貧乏石好き

つれづれなるままに石をめぐりてよしなきことを

ぎんぎら金属石

2022-07-31 11:03:19 | 単品

ガレナ。方鉛鉱。
有名な石だけど、あちきはこういうガチガチ金属みたいな石は持っていなかった。せいぜいセルサイト(白鉛鉱)くらい。
Comrose という石屋さんのサイトを見ていたら、黒くビカビカ光る原石がお手頃価格で売られていたからぽちった。

まあ、びっくり。ぎんぎらぎん。さりげなくない。(古っ)
セルサイトのぴっかぴかもすごかったけど、輪を掛けてビカビカ。地が黒というのもいい。心を射抜かれるぜい。(何だよそれは)
動画はこちら

Galena。ガレナ、ガレーナ、ガリーナ、ギャリーナ。(うざい)
古代ローマの博物学者大プリニウスによって、「鉛鉱石」を意味するギリシャ語から名付けられた。って、鉛鉱石に鉛鉱石という名前を付けるっておかしくね?(いやそういうことではなくってだな) 古ギリシャ語はやたら伸ばす言語なので「ガーレーン」だろうから「ガーレーナ」が正しいのではないか。(うざいよ)
基本組成はPbS。単純明快。けど鉛と硫黄がもろ化合しているというのは不思議っちゃあ不思議。微量の銀などを含む。「結晶は新鮮なときは明るいですが、空気に触れると変色することがよくあります」との話も。うわ、ケースにいれなきゃ。ヴィヴィアナイトもそうだったけど、金属鉱物ってけっこうめんどい。
シャーレンブレンデにも登場する。シャーレンブレンデは臭かったけど、ガレナは臭わない。臭いのは鉄か? いや、パイライトは臭わない。スファレライトも臭わない。一体誰だ。

いいですねえ。こういう、これまで知らなかった美に出会うというのも、石の醍醐味。

     *     *     *

で、続けてぎらぎら金属石に手を伸ばした。
パイライト。黄鉄鉱。「愚者の黄金 Fool's Gold」。
いろいろな形があって、サイコロは有名。きれいな立方体が母岩にぺちっとくっついたのがよく見られるけど、ごくたまに接着剤で貼り付けたのもあるという噂。ロボットみたいな恰好の連結結晶や、「サン」と呼ばれる円盤も素敵。
今回はエヌズミネラルさんでクラスターがあったので、30%オフということもあって、購入。

まあこれもすごい。動画はこちら
お金持ちになった気分。(つうことは fool ということだねw)
やっぱ金色はいいですわ。何でかな。太陽の色だからか。

FeS。こちらも純粋。けど硫黄が強くて鉄鉱石にはならないらしい。かつては硫酸の原料だったがもう使われないとか。金のように耐久性、耐腐食性もない。実用価値を失って、今はただ fool を喜ばせるだけのものになったとしたらちょっと悲しい。いや、その方がいいのか。

     *     *     *

もう一つ。
スティーブナイト。輝安鉱。Sb2S3。
なんかスティーブさんが発見したみたいな名前だけど、古ギリシャ語「スティビ」「スティミ」に由来するらしい。
明治時代には日本で1mを超える美結晶が出たけれど、欧州人に買い漁られて博物館や個人コレクションになっているとのこと。今は中国で大型美麗品が出るらしい。
以前、CW立川さんで40センチくらいの棒状結晶を見たことがあるけど、カミさんが「アルミサッシの残り屑みたい」と酷評したので買わなかった。(惜しかったねw)

これは中国産。トモミネラルという水晶専門店さんが余技みたいな感じで安く売っていたもの。
小ぶりの棒状結晶がわちゃわちゃと集まって、不思議な味わいを醸し出している。
ガレナほどではないけど、輝きが強い。なんかぐじゃっと噛み潰したい衝動に駆られるのはなぜだろうか。こんな形状のお菓子があったかな。

     *     *     *

透明結晶の色光もいいし、不透明磨き石の彩もいい。妖しい虹を見せる石もある。しかしそれとはまったく違った、ぎんぎらぎんの金属質の美というものがある。石の美は多様で奥が深いですなあ。


