貧乏石好き

つれづれなるままに石をめぐりてよしなきことを

パイロフィライト(葉蝋石)

2024-08-11 10:12:40 | 単品

Pyrophyllite、葉蝋石。Al2Si4O10(OH)2。フィロ(平面派)珪酸塩水酸化物。
Graves Mountain, Lincoln Co., Georgia, USA 産。エヌズミネラルさんより。



いわゆる「ローセキ」の主成分。地面にお絵かきをするやつ。ローセキは葉蝋石や滑石・カオリナイト・セリサイトなどの微細粉を主体とする混合岩石。
名前はギリシャ語の「火」と「葉っぱ」から。熱すると細かく剥がれるからだとか。パイロもフィロもいろんな鉱物で使われるからまぎらわしい。
塗料、ゴム、化粧品など広く利用される。耐熱材、絶縁材としても有用。タルカムパウダーは主に滑石から作られるが葉蝋石の場合もある。
だいたいが変成岩中の層状堆積物として出るので、こういう結晶になっているものはけっこう珍しいらしい。

赤だけど茶色というか紫というか、微妙な色合いが入る。上の写真よりもう少し紫っぽい。やや濁った重たい色。淡緑色のものもあるみたい。
放射状の結晶も見える。

さらにオナマにも表面にシラーのような輝きも出る。

なかなか美しいではないですか。
硬度は1.5。柔らかいけど「蝋のような手触り」はあんまり感じない。比重は2.9とけっこう重い。
ちょっと不思議な石ですね。

葉蝋石や滑石やカオリンは、「粘土鉱物」とも総称され、蛇紋岩が変質してできる。その蛇紋岩は橄欖岩が水によって変質してできる。つまりマントルが水煮されてできた蛇紋岩がさらに水煮されてできたもの。茹でた野菜や肉をさらに煮てべちょべちょにした離乳食のようなものか。(ひどい譬えだねえw)
前に書いた“岩石進化論”では、
  マントル=橄欖岩 → 玄武岩 → 安山岩 → 花崗岩 → 水成鉱物
という“進化”ルートが主眼だったけど、これは
  マントル=橄欖岩 → 蛇紋岩 → 粘土鉱物
という別ルート。
ペグマタイトや熱水脈でできる華麗な石たちとは全然異なる、地味ーで根暗な(は?)石たちだけど、タルカムパウダーとか陶磁器の粘土とか、実に役に立ったりする面々。これなしには人類はお化粧もできないし、お茶碗で飯を食うこともできない。(……まあな)
しかしその根暗集団の中で、もじゃもじゃ中に埋没することなく熱水に乗って地下空洞中で華麗な結晶を作り上げて見せたのが、こやつ。前に上げたブルー・タルクデューウィライトなんかもそうですな。とてもヒロイックな石たちではないでしょうか。(ヒロイック?)
そう思うといとおしいではないですか。(変な感想)


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