貧乏石好き

つれづれなるままに石をめぐりてよしなきことを

ダイオプサイド:輝石のわちゃわちゃ

2022-10-30 14:28:30 | 単品

これほんとにダイオプテーズと混同しやすい。どちらもクロムを含むと緑になるし。しょっちゅう間違える。
和名だと透輝石と翆銅鉱で全然違ってわかりやすい。こういうところ、漢字というのは便利ですね。(いつも和名に悪態ついているくせにw)

ダイオプサイドは前にオレンジカルサイトとの共生標本を買ったのだけど、結晶が小さくて欲求不満だった。



で、エヌズさんの25%オフで新たに。
これは石墨付着があるけど、単結晶で23ミリと立派。

色は薄いけれど、透き通って美しい。石墨が方向によって銀に輝いたりするのもいい。
単にスカッと透き通っているのではなく、内側に微細なわちゃわちゃがあって、それが独特の輝きを作っている。

そのわちゃわちゃが結晶の稜線にギザギザ模様を描いている。

紫外線でオレンジに蛍光する。クンツァイト・ヒデナイトと同じ。


(埃をちゃんと取ってから写しなさいなw)

     *     *     *

ちなみに、こちらは既出だけど、クロムトレモライト。

透閃石。Ca2(Mg,Fe)5Si8O22(OH)2。角閃石グループに属する。
輝石と角閃石は、ともに与党繊維派(イノケイ酸塩鉱物)。繊維派はこの2つの巨大グループがぶつかり合う戦場。角閃石集団はアスベスト(石綿)という凶暴集団も擁して危険。(おいおい)
ダイオプサイドを買ったのは、同じ繊維派の透閃石と見比べてみたかったという思いもあったのですね。
で、微細に見てみると、まあ素人目ですけど、トレモライトは繊維派らしく筋々の構造が窺えるけど、スカッとしている。それに対してダイオプサイドはわちゃわちゃしている。個体差もあるでしょうけど。

こちらのダイオプサイドのルースは、HUNZAさんでお安く売っていた物。色が濃いわりに表情が少なくて面白みがないと思っていたけれど、内部を覗くとけっこうわちゃわちゃ。

ほかの輝石はどうか。
まずはエンスタタイト(頑火輝石)

これ、普通は赤っぽい渋い色なのですけど、透過光だと方向変色も起こして実に不思議な色を見せる。中のわちゃわちゃした感じも窺える。

それからクンツァイト(スポデューメン、リチア輝石)。

割合すっきりしているけれど、微妙に複雑な構造が見えるようでもある。

これはヒデナイト。まあクンツァイトと同じだけど。




本翡翠(ジェイダイト、翡翠輝石)もそうですけど、どうも、輝石は繊維派といえども内部構造が結構複雑なような。一方、角閃石は、タイガーアイなんかに見られるようにスカッとしている。
そんな違いがあるように思えるのです。

輝石というのは基礎的な鉱物なのに、魅力的なものが多いですねえ。

     *     *     *

おまけ。主な輝石のリスト。

◆Mg-Fe輝石
エンスタタイト(頑火輝石) Mg2Si2O6 (ブロンザイト、ハイパースシーン)
◆Ca輝石
ダイオプサイド(透輝石) CaMgSi2O6
ヘデンバージャイト(灰鉄輝石) CaFe2+Si2O6
オージャイト(普通輝石) (Ca,Mg,Fe)2Si2O6
◆Ca-Na輝石
オンファサイト(オンファス輝石) (Ca,Na)(Mg,Fe,Al)Si2O6
◆Na輝石
ジェイダイト(翡翠輝石) NaAlSi2O6
エジリン(錐輝石) NaFeSi2O6
コスモクロア(コスモクロア輝石) NaCrSi2O6 (モーシッシの主成分)
◆Li輝石
スポデューメン(リチア輝石) LiAlSi2O6 (クンツァイト、ヒデナイト、トリフェーン)
◇準輝石
ロードナイト(薔薇輝石) CaMn3Mn2(Si5O15)
パイロクスマンジャイト(パイロクスマンガン石) MnSiO3/(Mn,Fe)7Si7O21
ウォラストナイト(珪灰石) CaSiO3


