貧乏石好き

つれづれなるままに石をめぐりてよしなきことを

トパーズは冷たい:鉱物の熱伝導率のお話

2023-08-27 12:32:21 | お便利メモ

トパーズの魅力がもうひとつわからんということで、小さいけど結晶形がかっきりしているのを一つ買ってみました。ヤフオクでお安かった。(余計) パキスタン、スカルドゥ産。

結晶形のことはよく知らないので、何ちゃら式とかはわかりません。(少しは勉強したらどうだい?)
とても美しい、と思います。こういうキリッとした結晶を掘り当てたら嬉しいでしょうねえ。
さらに、濃密な質感がある。トパーズは水晶より屈折率比重が高いからでしょう。これも魅力なのでしょうね。
質感というのはとても微妙だけど重要なもので、例えば翡翠やコランダムなんかはものすごく質感の魅力がある。

で、もうひとつ気づいたのは、「冷たい」ということ。
トパーズは持つとひんやりする。水晶も冷たさは感じるけどひんやりはあまりしない。
ということは、つまり、熱伝導率が高いということ?

で、ちょっとネットを調べてみたけれど、個々の鉱物の熱伝導率リストというのは見つからない。
熊谷質店お役立ち情報」というところに代表的な鉱物のリストがありました。数値は厳密なものではなくあくまで参考。この記事、とても面白いです。質店店主恐るべし。

ダイヤモンドの2000、モアッサナイト(人工)の490はちょっと例外として、銀、銅、金、アルミがめちゃ高い。準金属以外の鉱物ではコランダムが40で水晶の8.8より全然高い。ちなみにダイヤの飛びぬけた数値は類似品との識別の手段になっているとか。
ネット公開情報ではないけど近山晶『宝石宝飾大辞典』の小さなリストがあって、そこではトパーズはコランダムの半分くらいとなっている。それでもコランダムとトパーズはかなり高い2つ。
ほお。

熱伝導率というのは結晶構造に大きく左右されるでしょうから、組成では簡単に云々できないけど、コランダム(Al2O3)、トパーズ(Al2SiO4(F,OH)2)はともに熱伝導率の高いアルミを主成分とする、ということもあるのでしょうかね。

熱伝導率が高いからどうだ、と言われると、さあ、となる。けど、触るとひんやりする鉱物というのは、なかなかいいんじゃないでしょうか。
トパーズは、水晶よりも硬くて、屈折率が高いので強くて揺れ動く輝きがあって、濃密な質感があって、そして持つとひんやりする。
それがトパーズの魅力のキモなのかもしれませんね。


「一級品」珪灰石

2023-08-26 09:45:42 | 国産鉱物

珪灰石、ウォラストナイトは前に一つ上げましたけど、またヤフオクに素晴らしく美しそうな「一級品」「結晶」の真っ白なものが出ていたので思わずポチッ。



出品者さんいわく、
《岐阜県春日村産の一級結晶の珪灰石です。スカルン鉱物の代表的な鉱物です。この標本は稼働中に頂いた物だけに新鮮で綺麗な一級の灰石標本です。現在閉山していますが、操業中のみに産出した物で、今では2度と手に入らない一級標本です。》

純白で、きらきらしていて、準放射状模様が鮮やかで、実に美しいのです。確かに「一級品」なのでしょう。





ちょっとスコレス沸石に似ているけど、あっちはもっと棒棒している。(は?)
真っ白で輝いている石というのは、案外少ない。そういう点でなかなか貴重なのではないかと。

CaSiO4。準輝石。
準輝石とは何ぞや。輝石と同じ単鎖イノ珪酸塩なんだけど結晶構造が微妙に違うらしい。難しくてわからん。ただ、カルシウムやマンガンといった大きな原子を含むことができるとのこと。
有名どころではペクトライト(ラリマー)、ロードナイト(薔薇輝石)、パイロクスマンジャイトなどがある。いずれもカルシウムやマンガン含有ですな。結晶構造が違うから大きなのも含み込めたのか、大きなのがあったから結晶構造がそうなったのか、そんなことは知らない。(知らないことを書くなw)

しかしこんな美しい結晶が、石綿に代わる便利な素材としてばんばん採掘され砕かれているわけですな。もったいない。
この標本もワンコイン以下でゲットできてしまいました。知られていないせいなのか。こんなに美しい石なのになあ。


蛍鉱山の水晶・蛍石

2023-08-20 09:37:36 | 国産鉱物

わーいわーい、きれいだきれいだ。(お年はいくつですか?)
国産水晶シリーズ(まだやってるのかよw) に思わぬ伏兵です。(思わぬ伏兵とは同語反復ではないかい?)
蛍鉱山。福島県南会津郡南会津町舘岩宮里。水晶、蛍石共生。
ヤフオクで、7つでなんと、な(やめなさい) 1400円!

