クワガタ~スズメバチ等の覚書

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朽木屑を運ぶオレゴンルリクワガタ♂

ホラサビクワガタ・4-羽化までのあらすじ

2024-06-01 22:45:29 | ホラサビクワガタ(sabanus)

ホラサビクワガタが羽化しました。

最近は「ペルフォラトゥスサビクワガタ」と称されることが多いですが

ここでは難しい呼び方はせず「ホラサビクワガタ」と呼びます。

今回も画像を主体とした記事です。

昨年入手したホラサビクワガタの新成虫は

10月中ごろから活動がはじまって、いつの間にか交尾〜産卵し

孵化した幼虫は今年の3月中頃には終齢後期を迎えていました。

↓ 前記事、幼虫掘出し

 

ホラサビクワガタ・3-終齢幼虫〜未知種の難しさ - クワガタ~スズメバチ等の覚書

なかなかうまくいかないホラサビクワガタの繁殖ですが、やっと終齢幼虫が採れました。↓昨年10月に自力で蛹室から出てきたというペアを使用「終齢幼虫」昨年の10月中旬...

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そして、5月末には1頭のオスが羽化しました。

つまり、新成虫が活動を初めて7ヶ月ほどの間に

産卵〜羽化までのサイクルが終了したことになります。

その間の管理温度は、他種との兼ね合いで16〜23度の範囲です。

 

幼虫期間

産卵セット(10月中旬)〜蛹化日(5月8日)までを逆算すると

幼虫期間は、7ヶ月以内です。

↓ 2024年3月撮影:終齢後期幼虫

 

蛹の期間

蛹の期間は、23日でした(管理温度22度前後)

産卵セット時に埋めた材には幼虫が開けたと思われる穴があり

マット内で終齢後期らしき幼虫を1頭見つけ、観察用にプリンカップに移しました。

後日、産卵セット容器底部を覗くと、マット内にもう1頭終齢幼虫が見えました。

これは、終齢幼虫が蛹室作成の場を求めた結果と思いますが

「野外なら土中もあり?」ということでしょうか?

↓ 材には幼虫の出たあとが二つあった

↓ オスの蛹:2024年5月19日撮影(蛹化は5月8日)

↓ 頭部の突起もよく目立つ

 

羽化

羽化は、蛹に色が付き始めて3日目の深夜に行なわれました。

↓ 5月28日 色が付きはじめる

↓ 5月30日

↓ 頭部の突起下にあるホール部(ホラ)は殻で塞がれている

↓ 5月31日羽化(臨時蛹室のため転倒)

↓ 翌昼、ティッシュに移し替え

↓ 6月1日 本来の色に近くなってきた

いつの間にか交尾〜産卵し、掘り出してみれば終齢後期の幼虫が出てきたホラサビクワガタ

今回は、蛹〜羽化までの観察はできましたが

頭部の突起とホール(ホラ)の秘密を探るには、もう少し数が欲しいです。

↓ 蛹殻を脱ぐと頭部にホールが(ホラ)

↓ 胸頭部の屈曲も本種の特性

産卵セットの下部マットには3月に残しておいた幼虫が1頭います。

材は割り出さずにそのままマットに戻しており、今月内に中味を確かめます。


ホラサビクワガタ・3-終齢幼虫〜未知種の難しさ

2024-03-24 18:49:05 | ホラサビクワガタ(sabanus)

なかなかうまくいかないホラサビクワガタの繁殖ですが、やっと終齢幼虫が採れました。

↓ 昨年10月に自力で蛹室から出てきたというペアを使用

「終齢幼虫」

昨年の10月中旬に産卵セットを組んで約5ヶ月経過

本日割り出しをしようとセットごとトレイに移したら幼虫が転げ落ちました。

転げ落ちた幼虫は、大きさと色合いからして熟した終齢幼虫に見えます。

容器側面からは変化が見えませんでしたが

セットから約5ヶ月の間に産卵し、ここまで育っていたようです。

↓ 転げ落ちた幼虫

↓ 頭の色は薄いオレンジ系(実物はもっと薄く見える)

