 33㎜メスからは5頭

↓  ↓  ↓

↓ 合計20頭採れました

↓ 2回目の産卵セットを継続中

↓ ジャワ島東部 Mt. Gumitir産60mm 野外個体

↓ ジャワ島東部 Mt. Gumitir産59mm 野外個体

 

今日の割り出しでは2野外メス持ち腹で計20頭採れました。

近年では、先人の研究と努力のおかげで

菌床という優れた飼育用品・技術により

誰でも簡単に大型個体を

羽化させることができるようになりました。

来年の今頃には

Mt. Gumitirの正体を見ることができるものと思います。

 

参考文献:

  塚脇智成,1998.月間むし(328):79-81.むし社. 

  水沼哲郎著,2000. Stag Beetls Ⅱ ,ESI.

  西山保典著,2000.世界のクワガタG,有限会社木曜社.

  藤田宏,2010.世界のクワガタムシ大図鑑6,むし社. 


ジャワ島東部のDorcus〜パリー?・2

2020-06-22 22:47:47 | ジャワ島東部のDorcus

記事「ジャワ島東部のDorcus〜パリー?」の続きです。

 

↓ ジャワ島東部のDorcus

 

5月12日の産卵セットから1か月半が過ぎました。

容器底部に初齢幼虫が見えてきたので

昨日、6月21日に仮の割り出しをしました。

 

 

このジャワ島東部のクワガタは、前記事でも書いた通り

既知のパリー Dorcus ritsemae ritsemae とは

ちょっと違う感じがしたので

野生のまま、そのままが良いと思い

追い掛けはせずに持ち腹で産卵してもらいました。

 

↓ 2メスとも持ち腹で採卵

↓2020年5月12日セット 追い掛けなしの持ち腹で産卵させる

↑ 管理温度はアバウト22〜23℃

↓ コナラ材 しっかり齧っている

↓ 卵 

↓ マットにも初齢が

↓ 母虫は健在

↓ マットにも産んでいる

↓ 卵と初齢

 

産卵セットはオオクワガタと同じですが

最近は市販の産卵木の場合、コナラしか使いません。

理由は、クヌギは皮がぶ厚く、扱いが面倒だからです。

 

↓ コナラ材

 

昨日の割り出しは少し早かったのか

卵と初齢初期が目立ちました。

取り扱いにくかったので

途中で割り出しをストップし

もう少し成長してから改めて割り出すことにしました。

 

 

仮割り出しの感触としては

2メスとも一桁台の産卵はしていそうですが

今回は多目に採卵したいので

母虫は一旦別容器にて栄養補給してもらうことにしました。

 

↓ 母虫はプリンカップ内で暫く栄養補給

 

この採卵で得られた子供が成虫の姿を見せるのは

来年になります。

その折には出来るだけ多くの個体を

そして、小〜大型までの形を見ておきたいと思います。

 

 


ジャワ島東部のDorcus〜パリー?

2020-05-10 00:13:25 | ジャワ島東部のDorcus

GW中にネットで見慣れない顔つきの

パリーオオクワガタ(?)

野外個体を見つけました。

産地は、ジャワ島東部の Mt. Gumitirとあり

販売者さんに確認をとったところ

「現地からそう報告を受けている」との回答がありました。

また、通関は2019年12月で

同期にMt. Gumitir産ダイオウヒラタも入っていました。

 

 Mt. Gumitirはジャワ島の東端に位置し

すぐ近くにバリがあります。

 ⇩  Mt. Gumitir

 

このパリーは全部で5ペア販売されていて

オスは52~60mm、メスは27~33mmでした。

これら5ペアのうち私が2ペア。

パリー好きのTさんが2ペアの計4ペアを

誰と競り合うこともなく安価で入手。

残りの52mmペアも注視していたところ

こちらはスタート価格の倍以上で取引されました。

 

↓ 2ペア入手

↓ ジャワ島 Mt. Gumitir産  左:59mm   右:60mm 

 

 ↓ 腹面(ダニ付き) 

↓ 左:60mm 59mm 大アゴはすらりとして先端付近で湾曲

↓ 頭部と大アゴ 左:59mm   右:60mm

 ↓ 胸部 左:60mm        右:59mm 

↓ この2頭はTさん所有個体 左:60mm  右:57mm

↓ メス 左:33mm     右:27mm 

↓ 腹面に微毛

 

この産地のパリーオオクワクワガタを調べてみると

2017年に東ジャワパリーの珍産地として

とあるショップで販売されていました。

その時のサイズは50mmほどの中型だったようです。

この産地個体群について

あえて細かなことは書きませんが

少なくとも既知の東ジャワパリー 

Dorcus ritsemae ritsemae には見えません。

かといって他亜種を見てもよくわからず

同定に困ります。

 

↓ 東ジャワパリー Mt.Argopuro産 野外個体♂68mm

↓ 東ジャワパリー腹部、微毛は多い(飼育1代目)

↓ 東ジャワ.Mt.Argopuro. 62mm

↓ パラワン.Mt.Gantung.産 63㎜ 

↓  Mt. Gumitir  体長60mm付近で、内歯の位置は基部寄り

 

ぱっと見は、パラワン・スマトラにも似てますが・・・

60mmほどの体長でこの形はとても興味深く見え

急いで産卵木を発注しました。

 

参考文献:

 塚脇智成,1998,月間むし(328):79-81.むし社. 

 水沼哲郎著,2000. Stag Beetls Ⅱ ,ESI.

 西山保典著,2000.世界のクワガタG,有限会社木曜社.

 藤田宏,2010,世界のクワガタムシ大図鑑6,むし社.