貧乏石好き

つれづれなるままに石をめぐりてよしなきことを

屈折率・分散度・複屈折[おべんきょノート]

2022-03-27 16:39:52 | お便利メモ

宝石には縁がないあちきにはあまり関係ない話なのだけれど、それでも石の輝きを愛でる際には多少問題になるらしいことに、屈折率とか、分散度とか、複屈折というものがある。けっこうめんどくさそう。けど、まったく知らないというのも面白くない。大まかなところをまとめてみる。

     *     *     *

まず屈折率。まあ誰でも知っている概念ですね。
石が入ってくる光をどのくらい曲げるかというやつ。どうもこれが高いと輝きも違ってくるらしい。「入ってくる光を内側に集める」からなのでしょう。
単純な図をかくとこうなる。


一般的な状態では、光はいろいろな方向からやって来る。かなり斜めに入ってくる光もあるわけで、それをすかっと透過させてしまうのではなく、石の中に集める。つまり光の量が多くなる。で、宝石ではそれをカットの面であれこれ反射させて輝きを作る。
物事にはプラスとマイナスがあるわけで、マイナスはどうかというと……よくわからない。(何だよ頼りない)

まあ、感覚的にも、どうも屈折率で質感が変わるように思える。
《鉄・マンガンなどの原子量の大きな元素を多く含む鉱物は屈折率が高い傾向がある。また、高い圧力を受けてできた鉱物(藍晶石やダイヤモンドなど)は原子配列が密なので構成原子の種類にかかわらず,屈折率が高い傾向がある。》(倉敷市自然博物館サイト
重いもの、ぎゅっと圧縮されているものは、屈折率が高い。あちきらが何となく重厚な質感を感じるのは、屈折率の違いを感じ取っているからかもしれない。(また頼りないね)

で、いろいろな石の屈折率はというと以下の通り。ただし屈折率の数値は計測者によって微妙に異なるのであくまで目安。

【高】
モアッサナイト(人工) 2.65~2.69
ルチル 2.605~2.900
ダイヤモンド 2.42
スファレライト  2.4
ジルコン 1.95~2.01
スフェーン 1.9~2.0

【中】
ガーネット 1.8前後
コランダム 1.760~1.772
クリソベリル 1.746~1.755 
ベニトアイト 1.757~1.804 分散度:0.044
カイヤナイト 1.715~1.731
スピネル 1.717
ゾイサイト 1.691~1.700
ペリドット 1.68~1.72
翡翠 1.66~1.68
フェナカイト 1.65
アンダルサイト 1.639~1.650
ダンビュライト 1.630~1.636
トパーズ 1.629~1.637
トルマリン 1.624~1.644

【低】
ベリル 1.577~1.583
水晶 1.544~1.553
アポフィライト 1.54
アルカリ長石 1.522~1.528(斜長石はわずかに高い)
カルサイト 1.486~1.658
オパール 1.450
フローライト 1.433
ガラス 1.4~2.0
水 1.333

人工モアッサナイトからスフェーンまでの六人衆は、きらっきらで有名。
1.6~1.8くらいのところは、美石ですね。フェナカイト、ダンビュライトはダイヤの代わりなどと言われるけれど、案外低い。水晶よりはきらきらということのよう。カイヤナイトが健闘している。
カルサイト、オパール、フローライトは屈折率という点では弱い。フローライトは美しい石なんだけれども、どうしても軽さが出てしまう。それはやはり屈折率の低さなのでしょう。
ただし、前に書いたように、屈折率が低いと、石全体がぼわあっと明るくなるらしい。それはそれで味があるということになるでしょう。

     *     *     *

で、もうひとつ、宝石で問題になるのは、「分散度」ということ。
単純に言うと、赤の光の屈折率と紫のそれがどれだけ違うか。
これが大きいと、分光した色の幅が大きくなる。大きな虹が出るのをイメージすればいいのかな。その色がカット面で反射して、七色の輝きが生まれる。宝石業界ではこれを「ファイア」と呼ぶ。らしい。
ただし、あまりに分散度が大きいとファイアが強くなりすぎて、「品が落ちる」と評価されることもあるらしい。

【高】
(合成ルチル 0.33)
スファレライト 0.156
モアッサナイト 0.104
デマントイド 0.057
スフェーン 0.051~0.055
ダイヤモンド 0.044
ベニトアイト 0.044
ジルコン 0.039
タンザナイト 0.030
スペサルティン 0.027

【中】
パイロープ 0.022
カイヤナイト 0.020
ペリドット 0.020
スピネル 0.020
ルビー 0.018
サファイア 0.018
クロムダイオプサイド 0.017-0.020
アイオライト 0.017
クンツァイト 0.017
トルマリン 0.017
アンダルサイト 0.016
クリソベリル 0.015
ベリル 0.014
トパーズ 0.014
アメジスト 0.013
アパタイト 0.013
アベンチュリン 0.013
水晶 0.013

