貧乏石好き

つれづれなるままに石をめぐりてよしなきことを

ベニトアイト

2024-03-31 20:13:03 | ややレア

泣く子も黙るプレシャス・レアストーン。高い。
Benitoite。1907年にアメリカ・カリフォルニア州サンベニト郡で発見。アメリカが産出する三大レアストーンだとか言われる。
化学組成は BaTiSi3O9。
ベニトアイト・グループというのがあって、次の3つが同類。
 パブスタイト Pabstite Ba(Sn,Ti)(Si3O9) 無色、白色
 バジライト Bazirite BaZr(Si3O9) 無色
 ウェイダイト Wadeite K2Zr(Si3O9) 無色、水色、ピンク
聞いたこともない石ばかり。ちなみに(Si3O9)というのは珪灰石がそうですな。Si3O9 と緑柱石なんかの Si6O18 はどう違うのか、理系でないあちきにはわからない。(わからないなら黙っていなさい)

バリウムとチタンのケイ酸塩ということだけど、何か変ですな。バーライトもルチル三兄弟もこんな色してない。アナテーズには青っぽいものもあるけど、大体は不透明だし。チタンの3価イオンは青紫色になるそうで、そのせいか。よくわからん。(わか略)
流紋岩質火成岩は玄武岩質のものに比べ鉛やバリウムに富む傾向があるので、その中でチタン鉄鉱が変成して鉄がバリウムに代わったということなのでしょうか。よくありそうな感じだけど、ベニトは稀産というのは,、よくわからん。(わか略)
ロシア、チェコ、カナダ、オーストラリアなどで出るし、日本では新潟県糸魚川市橋立金山谷、大分県佐伯市下祓鉱山、東京都奥多摩町白丸鉱山でも出たらしい。けれど、美しい結晶はサン・ベニトに限られるみたい。
青が美しいことで知られるけれど、屈折率は1.757~1.804でコランダムやガーネットと同クラス、分散度もダイヤモンドと同等の0.044、と輝きの美しさも秀でている。

と、うだうだと書いてきたのはそんな稀少で高価な石は貧石には無理だからだろう、と思いきや、まあかろうじてあるんです。あるけどわざわざ上げるほどのものではないので、バリウムついでで、となったわけ。
過日、KARATZ さんで小片の磨き石がお安く出ていたので、ぽちっ。左右5ミリと小さいけど、やはり美しい。

青の色はかなり深い。こういう深く澄んだ青というのは……天藍石、ベゼリアイト……どれとも違いますねえ。何かあるかな。青サファイアの極上ものとか?
透明な部分と色の濃い部分があるのは小結晶の集合だからみたい。ムラがあるからカットには不適となったのだろうけど、こういうのもいいんじゃないかな。
まあ世には驚愕するほどの美麗結晶もあるけれど、星の彼方だし、そういうことを言い出せば何だってそうだし。こういう小品でも味わいはあるのですよ。(……)
うん、かなり負け惜しみであることは認める。まあそのうちね。


尾崎鉱山産重晶石(バーライト・ローズ)

2024-03-31 10:47:57 | 国産鉱物

「ほお、こんなバーライト・ローズが国内でも出るんだ」と感嘆してポチっ。

淡いオレンジピンク。繊細な花弁状結晶。とても美しい。




青森県平川市尾崎鉱山産。重晶石の有名な鉱床らしい。

バーライト、あるいはバライト。Barite。重晶石。BaSO4。はあ、こうやって英語風名、英語綴り、和名、組成式をいつも書くのはちょとうんざりする。(別に好きでやってんだろ?w) いっそ和名だけにすればいいのかもしれないけど「シャッツク石」なんて書くのは嫌だし。(まだ言ってるw)

こういう花弁状結晶でよく知られているのがデザート・ローズ。球形のものがあちこちで安く売られている。多くはジプサム(石膏)だけれど、重晶石のものもあるという。ちょっと生き物みたいで好みではない。しかしあれ、ほんとに砂の中でできるんですかねえ。
普通の花弁状結晶クラスターでは、ほかにヘマタイト、マイカ、セルサイトなどがある。どれも美しそうで、欲しい。(オジジなのに乙女チックw)

