クワガタ~スズメバチ等の覚書

   Photo & Text by こよみ

PC版テンプレート画像は
朽木屑を運ぶオレゴンルリクワガタ♂

ルリクワガタ・3-兵庫県で追加採集(画像多し)

2023-10-29 23:11:15 | ルリクワガタ

兵庫県でルリクワガタを追加採集

兵庫県のルリクワガタを追加採集しました(前記事の続きです)

日時:2023年10月28日9:00〜17:00 

天候:晴れ 気温:9度前後

場所:兵庫県北部標高約1000〜1100m

神戸のSさんと前記事と同じブナ帯の数か所でルリクワガタを探しました。

↓ 兵庫県産ルリクワガタ(8月幼虫採集10月羽化確認・10月28日成虫材採集)

↓ 前記事

 

ルリクワガタ・2-兵庫県でついに採集 - クワガタ~スズメバチ等の覚書き

はじめに兵庫県にはルリクワガタの記録があります。しかしながら、文献や検索で得られる兵庫県のルリクワガタ資料は無難で薄く画像すら見当たらないことに私は不満を感じて...

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まず最初は8月に幼虫(ルリクワガタに羽化)を採集した斜面に向かいました。

そこで、Sさんが第一刀でオスの新成虫を出しました!

「運を使い切った!」「今日のピークや!」などと冗談を交わしながら探し続けます。

↓ Sさん第一刀で大きなオスの新成虫を当てる!

 

産卵場所について

当地のルリクワガタは、大きな倒木とその周辺に分散した朽ち木

及び直径20㎝×高さ120cmほどの立ち枯れで発見できました。

数少ない採集経験からではありますが

当地のルリクワガタの産卵場所について少しわかったことがあります。

それは倒木や立ち枯れの樹皮下にも産卵マークがあり、幼虫も存在するということです。

もちろん露出して見える産卵マーク(・)はきっかけを知る重要な指標となりますが

当地で得た産卵マークや幼虫の多くは一旦樹皮を剥がして得たものです。

つまり、樹皮と幹との間にできた隙間に入り込んで産卵をしている事象を多く認めたということです。

また、倒木のホスト木は相対的に湿ったものが多く

黒ずんで柔らかい部分〜白い部分にまで幼虫は入っていました。

一方、立ち枯れではやや硬い部分にも入り込んでいましたが

樹皮を一旦剥がすことで、より多くの個体を発見することができました。

倒木・立ち枯れいずれの場合も成・幼虫は材表面近くで発見でき

それより深層部にはいませんでした。

↓ 浮いた樹皮を一旦剥ぎ、採集後に戻す

↓ ここには多数の(・)と幼虫が・・・

↓ 樹皮の隙間で発見

ルリクワガタを探した朽ち木(倒木)はいずれも太く

コルリクワガタを探すときのような代物ではありません。

↓ どの倒木も幹はかなり太い

↓ 中央にルリクワ産卵マーク(・) コルリクワガタが喜ぶ朽ち方!

↓ 水分が多く、黒ずんだ腐食

↓ よく湿り、柔らかい場所から幼虫出現

↓ 水分の多い朽ち木にも(・)はある

↓ オニクワガタ(らしき)も喜ぶ腐食度合い

↓ よく見るとたくさんの新旧マーク(・)がある 

↓ 3っ目の斜面でSさんがメスの新成虫発掘

⇩ テネラルのせいか腹がうっすら赤い

↓ マーク(・)はあっても外れのほうが圧倒的に多い

↓ 腐食の違いと幼虫の嗜好がうかがえる

↓ こんなん出ました!

