貧乏石好き

つれづれなるままに石をめぐりてよしなきことを

竜王第二鉱山産の水晶

2024-08-25 09:54:03 | 国産鉱物

「水晶はパスです」という方針でやってきた。のだけれど、いつの間にかけっこうの数の水晶君がいる。はてさて。
堤防決壊の第一因は青水晶だった。「なんか大きめの青い結晶が欲しいなあ」などという気持ちを持ったのがいけない。で、デュモルチエライトだのラズライトだののインクル・クォーツに手を出した。結局澄んだ青水晶というのは、人工ものしかなかったという落ち。
もう一つは国産鉱物。荒川鉱山の緑水晶に魅せられて、そこから芋づる式に各地の可憐な水晶に惹き付けられて、無色の水晶にも手を出した。竹森、天井沢、湯沼、蛍鉱山……
かくして堤防決壊。(なんかそんなことばっかやってないか?)

「石集めは水晶に始まり水晶に終わる」なんていう言葉もあるらしい。あちきは水晶に始まったわけではないけど、そろそろ「水晶に終わる」になってきたかもしれない。(またまたw)
で、いくつかのものを。

まずは竜王第二鉱山産水晶2つ。
竜王といっても中央線の竜王とは関係ないんですね。長野県南佐久郡北相木村下新井。これじゃわからん。秩父山塊の北端、小海線松原湖から真東へ十数キロ。それでもわからんね。まあ山また山の奥深くですね。
石灰質緑色岩・粘板岩砂岩と石英閃緑岩・石英斑岩の接触交代鉱床、つまりスカルン鉱床。硫磁鉄鉱などを産した。現在は閉山立ち入り禁止。
で、緑水晶。

といってもインクルで緑に染まっているのではなく、クローライトか何かが完全に皮膜を作っている。これ水晶ですか?というくらい。しかしそれがかっこいい。
緑に透き通った小結晶もくっついてはいる。

なんか重厚で、シャープで、とても素敵です。

もう一つは色なし。ヤフオクで2個セット。



これが迫力あるんですねえ。写真だとのぺっとしてしまうけど、実物はうわっと思うくらい。
あちゃこちゃ向いてる結晶の姿もいいし、ちょこっと赤く染まっている所があるのもかわいい。


おちびの方もきりっとした結晶でなかなか。

それほど有名ではないのかもしれませんけど、いい産地ではないでしょうか。


神岡鉱山産ブロシャンタイト

2024-06-22 20:50:19 | 国産鉱物

これも銅の硫酸塩。銅銅めぐり。(あほ)
Brochantite。Cu4(SO4)(OH)6。
名前は仏人名から。ブロシャン銅鉱なんてちょっとかっこいいね。英語だとブロチャンタイトかしらね。
しばしばマラカイト、アズライト、ランジャイトの仮晶として形成される。クリソコラへ変化していく。何じゃ? 銅の二次鉱物アズライトはマラカイトに変化していって、それがブロシャン銅鉱に変化して、さらにクリソコラになる? マラは三次、ブロは四次、クリは五次じゃない?(そんなんはない) 炭酸が硫酸になり珪酸になるなんて変じゃない?
前々から見聞きしていたけどなぜかスルーしていた。国産で「小さいけど美しい」という触れ込みのものがあったのでゲット。
かの神岡鉱山産。岐阜県飛騨市神岡町神岡鉱山栃洞坑漆山。いろいろあったし今もいろいろある超有名鉱山。鉱山というのは、いろいろとねえ。カミオカンデというのはもう廃止になって新しいのができたらしいですね。鉱物からは離れて今は量子宇宙学のメッカ、なのかな。量子論なんて何遍読んでも全然わからん。(諦めなさいw)

パッと見はのぺっとしているけれど、じっくり見ると澄んだ結晶が見える。



とても美しい。
ただ、他の銅鉱物と銅違うと言われてもちと困るかな。


四国中央市産アーセニオシデライト

2024-06-02 10:07:54 | 国産鉱物

そう言えばもう一つ、砒酸塩鉱物を持っていた。
国産アーセニオシデライト。国産鉱物セットの中に入っていたもの。
ちょっとレアかも。



ミメタイトを上げた後、棚の整理をしていたら奥の方から出てきて、「あれ、これも砒酸塩じゃない」と気づいた。「わしもいるでお」と言っているようで驚き。地味な石なので忘れていた。すまん。

