クワガタ~スズメバチ等の覚書

   Photo & Text by こよみ

PC版テンプレート画像は
朽木屑を運ぶオレゴンルリクワガタ♂

オオクワガタ・6-東北の遺伝子資源

2023-10-14 20:59:36 | オオクワガタ

今年の夏に東北で採集したオオクワガタ(メス)の割り出しを行いました。

ライトに飛来して落下するまでを神戸のKさんが見届けた個体の子供です。

↓ 母虫採集記事

 

ライトトラップ・27-東北でオオクワとヨコヤマとルリボシ - クワガタ~スズメバチ等の覚書き

神戸のKさんに東北2県を案内していただきカマキリ名人Kさんと3人でライトトラップをしてきました。1県目は標高190mほどの山中日時:2023年7月23日20:00〜天候:晴れ気温:...

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↓ 2023年7月24日20:43 母虫飛来

産卵セットは、東北から帰宅翌日に組みました。

セットから2ヶ月以上過ぎて容器内に白い菌が蔓延しています。

「これ大丈夫か?」不安がよぎります。

↓ 白い菌がはびこる産卵セット

↓ 樹皮を剥がすと

浮いた樹皮を剥がすと産卵木の穴から動く母虫が確認できました。

白い菌の発生は、容器内湿度が高まりすぎたせいかもしれません。

↓ 母虫の姿も見えた

いよいよ割り出しです。

やや水分多めの材から食痕が見えました。2齢幼虫です。

↓ こちらは2齢に加齢中

割り出し結果は、二つの材から初〜2齢幼虫合わせて11頭出てきました。

野生のオオクワガタから採れた幼虫として、多いのか少ないのかわかりませんが

東北の遺伝子資源がここにあります。

飼育するのにちょうどよい数、母虫も元気でよかったです。

↓ 東北の貴重な遺伝子資源

↓ 床下で冬を迎える


オオクワガタ・5-誰でも特大を出せるか?の結果

2023-01-07 22:22:37 | オオクワガタ

前記事「オオクワガタ・4-誰でも特大を出せるか?」の後編、結果になります。

今やブランドと化した巨大オオクワガタの二つの血統を掛け合わせ

「オオクワガタ・4-誰でも特大を出せるか?」と題して始めた飼育は

順調に採卵でき、菌床飼育で羽化を終えました。

*ここでいう特大とは体長85㎜前後です

↓ 前記事

 

オオクワガタ・4-誰でも特大を出せるか? - クワガタ~スズメバチ等の覚書き

オオクワガタは年々飼育最大サイズが更新され今では91㎜を超えるようになりました。種としての大きさを遥かに超えた巨大品種(?)はこの先緩やかにあと少しその記録を更新...

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↓ 左:野生の大型60㎜後半 右:種オス86㎜台 

 

親虫:オス 能勢YG血統86㎜台 × メス 久留米産55㎜台

管理温度:冬季〜夏季温度=約15〜26度

使用した幼虫の餌:ヒラタケ菌床800cc及び1500cc

↓ 2021年4・5月 割り出し 

 

使用した菌床は、A・B・Cの3種ですが、そのうちAとBの中味が同じらしく

事実上「A(B)菌床」と「C菌床」の2種を使用したことになります。

最初の餌交換時に大きかった個体はすべて「C菌床」からでした。

「C菌床」とは、逆さ向けるやつです。

↓ ヒラタケ800cc オスの2本目以降は1500cc

↓ 2022年2月23日 オス

↓ 2022年4月10日 撮影

 

結果

種としての本来の大きさを遥かに超えた親虫から得られた成虫は

羽化不全が異常に多く、大型ほど不安定でぎこちないものでした。

それらは、劣悪な環境下で羽化したわけではありません。

中にはまともに羽化していれば80㎜を超えたと思える個体もいましたが

羽化後死亡したり、不全がひどく計測が困難な個体は記録の対象から外しました。

飼育頭数:全32頭

オスの体長:最大78㎜程度・最少70㎜程度

メスの体長:最大54㎜程度

 