ボー石

2022-07-29 22:14:52 | ややレア

っていう名前はないだろうと思う。なんかボーッとしちゃうぜ。(うわつまらん)
Vauxite。忠実に表記するならヴォークサイト。まあヴォーキサイトでも。今は亡き「ホシノカケラ」のanfelさん(殺すな)はヴァークサイトと書いていたけど。
アルミニウムの原料として誰でも知っている「ボーキサイト Bauxite」とは1字違い。こっちが正式なボー石だ。ただしこちらは混合鉱物。

19~20世紀のアメリカの収集家 George Vaux Jr. にちなんだ命名。もともとはフランス語系の名前で「ヴォー」さんでしょう。けどアメリカ人名なのだから「ヴォークス石」とか、せめて「ボークス石」とかにしたらよかったのに。

組成は FeAl2(PO4)2(OH)2・6H2O。鉄とアルミのリン酸塩鉱物。アパタイト(燐灰石 Ca5(PO4)3(F,Cl,OH))から生じる二次鉱物だそうで。

あまり有名ではない。名前がぼーっとしているからか。(んなことはないだろ)



鮮やかな色ではない。ちょっとパステルカラーのような。白い「パラボー石」が上についている。
けど拡大して見ると、なかなか。この青い洞窟の中に入っていきたい。


しかし、何度か書きましたけど、エヌズミネラルという石屋さんはすごいですねえ。鉱物ショップとしてはやはり日本一ではないかと。磨き石やアクセサリーは扱ってないけど。
けど、この石屋さん、自分語りをしないので、よく素姓がわからない。新潟にあるらしいけど、どういう人がどういう経緯でこうなったのだろうか、少し興味が湧く。まあ余計なことでしょうけど。
このお店に30%オフをやられると物欲が刺激されてかなわん。「女房を質に入れても」というのは初鰹に飛びつく江戸っ子の言いぐさだけれど、うちのうわなにをするくぁwせ(やめなさい)
ここのリロコナイトは素晴らしいのがごろごろしているのだけど、30%オフでも銀河の彼方だものねえ。
いや、まあ手の届くところにも美しい石はいっぱいある。それを探り出すのもまた楽しいことですね。


ブラジリアナイト

2022-07-28 21:52:03 | 単品

コレクション、というほどのものでもないけど、まあ集めたものをちょっと整理していた。
高級品なんぞはないけど、数はけっこうになった。
好きなものだから、全部覚えている。これは何、と即座に言える。数百あるのに大したものだ。
というつもりだったのだけど、二つ三つ、ん? というものが出てきた。年かねえ。いやですねえ。(まあしょうがないさ)

その一つがこれ。





何だったっけなあ、と頭をひねり、写真データをひっくり返してみて、ようやくわかった。
ブラジリアナイト。セルフクリエイションさんで別の石と一緒に買ったのだけど、忘れていた。(ひどい) セルフさんはちゃんと名札付きのケースに入れてくれるのだけど、ケースを小さいのに替えたからいけない。

1945年にブラジル、ミナスジェライス州で発見された比較的新しい鉱物。やや稀産。
無色ないし黄、緑を帯びる。
「ホシノカケラ」の先生いわく、
《クリソベリル業者が持ってきた黄緑色の石が実は新鉱物ではないかと見抜いたフレデリック・ポー博士。それで付けた名前が(ブラジルで見つかったから)ブラジリアナイト。
最初は別の鉱石のための名前だったのですが、その石が実は既存で知られていた鉱物(銀星石)だったと判ったので廃名。そしてその名前を受け継ぐことになったのだそうです。
今までに見つかった最大の結晶が15cmほどとのことですから、極端には大きくならないようです。アメリカ・ニューハンプシャーでも産出するものの、基本的にブラジル産がほとんどです。》
このサイト、なくなっちゃったんですよねえ。残念。

確かにクリソベリルに近い「金緑色」。写真では出ていないけれど、もうほんの少し緑がかっていて、なかなかいい味わい。この色は好きですねえ。

組成は NaAl3(PO4)2(OH)4。
ナトリウムとアルミニウムのリン酸塩としては、アンブリゴナイト/モンテブラサイト (Li,Na)Al(PO4)(F,OH) があるけど、こちらもあまり特色があるとは言えない石。アルミニウム単独塩基のリン酸塩含水鉱物だとオージェライト(Al2(PO4)(OH)3)、バリサイト(Al(PO4)・2H2O)、ワーベライト(Al3(PO4)2(OH,F)3・5H2O)といった有名石がある。