【低】
フローライト 0.007

フローライトはここでも劣等生ですね。まあ別の美しさがあるから。

     *     *     *

もう一つ、光の問題で時たま言及されるのが「複屈折」。
一本の光が二つに分かれる。有名なのはカルサイトで、透明なやつを新聞の上に載せると、文字が二重に見える。水晶も同様で、ガラスと区別する方法になっている。
複屈折は「立方晶系(等軸晶系)」以外のすべての鉱物に見られるとのこと。立方晶系は、ダイヤモンド、ガーネット、スピネル、フローライト、パイライトなど。ありゃ、ダイヤモンドもフローライトも複屈折しないのね。
これがあると光の反射が複雑になり、また輝きが柔らかくなるらしい。ちょっとここまで来ると、素人にはわかりにくそう。
ちなみに、立方晶系は「光学的異方性」も持たない。つまり、「方向変色」がないということ。どこから見ても色が一定というのは、面白いか面白くないか。いずれにしろ、立方晶系というのは、ちょっと独特なのですね。


つうことで、宝石の輝きには、①屈折率、②分散度、③複屈折の三つが大きく関わっているというお話。けど、それらが起こる科学的な仕組みはあちきはまったく理解していない。
まあ頭の隅っこに入れておくのもいいかな、と。


オクタヘドロン・フローライト

2022-03-27 10:38:16 | 単品

(なんかこのところ変なタイトルつけるのにはまってないか?)

かっこいいですね。オクタヘドロン。単に八面体のことだけど。

正多面体には正四面体、正六面体、正八面体、正十二面体、正二十面体の五種類がある。つか、五種類しかない。プラトン立体などと呼ばれて神聖視される。なんでだろうとか、なんでその数字なのだろうとかは、数学や神秘学などでいろいろと話があるようだけど、ほっておく。(まあそれがよかろう)
正八面体は、ピラミッドを二つ底辺で貼り合わせた格好。
ダイヤモンドやスピネルにはしばしば見られる。マグネタイト、パイライトなど、ほかにもたくさんあるらしい。等軸晶系のものが多いとのこと。

フローライトの八面体はあちこちで見る。フローライトがそう結晶したのではなくて、劈開面でうまく割ったもの。なんでもアメリカだかに名人がいるらしい。カチーン、スコーンと次々に割る様子を見てみたいですな。
けど、フローライトは等軸晶系だから、この八面体が本来の姿、「自形」でもある。天然であまりこういう形を見せないのはひねくれ者ということだろう。(おいw)

これはクリワさん(だからそんな店名はないって)からおまけでもらったもの。透明なのとかいろいろあったけど、一番色が濃かったものを飾っている。(おお、ついに0円のもので記事を書くようになったかw)
で、こいつがちょっと変。
コレクションケースの中にはいろいろな石が入っているのだけど、室内灯の薄明かりで、こいつが妙に明るく光る。輝くのではなく、どこからともなくやって来る光を吸収してぼわーっと薄く浮かび上がる感じ。ほかの石はそういうことはない。

はてー。

フローライトというのは、屈折率が低いので有名。(有名か?)
ダイヤモンドが 2.42、水晶が 1.54~1.55 なのに対して、1.43 くらいしかない。ガラスが 1.4~2.0 くらいなので、へたすりゃそれより低い。
屈折率とかの話はややこしいので別項にするけれど、屈折率が低いというのは、宝石の形にした時に、光を集めにくい。すかーっと光が通っていってしまう。だからフローライトの輝きはつまらないという人もいる。確かに見た感じでは、軽い。あっさり。CaF、つまりカルシウムとフッ素だからさもありなんという感じ。

けれど、屈折率が低いものは、石全体が明るく見える。らしい。確かに、屈折率の高い鉛入りのクリスタルガラスと普通のガラスを並べてみると、クリスタルガラスは部分的きらめきはあるけれど、全体的には光り方は鈍重、普通ガラスはそれに対して全体がぽわーっと光る。
宝石では一般的にダイヤモンドやスフェーンといった屈折率の高いものが評価されるけれど、トルマリンやアクアマリンのような低いものも、軽やかな明るさで愛されるらしい。
このフローライト八面体がぼうっと光るのは低い屈折率のせいだろうか。

あるいは八面体というのも関係しているかもしれない。
下半分が斜めに切れているので、そこからも光が入ってくる。数学はからきしだめなのでわからないけれど、対する面が平行なので、何かしら反射の仕組みがあるのかもしれない。何せプラトン立体という神秘の形態。何か秘密があるような気もする。

単純なフローライトだし、人工的に割ったものだし、と正直少し軽視していたのだけれど、どうしてどうして、けっこう面白いものだと発見したのでした。


アイオライト・イリュミネイティッド

2022-03-25 20:40:18 | 単品

(またまた変てこなタイトルつけちゃって)