↓ 大型個体のほとんどが羽化不全(羽化までの期間約11ヶ月〜15ヶ月)

↓ まともに羽化した最大個体は78㎜程度

↓ 最小個体(小さい個体は早期羽化できれい)

↕ 計測可能な最大個体(78㎜程度)と最小個体(70㎜程度)

↓ メスの最大は54㎜程度(羽化までの期間約7ヵ月〜10ヵ月・羽化不全無し)

 

オオクワガタ「誰でも特大を出せるか?」と題した1年強の飼育でしたが

結果は、「出せない」でした。

今回の飼育では、異常に多い羽化不全に得体のしれない何かを感じ、不安を覚えたのと

大型血統を用いても私のような一般的な飼育技術・方法では

特大個体を羽化させることは難しいということ。

そして、メスに関しては案外普通に大型が羽化するということでした。

 

期間中は32ボトルが場所をとり、基本に近い菌床交換で思いのほか費用もかかりました。

オオクワガタを3桁とか4桁とか飼育する方は

ものすごい労力と経費とスペースと時間を注がれていること

そして、超大型を羽化させるような方は

それに見合ったセンスと、情熱なしでは成立しないであろうことを実感しました。

以上、これをもって「オオクワガタ・誰でも特大を出せるか?」を終了します。


オオクワガタ・4-誰でも特大を出せるか?

2021-03-27 21:49:13 | オオクワガタ

オオクワガタは年々飼育最大サイズが更新され

今では91㎜を超えるようになりました。

種としての大きさを遥かに超えた巨大品種(?)は

この先緩やかにあと少しその記録を更新するものと想像します。

 

↓ 野生の大型68㎜と、飼育の大型86㎜台

 

私の飼育技術と小屋では縁のないオオクワガタ巨大個体ですが

大型血統を用いれば

特別扱いしなくても親虫に匹敵するような

大きな個体が得られるのか試してみたくなりました。

 

 

入手した親虫は、異なる二つの系統です。

この掛け合わせはあまり聞かないため

賛否あるところかもしれませんが

試みの元親としては申し分ない血統です。

 

↓ 種オス:能勢YG血統86㎜台

↓ ちょっと太めの大アゴ

↕ 左:新潟産野外個体68㎜ 右:能勢YG血統86㎜台

↓ 親メス:久留米産55㎜台

 

飼育条件

親虫  :オス 能勢YG血統86㎜台 × メス 久留米産55㎜台

管理温度:小屋内冬季〜夏季温度=約15〜26度

予定する幼虫の餌:菌床

 

親虫は共に昨年の夏に羽化した個体なので性成熟しているはずです。

まずは、5日ほど同居させ

交尾未確認のまま、産卵セットにメスを投入しました(3月20日)

2021年3月23日現在、メスは材をよく齧っています。

このまま順調にいけば

来年の夏ころには結果は出るものと思いますが

まずは幼虫を採ることから始まります。

目標は、15頭。

 

↓ 産んでるでしょ?

↓ 2021年3月27日

↓ 産んでいることを確認(3月27日)

 

セット1週間で産卵は確認できたためメスを取り出し

用意した新たなセットにメスを移しました。

 

↓ 2度目のセットは立ち枯れ風  当夜には齧り始めた(3.27)

 

今回の試みは最近ある専門店で

野生ではありえない大きさのオオクワガタを見たのがきっかけです。

その迫力に思わず息をのみました。

 

にわか仕立てと、ありきたりな飼育法で

いきなり親に匹敵するような大きな個体(86㎜)を

羽化させられるほど甘くはないと思いますが

スタートは切りました。

 

 


オオクワガタ・3ー1代目の羽化

2020-08-30 00:15:11 | オオクワガタ

*カテゴリー「オオクワガタ」から入ると

飼育過程等が繋がります。

 

2019年7月に東北の山間部で

ライトトラップにて採集されたオオクワガタの

子孫が羽化しました。

累代表記WF1とされるやつです。

 

↓ 親メス 新潟県産野外個体42㎜台

 