超チビ水晶のクラスターです。
こういうの何て言うんですかね。これもドゥルージー水晶なんですかね。粒粒ではなくて超ミニ六角柱がキリッと(なぜ半角にする) 林立しているんですけど。
繊細で、キラキラで、実に美しい。写真じゃなかなか捉えられないけど。







清少納言さんが「何も何も小さきものはみな美し」と書いちゃったせいで、日本の美学にはミニチュアへの強い愛好がある。(は?) 小さいものは美しいのですねえ。おかげで国産鉱物も小さくなって赤矢印が必要になったのかも。清少納言の呪い恐るべし。(あほ)

蛍鉱山というだけあって、フローライトが入り込んでいる。UVライトで照らすとあちこちで青い光が出現する。

こやつは明らかな共生。

実際の蛍光はもっと鮮やかで繊細で微妙な色なんですけど、カメラというのはそういう色は捉えられないんですね。まあ「蛍光の色が違う」と文句を言うユーザーなんていないしね。

で、蛍鉱山とは何ぞや。
《日本弗化鉱業が昭和12年から昭和19年まで幽沢の南北両側、鍋沢の北側、大沢の北側を採掘し797tの蛍石を出鉱したが戦争激化により休山し現在に至っている。》出典
《蛍鉱山の鉱床は、花崗岩巨礫に富む第3紀礫岩、および角礫岩中に発達する網状石英蛍石脈……蛍鉱山は蛍石で知られていますが、針のような水晶でも知られています。この針状水晶は非常に細く透明で、皮手袋をしていていも手に刺さるほどに鋭利です。》The Stone of WAKOU 鉱山解説
坑道跡は残っているけど「採集禁止」の看板があるとか。まあ今はどこもかしこも採集禁止ということになっているようですけど。
ちなみに日本の鉱業採掘権というのは数社がひそかに買い占めてしまっていて、新規開拓というのは不可能だと農林省(古っ)の偉い官僚さんから聞いたことがありますけど、そうなんですかね。あ、これタブー?(余計な話を書くでない)

あ、これはおまけにいただいた川上村産水晶。少し赤みがあるけど、これも美しい。おまけ。

こういう可愛らしい、土地特有の匂いのする水晶というのは、ほんとにいいですねえ。


十勝玲瓏石

2023-08-15 19:24:18 | 国産鉱物

国産鉱物の白眉、隠れた「日本の至宝」!(個人の感想ですw)
十勝玲瓏石。

前々からツイッターで(もうその名前廃止だろ?)何人かの採集・加工者さんの投稿を見て、いつかは欲しいなあと思っていたのですけど、この度ちょっとした慶事がありまして、その記念に大奮発で2つ購入。貧石領域外、星の彼方。@玲瓏石さんという、自ら採集して、磨いて、メルカリで販売してらっしゃる方から。

まずは「ブルー系」。
ぱっと見は真っ黒なガラス。光を吸収する不思議な黒。横の二つはおまけのチビ石です。

ところがそこにぼんやりと同心楕円系の光る輪が浮かび上がる。

何かくらっとする神秘的な光景です。
さらに光を強く当てると、鮮やかなブルーシルバー、そして所々に虹色の輝きが浮かぶ。

水の中に入れて表面反射を抑え、強く光を当てると、もっと絢爛に輝く。いろんな色が見える。

何か不思議な天体を見ているような神秘的な美しさ。
あちきの写真術ではなかなか写らないけど、@玲瓏石さんのツイッター動画だともう少しダイナミックに見える。よろしかったご参照あれ。

こちらは磨いていない裏面。明るい青と黒い紺が層構造を作っているのがわかる。そして全面にきらきらと輝く点々。赤や金色に光ったりもする。

おまけのチビ石は模様は出ないみたいだけれど、同じような輝く点々が浮かぶ。一応これも玲瓏石らしい。




いやあ、実にすごいです。

     *     *     *

もう一つ。玲瓏石は様々なバリエーションがあるようで、こちらは「マホガニー系」「ゴールデン系」の「花十勝玲瓏石」。ちょっとサイズが小さくて、不定形だけど、ぱっと見ですでに派手。

花十勝というのは黒曜石の黒に赤や茶色が散りばめられたもの。この玲瓏ではそれが層構造になって、ブルーとミックスしている。
水に入れるともっとド派手。

茶の部分も青の部分も、虹色っぽく光が変幻する。

ブルー系のものがぼわあっとしたムーンストーンのような光だったのに対して、こちらはかなり明確。むしろラブラドライトのシラーのよう。
側面を見ると、はっきりと茶の層がわかる。成分が異なるのでしょうか。


