貧乏石好き

つれづれなるままに石をめぐりてよしなきことを

ロマネカイト&ゲーサイト

2024-07-31 20:53:56 | 単品

なんかクリスタルワールドさんで変な石が出ていて、長らく迷ったのだけどもう残り少なくなってきたようなのでゲット。
ロマネシュ鉱・針鉄鉱。Romanechite with Goethite, Kiralyszentistvan. Veszprem, Hungary.

けったいな姿。
あちきは形・姿というのはあんまり感受性がないのだけど、時々変な姿のものを見ると欲しくなる。前に買った変なブルー・カルセドニーなんかも、その奇っ怪な姿に惹かれて買った。
過日、Xで、……しかしこの名前、馴れないですねえ、ツイッターの方がよかったのに。ええと、Xで「奇っ怪な石見せてください」というハッシュタグを出してみたんだけど、反応ゼロ。まああちきのポストなんぞ見る人はほとんどいないせいもあるけど、奇っ怪な石を集める人はあんまりいないのかもしれない。
まあこれは奇っ怪ではあるけどかわいくもある。

母岩にあたる黒いのがロマネシュ鉱。Ba2Mn5O10。バリウムとマンガンの酸化鉱物。まあマンガンらしく黒。見えにくいけどざらざらしてあまり輝きはない。
それに花というかカビというか(ずいぶん違うぜ)咲き誇っているのが針鉄鉱。ゲーサイト。言わずと知れたあのギョエテではなくゲーテの名前を冠した鉱物。mindat の発音の項目を聞くと、「ゲートハイト」とか「ゲーツァイト」にも聞こえる。どこの言語も外国語発音には難儀しているらしい。
FeO(OH)。鉄の水成二次鉱物。レピドクロサイト FeOOH とともにライモナイト=褐鉄鉱の主成分を成す、汎産鉱物。この Limonite はリモナイトともライモナイトとも読むらしい。どっちかにしろよ。(うるせー)
ゲーサイトはマーカサイト仮晶のトゲトゲ石「ゼットストーンあるいはエジプトの星」とか酸化被膜が虹色に輝く「虹の石」とかでも知られる。
mindat のフォトギャラリーを見ると、これもまた千変万化。あきれる。

しかしこれ、ロマネ君とゲーテ君の関係というのは何ですかね。組成的にはあんまり関係ない。
同じ熱水の中からロマネ君が先にでき、その後にゲーテ君が結晶したのか。それともロマネ君ができた後に別の鉄入り熱水が入り込んできて花を咲かせたのか。(細けえなw)
mindat の組成別鉱物リスト(好きだねえw)を見ると、バリウムとマンガンと鉄を全部含む鉱物というのはなんと6種しかない。バリウムと鉄だと53。うむむ、バリウムと鉄は仲が悪い? だから別々に結晶した? それとも全然無関係?
まあ、作り手が黒だけじゃ寂しいなと思って鉄水を持ってきて花飾りを作ったのかもしれませんね。(何言ってだこいつ)
いずれにしろ、奇妙なプロセスでできた石のようですね。


ジャーマナイト(ゲルマン鉱)

2024-07-28 10:55:17 | ややレア

ずっと欲しいなと思っていたものをようやくゲット。エヌズさんのヤフオク版。貧石価格オーバーだけど途中でプライスダウンがあったのでまあ機会かなと。
かなりレア・ストーンではないかな。エヌズさん以外で見たことがない。
しかもこれ、かのツメブ鉱山産、「原産地標本」。すげえぜ。

まあ美しい。虹色というのではない。青と紫と金が主体のきらきら。見ほれる。





さらにさらに、こやつ、UVライトで妖しく蛍光する。(あれ?これドジ踏んだやつじゃね?w) しーっ。



Cu13Fe2Ge2S16。銅と鉄とゲルマニウムの硫化鉱物。熱水性とされるけど例の硫化物メルト生成物じゃないかな。
硬度4、比重4.46-4.59、立方(等軸)晶系。大きな結晶はまず出ない。
この輝きはゲルマニウムならではなのかと思ったけど、銅と鉄が入っているからそうは言えない。けどどう組み合わさってこの色が出るのか、不思議不思議。