メスは野外個体につき交尾済と考えるのが自然ですが

一般に、

昆虫は最後に交尾したオスの遺伝子が多く残るとされるため

大きなオスの遺伝子をと、2週間ほど同居させました。

 

↓ 親オス 新潟県産野外個体66㎜台

⇩ ⇩

 

産卵セットは、昨年の8月中旬に組み

割り出しは同年秋に行いました。

 

↓ 2019年10月10日 ヒラタケ800ccに投入

↓ 2020年1月上旬に餌交換

↓ 餌交換時のオスの体重は最大で19g台

 

羽化

幼虫は初・2齢からヒラタケ菌床800ccに投入し

オスは2本、メスは1本で羽化させました。

*画像では大歯型は内歯が重なって見えますが

 実際は重なっていません。

 

↓ 左:親虫(野外個体) 右3頭がその子供

⇩ ⇩

↓ 頭を下げるので内歯が重なって見えてしまう

⇩ ⇩

⇩ ⇩

⇩ ⇩

⇩ ⇩

↓ 左:親虫 

↓ 最下部:親虫

↓ 飼育1代目メス 3メスの最大 最少は30mm台

↓ 中段で現在後食中

 

あとがき

野外個体からの子供を

年通16~24度くらいの温暖な環境で飼育すると

8~9か月ほどかけて羽化し

雌雄の大きな羽化ズレはありませんでした。

 

東北エリアでも

野生で70㎜に達するオオクワガタは

めったに採れないと聞きますが

飼育では簡単に70mmを超える個体が羽化しました。

そして、並べた個体を見ながら

先人が産み出した菌床飼育のすごさを

改めて実感した一日でした。

 

↓ 飼育1代目の最大は72mm台   

↑ 右端が親虫66mm台

 

 作業終了

 


オオクワガタ・2-割り出し

2019-10-06 23:02:17 | オオクワガタ

今日は、8月に入手した野生のオオクワガタの割り出しと

マルバネ等の世話で半日が過ぎました。

 

↓ 新潟県産野外個体

↓ 8月中旬にセット、材は転がすだけ

 

早速材をどけるとメスと幼虫が出てきました。

幸先の良いスタートです。

 

 

 

↓ 初・2齢合わせて15頭(3頭潰し)

 

今日の割り出しでは卵は出てきませんでした。

時期的にみて成虫はそろそろ休眠に向かう頃で

今後の産卵はあまり期待できないと思います。

 

割り出した材にはまだ食痕が入り込んだ部分もありましたが

芯部付近が硬いためそのまま容器に戻しておきました。

久しぶりのオオクワガタ割り出しは

どこか懐かしく、面白く

不注意で3頭を潰してしまいましたが

材から11頭、マットから4頭の計15頭の幼虫が発見でき

大変満足いく結果となりました。

 

 ↓ クワガタナカセ(野生のダニ)大繁栄!

↑ そろそろ休眠か?

 

じわじわと秋の気配が迫るにつれ

野外に出かける機会は減りますが

これからはヒメオオクワガタ類の割り出しや

マルバネの採卵も控えており

小屋でごそごそする時間が増えます。

 

↓ ぼちぼち出始めた

 

おまけ

割り出し時に小さな幼虫や卵を傷つけづに挟める

「やわらかピンセット」とうのを最近知りました。

あればとても重宝するそうで

購入しようと探しましたが売り切れていたため

代替えにメニコンの「メニホルダー」を買ってみました。

メニホルダーは、コンタクトレンズを傷めずに挟むための

シリコン製ソフトピンセットです。

 

↓ 300円前後(価格に開きあり)

 

実際に使った感想は

指のさじ加減で強弱調整は必要でしたが

挟む圧もさほど強くなく

初齢を傷つけづに挟めたので

今後も役に立つと思いました。

ただ、ものすごく柔らかいわけではないので

頭部や脚部は挟まないほうが無難と感じました。

 

↓ 柔軟性があり,挟み圧もさほど強くない

 


