貧乏石好き

つれづれなるままに石をめぐりてよしなきことを

紅葉石:ビクトリア・ストーン、イイモリ・ラボストーン、ILストーン

2024-07-24 21:04:25 | 単品

「ビ」だったり「ヴィ」だったり、「ストーン」だったり「ストン」だったり、「・」があったりなかったり、表記はばんらばんらですね。製造元表記では「ビクトリアストン」「ILストン」のようですけど。
化学者・飯森里安によって創作された一連の人造宝石の名称。

飯盛里安(いいもり さとやす)は1885年金沢市生まれ。東京帝国大学・大学院卒業後、1917年理化学研究所に入所、主に放射性鉱物と希元素の研究を行う。1919年イギリス留学、帰国後、日本に放射化学を導入し基礎を確立させた。太平洋戦争中は、理研の原子爆弾開発研究に加わり、ウラン鉱の探索・採掘・精製を行なった。戦後は占領政策により放射化学の研究が禁止されたため、陶器釉薬の研究に進み、そこから人造宝石を着想し、「メタヒスイ」、「ビクトリアストン」などを合成製作した。1962年に人造宝石の製造販売会社飯盛研究所を設立し、商業規模の生産を行った。1982年没。ウィキペディアに詳細な記事があります。けどこの記事ちょっと長すぎね?(こら)
「メタヒスイ」は透明度の高い翡翠様輝石、「ビクトリアストン」は石英の基質中に様々な鉱物の繊維状結晶を凝縮させたもの。その他、トルコ石、ジルコンなどの類似石を作成、総称して「イイモリラボストン」「ILストン」と呼ばれる。
1969年にアメリカの宝石業界誌「Lapidary Journal」が紹介記事を掲載、1970年のトゥーソン・ショーで紹介され、欧米では人気を博したが、日本ではあまり注目されなかった。

     *     *     *

おなじみパーフェクトストーンさんが、どっかから掘り出してくるらしく(掘りはせんだろ)、時々どっと出品なさる。中でも「紅葉石」と呼ばれるものは超人気で、十数秒のうちに売り切れる。ほんとにあっという間に焼野原。
常々、「オジジには無理ぽ」と横目で見ていたのだけど、先日、何の拍子か「いっちょ参戦してみようか」と思い立った。
最初狙ったのはあえなく撃沈して今回も駄目かなあとごそごそやったら、何と一つスナイプできた! へえ。そんなこともあるもんですねえ。(自分であきれてどうする)

百戦錬磨のスナイパーたちのフロント・ターゲットではなかっただけに、ちょっと暗めなのだけど、強い光を当てると不思議な紅葉模様が浮かび上がる。何かの結晶なんでしょうけど、何なんでしょう。
さらに不思議なことに、光の当たり具合でところどころラブラドレッセンス風のシラーが揺れる。
シラー? けっこう複雑な構造をしているということでしょうかね。人造宝石でキャッツアイというのはあるけど、ラブラドレッセンス風シラーというのはあまり見たことないような。



磨いていない断面の輝きも変わっている。やっぱ複雑そう。

紅葉模様といい、シラーといい、こんなものがどうやってできるのか。
どうも「晶癖調整剤」=「媒晶剤」に秘密があるらしい。「晶癖」は結晶のでき方のこと。何らかの成分を加えると、それに応じて結晶の姿が変わるらしい。
まあ結晶というのはわけわからんもので、同じ鉱物でも生成環境や微細な付随物質によって結晶の姿は千差万別になったりする。それをコントロールするのは至難の業。「触媒」と同じで理論的に解明されているわけではないので、とにかく試行錯誤していくしかない。大変な作業ですね。

飯森さんは優れた知性と強靭な探究心を持ちながら、戦争に翻弄された生涯を送った方のようですけど、その探究精神がこうやって美しい石となって残っている。すごいものですね。今頃あちらではどういう創造に加わっておられるのだろう、と夢想してみたり。(は?)

しかしパフェさん、どっから掘って来るんだろう。(掘っては来ないだろうよ)


人工ズルタナイト

2024-07-21 10:06:49 | 単品

ヤフオクに変な人造石が出ていまして。
合成ズルタナイト。ズルタナイトというのはダイアスポアの宝石名。

《この製品の素材は最新のナノテクノロジー半導体技術によってクリスタルとガラスをミックスさせ、きわめて小さな原子・分子レベル体の結晶結合で、モース硬度 7.5 の超強化合成素材を開発しました。しかも従来の物より格段に熱や強度が強く、透明感も素晴らしくクリアで、輝きも凄い素材です。このナノ素材で形成された変色効果のあるナノズルタナイト人工宝石(模造石)になります。天然のズルタナイト石と同じように鮮明なカラーチェンジが見られます。製造元によると7色のカラーチェンジが見られるとのことですが、明確に確認出来ているのは現在5色になります。蛍光灯ではグリーンに、白熱灯やLEDではワインレッドやイエロー色に、ブラックライトではパープルやレッドに変色します。》