「愛媛県四国中央市寒川町豊受林道露頭」とある。四国中央市って時々聞くけど四国の中央って山しかなくね?と思ったら旧・川之江市なんですね。昔は市名を聞くとおおむねどのあたりかわかったけど最近はまったくわからないことが多い。中央構造線のすぐ北に当たり、西には住友財閥を育てた別子銅山が、東はサヌカイトの本場・瀬戸内火山群跡がある。鉱物的に面白い地域なのですね。

Arseniosiderite 砒灰鉄鉱。Ca2Fe3(AsO4)3O2・3H2O
カルシウムと鉄の砒酸塩・酸化・含水鉱物というややこしい石。砒酸というのはたまに珪酸とくっついたりもする正体不明の存在。
主に赤~黄~褐色で、稀に放射針状結晶を見せる。
砒素が付かないシデライトというのがあるけどだいぶ違う。
こやつは結晶はほとんど見えない。ちょっと錆みたい。けど「ばらちらし」でなかなかいい味わい。

似たような名前のやつにアーセノパイライト Arsenopyrite 硫砒鉄鉱 FeAsS がある。毒砂と呼ばれ、亜砒酸の原料となる重要鉱物。同じ鉄と砒素の鉱物でもこっちは例の硫化鉱物ですな。アーセノと言ったりアーセニオと言ったりややこしい。

珍しい石だし、珍しい砒酸塩鉱物だし。ケースに入れて大切にしまい直しましょう。


高知県産ベルチエライト

2024-05-31 09:15:53 | 国産鉱物

硫化鉱物のついでに。

過日、エヌズさんの本店を見てたら、その他標本の中にベルチエライトがけっこうなお値段で出ていた。あれ、これうちになかったかな、と探したら、国産標本セットの中の小片があった。
何せ40点ほどで3000円ほどのごちゃまぜセット。しかも小片。忘れていても仕方がない。(そうかあ?)
高知県高岡郡津野町倉川鉱山産。

ベルチエライト(Berthierite、ベルチエ鉱)。FeSb2S4。
デュモルチエライトもそうだけど、「チェ」じゃなくて「チエ」です。(うざいなこいつ)
もちろん値段も100分の1以下なのだから、エヌズさんの立派な結晶集合とは比べものにはならない。ルーペサイズの結晶です。

しかしキラキラと輝いている。
組成的にはスティブナイト Sb2S3 に鉄が加わっただけ。見た目も似ているからベテランでも間違うらしい。
スティブナイトは針状結晶集合の美しいものがいっぱいある。
わざわざベルチエ鉱を買う人は少ないでしょう。でもベルチエ鉱はベルチエ鉱、ということで。(意味わからん。持ってるぜと自慢したいだけか?)

金属プラス硫黄という硫化鉱物はなかなか個性ある面々がいる。日本新発見のものもあるし。
こやつも、マグマの中でいち早く珪酸塩体制から逃亡して、鉄とアンチモンとで強固な固体を作り上げたのだ、と考えると、なかなか面白いですよね。(面白いかあ?)


美濃の壺石大騒ぎ

2024-05-19 10:04:08 | 国産鉱物

いやいや、びっくり仰天であたふたおろおろどたばた。(うるさいね)
ヤフオクを眺めていたら、「美濃の壺石」がなんと1000円で出ているではないですか。
は? 天然記念物ですぜ。今は採取不能で、オールドストックはめったに出ない。超レアものですぜ。ありえんだろ。
ただしでかい。最長24センチとある。
出品者さんはリサイクルショップ的な品揃え。石専門ではない。何かごちゃごちゃした石だしでかくて場所を取るから早々に売ろうとお考えになったのか。
なんで誰も手を挙げないの? でかいから? 確かにこんなのうちに置けるか?
しばらく迷ったけど「ええい」と入札。「美濃の壺石」を「入札者なし」なんて事態にはさせたくない。(何だそれ?) 誰かちゃんとしたコレクターが出てきて落札してくれるのならそれでいい、むしろその方がいい、と。(君はちゃんとしたコレクターではないと自白しているわけね)
ところが、なんとそのまま落札。
嬉しいは嬉しいけど、「わ、どうしよう」とも。(小心だねえw)
しかし落ち着いて調べたら、たまに出るらしく、メルカリで数千円で売ってるものもあった。(なあんだw) 天然記念物の稀少石なのに、もうこういうものに興味のある人はいないのでしょうかね。

