貧乏石好き

つれづれなるままに石をめぐりてよしなきことを

食ったらうまそうな石

2022-11-27 08:34:36 | 漫筆

んなものがあるわけがない。
あるわけがないが、人間の味覚とか毒性とかいうことをとっ外して、石を喰らう生物というか存在があるとしたら、どんなものがうまいと感じるだろう。(どういう……)

フローライトなんぞは、希土類が入って味は面白いけど、軽すぎてつまらんと言うかもしれない。スナックですかね。カルサイトなんかも。
アメジストは鉄風味が効いてとろーりとして美味か。
デヴィリン・セレナイトなんかは砂糖菓子みたいで楽しいか。



そう思いつつ、コレクションケースを眺めてみる。石たちが心なしか脅えているように見える。だいじょぶ、俺は食わないよ。(そんなこと言わず食べてみたらどうだ?)

そうねえ……
マンガン系は案外いいかも。
ロードナイトやロードクロサイトが他の鉱物と混じったものは、ずっしりとして、甘みもあって、食べでがありそう。マンガン斧石なんかも、ちょと風変わりで涼しげな香り。
スペサルティンやモルガナイトなんかはジュースっぽい。
銅の二次鉱物なんかもいいかもしれない。いろいろメニューはあるし。
ラルビカイトのような深成岩はどっしりして栄養ありそう。シャーレンブレンデは赤身肉の塊みたいなものか。もたれそう。
水晶はお米みたいなもんだね。モリオンは黒米。シトリンは餅米。インクルージョンものは混ぜご飯。アゲートはお粥か。具や味付けが大事。オパールはお餅。
ダイヤモンドは論外。ありゃ食いもんじゃない。
やっぱり至高の珍味はルビーかな。イクラじゃ。イクラしばらく食ってないな。
(……)
うん、石狂いが高じて少し頭がおかしくなっていることは認める。
(書くネタがなくなってるんだろw)
うん。


ピンク・タンザナイト

2022-11-25 10:04:13 | ややレア

タンザナイト。人気の石ですねえ。
鉱物としてはゾイサイト(灰簾石)だけど、タンザニア・メレラニヒルで出る青く透き通ったものをティファニーがこう命名して大々的に売り出した。ただし加熱して青くしたものも多い。青は含まれるバナジウムのせいだとされている。ちなみにゾイサイトで赤いのはチューライト。こちらはマンガン含有。というのが基礎的なお話。

石集めを始めた頃、「やっぱ欲しいよね」といろいろ探った。なんか大資本の術中にはまったみたいで気分はよくなかったけど、青い石は好きだし。
美しいものは当然高い。で、取り敢えずは手の届くところからと、お安いタンブルを買った。

透明度はあまりない。でも青の色がきれいだからこれでいいか、と。強い光だとけっこう鮮やか。



ところがその後、クリスタルワールド五反田店さんでなんと5個で800円の原石があった。



非加熱。透明度は低いけど強い光を透過させると実に美しい青が出る。ちなみに2個は行方不明。近所の子にあげたらしい。(きれいじゃないやつをあげたんじゃないの?)
さらに別の日、やはり五反田さんで800円の透明度が高い原石があった。



ちょっと蝕像っぽい繊細な結晶複合。明るい鮮やかな青が美しい。これで800円ですぜ。クリワさんは時々有名な石をとんでもない破格値で売ってくれる。ボレオアイトとかグランディディエライトとか。ありがたい。
もうこれで十分。似たような色の石はアイオライトがある。そっちの方が方向変色がダイナミックだったりして面白い。安いし。(それが一番のポイントだろ?)

     *     *     *

そのうち、ピンク・タンザナイトというのがあることを知った。
「はあ? タンザナイトをピンクに光らせて何が面白い」と思った。(光らせたわけではないだろうよ) レア価値はあるのかもしれないけど、やっぱタンザナイトは深い青でしょう、と。
ところが先日、ハッピーギフトさんのサイトを見ていたら、やけに美しいピンク・タンザナイトがあった。小さいけど結晶の姿が端麗で、「照り」もよさそうで、条線も美しい。根元に小さな青の部分があって「バイカラー」になっている。
妙に心が惹かれて、お値段も手ごろだったのでポチッた。
で、来てみたら、これがすごいんですねえ。
サイトの写真では根元の一部以外はピンク一色だったのだけど、実は方向変色、「カラーチェンジ」するのです。ごく微弱だけど紫、緑、青、黄が揺れる。コーネルピンにも匹敵する、とまでは言えないけど、なかなかの多彩さ。写真だとほとんど写らないのですけど。