↓ やはり立ち枯れ樹皮下にも産卵マーク(・)が

↓ 教科書通りの立ち枯れからオスの新成虫

⇩ 立ち枯れから出たオス

↓ 中央部に幼虫

 

採集結果

今回、ルリクワガタが採集できた3つのポイント(斜面)はさほど離れてはおらず

直線距離にして1キロにも満たないように思います。

昨日の採集結果は、sさんが新成虫オス2頭・メス1頭、幼虫9頭

私は、新成虫オス1頭、幼虫12頭でした。

二人合わせると、新成虫オス3頭・メス1頭、幼虫は21頭、計25頭です。

*ここでは幼虫もルリクワガタとしてカウントしました。

採集した幼虫の形態・採集部位および成虫の出現に加え

8月採集の幼虫がルリクワガタに羽化したことなどから総合判断して

同定違いの可能性は低いと考えました。幼虫飼育の結果は別途記事にいたします。

自宅にて

採集してきた成虫の画像を撮ったり、幼虫の飼育を開始しました。

↓ 兵庫県産ルリクワガタ

↓ 左:ルリクワガタ 右:ニシコルリクワガタ どちらも兵庫県北部産

↓ 採集できた幼虫は初〜終齢合わせて12頭(2頭潰し)

↓ 今の時期に初〜終齢まで存在した

↓ 終齢幼虫・卵巣が見える

↓ 現地材片を「産卵一番」で埋め、個別に飼育

↓ 悩んだ結果、20度前後で幼虫の成長を止めないことに

 

最後に

採集例が少なく、情報はスマートで少ない「兵庫県のルリクワガタ」ですが

少しずつ距離は詰めています、画像も多く残せました。

タイミングよく産卵場所を訪れると、野外活動する成虫を見ることも夢ではありません。

↓ 野外活動を終えたオスも発見

今回の採集は「大量(漁)」と言ってよいと思います。

Sさん、お疲れ様でした。


ルリクワガタ・2-兵庫県でついに採集

2023-10-07 14:21:30 | ルリクワガタ

はじめに

兵庫県にはルリクワガタの記録があります。

しかしながら、文献や検索で得られる兵庫県のルリクワガタ資料は無難で薄く

画像すら見当たらないことに私は不満を感じていました。

↓ 兵庫県産 ルリクワガタ

 

兵庫でルリクワガタを採集

幼虫採集日:2023年8月13日(神戸のSさんの情報・案内による)

場所:兵庫県北部のブナ帯(標高約1050m)の倒木

羽化確認日:2023年10月6日 1オス

↓ 大きな倒木に産卵マーク(・)2023年8月13日

↓ 産卵マークから出てきた終齢幼虫

10月6日、Sさんから「夏に持ち帰った幼虫がメスで羽化したと」連絡がありました。

送られてきた画像を見る限り、羽化した2メスの腹面は黒!

同所で得た幼虫は家にもいる、短い昼休みを利用して材を崩してみると

オスの新成虫が出てきました。

↓ 出てきたオスの新成虫(2023.10.6)

↓ 緑系の綺麗な個体

見慣れたコルリクワガタとは少し違う顔をしています。

「これは何クワガタ?」 

画像を撮り、大アゴや胸部など拡大してみます。

Platycerus属に詳しい瓢箪坊主さんにも画像を送り、見ていただきました。

大アゴ・胸の形状からしてルリクワガタで間違いないようです。

↓ 羽化した個体(緑系)とニシコルリ(青系)

羽化確認のため材を崩したときもう一頭幼虫が出てきました。

現地採集時は1幼虫のみと思っていたのですが、持ち帰った材片に入っていたようです。

幼虫の形からすると、これもルリクワガタのように思えます。

↓ 材片からもう一頭出てきた(終齢幼虫)

↓ 羽化は来年か? プリンカップで保管

ルリクワガタの材採集に関して書籍等で得ていた情報と

実際に経験して得た認識は少し違っており、ちょっとした衝撃を受けました。

そのあたりはもう少し時間をかけて探るつもりです。

 

最後に

兵庫県のルリクワガタの居場所を突き止めるのに恐ろしいほど歳月は過ぎましたが

これにより県下に分布するクワガタムシ16種を確認しました。

記事「兵庫県のクワガタムシガチー概説」にも追記しました。

 

兵庫県のクワガタムシーガチ概説 - クワガタ~スズメバチ等の覚書き

はじめに私のクワガタ採集は県下に分布するクワガタムシ全16種の居場所を突き止めることを目標にしてきました。きっかけは1986年、南西部の雑木林でオオクワガタのメスを採...