「下から照明」で遊んでいるのですけど、「本命」をやっていなかったのに気付いて。

アイオライト。あちきの好きな石の一つです。
丸玉の「驚異のカラーチェンジ」は前に書きました
けど、ほかのアイオライトも、透過光で美しく変身する。

アイオライトというのは、単純な反射光だけだと、ぱっとしない。
石好きでない人が見たら「なんかきたねえ石だな」と言われかねない。
こんな感じですね。

ところが、透過光では全然違う姿になる。特に強い光だと。

5つ同時だと露出が合わないですな。肉眼だと全部きれいに見えるのだけど。
一つ一つ写すと。







しかも、少し石を動かせば色合いが変わる。見る方向でも変わる。
ちょっと有機体みたいな模様になる。これが赤だったら気持ち悪いだろうけど、深い菫色なので、遠い彼方の星雲の模様を思わせる。
じっと見つめていると、その美の中に吸い込まれていくような感じ。あるいはその美の中に耽溺してしまう感じ。

年を取って、美への感受性が衰えたことは悲しいことで、「ああ、若い頃の耽美主義に戻りたいなあ」などと思っていたのですけど、石たちの美は、本当に耽溺するにふさわしいものです。

追記:「下から」じゃないけど、回転台での透過光変色をツイッターに載せました。なかなかいい。(自分で言うな)


プレオクロイック・コーネルピン

2022-03-24 20:56:26 | ややレア

なんて言うとかっこいい。
プレオクロイズムというのは英語の鉱物専門用語で「多色性」のこと。
ポリクロミックとどう違うのかは知らない。専門用語のほうがかっこいいから使ったまで。(かっこつけてどうする)

前にも書きましたけど、コーネルピンという石、すごいです。方向によってころころと色が変わる。特に透過光ですごい。
といっても、すべてのコーネルピンが多色性を持つわけではない。普通は、無色ないし薄緑の透明。

これは夕星庵さんで買ったとてもお安い非多色性コーネルピン。これもまた美しい。

で、その魔術的な美しさに魅せられて、もうひとつ、大きめの原石を買った。同じくKARATZ さんから。前のが0.66カラット、今度のは1.140カラット。だいぶでかい。っても小さいけど。
貧石的には高かったのだけど、おまけでカイヤナイトとアパタイトのミニルースが付く日があったので、ここぞとばかりえいっと。
前に書いた時、「赤はさすがにない」と書いたけど、なんと、今度のは赤も出る。驚き。インクルージョンのせいみたいだけど。
一層多彩で、美しい。





動画のほうがわかりやすいかな。いつものごとくツィッターで。
写真も動画も一端しか表わせてないですけど。

ツィッターでも書いたけど、五反田さんで買った回転台、ちょっとこういう方向変色の石を乗せて回してみたかったのです。何とか動画が撮れて嬉しい。

いやほんとに、こんな石があることは知らなかったのですよ。こういうの、「プレオクロイック・コーネルピン」とか「ポリクロミック・コーネルピン」として、大々的に宣伝すればいいのにと思うんですけどね。


きらきらくるくる

2022-03-21 17:57:01 | 漫筆

(何だよこのタイトル)
久しぶりにクリスタルワールド五反田TOC店さん(きちんと名前を書くのは久しぶりじゃないか?)に寄った。
ここも9月までで御徒町に移転。この広い倉庫のような店で、何かとんでもないものが隠れているのではないかと「宝探し」をするのは、とても楽しい時間なのでちょっと残念。まあ御徒町も2階構成になるので広くなるらしいけど。

で、宝探しをしていたら、アポフィライト(魚眼石)のクラスターが何と600円で売っていた。
色はない。アポフィライトというと、グリーンのものが人気もあって高い。無色じゃ水晶と変わらんではないかなどと思っていたけれど、実際見るときらきらと美しい。

そういえばうちには結晶自慢のやつがあまりいなかったなと思って、買うことにした。
二つのクラスターがくっついたような形で、片方は大きな結晶単体が乗っかっていて、もう一方は細かい群晶。なんでこんなんなるのかね。面白い。
五反田さんはいろいろなものを安く売ってくれるので嬉しい。

で、もう一つ、奥の方に積んであった「ソーラー式回転ディスプレイ」。中国製のおもちゃのようなものだけど、900円。安いし、御徒町では置いてくれるかどうかわからないので、購入。

ほかにも買ったのだけどそれはまた。
で、家に帰って、回転ディスプレイを出してみた。なかなか面白い。
しかしこれで何を回すのか、と半ば自分に呆れながら思案していたのだけど、はたと思いついてアポフィライトを乗せて回してみた。
おお、いける。(古い表現だね) 結晶面が次々にきらきらと輝く。
小さなライトが三つ付いていて、赤青緑にころころばらばらに変色するのだけれど、さすがにそれはちょっとご遠慮させていただく。
いつものごとくツイッターに動画を載せました。

まあ人から見たら大したこたあねえじゃねえかと言われそうだけど、なにせ合計1500円でこれだぜ。いいじゃん。
勝手に回って、きらきらくるくる。はは、楽しい。(楽しければいいさ)