コキンバイト

2022-10-28 20:29:03 | ややレア

コキンバイト Coquimbite、コキンボ石。
AlFe3(SO4)6(H2O)12・6H2O
以前はFe2-xAlx(SO4)3・9H2O(x~0.5)、またはFe2(SO4)3・9H2Oとされてきたが、2019年にIMAによって再定義。Alは必須。(mindatより)
1841年にアウグスト・ブライトハウプトによって発見、原産地チリのコキンボ州から命名。
コキンバイトはグループ名でもあり、以下のサブタイプを含む。
 アルミノコキンバイト Al2Fe2(SO4)6(H2O)12・6H2O
 パラコキンバイト Fe4(SO4)6(H2O)12・6H2O(同形)
色は多様。世界各地で産出するが、近年採掘されているペルー産は美しい菫色を呈する。
冷水および冷鉱酸に可溶。極度に乾燥した空気中では白色粉末として風解する。

(なんか今回はやけに学術的っぽく始まったねw)

     *     *     *

金欠なので石禁していたのですけど、エヌズミネラルさんが25%オフのセールをしていたので、誘惑に負けて。(またかよ)
前々から美しそうなので欲しいと思っていたのですけど、何せ「水に溶ける」「極度乾燥で風解する」といったフラジャイルさなので、ずぼらなあちきでは溶かしてしまうだろうなあと思っていました。硬度も2と低いし。
ところが過日、ツイッターで買った人のツイートを見た。「溶けませんか?」と聞いてみると「乾燥剤を同封しているので今のところ大丈夫」とのご教示。ううむ、チャレンジしてみようか、と思い、25%オフに乗じて購入。
まあ、湿潤な日本ですし、ずぼらな持ち主なので、何年かしたら溶けるかもしれない。けど、こっちの寿命だってどうなるかはわからない。いや、この世界だっていつまで持つかわからない。(おい) なるようになれ、と。







ぱっと見は少し白っぽい。けど光を当てると、あるいはクローズアップだと、とても美しい菫色。小さい結晶がきらきらして表情も豊か。
溶ける云々を気にせず買ってよかった。この美が体験できるなら、将来溶けようが構わない。万物は流転す。生あるうちに味わえるものは味わうのだ。(大げさなw)

白色はMineralstreetさんの情報を参考にすればアルノーゲン(Alunogen Al2(SO4)3・17H2O)かもしれない。

     *     *     *

しかし「水で溶ける石」なんてあるのかよ、と初めの頃はびっくりしましたねえ。
有名なのは胆礬(たんばん、カルカンサイト、Chalcanthite)で、これもCuSO4・5H2Oと硫酸塩。硫酸塩だから溶けるのかというと、そうでもない。バーライト、セレスタインなど、溶けないものはたくさんある。
ところでこれ、普通に発音表記すると「キャルキャンサイト」が正しいみたい。Chalcopyriteもほんとはキャルコパイライトらしい。あちきはずっとチャルコと書いてきた。直さなきゃいかんね。英語は表記と発音が違うことがよくある結構厄介な言語ですな。
「水で溶ける石」で一番身近なのは食塩でしょうね。NaCl。あれも鉱物。毎日食っている。「塩はいいものだ。だが塩が塩気を失ったら何をもってこれを味つけよう」。塩がなければすべての料理はだめになる。けれど塩だけでは食えない。世に塩は必要だが、世の人がすべて塩になることはない。神の国の使徒とはそういうものだ。(何を言っているんだ?)

水で溶ける石が採れるということは、そこは水に浸されない場所。そんなところがあるものですかね。土の中だって水は浸み入るだろうに。
けど、コキンバイト自体は含水鉱物。なんか変ですねえ。

で、この石、単純に言えば、アルミ含有の硫酸鉄。
化学物質としての硫酸鉄には硫酸鉄(II)(FeSO4・7H2O)や硫酸鉄(III)(Fe2(SO4)3・5H2O)があるけど、鉱物になると、やたら複雑な構造のものになるみたい。mindatの結晶構造の説明を機械翻訳するとわけわかめでおもろい。
《すべて八面体配位を持つ3つの金属サイトは、等価ではありません。M(1)サイトは、通常Alによって完全に占められており、水によって配位され、M(2)は硫酸基のみによって配位されます。一方、M(3)は、硫酸基の3つの酸素と水分子に属する3つの酸素によって囲まれています。M(2)とM(3)サイトはFeによって支配されます。M(2)M(3)2(SO4)6(H2O)6個のクラスターがあります。これらのクラスターの形成に関与する硫酸基はコーナー共有です。追加の6つの水基は、水素結合のみで保持されます。水素結合を介したFe3(SO4)6(H2O)6クラスターの相互作用により、[001]に沿って不連続なジグザグ鎖が生じます。これらの鎖と孤立したAl(H2O)6八面体は、格子間水を含むケージを生成します。興味深い構造的特徴は、これらの水分子のシクロヘキサンのようないす形配座であり、アルミノコキンバイトでも観察されます。》
はは。図を見るともっとすごい。