↓ 転げ落ちた幼虫が掘ったと思われる朽木穿孔痕

↓ 幼虫はドルクス系と似ている

↓ ヤマトサビクラスのサイズ感(多分オス)

材にはもう1か所穿孔痕らしき箇所があり、この勢いで割りだしてみようかと思いましたが

ホラサビは失敗続きのためおじけづき、そのまま材をマットに埋めてしまいました。

↓ 材にはもう一か所穿孔痕あり

産卵セットから約5ヶ月

親オスは健在で、たまにゼリーに付いているところを見ていましたが

母虫に関しては比較的早い段階で姿を見なくなっていました。

↓ 親オスは健在、隠蔽がすごい

↓ 母虫は既に死亡

今日の割り出し結果は、終齢幼虫1頭だけですが

埋め戻した材にも幼虫がいることを願い、棚に戻しました。

↓ 終齢幼虫1頭はプリンカップに、材は埋め戻し

「未知種の難しさ」

*ここでいう「未知種」とは生態がよくわかっていないと思える種

ホラサビを焦がれて飼育する目的は、頭部の突起とホールの秘密と、生態観察です。

最近よく感じることに「未知種の難しさ」というのがあります。

それは、季節適応から始まり、材やマットの水分調整がでたらめであったり

幼虫のステージや成長度合いがわからず、生死に関わるタイミングで割り出したり

気が付けば羽化して力尽きており「ペアにならず繁殖を断念する」などということが

本種に限らずさほど珍しくない頻度で私にはやってきます。

これは、経験不足や外部資料の貧弱とか

管理能力と観察能力の間(はざま)をさまようありさまなのかもしれませんが

今回は、たった1頭のよく熟した終齢幼虫出現のおかげで

「未知種の難しさ」に一歩踏み込めたような、そんな気がしました。


ホラサビクワガタ・2-産卵について

2022-04-02 20:56:18 | ホラサビクワガタ(sabanus)

*タイトルに番号のある記事はカテゴリーから入ると

 飼育過程等に繋がります。

ホラサビクワガタ Foraminis perforatus sabanus (以下サバナス)の

産卵セットを組んで2ヶ月半が過ぎました。

その間、雌雄が摂食する場面を幾度か見ましたが、交尾の様子は確認できず

また、ハンドペアリングも試しましたがうまくいきませんでした。

 

↓ 「サビ」という名の付く種特有の異物付着

 

最近ではメスはマット表面に現れず、オスばかり見るようになっていました。

また、マット内にも移動の痕跡らしきものが見当たらないため

少し不安になり、今日掘り出してみました。

 

↓ 2022年1月15日 コナラ3本を産卵一番で埋めたセット

 

材とマットをトレイに移すと、一つの材に齧った痕が見つかりました。

齧り痕周辺を慎重に削っていくと母虫が現れ

腹部下方の木くずを詰め込んだ先に卵が出てきました。

 

↓ 削り痕 2022年4月2日掘出し

↓ 削っていくと母虫が現れた

↓ 産座から取り出した母虫と、卵

 

母虫が産座にいたのは産卵して間もないせいか

それとも他に意味があるのかはわかりませんが

今日見た限りでは母虫は狭いスペースにおり

卵も産みたてのようには感じませんでした。

仮に、母虫は産卵後もある一定期間狭いスペースにとどまるのであれば

孵化までの期間によっては短期間で多くの産卵は見込めないかもしれません。

次に母虫がマット表面に出てきたときは材を確認してみます。

 

 

今日の掘り出しでは1卵のみ確認できました。

産座ごと取り出した卵はpカップに入れ成長を観察します。

 

↓ pカップで産座ごと管理

 

セットから2か月半ほど過ぎた初めての掘り出しでは

朽ち木削り痕の中から母虫と卵が出てきたことに違和感を感じ

サバナスの産卵に関して検索してみると

そこそこ幼虫が採れたような話は出てきますが

生態的な記述のヒットはありませんでした。

地味な種を調べようとするとよくあることです。

とりあえずは、産卵の確認ができたので良しとします。

 