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最後になりましたが

現地を案内くださった神戸のSさん、Platycerus属についてご教授頂いた瓢箪坊主さん

ありがとうございました。 


ルリクワガタ

2020-04-01 22:42:56 | ルリクワガタ

はじめに

2年前にマメクワガタの採集に成功し

これで県下に分布するクワガタムシ16種のうち

15種の居場所を突き止めました。

残すはあと1種、「ルリクワガタ」のみとなりました。

 

毎春、コルリクワガタ採集時に

ルリクワガタらしき個体が混ざっていないか注意して見るのですが

それらしき個体は一度も見たことがありません。

また、文献等にあるルリクワガタの入っていそうな朽ち木も

注意して見てきたつもりですが収穫は何もないままです。

県下でのルリクワガタの採集情報等をネットで探すも

ヒットするのは「コルリクワガタ」のことばかりで

ようやく見つけたルリクワガタの記録は

著名な方による漠然としたものでした。

・・・本当にルリクワガタはいるのだろうか?

 

↓ *コルリクワガタ♂(兵庫県北部A山個体群)

↓ *コルリクワガタ♂(兵庫県北部B山個体群)

 

この先、運よくそれを発見しても

ルリクワガタ自体をまともに見たことがないため

正しい同定ができる自信はありません。

 

まずは「ルリクワガタ」見ておかなければ!

そんな思いから今年の2月に

茨城県産のルリクワガタ2ペアを入手しました。

 

ルリクワガタ  

Platycerus delicatulus delicatulus

分布:本州・四国・九州

体長:♂9.0〜14.3mm ♀8.0~12.3mm

成虫の生態:注目されることが少なく

今でもその生態はほとんど解明されていない。

 

↓ 茨城県産ルリクワガタ(材割採集品)

↓ ↑ ルリクワガタ♂(茨城県産)

 

コルリとの区別は簡単か?

結論からするとメスはわかりやすく、すぐに区別できました。

 

↓ ルリクワガタ ♀

↓左:2頭ルリクワガタ♀  右:2頭:*コルリクワガタ♀

↓小さい3頭が*コルリクワガタ ずんぐりして見える

↓ 腹面黒系がルリクワガタ、褐色が*コルリクワガタ

↓ 深い藍色〜黒系のルリクワガタの♀

 

一方、オスはというと大あごの形状が違うとか

前胸背板形状が違うとかありますが

見慣れない私には思いのほかよく似て見えました。

 

↓ ルリクワガタ ♂

↓  左:ルリクワガタ  右:*コルリクワガタ 

↑ ルリクワガタのほうがお尻にかけてすらりとしている(左)

↓ 前胸背板下方に違いがあるが、個体差もあるらしい

↓ ↑ *コルリクワガタのほうが上翅点刻は粗目に見える(右)

↓ ルリクワガタ ♂ 大あごの発達はコルリより良い感じ

↓ 左:ルリクワガタ 右:*コルリクワガタ 腹面もよく似ている

 

もし、野外活動中のルリクワガタを採集しても

オスについては見間違えるかもしれません。

 

産卵セット

今回入手した2ペアは軒下で管理し

活動開始するのをうかがっていたところ

3月26日には1♂がケース内を徘徊し始めたため

飼育小屋に移動し、光の当たる窓際に置きました。

 

↓ 窓辺で光を感じてもらう

 

ルリクワガタの産卵セットは初めてなので

なんとなくのイメージで組んでみました。

産卵用の朽ち木は市販のコナラ材を使用しましたが

やや古いく、腐食が進んだものを加水して

立ち枯れ風にセットしてみました。

 

そして、限られ時間の中でルリクワガタの生態観察をはじめました。

 

↓ 2020.3.3.26 1♂が動き始めている  

↓ 飛翔直前 ♂

↓ 3月30日

↕ 交尾確認

 

* 近年の研究では当該地域に分布するコルリクワガタを

  「ニシコルリクワガタ」とする考えがありますが

   ここではコルリクワガタ〇✖山個体群としています。

注)比較に使用したコルリクワガタは

野外個体から得られた飼育第一代目です。

 

参考文献:

 藤田宏,2010,世界のクワガタムシ大図鑑6,むし社.

 岡島秀二・荒谷邦雄 監修,2012.

  日本産コガネムシ上科標準図鑑.
             株式会社学研教育出版.