野生のオオクワガタ

2019-08-15 14:51:21 | オオクワガタ

その昔、山で採ったオオクワガタは

疑いもなく野生のオオクワガタとして飼育をしました。

 

↓ 新潟県産野外個体

 

ところが時代は変わり、では野外で発見したオオクワガタは成虫、幼虫問わず

養殖物・人由来の心配をするようになりました。

そして、飼育オオクワガタが80mmを軽く超え始めたころからその人気とは逆行し

私のオオクワガタへの関心は急速に薄れていきました。

 

東北の山間部

 今年の7月に東北の山間部で

ライトトラップに飛来したというオオクワガタのペアがいます。

オスとメス、飛来日時は異なります。

先述のとおり、長らく距離を置いてきたオオクワガタでしたが

灯火に飛来したという場所は養殖物の心配が少ないと考えていた地域であり

心動かされる代物でした。

 

↓ めったにない大型

 

↓ 前胸背板

   

↓ メスも大きめ

 

 

クワガタナカセを見る

このペアが届いたのは8月で、荷物を開封するや否や

「クワガタナカセ」を探しました。

 

 

「クワガタナカセ」というのは野生のクワガタムシに付く野生のダニで

クワガタムシ(宿主)の種ごとに異なる「クワガタナカセ(宿者)」が付きます。

この「クワガタナカセ」は特定の種の宿主の体表で

クワガタムシとともに進化しました。 

例えば、コクワガタには「コクワガタナカセ」が

ヒラタクワガタには「ヒラタクワガタナカセ」が

そして、オオクワガタには「オオクワガタナカセ」が付きます(便宜上のダニ名)

 

↓ *ヒメオオクワガタナカセ

↓ *ヤマトサビクワガタナカセ

 

クワガタナカセは宿主と共生関係にあると考えられており

宿主の体表に付いた菌類や老廃物などを食べ家族で暮らしています。

そして、宿主の体表に口器を差し込み体液を吸汁する性質のものではありません。

 

↓ *宿主転換実験(ヤマトサビクワガタナカセ→ダイトウヒラタへ)

↑ 異なる種には定着しないようだ(他種数パターン検証の結果)

↓ *タランドスオオツヤクワガタナカセ(卵時から付着している共生個体)

 

また、野外において付着の有無はその個体の活動状況や期間

付着した他の個体との接触経験などが関係していると思われますので

必ずしも野外個体=クワガタナカセ付着とういわけではありません。

それではダニの確認、まずオスから

 

↓ 2019年9月2日画像追加

 

なにやら白くうごめくものがいます。

これまでの経験から判断すると

これは粉ダニの類(たぐい)ではなく、クワガタナカセです。

次はメスです。

 

 

メスも体表を入念に探しましたがクワガタナカセの存在は確認できませんでした。

 

↓ メスの体表ではクワガタナカセは見つからない

 

このオオクワガタペアは針葉樹マットに詰められ送られてきました。

採集者宅でも針葉樹が使われていたとするなら

クワガタナカセにとっては厳しい環境だったかもしれません。

幸いオスには大小のクワガタナカセが付着していましたので

そこにクワガタナカセの暮らしがうかがえました。

”クワガタナカセ込みのオオクワガタ”という考えのもと

早々にマットを取り替えました。


↓ 針葉樹マットと野外個体

 

送られてきたペアはしばらく一つのケースに入れ

追い掛けしてからメスは産卵セットに移します。

 

↓ ♂♀ともにすばしっこい

 

 

私は野外でクワガタムシを採集した時ダニの付着を見ます。

そして、衛生的・精神的に有害と感じた時以外は

クワガタナカセの排除はしません。 

*画像追加(アナログ写真複写)8月17日

 

 参考文献:

  江原昭三編著,1990,ダニのはなしⅠ,技法堂出版株式会社.

  江原昭三編著,1990,吉田利夫,ダニのはなしⅡ「昆虫とダニ」,

                   技法堂出版株式会社.

  藤井弘,2006,クワガタムシに付くダニについて(1・2).

                KUWAGATA MAGAZINE(27・28), (有)東海メディア.