クワガタ~スズメバチ等の覚書

   Photo & Text by こよみ

PC版テンプレート画像は
朽木屑を運ぶオレゴンルリクワガタ♂

スラウェシパリー・6-成形異常の超大歯型

2023-11-12 14:11:11 | スラウェシパリー(Sulawesi)

まずは下の画像をご覧ください。

これは今年の夏に羽化したスラウェシパリー(Pulu Palolo産)で、累代は2代目です。

羽化した5オスの中から画像の成形異常個体が1頭出現しました。

この個体は片方の前・中脚に欠損があり、頭部はやや下向きで上下の可動域が狭く

大アゴに関しては他種をも訪仏(ほうふつ)させるため

掘出し時はテネラルでしたが何度も何度も見直しました。

そして、体が完全に固まるのを待って再びボトルから取り出しました。

↓ 片方の前・中脚に欠損あり

↓ 頭部は下向きで上下の可動域が狭い

↓ 大アゴの動きは正常

↓ 同腹兄弟(右端が大アゴ成形異常個体) 

↓ 左:65㎜台 右:大アゴ成形異常による超大歯型62㎜台

↓ 頭部前方にある一対の突起やその周辺に種としての特徴が見てとれる 

↓ 前胸背板 右:大アゴ成形異常個体(テネラル時)

↓ クルビデンスと並べたらこんな感じ

この個体は飼育下でも生存するには厳しかったようで

羽化から2ヶ月ほどで力尽きました。

左右非対称で、こういうのを出したら交雑を疑う方もいるかもしれませんが

それはありません。

もともと大きな個体を出したくて飼育していたスラウェシパリーですが

思わぬ産物に気がとられ、気が付けば今年の最大は65㎜でした。


スラウェシパリー・5-成熟期間

2022-12-17 14:23:09 | スラウェシパリー(Sulawesi)

スラウェシパリーの割り出しを終えました(2回)。

前記事の野外個体は産卵することなく死亡したので

新たに飼育個体(1代目)を入手して成熟を待ちました。

オスは2022年6月羽化、メスは同年4月羽化です。

↓ オス2022年6月羽化 64㎜程度

↓ メス2022年4月羽化 30㎜程度

↓ 産卵セット:管理温度は24度前後

 

割り出しは、2本入れた材を1本ずつ2回に分けて行い

1回目(11月5日)の割り出しでは、卵〜ある程度成長した2齢幼虫まで発見できました。

2回目(12月10日)の割り出しでは、より成長した2齢幼虫も出てきました。

↓ 2回に分けて割り出し:2022年11月5日・12月10日

↓ 卵を確認:11月5日

↓ 初齢幼虫:11月5日

↓ 2齢幼虫も混ざる:11月5日

↓ 2回目の割り出し ある程度成長した2齢幼虫も出現:12月10日 

↓ 2022年12月10日の母虫

 

性成熟までの期間

2回の割り出しで出てきた幼虫の成長度合いから、産卵は9月内に行なわれたと思われ

母虫は羽化して5ヶ月前後で産卵を開始したようです。

私の場合、パリーオオクワガタは野外個体を入手して産卵させることが多かったため

その個体の羽化〜野外での産卵経験など生い立ちを知る由もなく

当たりはずれの世界を行き来していました。

強弱四季のある地域に分布するクルビデンスやオオクワガタ等の場合

羽化翌年に産卵という、管理温度に左右されにくいイメージもありますが

スラウェシパリー(飼育個体)では南の種らしさを感じました。

 

↓ オスは元気で活動中

 

2回の割り出し結果は、卵〜2齢幼虫まで合わせて22頭(1潰し)

採れた幼虫は持ち合わせた1500ccヒラタケ菌床2本に6頭(3x2)

残りの15頭は、200ccのカワラタケ菌床に投入しました。

今回は、予想以上に多く採れたので隙間の増えてきた棚が少し埋まりました。

他種との関係で小屋の中段温度は現在19度前後です。

これから1月半ばにかけて更に2度ほど低くなっていきます。


スラウェシのパリー・4-大型の迫力

2022-02-06 00:05:13 | スラウェシパリー(Sulawesi)

スラウェシ(セレベス島)に分布するパリーオオクワガタD. ritsemaeは 

南部のロンボバタン山塊と周辺に分布するウンガイパリー ungaiaeと

スラウェシパリー(セレベスパリー)と呼ばれる astridae の2種がおり

前者野外個体の流通は稀ですが、後者は毎年ある程度の数を見かけます。

 

↓ スラウェシパリー野外個体  Pulu Palolo 

 ↓ 過去の参考記事  

OGPイメージ

スラウェシパリーBig Size - クワガタ~スズメバチ等の覚書き

画像は、スラウェシのパリーオオクワガタ野外個体です。ところがスラウェシ以下の詳細な産地は今のところ、?とても大きな個体で形も印象的に見えたの...