     *     *     *

ブラジルという国は、鉱物の宝庫。まあたくさんの美石を産出する。例えば……やめた。大杉。
その名だたる宝石産出国の国名を冠したにしては、実に地味な石。
少しクリソベリルに似た、渋めの淡ーい黄緑が魅力的。中のクラックには虹が光る。
改めて眺めるといい石なのだけど、いかんせん、地味。サンバとサッカーの国にはちと似合わない。

国の名前がついた石というのは……
一番有名なのはタンザナイトだろうけど、あれは商人がつけた商品名だし。
ホランダイトは……人の名前か。スリランカの最多数民族シンハラ人にあやかったシンハライトというのがあるけど、国名ではないね。
ああ、アフガナイトというのがあった。あそこもいろんな有名石が出るのに、アフガナイトはちょっとマイナーな石。きれいだけど。
コロンビアナイトというのがあるけど、あれ、よくわからない。火山性か隕石衝突性の自然ガラスらしい。
インディアナイト、インド石という言葉をどこかで見た記憶があるけれど、mindat ではアノーサイトのこととある。
と、書いていた時に知ったのが「セネガル石 Senegalite」。1976年にセネガルで発見され、セネガルでしか出ない稀少鉱物。これもアルミのリン酸塩で、Al2(PO4)(OH)(OH)2・H2O。薄黄色であまり大きな結晶はないみたい。エヌズさんで売ってる。さすが。
そのくらい? ほとんどないということかな。
まあそういう意味では珍しい石と言えるかもしれない。うむ。

地味だなあ。いい色なんだけど。


石の魂

2022-07-24 23:07:34 | 漫筆

日本人は石を「景色」として見るという話(妄想?)を書いたけど、もう一つ雑談を。(いつだって雑談だろw)

石好きの人たちはよく「この子」「お迎えした」「お嫁に行った」などと言います。
まあジャーゴン(特定集団内語彙)とも言えますけど、あながちそうとばかりは言えない。
やっぱり日本人はどこか心の奥底で、石にも魂があると見ているのかもしれない。

よく日本人の宗教性とか神道とは何かとか議論されますけど、そういう時に多くの人が見落としていることがある。
それは「自然霊」という存在。
自然霊という概念は非常に広い。天候も、季節も、山野河海も、石も草木も、全部、「霊的存在」であって、崇拝や畏敬の対象である。竜神は天候や山河を、土公神などは土地を、稲荷大神や宇賀神は米を、各地の山の神は山とその麓の地を、水神は川や泉・井戸を、それぞれ司っている。植物霊・動物霊といった存在もあるけれど、それよりもっと高級で偉大な存在として。
で、神道や修験道・民衆密教はそういう霊的存在と交渉することを主眼としていた。もちろん死霊(人間霊)の慰撫・鎮撫も大事なことですけど、むしろそれより大きな枠割として、こういう大いなる霊的存在との交渉があった。
こういうことは、西洋人や近代の知識人にはなかなかわからない。ある種の盲点になっている。彼らはそれをプリミティブ宗教の特質のように見なし、「愚昧な信仰」とレッテルを貼りたがるでしょうけど、まあそういうものでもない。実はいるし。(おいおいw)
日本人は縄文の昔から今に至るまで、そういう「感覚」を持っていた。これがわからなくては、神道も日本人の宗教的心性もわからない。日本仏教だって「山川草木悉有仏性」なんて言うしね。
まあ、そういう心性からすれば石が「子」であったり、「お迎え」したり「お嫁に出し」たりするのもごく自然なこと。なのでしょう。(日本人の多くはシントウアイトなわけね)

     *     *     *



地球の活動や自然の山野河海を司っている「高級知性的霊的存在」は、まあいます。(ほんとか?) ただし、それは「人霊」や人類の生命活動とは無関係。たまに忖度してくれることもあるようですけど、だいたいはお構いなし。大噴火や大地震が起きて多くの人間が死んでも、「あ、すまん」くらいのもんです。彼ら(複数なのね)は彼らなりの大いなる創造活動があるわけで、それによって地球もそれ自体進化成長を続けている。
石たちは、そういう大いなる地球霊の創造のたまもの。彼らが人間にもわかる美を創ろうとしたかどうかはともかく、石たちの驚異的な姿は地球霊の大いなるイデアの結晶だとも言える。人間やその他の生物の魂とはまったく異なる種類のものだけれど、石にもそういう意味での魂はある。

われらがなすべきことは、そういう創造が語り掛けてくる様々なイデアを受け取ること。そしてそれを自らの魂に刻み込むこと。
地上の物はたとえ石といえども移り過ぎていくもの。人の命もまた同じ。けれど魂に刻み込まれたものはそれを超えて生き続ける。天の世界はそういう宝で溢れている。
まあ妄想と思っていただいても結構ですけど。


蛍光の王様?