動画はこちら

タンザナイトも方向変色はあるようで、ツイッターでけっこうすごいのを見たことがある。けれど、深い青のものは、あんまり変化が見られない。地が薄いピンクだから、結晶の方位による偏光が浮き出るのか。
いやあ、びっくり。意外なところで好みの石ができました。ピンクなんて邪道だと思っていたことを反省。いい石です。

     *     *     *

と、ここですっきりと終わらない。ぐだぐだ余計なことを書くのが癖です。(まあこのブログ自体がね……)
どうも、このゾイサイトというやつ、わけがわからん。(またかよ)
組成は Ca2Al3(SiO4)(Si2O7)O(OH)。素材は平凡だけど複雑で、含水鉱物。双結派(ソロ)でエピドート(緑簾石)と同派。元は同グループとされたとか。
変成岩の結晶片岩やエクロジャイトの中に見られる、と言われる。やっぱ加水変成、つまり水煮ですかな。(また出たよ)
けれど、繊細な、あるいは整った結晶が、晶洞ではなく岩石中に出来るのですかね。わからん。

タンザナイトはしばしば加熱によって美しい透明な青になる。これ不思議。熱で結晶構造が整うということらしいけど、変成の過程だって結構熱はあるはず。それでも生焼けの部分というのがあるのか。(生焼け?)

ちなみに1個800円の結晶複合のものは、蛍光する。

タンザナイトって蛍光するんですか? まあ同じ系統の色なので特筆するまでもないけど。

ルビー・イン・ゾイサイトというのもある。けっこういろいろな所で見るけど、これも奇妙。

なんで加水変成岩の中にルビーがちりばめられるのか。ルビーって高温高圧でできるのではなかったですかね。元の岩石の中で生成して、変成する時に分解されずに、氷小豆アイスの小豆のように散らばったのか。(どうして表現がそっちに行く?)

なんか鵺っぽい石ですね。うむむ。(これで終わるのかよ)


セラフィナイト

2022-11-20 10:30:31 | 単品

サーペンティンのところでスティヒタイトの話が出て、そのついでにクリノクロアの話が出たので、ついでに。つか、クリノクロアって何だったっけ→ああセラフィナイトがそれかあ、となったので、セラフィナイト。(なんかだらしない連想だな)
まあ、だんだんネタがなくなってきたのもあるし。
だいぶ前にセルフさんで買った18ミリの丸玉。




セラフィナイトはクローライト(緑泥石)の一種クリノクロアの商品名。もっぱらロシア産で、天使の羽根のような模様があるから。
クリノクロアは (Mg,Fe)5Al(Si3Al)O10(OH)8。玄武岩が低温変成してできた緑色片岩の主要鉱物。
だいたいこんな感じかな。
  マントルのマグマ=橄欖岩 → 玄武岩 →緑色片岩
               → 蛇紋岩
蛇紋岩が「橄欖岩の水煮」だとすると緑色片岩は「玄武岩の水煮、ただし低温調理」かね。(……水煮ねえ)
石はどうやってできるか」で書きましたけど、やっぱ水が多くの鉱物を造っているんですよねえ。この問題、奥が深そう。

セラフィム(複数形)はユダヤ教・キリスト教の熾天使=最高位天使。けど、どうもメソポタミア神話の混入らしい。正統信徒は認めないけど神話というのは外来要素がけっこう含まれるものですわな。記紀神話だってそう。一神教は「神は唯一」と掲げるけど、天使というなんだかよくわからない曖昧な存在がいて、多神教的色彩を隠し持つ。(余計な話はよろしい)
「天使の羽根」はいろいろな石にあって、「エンジェルフェザー・フローライト」なんかが有名。エンジェルフェザー・クォーツというのもあるらしい。
まあこういう繊細な模様は美しいものです。特にセラフィナイトは銀色に輝くからきれい。

以前、五反田にあったクリスタルワールドさんで、セラフィナイトの原石がどっと出たことがあった。20センチくらいから大きいものは50センチくらいあったかな。
ド迫力で、羽根模様がピカピカと光って、素晴らしく美しかった。とても手が出ない値段だったけど、ちょっと欲しかったなあ。