面白そうなのでゲット。

普通は赤茶っぽいゴールド。ダイアスポアでこういう色はある。前に上げた。キラッキラできれい。

で、LEDの青系光だとレモンイエローに輝く。

電灯色ライトだとかなり赤くなる。

ブラックライト長波ではなぜか反応しない。微妙な波長の違いなのか。UV短波は持ってないからわからない。



結局3色しか確認できなかったけど、それでも面白い。
蛍光灯色と白熱灯色の両方で照らすと、二重人格状態になる。面白。



「ナノテクノロジー合成素材」というのはよくわからない。「ナノクリスタル」というのは時々見掛ける。
いろはに宝石さんにこういう解説文があった。
《ナノクリスタルは、カメラのレンズの反射防止コーティングや耐熱ガラスとして使用されていますが、2010年のツーソン・ショーに初めて宝飾用にカットされたルースが出展されましたが、その後市場でもほとんど見かけない人造石です。ロシア(モスクワ)のアカデミーオブサイエンスという会社が作ったようで工場はタイにあると聞いております。自然界には存在しない人造石で、ガラスに様々な金属を添加し、加熱処理を施し、非晶質のガラスが少し結晶化しているセラミックガラスと聞いております。》

非晶質のガラスと超微細な石英結晶、あるいは他の鉱物結晶をまじぇまじぇしたものということなのでしょうかね。
しかしただまじぇただけでは結晶配置がばんらばんらになって透明度がなくなってしまう。そのあたりをうまく細工したものなのか。

けど、ダイアスポア、AlO(OH) のような単純な組成だったら、珪酸抜きで人工合成できそうな気もするけど、そういうのとはちょっと違うのかな。

まあ人造石の世界も多彩で面白い世界ですね。


マンガン・ダイアスポア

2024-07-20 12:44:32 | ややレア

ダイアスポアは前に上げた
AlO(OH)。えらく単純なアルミの水酸塩。
V字型の双晶が有名。大きくてきれいなのは高い。よくあんなにきれいなV字になるものだと感心する。作り手がちょっと陽キャなのかな。いぇーいとか。(何言ってるのかな?)
宝石名はズルタナイト。登録商標らしい。日本人にはあまり美しい音ではないけどトルコ人がそこまで気にすることは不可能だしね。(何言ってるのかな?)
で、これはマンガンを含んだダイアスポア。マンガノアン・ダイアスポアと書くべきかな。(好きにしなさい)
南アフリカの N'Chwaning II鉱山産。同産地では前にオルミアイトを上げた。カラハリ砂漠中。
カラハリ砂漠っちゅうのは南部アフリカのボツワナ、ナミビア、南アフリカにまたがる巨大乾燥地で標高1000メートルを超える所もあるけれど、雨が降って植物が生えているところもあって厳密には砂漠ではないらしい。けれどナミビアのナミブ砂漠もカラハリ砂漠の一部とされることがある。けど、今砂漠であることと大きな鉱床があることとは直接な関係はないですわな。(じゃ書くなよw)
石炭、銅、ニッケル、ダイヤモンドなどが出る。ンチュワニン第二はマンガン鉱山だとか。



ちょっと恐い写真になっちゃったかな。がおーっと言ってるみたい。(撮り直しなさいなw)
赤い。マンガンだものね。マンガンで黒くなるやつもいてそれはそれで美しいけど、赤はマンガンらしく素直でよろしい。(何言ってるのかな?)
透明度がないから大きいけど安い。高ければ透明になるのかどうかは知らない。(何略)
けどふちの部分はうっすらと透ける。ちょっとぞくっとする。アズライトなんかもそうだけど、不透明と見せかけて端っこがちょいと鮮やかな色に透けるというのは、人を驚かせて魅了する。あざとい。(何略)



結晶面の輝きが美しい。


けどこの質感はなんか長石っぽい。え? 長石はテクト珪酸塩、これは水酸塩だぜ。全然違うじゃん。なんで似てるの? だからあちきは結晶構造主義を信じないんだよね。(何言ってるのかな?)