バリウムはにっくき敵。気持ち悪くなるしトイレに詰まるし。あれほんとに有効なんですかね。前、あれで異常が出てカメラ飲んだら何ともなかった。どうもアヤシイ。しかし、工業用用途はいろいろあって、主にこの重晶石から採るらしい。
形や色は様々で、『宝石と岩石の大図鑑』の著者さんいわく、「これほど柔らかく、また欠けやすくなかったなら、美しい宝石として珍重されたことだろう」と。
これは前に買ったブルー・バーライト。なかなか。

重晶石は日本でも秋田県小坂鉱山、北海道松倉鉱山、手稲鉱山などで産出したらしい。秋田県の玉川温泉から出る鉛含有で放射能を持つ北投石もバーライト。いろいろな地質環境で出る汎産の石のようですな。

バリウムを含む鉱物はIMA認定で246。けっこう多いけど主な鉱物はバーライト、ウィザーライト(BaCO3、毒重石)、ホランダイト(Ba(Mn4+6Mn3+2)O16、ホランド鉱)、ベニトアイト(BaTiSi3O9)など。重土長石(Celsian、Hyalophane)、重土十字沸石(Harmotome)なんてのもある。不思議な名前ですな。セルシアンなんてお菓子屋さんみたい。けど重土長石の「商品」でググると、なんと漬物石がわんさと出てくる。爆笑。

お? ベニトはバリウム鉱物だったか。ではそれを次に。


天然グリーン・アメジスト

2024-03-27 22:06:48 | ややレア

*水曜水石はネタ切れです。すんまへん。

緑、です。


出品者さんいわく、
《ブラジル産、天然プラシオライト(グリーンアメシスト)の原石です。一般的な紫のアメシストに比べかなり採掘量の少ない希少な石です。タイの宝石研磨工場にて直接買い付けた原石です。研磨する石にはもともと品質の良い原石が多いのですが、その中よりさらにグリーンが鮮やかで透明感のある綺麗な物だけを選別して購入してきました。ご覧のようにインクルージョンの極めて少ない上質な物ですので、カットすれば最上級のルースになることでしょう。》

ずっと前に上げましたけど、アメジストを加熱するとごくたまに緑に変化することがある。それをティファニーが「プラシオライト」と商品名を付けて大々的に売り出した。
けど、これは「天然」だという。プラシオライトではないですね。「天然グリーン・アメジスト」。
プラシオライトが出る前に、「グリーンのアメジスト」があるということは知られていたようだけど、稀産とされていた。これはその稀産石ということになる。

グリーン・アメジストは、緑水晶とは違う。
緑水晶というのは、クローライトなどの微細インクルージョンによって緑になっている。こちら
けれどこれは、おそらく結晶構造の中に入り込んだ鉄によって緑に発色している。
アメジストの紫は鉄が関係していると考えられている。けれどどういう仕組みで発色しているかは結論が出ていないらしい。珪素を置換した鉄が結晶の歪みを作るせいだという説もあれば、イオンのせいだという説もある。素人にはちんぷんかんぷん。
天然アメトリンやシトリンの色も同じ。紫や黄色の正体がわからないのだから、この緑の正体もわからないでしょうね。プラシオライトでは紫が加熱されて緑になるんだから鉄のせいでしょうけど、もしかしたら全然別の原因があるかもしれない。見た目が同じだからといって中身が同じということにはならない。(なんかうざいぞ)
わからないことがあるというのはいいですね。最も身近な鉱物である水晶にも謎があるなんて面白い。「明証的な世界は不毛である」と……じっちゃが言っていた。(誰だよそれ)

じっくり観察すると、水晶自体がうすーい緑で、結晶面やクラックのところでかなり濃くなる。光が複雑に屈折するからでしょうか。




ともあれ、インクルージョンのせいではなく、水晶自体が緑。それってとてもレアなことではないでしょうか。
おまけにこの石、インクルージョンがほとんどないしクラックも少ない。
すごくね?