まあ小さいものでも十分美しいです。模様ものだから固体による差が大きいけど、いい石ではないでしょうか。


サーペンティン/ボーウェナイト/スティヒタイト

2022-11-18 13:23:29 | 単品

サーペンティン(Serpentine 蛇紋石)。
蛇紋石とか蛇紋岩と言われると、ありふれた石じゃない? と思ってしまう。
ところがどっこい。(古っ)
美しいのです。



ロシア産。24ミリ。セルフクリエイションさんより。
こういう緑が主体で、いろいろな模様が入る。緑は黒っぽかったり黄色っぽかったり。
磨き石にすると、石の内部の複雑さがあらわになって、とても美しい。
原石志向のコレクターさんは興味を持たないかな。

サーペンティン(蛇紋石)は詳しく言うと、
  アンチゴライト(Antigorite) (Mg,Fe)6Si4O10(OH)8
  クリソタイル(Chrysotile)  Mg6Si4O10(OH)8
  リザーダイト(Lizardite)  クリソタイルと同じ(異形)
の総称。
あれ? この名前、どっかで書いたな。ああ、デューイライトのところだ。サーペンティンの変種らしきよくわからない石で、蛍光が美しいやつ。

蛇紋石が主体になっている岩石が蛇紋岩(サーペンティナイト)。
蛇紋岩は上部マントルを構成する橄欖岩(Peridotite、橄欖石や輝石などからなる)が地殻プレートの沈み込みや衝突によって加水変成したもの。詳しくはこちら
まあ要するに、橄欖岩の水煮ですな。(はあ?)
  橄欖石     (Mg,Fe)2SiO4
  アンチゴライト (Mg,Fe)6Si4O10(OH)8
HとOがやたらにぶち込まれている。(変なギャグはよせよ)

橄欖岩は密で硬いけれど、蛇紋岩は租で柔らかい。水煮だものね。(……水煮ねえ)
蛇紋岩質の山は崩れやすい。石綿が含まれていたりもする。厄介な地質。「蛇紋」という名前もあいまって、あまりいいイメージはない。
けど、こういう磨き石を見ていると、ベーシックな鉱物らしい重厚な風情があってとてもいい。特に丸玉は高雅な趣がある。

     *     *     *

サーペンティンの一種に、ボーウェナイト(Bowenite)というのがある。アンティゴライトで、サーペンティンだけど透明、という変わり者。

ネフライト(軟玉、広義の翡翠の一種)と混同されたりもする。
で、翡翠にあやかって「ニュージェイド」と呼ばれることもある。ちょっと詐称っぽい。
翡翠と並べてみると、色は似ている。けど質感が全然違う。翡翠は重く稠密な感じ。ボーウェナイトは軽い。むしろカルセドニーに近いか。

最初手に取った時は、「まあな」みたいな感じだった。特色がなくて凡庸かな、と。
けど何度も見ていると、その柔らかな色と質感がとても魅力的に感じられてくる。
しかしサーペンティンとはとても思えない。半透明なんだぜ? 蛇紋石が透き通るなんて、そんなばかな。



というわけでけっこう珍しい石、みたい。あまり人気はないみたいだけど、いい石なんじゃないかな。

     *     *     *

Stichtite。読み方わからん。スティヒタイト、スティッチタイト、スティクタイト……
原産地タスマニア州クィーンズタウンの鉱山鉄道会社のゼネラルマネージャー(長いね)、Robert Carl Sticht から命名。もともとはドイツ語「シュティヒト」だろうけど豪州人だからスティクトかな。スティヒトとは発音しないんじゃないかな。でも原綴がわかりやすいからスティヒタイトでいいのかも。(うざいねw)

Mg6Cr2(OH)16[CO3]・4H2O。マグネシウムとクロムの含水炭酸塩鉱物。ピンクから紫色を呈する。Hydrotalcite(ハイドロタルク石)グループに属する。粘土鉱物の一種。
似たような組成の石にクロムクリノクロア(Chromian Clinochlore 菫泥石 Mg5(Al,Cr)2Si3O10(OH)8)がある。こっちはケイ酸塩鉱物で緑泥石の一種だけど、クロムのせいか色は似ている。マグネシウムの炭酸塩だとドロマイト(CaMg(CO3)2)があるけど、クロムではなくカルシウムなので色合いは違う。鉱物は組成が近くても種族やでき方が全然違うのがあるのですな。