しかしさあ、日本語版ウィキペヂア(こら)のダイアスポアの項目なんて、書きかけですよ。トルコ産で美しいV字型双晶が出るとか宝石質のものはズルタナイトという異名があるとか、そういうことすら書いてない。石界の知識人たちはさぼってない?(誰に言ってるのかな?)
でもね、これはこれでこの石の美しさを立派に表現していると思うのですね。(なんか千鳥足文章だねw)


兵庫県大屋の翡翠

2024-07-19 18:14:02 | ややレア

クリスタルワールド御徒町店さんにて。現在は入手不可能なレア鉱物。
「大屋の翡翠」。




1977年(昭和52)3月、兵庫県養父市大屋町加保坂で道路工事の際に蛇紋岩が出土、その中に角閃石類やバーミキュライトに取り囲まれて曹長石を伴う翡翠輝石塊が発見された。地層と一体になっているため翡翠の自然産状を示す日本唯一の事例といわれている。昭和58年3月に「加保坂の硬玉(ヒスイ)原石露頭」として兵庫県指定文化財に指定。詳しくはこちら。ただしけっこう誤表記のある記事です。

クリワさんの説明。
《曹長石と混在する翡翠輝石岩です。発見現場は兵庫県が文化財に指定して保護されています。この標本は昭和52年の林道工事の時に下の谷(日城谷)に捨てられた廃石の中から採取したものです。現在では谷での採集も禁止されています。》
「宝石としての価値はゼロです」とも書かれていた。これは大屋町のサイトにもある言葉。

現地写真はこちら。ウィキコモンズから。

色は白っぽいですけど、あちきはこういう淡いのは好みです。
そして何より長石との混合。結晶面がキラキラと光る。

稀少というだけでなく、いい石だと思います。

     *     *     *

翡翠がどうやってできるかというのは、いまだに謎。
一時は「低温高圧状態で曹長石から生成される」という見解が有力だったが、その際にできるはずの石英があまり見られないことから、曹沸石からではないかという説が有力になっている。らしい。けどその曹沸石がどうやってできたのかはどうもよくわからない。
ところが大屋地域では曹長岩中に大きな結晶が見られるだけでなく、曹長岩中の亀裂に翡翠が脈状に生成している例もあり、「熱水からの生成」ではないかとする説も出ている。こちら。ええ? 熱水からあんな姿のものが出る?

結局のところ、まだ「わからない」のです。産状の地層がはっきりしているこの翡翠でも、何かがわかるわけではない。
ただ、こういう長石のキラキラが入るというのは、糸魚川のものにはあまりないようで、だとしたらちょっと特殊かもしれません。あちきのような素人が持つべきではない石かな。

翡翠は「国石」。しかし謎を秘めた石。
そして翡翠の一番の魅力は、糸魚川あたりへ行けば「(運がよければ)誰でも手に入れることができる」ということかもしれません。えらく民主主義的(?)な石ですね。そういう石が国石になっているというのはいいことではないでしょうか。


どっかーんと不思議な青翡翠

2024-07-17 20:21:35 | 単品

ヤフオクは時々エアポケットのように応札者が集まらずよさそうなのにお安く落札できてしまうものがある。なんでだかはわからない。
これもその一つ。巨大な翡翠。普通は万だろうに恐ろしく安かった。
で、どっかーんと到着。



でけえ。前に白翡翠のでかいのを安く落札したことがあったけど、もっとでかい。幅17cm、2.45キロ。漬け物石級。
大きすぎて皆さん引いたのかな。あちきは水石のおかげで大きいのには馴れてきている。美濃の壷石にはまいったけど。(もうベランダ出られないんじゃないの?w)

でかいだけじゃない。実に面白い翡翠。
出品者は黒部市の薬石苑さん。プロです。説明にこうある。

《糸魚川翡翠原石【超稀少タイプ】青色の翡翠 2,450g
■産地:新潟県糸魚川市姫川or青海川(記憶曖昧)
■状態:サンドペーパーによる表層の汚れ取り
■サイズ:170mm×130mm×63mm
■重量:2,450g
■透明度:良く透す&極めて良く透す(目視確認)
■採取地:約27年前(47歳)頃に姫川or青海川(記憶が曖昧です)
一見、横川のコバルト翡翠若しくは糸魚川アイトに見られる色模様ですが、横川コバルトの透明度は微弱なのに対し、こちらは格段に透明度が高く、糸魚川アイトの色模様は柔らかくて研磨で落ちてしまいますが
この原石は殆ど落ちる事はありません。入コン沢の青色翡翠の様な石質でありながら、横川コバルトや糸魚川アイトの様に雫模様やアメーバー状の模様を持った極めて稀なタイプです。》

27年前に47歳? あちきより(そういう話はやめときなさい)
プロがそう言うんだから間違いないでしょう。
あちきの素人目でも、翡翠の重厚な質感が感じられる。白も青もいい色。あちきは緑よりこういう方が好きです。



透明度もある。仄緑のいい色ですぜ。

不思議なのは表面のクラック状模様。みしみしと圧せられたか熱せられたかのように、ひび割れている。あんまりこういうの見たことない。何なんでしょう。

詳しいことはこれ以上わかりませんが、とにかく迫力があって、美しい。
稀少品なら数十万でもおかしくないだろうに、超安値でラッキーでした。安くてもお宝。(めでたしめでたし)
なでなですると、大きいからひんやりずっしりして、とても気持ちがいい。握り石なんぞの比ではない。
いっそ抱いて寝るかな。(ええ?) どんな夢を見るか。(溺死の夢とかw)