貧乏石好き

つれづれなるままに石をめぐりてよしなきことを

シアノトリカイト および銅の二次鉱物

2022-01-29 19:42:46 | ややレア



これはシアノトリカブトという恐ろしい毒物(こらこら)
やり直し。これはシアノトリカイトという銅の二次鉱物。シアノは「青い」の意味で、青酸=シアンとは関係ありません。トリカイトは毛髪の意味。青髪石ですな。棘のような結晶になるからで、和名は青針銅鉱。こちらのほうが的確・正確。Cu4Al2SO4(OH)12・2H2O。
表面はなくなってしまっているけれど、隙間によく見るとものすごく細かいとげとげの結晶がある。ルーペサイズというやつですな。老眼にはきつい。
わりかしレアな鉱物で、夕星庵さんという石屋さんから。


チンクエチェントのフレスコの色。などとすかして言ってみる。チンクエチェントは15世紀の意味のイタリア語。初期ルネッサンスの美の新生時代を指す。フレスコは石膏に色づけした壁画。フレスコは運べないので現地で見るしかない。日本にいると馴染みがないのですけど、まあすごいジャンルです。ジオット、フラ・アンジェリコなどの名作がごろごろ。石膏に顔料を染ませたものなので、色が鮮やかで軽やか。
シアノトリカイトの明るい青は、それを思わせる。棘状結晶でキラキラの反射がないせいもあるか。フラ・アンジェリコの色、とあちきは勝手にイメージしてます。


銅というのは、ものすごくたくさんの鉱物を造るようで。
マグマから直接生まれる初生(一次)銅鉱物は、
自然銅Cu、黄銅鉱CuFeS2、斑銅鉱Cu5FeS4、輝銅鉱Cu2S、キューバ鉱CuFe2S3、安四面銅鉱(Cu,Fe,Zn)12Sb4S13、砒四面銅鉱(Cu,Fe,Zn)12As4S13、硫砒銅鉱Cu3AsS4、ルゾン銅鉱Cu3AsS4、ファマチナ鉱Cu3SbS4など。コピペしただけ、英語名はめんどいので省略。ただし自然銅、斑銅鉱、輝銅鉱は二次もある。

これに対して、銅鉱床から熱水などの影響によって新たに造られる二次鉱物は、

アズライト 藍銅鉱 Cu3(CO3)2(OH)2
マラカイト 孔雀石 Cu2(CO3)(OH)2
クリソコラ 珪孔雀石 (Cu,Al)2H2Si2O5(OH)4・nH2O
シャタッカイト シャタック石 Cu5[(OH)Si2O4]2
キュプライト 赤銅鉱 Cu2O
カルコパイライト 黄銅鉱 CuFeS2
ブロシャンタイト ブロシャン銅鉱 Cu4(SO4)(OH)6
ダイオプテーズ 翠銅鉱  CuSiO3・H2O
オーリカルサイト 水亜鉛銅鉱 (Zn,Cu)5(CO3)2(OH)6
カルカンサイト 胆礬 CuSO4・5H2O
シアノトリカイト 青針銅鉱 Cu4Al2SO4(OH)12・2H2O
アタカマイト アタカマ石 Cu2(OH)3Cl
テノライト 黒銅鉱 CuO
コベリン 銅藍 CuS
リナライト 青鉛鉱 PbCu(SO4)(OH)2
デヴィリン デビル石 CaCu4(SO4)2(OH)6・3H2O

などなど。美しい石が多くて、コレクターが涎を垂らす。アズライト、マラカイト、クリソコラ、シャタッカイトなどの有名「美石」はみな二次鉱物なのですね。

大地の大元である岩石から、新たな造山活動(地殻変動や火山活動)によって、鉱物の粋たる美石が生まれる。そう考えると実に面白いことではないでしょうか。
小麦を粉にして、そこからうどんやそうめんやスパゲッティができるような(もう食べ物の比喩はよしなさい)
誰か料理人がいるのではないか。(……)

けど二次鉱物というのは、実は曖昧な概念で、火成岩や堆積岩が熱水によって溶かされ、改めて結晶生成が行なわれれば二次鉱物ということになるとすると、石好きの愛する結晶鉱物は大概が二次鉱物ということになる。のではないか。
マグマが固まって形成される鉱物だけが初生、つまり一次鉱物だというのなら、観賞用鉱物標本にはあまり多くないということになりませんかね。だからどうということではないけれど。
また、ペグマタイト上部の熱水洞にできる鉱物は、一次なのか二次なのか、よくわからない。
湖水の蒸発・沈殿でできる石は、二次?

一般的に緑青(ろくしょう)と呼ばれる銅の錆も、言ってみれば二次鉱物ですわな。
緑青の内実は様々で、通常空気中ではキュプライトやブロシャンタイトが、海の近くではアタカマイトが、硬水の地下水と反応するとマラカイトが、さらに炭酸濃度が高い場所ではアズライトが生成する、とのこと。は? 海の近くに銅板を放っておけばアタカマ石ができるのかな。(できません)
錆とは違うけど、胆礬なんていうのは、銅鉱山坑道の天井に滴る水からできるらしい。石と言えるのかどうか。もっとも鍾乳石も石ですわな。けど鍾乳石はできるのにものすごく時間が掛かるけど、胆礬はごくわずかな時間でできるらしい。美しいけど、水に溶けるし、変なやつ。

ダイオプテーズというのも美しい緑の石。だけどダイオプサイド(透輝石)とまぎらわしい。クロムダイオプサイドだと緑色だからなおさら。
これはまあミニ標本。銅のスカルン鉱床中にできることが多いとのこと。

少し色が暗いかな。高級品だとすごく明るい鮮やかなものもあるようだけど、まあ好きずきで。あちきはこういう渋いの、けっこう好きです。

ブロシャンダイトとかオーリチャルサイトとかアタカマイトとかリナライトとか、きれいで欲しいなとは思うのですけど、なかなか高いし。銅の二次鉱物を集めてやろうかなどと思ったこともあるのですけど、財力も気力も続かないのでやめました。実に中途半端なコレクターです、はい。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