昨年購入したネパールコクワガタが1年以上かけてようやく羽化しました(以下ネパールコクワ)
気が付けば蛹
昨年10月にカワラタケ菌床に投入した初・2齢幼虫は
ゆるやかに成長し、今年の春には菌床の白いところも少なくなっていました。
幼虫がしだいに暴れ始めたので菌床に添加マットを加え
硬詰めして自然温で蛹化に備えていました。
ところが盛夏になっても蛹室を作る気配はなくだらだらと・・・
2016年10月31日、昼夜の温度差が結構激しくなり
昼間は23度ほど、夜間は15度くらいまで下がるようになりました。
「そうそう、ネパールコクワはどうなったかな?」
久しぶりに覗いてみると飴色の蛹が・・・「えっ! いつもの間に?」
↓ 全て容器底部に蛹室作成
盛夏には温度計が30度を超えることもある下駄箱の下で
よくぞここまで!
下駄箱の下放置は以前マルバネ幼虫を沢山殺した苦い思い出の場所でもあります。
↓ 1オス 死亡
今回は、蛹室が容器底部で画像が撮りにくいため
蛹をマットから取出し新聞紙とキッチンペーパーで作った簡易蛹室に移しました。
↓ 雌雄バランスが良い
紙蛹室の場合、水分が多すぎると感じたときは羽化不全が恐いので蓋を開けて適宜水分を飛ばします。
逆に極度の乾燥状態に長らく曝された蛹は、腹部が痩せこけてしまうことがあります。
そういった個体は羽化しても腹部は痩せこけたままになるので
極度の乾燥は注意が必要です。
これは、以前アローコクワガタで経験した教訓からです。
羽化
5頭のうち1オスは蛹の状態で死亡していました。
残ったのは2オス・2メスの計4頭。
↓11月21~22日にかけて最初のメスが羽化
翌日には次のメスも羽化を終えました。
大きさはどちらも40mmほどです。
↓ 11月27日オスが羽化
↑↓脱皮は背中から
↓白い糸のようなものは気門の管
↓中脚は、羽化時に体を支えるために重要な役割を果たす
↓ 羽化時は交尾器露出
↓最後に後翅が伸び、乾燥するとたたみます
もう1頭は羽化まであと2日ほどかかりそうですが
どちらも小ぶりで、体長は60mm前半に納まると思います。
久しぶりに飼育したネパールコクワですが、雌雄一連の羽化日から逆算すると
卵から羽化までに要した期間は思いのほか長く、15か月前後かかったと思われます。
夏場の高温が影響したのでしょうか?
産卵と寿命
過去の経験から、ネパールコクワはメスが性成熟するのに半年ほどかかると認識しています。
産卵形態は、私の場合、市販の産卵木Lサイズの倍ほどある
朽ち木を使用していたせいかその中に潜り込み木屑を詰め込んで産卵していることが普通でした。
↓メスの大アゴは特徴的
↑↓上に伸びた内歯は木屑を詰めるのに都合がよい?
↑ 頭部のとんがりは一つ(通称:ドルクスこぶ)
また、ネパールコクワは条件が整うと多産する傾向があり
総産卵数は40個を超えることも決して珍しくありません。
そして、母虫は産卵してもすぐには死亡しません。
過去の飼育では1999年8月1日~2001年8月下旬まで生存したこともあります(野外個体)
ネパールコクワは、採卵も含めて低温飼育が推奨されますが
25度程度なら産卵は可能でした。
幼虫飼育は、15~27度位の範囲で季節感を持たせたら
卵から数えて1年前後で羽化していましたが
久しぶりの飼育では先述の通り、盛夏に終齢幼虫が30度超を経験し
卵から15か月ほどかかって羽化しました。
ネパールコクワガタのこと
Dorcus nepalensis (Hope,1831)
ネパールコクワは、HemisodorcusやMacrodorcasとする考えや、Dorcusとする考えがあるようです。
確かにネパールコクワや、アカアシクワガタの周辺系統は
オオクワガタやヒラタクワガタなどとはさほど似ていませんが
Macrodorcasの象徴的存在だったコクワガタ(Dorcus rectus)が
オオクワガタとの間にF1(異種間の雑種1代目)を可能にすることなどから
ネパールコクワもDorcusとすることが多いようです。
(*間違っていたらご指摘ください)
↑和名にこそ ”コクワガタ” と付いていますが、日本のそれとは異なる姿かたち・大きさで
最近では「ネパレンシス」と呼ぶ人も増えてきました↓
私が初めてネパールコクワを手にしたのは1999年5月。
漆塗りのような黒艶と、長く伸びた大アゴ、体の厚み、メスはコブ一つなど
どれをとっても印象的で、それから4年ほどの間焦がれて飼育を続けました。
↓初めてのネパールコクワ Nepal Ramechhap 野外品
上の個体は75mmほどありネパールコクワ野外品としては大きな個体でした。
そして、採卵できなかった時のことを考え、同年7・8月にはインドの野外個体も追加したのですが
その翌年にはどれもよく産卵し、沢山の幼虫とお金がかかりました。
↓ 左は上と同個体 右:India Tiger Hill 野外品
↓ 左右:Nepal Ramechhap 中央:India Tiger Hill
↑飼育でぼろぼろ 野外個体
ネパールコクワは当時人気絶頂だったアンタエウスの副産物的なもの?として
クルビデンスなどと共に少しづつもたらされていました。
中には朽ち木から取り出した所謂「材採集」の個体も含まれていたようで
当時は採卵がた易くない種として扱われていました。
事実、産卵せずに採集年に死亡したメスや
飼育新成虫の羽化年度死亡個体の腹部切開をすると蔵卵は認められず(n=2)。
そういうのが産卵するはずありません。
最後に
いつも思うことなのですが好みというのはなかなか変わりにくく
一度飼育して納得・満足したつもりでもそのうちまた飼ってみたくなる種がいます。
「ネパールコクワガタ」
この先ブリードするかどうかはわかりませんが観賞に耐えることは間違いありません。