スラウェシパリーBig Size - クワガタ~スズメバチ等の覚書き

 

 

私はパリーオオクワガタが好きで

なかでも東ジャワと、スラウエシのパリーには特に思い入れがあり

小屋のスペースと相談しながら6年ぶりの飼育を開始しました。

 

↓ 今回入手した野外個体 オス66㎜up メス33㎜ Pulu Palolo 

↓ クワガタナカセ(ダニ)付着

↓ スレの少ないメス 33㎜

↓ 腹面にはオレンジの微毛が残る

 

スラウェシパリーの産卵セットは

リサイクルマットに1か月ほど埋め込んだコナラ材

所謂「バクテリア材」を産卵1番で埋め、追い掛けなしの持ちバラとしました。

管理温度は他種との関係で21度くらいです。

 

↓ 底部はマット硬詰め 

↓ スレ少なく、爪も鋭い

↓ 早々マットに潜っていった

 

今回入手した66㎜upの個体だけを見るとそこそこ立派に見えるのですが

6年前記事にした個体を横にすると様子は一転します。

 

↓ 66㎜upの中歯型

 

大型の迫力はものすごく

こんなものを見たら思い入れずにはいられません。

これに匹敵するような個体を羽化させたい気持ちは

採卵必須、産卵木にほどよい硬さの「バクテリア材」を選びました。


スラウェシのパリー・3

2015-08-03 22:44:33 | スラウェシパリー(Sulawesi)

スラウェシの特大パリーオオクワガタ野外個体を標本にするため薬品処理しました。

以前書いた「Big Size」です。









このパリーの子孫を残そうと採卵を試みていたのですが

結果は空の産座ばかりで、メスは☆になりました。

そして、スラウェシ以下の産地も不明のまま。

めったに見ることのできないBIGサイズだけにそれが惜しまれます。

入手経路は野外品入荷時の仕分け作業を手伝ったある方が

そのお礼として優先的に入手された個体でした。









ふと 見ると、後脚符節が取れていました。

マットをかき分けて探すしかありません。

やっぱりこういうやつはすぐ処理すべきだった・・・


それにしても こいつは大きい。


スラウェシのパリー・2

2015-04-26 20:08:35 | スラウェシパリー(Sulawesi)

今年3月25日に紹介した「スラウェシパリー Big Size」の

産卵セットを組みました。




オスは非常に生きがよく、

暮しやすいのか野生のダニ家族が増えました。






宿主の摂食時には口から出たオレンジ部にまで宿者ははびこります。



*私は、クワガタムシに付く野生のダニは共生関係にあると考えていますので
 取り除くことはしません。


メスは少々生きがなくダニの家族も増えていません。




このメスは、交尾~産卵済の可能性が高いと思いますが

一般に「昆虫は最後に交尾した遺伝子が多く残される」

といわれていますので最後にお化け遺伝子を残せないかと

追い掛け2回、その後3日間同居させた後

単独飼育で約1か月間 栄養補給をしてもらいました。




使用した産卵木には、山で見つけた細いエノキの朽ち木



吸水が悪く、1日半水に付けました。



マットは間に合わせ品、マルバネで使用したものを使いました。




マットにも産卵するなら まずいかも・・・

今回は、五つ産んでくれれば良しとしよう!


スラウェシパリーBig Size

2015-03-29 21:42:55 | スラウェシパリー(Sulawesi)

画像は、スラウェシのパリーオオクワガタ野外個体です。



ところがスラウェシ以下の詳細な産地は今のところ、? 

とても大きな個体で形も印象的に見えたので入手しました。

↓ 計り方によってはもう少し大きくなります。

↓ 前胸背板と頭部周辺

↓ 細めで直線的な大あご

↓ メス 37㎜位


産地については現在確認をお願いしているので判明することを願うばかりです。

スラウェシ島はさほど大きな島ではありませんが

とても面白い形をしており 島の殆どが山です。



スラウェシ島中北部には、パリーオオクワガタの亜種astridaeが 分布しています。

中北部の個体には大あごの先端と内歯との間に

突起状の広がった部分があったりもするようですが

この個体にはそれらしき目立つものが見当たりません。






同じくスラウェシ島南部には、もう一つの亜種ungaiaeというのが分布しています。

ウンガイパリーといわれるちょと珍しいやつです。

南部のtempeという湖あたりは比較的低地が広がっており

そのあたりを境に高地を好むパリーは分断された状態なのかも知れません。

今回入手した大きな個体は南のウンガイではありませんが

最北部あたりの個体ではないと思います。

↓ 左:入手したスラウェシ産.76up  右:スラウェシ.Malino.72㎜(産地は確認したが)

 左:パラワン.Mt.Gantung.63㎜  右:マレー.Cameron Highiands.71㎜

 
↓ 左:ミンダナオ.Mt.Apo.63㎜  右:東ジャワ.Mt.Argopuro.62㎜



パリーは、地域によってはダイナミックに変化する興味深い種です。

10度後半の温室でお化けが餌を食べている姿を見ていると

久しぶりにブリードしてみたくなりました。

参考文献:
 水沼哲郎・永井信二,1994,世界のクワガタムシ大図鑑.むし社. 

 永井信二・塚脇智成,1999,月刊むし(310),むし社.

 2000,LUCANUS WORLD No18,式会社環境調査研究所.

 藤田宏,2010,世界のクワガタムシ大図鑑6,むし社.