↓ 羽化から3か月以上経過した親虫  

 

2022年4月3日追記 

掘出し翌日に卵は孵化しました。

産みたてではありませんでした(2022.4.3.撮影↓)


ホラサビクワガタ sabanus

2022-01-08 23:23:32 | ホラサビクワガタ(sabanus)

新年あけましておめでとうございます

今年もよろしくお願いいたします。

 

昨年の秋くらいから小屋の飼育スペースに余裕が出てきたため

3か月ほどかけて少しずつ飼育種を増やしてきました。

令和四年、最初の記事はホラサビクワガタです。

ホラサビクワガタは、1属1種のホラサビクワガタ属に位置し

市場では「ペルフォラトゥスサビクワガタ」と総称されていますが

以下の2亜種からなります。

 Foraminis perforatus perforatus (Ritsema,1885)

  分布:マレー半島,スマトラなど

Foraminis perforatus sabanus (Nagai,1994)   

  分布:ボルネオ

今回の飼育種は後者のsabanusになります(以下サバナス)

藤田宏著「世界のクワガタムシ大図鑑・6」によると

サバナスの体長は、オス16.3〜24.9㎜・メス15.7㎜ですが

手元の飼育個体はそれより遥かに大きく

オスは27㎜台、メスも17㎜ほどあります。

飼育個体とはいえ、あまりにも差があるため

そのうち野外でもこのクラスの個体がみつかるのではないかと思います。

ホラサビクワガタは非常に特徴的なクワガタで

例えば、オスの大アゴは左右非対称、頭部には角のような突起

その突起下には円形のホール(穴・洞)があります。

それらは、それぞれに役割があるはずなのですが

現時点で詳しい資料を見つけることはできていません。

 ↓ 左右非対称の大アゴと頭部の突起

↓ 大アゴは閉じるとうまくかみ合う

↓ ポカリと開いたホール

↓ ホールに付着物はさほどなく、空間は保たれてみえる

↓ 腹面から

↓ メス腹面 ホールらしきものは見当たらない

↓ メスの符節がホールに引っかかるとオスは攻撃〜逃避行動をとった

↓ 頭部の突起はホールを保護するためか?

また、サバナスの体色は体表が湿った状態ではあずき色となり

乾燥するにしたがって黄土色系に変色します。

例えば、体色が黄土色の時

ティッシュを濡らして体表を湿らすとすぐさまあずき色になりますが

放置すると短時間で黄土色に戻ります。

野外ではその時の天候や環境に合わせて体色を変化させることで隠蔽し

捕食者には見えていても、捕食の対象から外されるための戦略ではないかと想像します。

加えて湿度調整の役割や

もしかしたら、体表には肉眼では見えない菌類も共生しているのかもしれません。

↓ 体表に目に見えた微毛はみあたらない

↓ 変色が始まる

 ↓ 体表を湿らせる              ↓ 1分経過

 ↓ 2分経過                 ↓ 4分経過

 ↓ 脚部・触覚まで変色する

↓ メスも同様に変色する

↓ 前胸後方左右には凹みを持ち、側縁と脚部には刺毛がある

これらペアの羽化日は不明ですが

2021年12月下旬時点でテネラルな状態は過ぎているように見えるものの

ゼリーを与えても動きは鈍く、本格的に活動するにはまだ少し時間がかかりそうです。

↓ 後食はまだ積極的ではない ゼリーの液が付いた部位は変色  

↓ 管理温度は他種との関係で18〜20度

 

最後に

はじめて手にしたサバナスはとんでもなく奇怪で、衝撃的でした。

正に「ホラサビクワガタ」です。

見れば見るほど不思議な形ですが

もしかしたら、飼育することで新しい発見があるかもしれません。

 参考文献:  藤田宏,2010.世界のクワガタムシ大図鑑・6.むし社.