ゲルマニウムは元素番号32、炭素族。半導体。英語ではジャーメイニアム。ドイツの古称ゲルマンに由来。蛮族名ですな。(こら) この石もゲルマナイトと表記したいのはわかるけど、そんな言葉はない。
ゲルは(政治家か?)レアメタルのリストに含まれたりするけれど、金属ではない。炭素族は炭素、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、鉛、フレロビウム。あれ、金属あるじゃん。わけわからん。
電子部品に使われたり、医薬品、健康食品、健康器具に使われたり、実にアヤシイ物質。健康器具で「効果あり」という研究論文もあるみたいだけど、じゃあ何が作用しているのかとなるとはっきりしない。
あちきなんぞは小学生向け科学雑誌の付録でゲルマニウム・ラジオなるものを作った記憶がおぼろげにある。なんで電池がなくてラジオが聞けるのか不思議だったけど理屈は結局わからなかった。はるか昔の物語。
飛び交っている電波を捉える性質があるのなら、そこで発生する微弱電流が人の健康に何らかの作用を及ぼすのかもしれないけど、何か変な電波を捉えて悪魔に忍び込まれたりしないかしら。(あほ)

ゲルマニウムを含む鉱物は37種しかない。名前も全然聞いたことないものばかり。
ゲルマニウムは主にスファレライト(閃亜鉛鉱)に微量に含まれるものを回収して得る。他にこのジャーマナイト、レニエライト(Renierite、レニエル鉱、(Cu,Zn)11Fe4(Ge,As)2S16)、アージロダイト(Argyrodite、硫銀ゲルマニウム鉱、Ag8GeS6)などがあるが、産出量はきわめて少ない。
ゲルマニウム鉱物で日本原産のものに、ミチトシアイト(Michitoshiite-(Cu)、三千年鉱、Rh(Cu1-xGex))という合金鉱物がある。世界でただ一ヶ所、熊本県下益城郡美里町払川でしか発見されていない。名前は鉱物学者宮久三千年から。へえ、見てみたいですな。って Rh って何?

さて、ツメブ鉱山。ナミビアのオシコト(Oshikoto)地方にある世界的に有名な鉱山。銅、鉛、亜鉛、銀、ゲルマニウム、カドミウムのほか、様々な稀少鉱物を産する。1907年に創業、1996年に一度閉山したが、別会社が引き続き採掘を行っている模様。
なんと345種の鉱物を産し、72種の鉱物の「原産地」となっている。すごいですねえ。グの地図で見ると特に変わった地形ではなさそうなのに、どういうからくりなんでしょう。
ツメブ産の標本はあちこちで見る。美しく、高いものが多い。さすがだねえ、しかし貧石には遠い世界だねえ、と思っていたけど、今回ひょんなことからお迎えしてしまいました。めでたしめでたし。
ツメブ産だし、素晴らしく美しいし、お宝石となりました。


布賀産五水灰硼石(ペンタハイドロボライト)

2024-07-27 20:16:44 | ややレア

*一昨日はドジ投稿で失礼いたしました。<m(__)m>

布賀産の鉱物標本というのはけっこう流通している。
あちきのような素人には猫に小判かなと思いつつ、ニフォントフ石スパー石はお安く出ていたので買ってみたりした。
五水なんちゃらというのも、ふうんと見ていたのだけど、ヤフオクでえらくお安く落札できそうなのがあったのでゲット。(なんか不埒な買い手だねえ) 名前がかっこいいじゃん?(不埒千万)



小さいけどかっこいい。結晶がキリっとしている。水晶クラスターじゃない?と思うほど。
不思議なのが色合い。LED通常光で強い光だと上のように黄色っぽくなるけど、普通だとちょっと薄紫っぽく見える。



蛍光灯色だと青くなる。



電球色ライトだと赤くなる。



おやおや、カラーチェンジじゃないですか。水晶はこんなにならんでしょう。

名産地で出る稀少石だからもてはやされているのかと思ったけど、美しさという点でもなかなかなのですねえ。えらく気に入りました。猫も小判で遊ぶ。(何だそれ)

五水灰硼石、ペンタハイドロボライト、Pentahydroborite。
CaB2O(OH)6・2H2O。水ばっかや。
mindat さんいわく、
《「ペンタ」は水が2つしかない種に対してはむしろ誤った名称だが、これは 6(OH) が3つの余分な水と間違えられたために生じた。》
科学的には「二水」が正しいわけだけど、そのまま正式名称になっている。

五で驚いてはいけない。やはり布賀で出るものに、なんと六水灰硼石 Hexahydroborite というのもある。
Ca[B(OH)4]2・2H2O or CaB2O4・6H2O、と midat さんにはある。あれ、数合わなくね?
これも「二水」だけど六水として正式鉱物名。
なんか両方とも水だらけ。ぎゅっと絞ったら水が滴りそう。(ねえよ)
水ばっかなので、軽い。五水は比重なんと2.00-2.03、六水は比重なんとなんと1.84。
はあ? 一般的な鉱物で最も軽いのはオパール、沸石あたりで2.1くらい。それより軽い。硫黄が2前後。こやつらはひょっとしてあらゆる鉱物の中で一番水っ気が多くて軽い石じゃないかしら。
何じゃね、これ。