こうやってみると、鉱物というのはすごいものですねえ。こんなに複雑な結晶構造を持っている。単なるアルミ混じり硫酸鉄じゃあない。こんなん、人間じゃ作れないでしょう。神秘神秘。
しかし結晶学はあちきには無理ぽ。


休憩

2022-10-16 23:49:49 | 漫筆

またちょっと旱魃なので少しお休みすることになると思います。一週間くらいしたら、かつ生きていたら、また始めるつもりです。そしたらよろしくお願いします<m(__)m>
文字だけじゃつまらんから、ユークレースの青でもあしらって。


鉱物の国・勢力図① 4つの種族

2022-10-16 18:24:36 | 鉱物分類

*前に書いた「貧石流鉱物分類」があまりにもぐだぐだだったので再整理。

鉱物の分類というのは、ややこしい。
鉱物というのは、元素鉱物(金・銀など)を除いて、「プラスイオン」(カチオン、主に金属類)と「マイナスイオン」(アニオン、××酸など)の合体(錯体、塩[えん])である。
で、鉱物分類は「アニオン」の種類によって決めている。ケイ酸塩鉱物とか炭酸塩鉱物とかハロゲン化鉱物とか。
ちなみに結晶系による分類は鉱物学では重要なのだろうけど、素人にはあまり役に立たない。晶系と実際の結晶の形なんて違うことが多いし。

で、名前ばっかりを羅列しても、全体像がわからなくて、うまく捉えられない。覚えられない。そこで、全体見取り図というか、大ざっぱな構図を作る。そして覚えやすい名前を付ける。そうするとイメージ的にとらえやすくなる。そして「ああ、あのグループか」とわかると性質特徴などもはっきりすることが多い。まあ一種のお遊びですけど。

鉱物の勢力は、4つ。4つしかない。

1.王族――元素鉱物
2.貴族――石英
3.与党――ケイ酸塩鉱物
4.野党――非ケイ酸塩鉱物


1の王族は、元素のみでできている鉱物。純粋種ですな。多くはない。
  金、銀、銅、硫黄、炭素(ダイヤモンド、石墨)、水銀くらい。

2の貴族は、シリカ(SiO2)だけでできている。通常これは「酸化鉱物」に分類されるけれど、やっぱ別物でしょう。で、この中は「御三家」に分かれる。
  2-1 結晶質   水晶
  2-2 微細結晶質 カルセドニー(玉髄。アゲート、ジャスパーなどを含む)
  2-3 非晶質   オパール(これはちょっと異色。実は「鉱物」ではない)

3のケイ酸塩鉱物は、ものすごく数が多い与党。ただし一枚岩ではなく、ケイ酸の結合型によって六派に分かれる。「与党六派」。
  3-1 単独派(ネソ) ペリドット、トパーズ、ガーネットなど。
  3-2 双結派(ソロ) ゾイサイト、エピドートなど。
  3-3 繊維派(イノ) 角閃石、輝石など。
  3-4 平面派(フィロ) 雲母、滑石など。
  3-5 六環派(サイクロ) ベリル、トルマリンなど。
  3-6 立体派(テクト) 長石、沸石など。
単独派はリン酸が単独、双結は2個結合、繊維は鎖状結合、平面は板状結合、六環は6つ環状結合、立体は立体的複雑結合。煩瑣だけどこれは結構鉱物の特色を形作っている。詳細は別項で。

4の非ケイ酸塩鉱物には、2派ある。
  4-1 穏健派 酸素酸塩鉱物(××酸塩というもの。
  4-2 急進派 酸化・水酸化・ハロゲン化・硫化
これも詳細は別項。

改めて並べると

1.王族(元素)
2.貴族(石英)    御三家
3.与党(ケイ酸塩)  六派
4.野党(非ケイ酸塩) 穏健派・急進派

これでOK。実にわかりやすいではないですか。ミソは、石英を酸化鉱物とは別にしたところと、非ケイ酸塩鉱物を二派にしたところ、ケイ酸塩の結合形を和訳したところ。

世に大手を振っているのは貴族と与党。水晶・玉髄・オパールはそれらだけで市場の過半数を占めるのではないかとさえ思える。ケイ酸塩鉱物は全鉱物の8割くらいを占めるらしい。圧倒的安定政権ですな。
しかし野党にもフローライトやカルサイト、コランダムなど大集団がいる。急進派はなかなか個性ある面々。