2022-07-24 10:52:08 | 漫筆

蛍光の王様じゃい! (またつっぱってw)
世に蛍光する石は多いけれど、こんな蛍光、ありますか?(これ、二度目だろ)









ただし写真は若干派手に写っている。白い蛍光があるように写っているけれど、肉眼では白は見えない。

動画はこちら

「こんなん持ってるんだぜ、すげえだろう」と自慢したいわけではないのです。まだたくさん売ってるし、安いものだし。
そうではなく、「こんなんあり?」という腑に落ちなさ。
フローライトはよく蛍光しますけど、一つの石でこれほど多様な色に蛍光するなんて、あるんですかねえ。2色くらいだったらツイッターで見たことありますけど。

過日、キラリ石さんで、これと色や模様がよく似ている、小さめの六角柱が出たことがあって、「蛍光しますか?」ときいてみたところ、しません、と。ますますわけわかめ。

もしかしてこれ、蛍光実験のための人工蛍石ではないか、という疑惑が湧いてきたりもするんです。中国だったらそのくらいやるかもしれない、と。
まあそれならそれでいい。そのうちこういうフローライトがばんばん売り出されるかもしれない。
鑑別に出したら、天然か人工かわかるのでしょうか。

あ、ちなみに購入元は「銀座東道」さんというお店。「誠安天然石」さんの姉妹店で、ともに廉価販売的なショップ。今も両方のお店でいくつも売れ残っています。値段はだいたい千円台。「は?」という値段です。同じように蛍光するかどうかはわからない。こちらのお店はちょっと名前や産地に関してはアバウトで、大量販売なので一つ一つの石に細かい説明もなし。これが蛍光するなんていう説明もありませんでした。あちきも変なフローライトが安く売っていたので買っただけ。たまたま照らしてみてびっくり。

     *     *     *

で、腑に落ちなさがもう一つ。
これ、前に1回ツイッターに上げたんですよ。ん?と思ってくれる人がいるかと思って。
けど、まったく反応なし。あちきのツイッターなんて見る人は少ないけど、ぽつりぽつりと「いいね」くらいはある。けど、これに関してはまったく「シーン」。
で、今回2度目の挑戦をしてみた。案の定、最初はまったく「シーン」。1日くらい経って、「天然逆さめがね」さんという方がリツイートしてくださって、それでぽちぽちと「いいね」をもらいました。

いや、「いいね」が欲しいんではなくて。ん?と思う人が少ないのかな、と。
こんな変な蛍光について情報を持っている人はいないのかな、と。

けっこう「蛍光します」っていう売りで出されている石は多いし、蛍光の光を楽しんでいる投稿なんかもあるけれど、実際のところ、石集めをしている人たちの中で、蛍光を楽しんでいる人はさほど多くないのではないか。そんな疑念も湧いてきまして。まあ、あちきも前はそうでしたから。

いや、もう一つ頭をよぎったことがありまして。(しつこいねw)
これより前に、ツイッターで「アイオライト丸玉の透過光変色」の動画を上げたことがあります。あちきとしては驚嘆の世界で、やっぱり「こんなんあり?」という思いだったのですけど、それもほぼ無反応。アンダルサイトアキシナイトの透過光変色も同様でした。
どうも、こういった「特殊な光」による石の姿は、あまり「受けない」のではないか。
自然の光で、時には朝の光や夕暮れの光で、石が美しく輝くのは素晴らしい。でも、紫外線だの強烈な透過光だので現れる光は、「まあね」みたいな。

石の「景色」を愛でるのが日本の石鑑賞の伝統のようですけど、実はその感性は今も健在である。
美麗な結晶や晶群の写真はたくさんありますけど、それも、「景色」として鑑賞されている。
そういう感性にとって、蛍光だの透過光だのはお呼びではない。
そんなことがもしかしたらあるのではないか……

まあ、妄想かもしれませんけど。
お騒がせいたしました。