じゃあ「ペンタ」や「ヘクサ」が付かないハイドロボライトというのがあるかというと、そういうのはなくて、「ハイドロキシルボライト、Hydroxylborite というのがある。組成は Mg3(BO3)(OH)3。あれ、これはカルシウムではなくてマグネシウムですね。こちらは水が少なくて比重2.89。

さらには「ハイドロボラサイト」というのもある。Hydroboracite。CaMg[B3O4(OH)3]2・3H2O。和名は加水方硼石または水硼酸石らしい。カルとマグの混成。水たっぷりで比重2.15-2.17。こっちの方が五や六に近いですね。
さらには「ハイドロ」が付かないボラサイトという鉱物もある。Boracite、Mg3(B7O13)Cl、方硼石。こちらは水っ気の全然ないがっちりした鉱物で比重2.91-3.1、硬度も7以上ある。
何にも付かないボライトという鉱物があるかというと、ない。「ボレイト borate」というのがあってこれは「ホウ酸塩」のこと。
はは、何のこっちゃ。頭ぐちゃぐちゃ。(わざわざややこしくしてるだろw)

ホウ酸塩鉱物というのは BO3 のものだけでも228ある。けれどあんまり一般的な石はない。ホウケイ酸塩のトルマリンを別とすれば、よく知られているのはイェレメーイェファイト=ジェレメジェバイト、硼砂、ウレキサイト、コールマナイトくらい。だから一連の「ボラ石」(なんだよそれ)は貴重とも言えるかな。ホウ素主体の鉱物はだいたい湖水が干上がって生じる蒸発性鉱物みたいだけど、布賀のものは一応「スカルン鉱物」なのだから、余計貴重なのかもしれませんな。

しかし現在、布賀での採集は不可でしょう?(よしなさいつまらん) 今出回っているのは過去に採取されたものがぐるぐる回っているということ? それにしちゃけっこうある。不可解。(こら)
まあ鉱物標本はコレクターが集めて、放出して、また別の、と回るものがけっこうあるみたい。特に名産地品や稀少品は。
あちきの持ってる石たちに稀少品は少ないけど、布賀のものなんかはあちきが死ぬ前に市場に戻さなきゃいかんかね。けど大鎌を持ったやつがやってきて「う」とか「あ」とか言ってたらそんな余裕もないしね。どうなることやら。


紅葉石:ビクトリア・ストーン、イイモリ・ラボストーン、ILストーン

2024-07-24 21:04:25 | 人工鉱物

「ビ」だったり「ヴィ」だったり、「ストーン」だったり「ストン」だったり、「・」があったりなかったり、表記はばんらばんらですね。製造元表記では「ビクトリアストン」「ILストン」のようですけど。
化学者・飯森里安によって創作された一連の人造宝石の名称。

飯盛里安(いいもり さとやす)は1885年金沢市生まれ。東京帝国大学・大学院卒業後、1917年理化学研究所に入所、主に放射性鉱物と希元素の研究を行う。1919年イギリス留学、帰国後、日本に放射化学を導入し基礎を確立させた。太平洋戦争中は、理研の原子爆弾開発研究に加わり、ウラン鉱の探索・採掘・精製を行なった。戦後は占領政策により放射化学の研究が禁止されたため、陶器釉薬の研究に進み、そこから人造宝石を着想し、「メタヒスイ」、「ビクトリアストン」などを合成製作した。1962年に人造宝石の製造販売会社飯盛研究所を設立し、商業規模の生産を行った。1982年没。ウィキペディアに詳細な記事があります。けどこの記事ちょっと長すぎね?(こら)
「メタヒスイ」は透明度の高い翡翠様輝石、「ビクトリアストン」は石英の基質中に様々な鉱物の繊維状結晶を凝縮させたもの。その他、トルコ石、ジルコンなどの類似石を作成、総称して「イイモリラボストン」「ILストン」と呼ばれる。
1969年にアメリカの宝石業界誌「Lapidary Journal」が紹介記事を掲載、1970年のトゥーソン・ショーで紹介され、欧米では人気を博したが、日本ではあまり注目されなかった。