で、とっかーんとでかい段ボールが到着。
開けてみると、「漬け物石ですか」という重さのモノが出てきた。
壷石は壷石だけど、えらくごちゃごちゃしている。そして、ズボンが泥で汚れた。
「は? これ伝世品じゃないの? 掘り出し?」
泥や砂がぼろぼろ落ちるのでともかく洗うことにした。洗面台にプチプチを引いて、シャワーを掛ける。
出るわ出るわ。洗面ボウルが泥水で溢れそうになった。カミさん激怒。そんなこと言ったってこんなに泥が出るとは思わなかったんですよ。
しばらく放置して、上澄みの水を少しずつ流して、溜まった泥をペーパータオルで拭き取って。ようやく復旧。小さな石もいくつか取れた。
はあ、大騒ぎ。で、ようやくじっくりと観察。

壷石は壷石だけど、きれいに壷になっていない。後ろに大きな石を巻き込んでいる。黒板消し(そんな言葉もう通じないぜw) じゃ大きめのスマホを3枚重ねたような「板」。見る方向によっては本体よりでかく見える。まいったねこれ。






どうも「お、壷石だ」と掘り出してはみたものの、巻き込みが大きすぎて「花生けにかがですか」と売りに出したのではないか。買った人は生け花の趣味があってそのまま使おうとしたけどちと乱雑すぎるので泥だらけのまま物置に放置した。で遺族が(またかよ)リサイクルショップに売りに出した。に違いない。
やれやれ。しかしこれは一応壷石である。天然記念物である。珍しい石である。そう見てあげなければいけない。

底を見たらまたびっくり。負けず劣らずの石がめりこんでいる。

こりゃ漬け物石になるわけだ。
壷の部分には穴が開けられている。石を外したのではなく何かの金具でごりごり穴を開けたらしい。中はちゃんと空洞。商品説明に「花生け」とも書いてあったので、ここに花を入れてインテリアにしろということらしい。まあ花器としては面白いかもしれない。

と眺めていたら、え? となった。
もう一つ付いてる?

そう、奥に小ぶりの亜球体があるのです。そっちは穴が開いていないから確かではないけれど、おそらく空洞でしょう。
すげえ、「二連壷石」! こんなんあり?

こうやって立てると、ちょっとした水石みたいですな。*すんません、最初の投稿で別の写真を入れてました。あほ。

こうやって飾ると、なんか現代アートですか?みたいになる。

礫を含む粘土層から産出するわけだけれどもその礫とは何か。堆積岩が風化崩壊し硬いチャートが残ったということらしい。これらはみんなチャート? しかしチャートって粉々になるものなんですかね。

壷石とか鳴石とか鈴石と呼ばれる「空洞亜球体含褐鉄鉱粘土岩」については、前に「生駒山産鳴石」で書いた。割とあちこちで出る。褐鉄鉱を多く含む粘土岩が空洞球体に形成され、しばしば周囲の礫を巻き込む。生成プロセスは不明。不老長寿の秘薬とかローテク鉄器生産とかにも関わる偉大な石である。ぜひご一読ください。自分で書いといて何だけどとても面白いです。
「美濃の壷石」は岐阜県土岐市で採れ、1934年=昭和9年に天然記念物に指定され一帯は採取禁止。これは周辺で出たものか。別に売買は禁止されていない。(わかったよw)
空洞内の粘土は「余糧」として薬扱いされた。振るとからから鳴るという記述はない。東隣の瑞浪市ではからから鳴る「鳴石」が産出し岐阜県指定天然記念物になっている。

こやつの場合、欲張って巻き込む石が大きすぎてこんな姿になったのでしょうか。
しかしねえ、褐鉄鉱が空洞球体になるというのも謎だし、そこに礫を巻き込むというのもよくわからない。その周囲の空間には何があったのか。水のような泥=粘土鉱物の中で起こったのか。からから鳴るのと鳴らないのとどう違うのか。

珍しくて面白い石だけど、とにかく図体がでかくて重くて、扱いに難儀する。部屋の中には置けそうもない。花を生ける趣味もないし。ベランダに出して眺めるしかないけれど、穴に水が溜まったらボウフラが湧くのではないか。ううむ。どうしよう。

(しかし変なものにあちこち手を出すねw)
うん、もう少し王道に戻ろうかと思う。