で、これがサーペンティンと一緒に出る。そのため「サーペンティンの変種」と書かれることもあるけど、炭酸塩だからそうではない。
緑のサーペンティンに紫のスティヒタイトの水玉模様が浮かんだものを「アトランティサイト」と呼ぶ。いろんな石に新たな名前を付けている霊能者?メロディさんの命名らしい。
原産地のタスマニアはちょっと特異な土地。特産の「アトランティサイト」も特異な何かを持っているかもしれない。アトランティスというのはちょっと誇大な気がするけど、蛇紋岩の大陸があったら崩壊してもおかしくはないか。いや、でもアトランティスは大西洋じゃなかったかな。(余計なことをごちゃごちゃと)

これは「スティッチタイト」として買ったもの。紫の部分がかなり多い。でも黒っぽいサーペンティンの部分もある。アトランティサイトと呼べないこともない。別に呼ぶ必要もないけど。通常光だとかなり暗いけれど、強い光だと鮮やかな紫に輝く。

紫の石なのでチャロアイトやスギライトの「代用品」みたいに思われていたりもするけど、けっこう稀産。純粋なものはなかなか高価。

しかし Mg6Si4O10(OH)8 と
    Mg6Cr2(OH)16[CO3]・4H2O 
が一緒に出てくるというのはどういうことなのか。さっぱりわからん。ケイ素とクロムが置換した? 炭素はどっから来た?
うーむ。鉱物の生成の仕組みというのは複雑難解ですねえ。


クリーブランダイト

2022-11-12 10:52:41 | ややレア

Cleavelandite。Na(AlSi3O8)。
1823年に、ヘンリー・ブルックスによって、鉱物学・地質学者パーカー・クリーブランドに因んで命名された。アメリカ・オハイオ州のクリーブランド(Cleveland)とは関係ない。ちなみに地名の綴りは「新聞見出しに収まらないからaを削った」のが固着したらしい。(余計なことを)
しかしその後、組成的には「アルバイト(曹長石)」だと判明。結晶が板状の特殊な形をしているが、何をもって「クリーブランダイト」の定義とするかははっきりしていない。
要するに「アルバイトの変種で、板状結晶のもの」ということ。ジオード中に群晶として出ることが多い。

まあ、レア。そもそも純粋なアルバイトというのも案外ない。加えて結晶が特徴的で、時に美しい薄青を帯びたりするので、一部では人気があるらしい。

しかしねえ、このアルバイトという名前、やっぱ変。
つか、「非正規・不定期労働」をドイツ語の「労働」で表わすというのがそもそもおかしいのだけど。ドイツ人はみんなアルバイトしてるんか?(余計な駄弁はよろしい)

これはセルフクリエイションさんでお安く出ていたもの。15ミリくらい。

実に繊細。細かい板状の結晶がわちゃわちゃと群れて、一部は淡いブルーグレイに光る。派手ではないけどとても美しい。淡い色がぞくっとする。



けれど、ものすごく脆い。ちょっと触っただけで細かい雲母のような欠片が落ちる。なんか和菓子でこういうのがあったような。
写真を撮るために動かして、だいぶ落っことした。2%くらい減ったかもしれない。(粗暴だな)
ケースのアクリルを隔てて鑑賞するしかないですな。


何度も書いた話だけど、長石というのはほんとにややこしい。
カリウム・ナトリウム・カルシウムの3つの「極」があって、多くが混ざって、つまり固溶体で出る。ただしカリウムとカルシウムは混ざらない。
で、アルバイトは純粋なナトリウム長石。カリウムもカルシウムも含まない。当然、そんな純粋種は少ない。
だからアルバイト自体が、まあレアストーンなのですね。
ちなみにカルシウム純粋種のアノーサイトというのはまだ見たことがない。カリウム純粋種に至っては何がそうなのかもわからない。[訂正しました。オーソクレースはカリウム純粋種ではないようです。]

長石というのは「ほとんどの石に含まれる」と言われるくらい凡庸な石なのだけれど、「純粋」長石は多くない。
そしてクリーブランダイトは、しばしば鈍重な佇まいを見せる長石が粉砂糖のような繊細な姿を見せているという点で、とても面白いものではないでしょうか。
ううむ、長石は奥が深くていい石だ。