     *     *     *

「十勝玲瓏石」とは何か。ネットでは学術的な記述は見つかりません。
十勝石は黒曜石=オプシディアン。火山性ガラス。
約130万年前に大雪山塊の東部、クマネシリ岳の噴火によって流出した溶岩が固化したものと考えられている。
で、その中で、主に層状の模様があって、青や虹色や金色のシラーが輝くものを「玲瓏」と呼んでいるようです。
「玲」は「玉の鳴る美しい音」あるいは「透き通って美しく、明らかに見えること」(『角川漢和中辞典』)。「瓏」も同義。「玲瓏」は「玉が触れ合って鳴る美しい音」あるいは「玉のように光輝くさま」。白楽天の長恨歌にも「楼閣玲瓏五雲起」と出る。
足寄工房の柴刈信一さんという方が「開拓」されたらしい。命名もこの方なのかな。
足寄工房のサイトの「黒曜石資料館」ページには様々な黒曜石の写真が載っています。

黒曜石自体は十勝の足寄・上士幌あたりの川でたくさん見られるけれど、玲瓏石は100個に1個、1000個に1個しか見つからないとか。クマネシリ岳一帯はほぼ大雪山国立公園内となっていて採集禁止。区域外ではだいぶ取り尽くされているらしい。しかもそこはヒグマの出没する地域。へたすりゃ命懸けですわな。
そしてこの石のように層模様を美しく磨き出すには相当の技術的修練が必要らしい。@玲瓏石さんは先達の人に教わったとか。
まさに貴重なお宝です。高価なのもむべなるかな。

しかしなんでこんな層状模様があるのか。
なんでこんな丸っこい形なのか。
わかりません。

     *     *     *

世界では、メキシコやカリフォルニア、オレゴンなどで「レインボー・オプシディアン」は産出されています。
こちらは前に上げたメキシコ産レインボー・オプシディアン。

mindat によると、こうした層状模様は、ヘデンバージャイト=灰鉄輝石の超微粒子によって作られるとのこと。玲瓏石も同様なのかどうかはわかりません。

黒曜石、オプシディアンは火山性ガラス。ガラスと言われると「ほとんどシリカ SiO2」みたいなイメージを持ってしまう。しかしですねえ、オプシディアンは、流紋岩マグマが急速に冷えてできるもの。前にも書きましたけど、実は、

流紋岩=花崗岩=オプシディアン=軽石

で、組成的には花崗岩と変わらない。流紋岩マグマはもちろん石英のほかに様々な鉱物・元素を含んでいて、長石・雲母のほかにトルマリンを始めとする多彩なペグマタイト鉱物を生み出す。
オプシディアンも、シリカのほかにたくさんの元素や微細鉱物を含んでいるわけですね。
そうした要素の違いによって層構造ができるのか。しかしそうだったら他の産地の一般的な黒曜石だってできてもいい。ううむ。

この丸っこい形もどうも怪しい。「川を転がって丸くなった」と言われているようですが、同じ場所でも丸くない不定形の黒曜石は多くあるので、「どうしてこれだけ丸くなったんだよ」という疑義が湧く。さらに丸いものは「まとまって出る」という話もある。何なんでしょう。

大雪山塊および日高山脈は、大昔、ユーラシア・プレートと北米プレートがガチで衝突していた地帯と考えられている。前に上げた幌満・アポイ岳の橄欖岩はそのぶつかり合いの中でマントル橄欖岩が飛び出したもの。北のサハリンもぶつかり合いで盛り上がったものらしい。さらにその南東からは太平洋プレートが沈み込んできている。千島列島はその沈み込み帯で生じたマグマによる火山列島。サハリンから南へ伸ばした線と千島から西へ伸ばした線が、このあたりでぶつかるんですねえ。特別な地帯。
十勝黒曜石を作り出した火山噴火は比較的新しいものだけれども、この土地は特異な土地。その神秘が玲瓏石には籠められているような気もします。

産出量も多くはないし、美しさを出すには加工が必要だし、全体的には地味だし、超人気石になるのはいささか難しいかもしれません。
けれど玲瓏石は、アメリカやメキシコで出るものよりは深みがあって、神秘的な美しさを見せる名石、世界に誇れるお宝の石ではないかと思うのです。


「天の川」水晶

2023-08-13 17:29:24 | 国産鉱物

またまた妙な名前の国産水晶。



出品者さんいわく、
《通称「天の川水晶」と呼ばれている角閃石インクルージョンの味のある水晶です。角閃石がインクルージョンされている所は黄水晶になっています。》
奈良県天川村行者還岳産。レインボー・ガーネットのメッカですね。

虹色ではないけれど、表面がキラキラと輝く。写真だとほとんど撮れないのですけどね。



少し蝕像っぽくなっていて、そこに角閃石だか鉄分だかの薄い被膜があって、それが光を乱反射させるみたい。よくわかりませんけど。
それもいい味わいですけど、この荒々しい奔放不羈の姿もまたいい味わい。
お手頃価格の国産水晶は楽しい世界です。