石好きは一つ一つの鉱物の美しさを鑑賞していればいいのだけど、それがどんな派閥に属するかを知っておくと、また別の味わい方ができるのではないでしょうか。


鉱物の国・勢力図② 与党六派(ケイ酸塩鉱物)

2022-10-16 18:18:40 | 鉱物分類

与党ケイ酸塩鉱物の六派は、ネソだのイノだの言われると訳わからん。こういう意訳を付けるとわかりやすい。派閥の違い、つまりケイ酸結合の違いは、案外その鉱物の特色を決定している。
(以下は有名な鉱物のみ。)

◆単独派(ネソ)
ペリドット (Mg,Fe)2SiO4
トパーズ Al2SiO4(F,OH)2
ガーネット X3Y2(SiO4)3
カイヤナイト Al2SiO5(アンダル―サイト、シリマナイトは異形)
ジルコン ZrSiO4
スフェーン(チタナイト) CaTiSiO5
ウィレマイト Zn2SiO4
フェナカイト Be2SiO4
ユークレース BeAlSiO4(OH)
ペリドット(オリヴィン、橄欖石)は、マントルの基本構成物質。ペリドットもトパーズもガーネットもジルコンも非常にベーシックな鉱物で、単独派の特徴はそのあたりにあるらしい。カイヤナイトはちょっと繊維派っぽいけど。フェナカイトやユークレースがここに属するのも意外。

◆双結派(ソロ)
双結なんて言葉はないけど、ほかに言いようがないから仕方ない。
ここにはエピドート・グループという大集団があって、ゾイサイト(灰簾石、Ca2AlAl2(Si2O7)(SiO4)O(OH))とエピドート(緑簾石、Ca2Fe3+Al2(SiO7)(SiO4)O(OH))たちがいる。タンザナイト、チューライトはゾイサイトの異種。
アキシナイト(斧石) Ca2(Mn,Fe)Al2BO3[Si4O12]OH
ヘミモルファイト(異極鉱)Zn4SiO7(OH)2・H2O
エピドート・グループやアキシナイトもベーシックな鉱物。しかしこれ全部含水鉱物ですな。水によって変成したものということか。

◆繊維派(イノ)
ここには
輝石グループ
角閃石グループ
という大集団がいる。ともに基礎的な造岩鉱物。名前を挙げるだけで膨大になるので省略。人気の石も多い。繊維派というだけあって、角閃石の中にはいわゆる「石綿」に属する鉱物もある。
ほかにチャロアイト、ラリマー(ペクトライト)、アストロフィライトといった異色存在もいる。3つとも繊維っぽい。

◆平面派(フィロ)
なにせ平面派なので、雲母という巨大グループがいる。
ほかにクローライト、サーペンティン、アポフィライト、クリソコラ、タルクなど。クローライトとサーペンティンは基礎的な造岩鉱物。アポフィライトは少し平面派の表情があるけれど、ほかはうーむ。クローライトなんか水晶の中に入るとトゲトゲの結晶を見せたりするぜ?

◆六環派(サイクロ/シクロ)
ケイ酸が6個、輪というか六角形というかで結合している。不思議ですな。
ベリル Be3Al2Si6O18(エメラルド、アクアマリン、モルガナイトなど)
トルマリン  主にX+Y+(BO3)3Si6O18(OH)4
アイオライト Mg2Al3(AlSi5O18)
ダイオプテーズ CuSiO3・H2O
ベニトアイト BaTiSi3O9
スギライト K(Na,□)2Li3(Fe,Mn,Al,Zr)2Si12O30
六環派は少数派だけど魅力的な石が多い。トルマリンは硼酸も水酸基も入っていて多様で複雑怪奇でちょっと異分子。こやつは与党に含めていいのだろうか。(そういうやつもたまにいるね)

◆立体派(テクト)
ケイ酸が網目状・立体的に結合したもの。複雑。ここには超巨大グループが2つ。
長石グループおよび準長石グループ(ソーダライト・グループ)
沸石グループ
あまりに巨大で面倒なので省略。
スキャポライト(グループ)、ダンビュライトなどもいる。

こうやってみると、案外派閥なりの色合いが見えてくるような感じがする……しませんか?
単独派・双結派はベーシックな感じ。繊維派もベーシック鉱物だけど独特の繊維っぽい感じが異色。六環派は個性派ぞろい。立体派は超複雑。
まあ「ええ? お前そこなの?」という鉱物も多いけど。