もっとも、100%、一点の曇りもなく「未加工」かと問い詰められると困る。解析してもたぶん加熱か否かは決定できないんじゃないかな。
ただ、「焼きアメジスト」というのは、シトリンなんかを見ると、どうもムラやクラックが出るらしい。こやつはそんな感じはない。
あちきは天然だと思っています。

この「あるかなきか」の淡い緑、とても素晴らしい。
水晶なのに「ベリー・レア」ですし。


シデライト

2024-03-24 12:01:01 | 単品

思わぬ伏兵。(だからそれは同語反復だっちうに)
シデライト。Siderite。古ギリシャ語の「鉄」である「シデロス」を堂々と名前にする石。つまり「鉄石」。ちなみにヘマタイトのヘムは「血」。
和名は菱鉄鉱。名前はおぼろげに聞いたような気がするくらいで、知らないに等しかった。
ところが先日、ヤフオクでこれを見つけて、おう、なかなかと思ってポチっ。
中国貴州省産。
普通の光だと地味。赤っぽい、何とも言い難い色をしている。

ところが強い光を当てると緑色に変わる。カラーチェンジじゃないですか。

透き通る。前にヴィヴィアナイトのとこで「鉄が透き通るなんておかしくね?」と書いたけど、この石も透き通る。不思議。

菱鉄鉱という名前の通り、菱形結晶が美しい。

さらにすごいのは輝き。クラスターがピカッピカッと輝くのはよくあるけど、これはピッカーッピッカーッ。(ひどい表現だね) 写真には写らないけど。

宝石のカットルースは光をうまく集めてピ略と放射するけれど、それに匹敵するくらいの強い輝き。どういうことなんでしょうね。
いやあ、すごい役者。

FeCO3。鉄の炭酸塩と単純。
菱鉄鉱の菱というのは、炭酸のことかと思ったら結晶が菱面体だからだそうで。菱亜鉛鉱(スミソナイト)、菱苦土鉱(マグネサイト)、菱マンガン鉱(ロードクロサイト)。みんな炭酸塩。しかし同じ単純炭酸塩のカルサイトやセルサイトは菱~とは言わない。菱形じゃないということかな。しかしアデュラリアのことを菱長石とは言わないね。(ごちゃごちゃうるさい)
火成岩、堆積岩、変成岩のいずれもから出る汎産鉱物。
けど、あんまり鉱物標本商品としては見ない。美しくないのか。
と思って mindat のフォトギャラリーを見て唖然。色にしろ形にしろ、何と多彩なことか。
花弁状の結晶集合もある。ヘマタイト・ローズというのは見たことがあるけど、シデライト・ローズというのもあるんですな。
いやいや。パイロモルファイトでも唖然としたけど、鉱物というのは組成や結晶構造なんかどこ吹く風みたいに勝手な色や姿を取ることがあるんですな。
造化の妙というか、ガイアの子分たちの傑作というか。(だから誰だよ)

鉄鉱物の美麗商品としては、ヴィヴィアナイト、パイライト、エジリン、ショール、アルマンディンくらいですかね。けど、シデライトももう少し出回ってもいいのではないかな。
がんばれ、「鉄石」。

で、おまけに「鉄が主役の鉱物」メモを別項で。(暇だねw)


主な鉄鉱物

2024-03-24 12:00:27 | お便利メモ

鉄というとまず「鉄鉱石」が出てくるわけで、何と言っても鉱業の王。地球固体の3割くらいは鉄だそうだし、いろいろと用途があるし、仕方がない。
鉄鉱石は、主に酸化鉄。ヘマタイト、マグネタイト、ライモナイト(リモナイト)。硫黄を含むパイライトなどは製鉄には適さない。
大規模な鉄鉱床は「縞状鉄鉱層」にある。このうち多くを占める「スペリオル型」は、22~27億年前、シアノバクテリアの誕生によって大気・海水に酸素が大規模供給され、それまで海水中でイオン化していた鉄が酸化鉄として沈殿したもの。広い意味での「水成鉱物」ですな。もっともマグマ由来の鉄鉱床もあることはある。「アルゴマ型」縞状鉄鉱層はマグマ由来だとか。こちら参照。
鉄鉱物はほかにペグマタイトや熱水鉱脈由来のものもある。観賞用の美しい標本はだいたいそれでしょう。

