風
2008年05月25日 | 風
昨日までのどんよりとした雲がうそのように
どこまでも澄みきった青空がひろがっている
今日は
僕にとって中学校に入学して初めての運動会
「よ~い!」「バン!」
種目は「かりもの競走」
走っていくと途中に白いカードが置いてあり
そこに書いてある指示に従ってゴールを目指していくというもの
目の前にあるカードを素直に手にすればいいのだろうが
ちょっとひねくれた者がいたりすると
遠いところのカードを取りに行かなくてはならない
僕は決して足が速いわけではないので
力を抜いて走ることなどできない
それでも本気を出していないであろう級友たちの背中をみて走ることになる
案の定、目の前のコースにはカードがなく
左端のカードを手にすることになる
残されたカードには「白組の一年の女子」という指示があった
僕は紅組だし、違う陣地に行かなくては‥
陣地はコースの脇になだらかな土手のところにある
「誰か知っている人はいないかな‥」
白組の陣地の一番前の席に見覚えのある女の子がいた
小学校の時の同級生だった子だ
この中学校はふたつの小学校の卒業生で構成されている
「助かった‥」
そう思ったものの
その子の手をつかもうとすると
「いゃ~!」
拒否された!ショックだった!
別に煮て食おうというわけでもないのに‥
僕のことが嫌いなのか、単に照れくさいだけなのかはわからない
今はそんなことを考えている余裕はない
え~と、他に知っている子は‥
近くにはいない
もう、誰でもいいや‥
隣にすわっている女子生徒に
「おねがい‥」と手をさしだした
予想に反して、その子は応えてくれた
よかった!
僕は彼女の手を握り走り出した
他の級友たちはまだコースにもどっていない
徒競争はもちろん、他の種目でも1位でゴールできるなんてことは考えられないことだ
僕は必死だった
彼女も必死に走ってくれた
テープを切れるなんて‥
夢のような気持でゴールに跳びこむことができた
僕の手に【1】と表示された旗を係りの人がわたしてくれた
「やった!」
僕にとっては晴れがましい初めての出来事だった
「あの‥もう戻っていいですか」
「あっ!あ、そうですね‥」
すっかり彼女のことは忘れていた
手にした1位は彼女のお陰だったのに
気の利いた言葉もでてこなかった
陣地に戻っていく彼女の後姿‥
小柄ですてきな人だった‥
今は名前も知らないけど‥
これからの中学校生活は何か楽しいことが起こりそうな気がした
初夏の心地よい風が吹いていた