     *     *     *

おなじみパーフェクトストーンさんが、どっかから掘り出してくるらしく(掘りはせんだろ)、時々どっと出品なさる。中でも「紅葉石」と呼ばれるものは超人気で、十数秒のうちに売り切れる。ほんとにあっという間に焼野原。
常々、「オジジには無理ぽ」と横目で見ていたのだけど、先日、何の拍子か「いっちょ参戦してみようか」と思い立った。
最初狙ったのはあえなく撃沈して今回も駄目かなあとごそごそやったら、何と一つスナイプできた! へえ。そんなこともあるもんですねえ。(自分であきれてどうする)

百戦錬磨のスナイパーたちのフロント・ターゲットではなかっただけに、ちょっと暗めなのだけど、強い光を当てると不思議な紅葉模様が浮かび上がる。何かの結晶なんでしょうけど、何なんでしょう。
さらに不思議なことに、光の当たり具合でところどころラブラドレッセンス風のシラーが揺れる。
シラー? けっこう複雑な構造をしているということでしょうかね。人造宝石でキャッツアイというのはあるけど、ラブラドレッセンス風シラーというのはあまり見たことないような。



磨いていない断面の輝きも変わっている。やっぱ複雑そう。

紅葉模様といい、シラーといい、こんなものがどうやってできるのか。
どうも「晶癖調整剤」=「媒晶剤」に秘密があるらしい。「晶癖」は結晶のでき方のこと。何らかの成分を加えると、それに応じて結晶の姿が変わるらしい。
まあ結晶というのはわけわからんもので、同じ鉱物でも生成環境や微細な付随物質によって結晶の姿は千差万別になったりする。それをコントロールするのは至難の業。「触媒」と同じで理論的に解明されているわけではないので、とにかく試行錯誤していくしかない。大変な作業ですね。

飯森さんは優れた知性と強靭な探究心を持ちながら、戦争に翻弄された生涯を送った方のようですけど、その探究精神がこうやって美しい石となって残っている。すごいものですね。今頃あちらではどういう創造に加わっておられるのだろう、と夢想してみたり。(は?)

しかしパフェさん、どっから掘って来るんだろう。(掘っては来ないだろうよ)


人工ズルタナイト

2024-07-21 10:06:49 | 人工鉱物

ヤフオクに変な人造石が出ていまして。
合成ズルタナイト。ズルタナイトというのはダイアスポアの宝石名。

《この製品の素材は最新のナノテクノロジー半導体技術によってクリスタルとガラスをミックスさせ、きわめて小さな原子・分子レベル体の結晶結合で、モース硬度 7.5 の超強化合成素材を開発しました。しかも従来の物より格段に熱や強度が強く、透明感も素晴らしくクリアで、輝きも凄い素材です。このナノ素材で形成された変色効果のあるナノズルタナイト人工宝石(模造石)になります。天然のズルタナイト石と同じように鮮明なカラーチェンジが見られます。製造元によると7色のカラーチェンジが見られるとのことですが、明確に確認出来ているのは現在5色になります。蛍光灯ではグリーンに、白熱灯やLEDではワインレッドやイエロー色に、ブラックライトではパープルやレッドに変色します。》

面白そうなのでゲット。

普通は赤茶っぽいゴールド。ダイアスポアでこういう色はある。前に上げた。キラッキラできれい。

で、LEDの青系光だとレモンイエローに輝く。

電灯色ライトだとかなり赤くなる。

ブラックライト長波ではなぜか反応しない。微妙な波長の違いなのか。UV短波は持ってないからわからない。



結局3色しか確認できなかったけど、それでも面白い。
蛍光灯色と白熱灯色の両方で照らすと、二重人格状態になる。面白。



「ナノテクノロジー合成素材」というのはよくわからない。「ナノクリスタル」というのは時々見掛ける。
いろはに宝石さんにこういう解説文があった。
《ナノクリスタルは、カメラのレンズの反射防止コーティングや耐熱ガラスとして使用されていますが、2010年のツーソン・ショーに初めて宝飾用にカットされたルースが出展されましたが、その後市場でもほとんど見かけない人造石です。ロシア(モスクワ)のアカデミーオブサイエンスという会社が作ったようで工場はタイにあると聞いております。自然界には存在しない人造石で、ガラスに様々な金属を添加し、加熱処理を施し、非晶質のガラスが少し結晶化しているセラミックガラスと聞いております。》

非晶質のガラスと超微細な石英結晶、あるいは他の鉱物結晶をまじぇまじぇしたものということなのでしょうかね。
しかしただまじぇただけでは結晶配置がばんらばんらになって透明度がなくなってしまう。そのあたりをうまく細工したものなのか。

けど、ダイアスポア、AlO(OH) のような単純な組成だったら、珪酸抜きで人工合成できそうな気もするけど、そういうのとはちょっと違うのかな。

まあ人造石の世界も多彩で面白い世界ですね。