鉄を含む鉱物はIMA認定で1167。全鉱物の5分の1もある。はは。日本語版ウィキペディア「鉄鉱物」には89が載っているけれど鉄鉱物とは言えないようなものもある。
何にでも顔を出すウザい奴、というわけでもない。鉄のお蔭で美しく発色している鉱物はたくさんある。アメジストの美しい色も鉄が原因だと言われている。インクルージョンとしても活躍するし。

無理無体を承知で「鉄が主役となっている」鉱物を挙げてみる。はなはだ主観的なので参考程度。英語風読みの50音順。

【酸化】
イルメナイト Ilmenite チタン鉄鉱 FeTiO3
ゲーサイト Goethite 針鉄鉱 FeO(OH)
ヘマタイト Hematitie 赤鉄鉱 Fe2O3
マグネタイト Magnetite 磁鉄鉱 Fe3O4
ルドウィジャイト Ludwigite ルドウィヒ石 Mg2Fe3+BO5
レピドクロサイト Lepidocrocite 鱗鉄鉱 FeO(OH) 62.8
【硫化】
アーセノパイライト Arsenopyrite 硫砒鉄鉱 FeAsS
カルコパイライト Chalcopyrite 黄銅鉱 CuFeS2
スタナイト Stannite 黄錫鉱 CuFeSnS4
ジェームソナイト Jamesonite 毛鉱 Pb4FeSb6S14
ジャーマナイト Germanite ゲルマン鉱 Cu26Ge4Fe4S32
バーシエライト Berthierite ベルチェ鉱 FeSb2S4
パイライト Pyrite 黄鉄鉱 FeS2
ピロタイト Pyrrhotite 磁硫鉄鉱 Fe1-xS
ペントランダイト Pentlandite ペントランド鉱 (Fe,Ni)9S8
マーカサイト Marcasite 白鉄鉱 FeS2
【珪酸】
アクチノライト Actinolite 緑閃石 Ca2(Mg,Fe)5Si8O22(OH)2
アナイト Annite 鉄雲母 KFe32+AlSi3O10(OH,F)2
アルマンディン Almandine 鉄礬柘榴石 Fe3Al2(SiO4)3
アンソフィライト Anthophylite 直閃石 (Mg,Fe)7Si8O22(OH)2
アンドラダイト Andradite 灰鉄柘榴石 Ca3Fe2(SiO4)3
エジリン Aegiline 錐輝石 NaFeSi2O6
エピドート Epidote 緑簾石 Ca2Fe3+Al2(Si2O7)(SiO4)O(OH)
オリヴィン(ペリドット) Olivine 橄欖石 (Mg,Fe)2SiO4
ガドリナイト Gadolinite ガドリン石 (Ce,La,Nd,Y)2FeBe2Si2O10
ショール Schorl 鉄電気石 NaFe3Al6(BO3)3Si6O18(OH,F)4
デーナライト Danalite デーナ石 Fe2+4Be3(SiO4)3S
ピジョナイト Pigeonite ピジョン輝石  (Mg,Fe,Ca)2Si2O6
ヒューマイト Humite ヒューム石 (Mg,Fe)7(SiO4)3(F,OH)2
ヘデンバージャイト Hedenbergite 灰鉄輝石 CaFeSi2O6
【炭酸】
シデライト Siderite 菱鉄鉱 FeCO3
【硫酸】
メランテライト Melanterite 緑礬 FeSO4・7H2O (主に人工顔料)
【リン酸】
ヴィヴィアナイト Vivianite 藍鉄鉱 Fe3(PO4)2・8H2O
カコクセナイト Cacoxenite カコクセン石 Fe3+24AlO6(PO4)17(OH)12・75H2O
スコルザライト Scorzalite 鉄天藍石 (Fe2+,Mg)Al2(OH,PO4)2
ストレンジャイト Strengite ストレング石 FePO4・2H2O
トリフィライト Tiphylite LiFe2+PO4
【砒酸】
スコロダイト Scorodite スコロド石 Fe(AsO4)・2H2O
【タングステン酸】
ファーベライト Ferberite 鉄重石 FeWO4

他に角閃石・緑泥石の一部