貧乏石好き

つれづれなるままに石をめぐりてよしなきことを

質感の魔力:翡翠

2022-09-28 20:29:23 | 単品

五反田半額セールでひそかに狙っていたものがありました。
売れてしまうかもなあ、だったら縁がなかったと諦めるか。
などといささか冷や冷やしながら行ってみると、あったあ。

翡翠のブレスレット。ミャンマー産で若干透明感がある。12ミリA品。A貨、つまりワックス以外無加工ということでしょう。
諭吉を越えるものなので、本来は守備範囲外。けど半額だったらOK。
で、買わせていただきました。ありがたやありがたや。
しかしさあ、12ミリ丸玉が17個でこの値段って、考えてみれば安くないですか? カボッション一つでも結構するのに。なんかブレスというのは奇妙。

どうも、あの緑の「ややロウカン」を手に入れて以来、翡翠というものに魅入られたようになっていまして。
その後、ミニミニ・ロウカンを手に入れ、さらに少し色の濃いもの、そして糸魚川産のものも新たに。(ずいぶん執着してるね)


この左下の、濃い緑なんですけど、青にも見える。不思議。


糸魚川産。小さいですけど透明度があって、実に美しい。

     *     *     *

で、さらに欲をこいて、ブレス、と。

ブレスはやや薄い色。
この色が、実に捉えにくい。光源によって、青っぽくなったり、緑が鮮やかになったり、白っぽくなったり。よくわからん。そもそもこの緑と青の中間の色は捉えにくい。日本人は青と緑がごっちゃになるとよく言われるけど、それに関係しているのか。それともあちきの目は少し黄色に対して鈍いので、緑が青がかるのか。
そして、時々、妙にぽわあっと光が滲み出すように見えることがある。
何とも不思議で、妖しげで、いいのです。見てると飽きない。






     *     *     *

しかしなぜ、こうも翡翠に魅せられたのか。
以前見た時は、正直あまり惹かれなかったのです。何せ地味だし。
見る目が進化したのか、何かが変わったのか、よくわからない。

つらつら分析してみると、どうもその魅力は、「質感」にあるらしい。
もちろん色もいいのだけれど、それ以上に、その独特の質感に魅せられている。
前に「ぬめっと」と書きましたけど、少しとろみのある透明感。
鉱物の硬質感ではなく、少し有機質に近い? 
いや、物質と非物質の間。「霊的半物質」である「エーテル質」の柔らかさ。
こんなことを言っても大方の人はあほかと思われるでしょうけど、この世の物質と異次元(霊的世界)の物質との中間に、「エーテル質」とか「アストラル質」と呼ばれる「半物質」があって、人間や生物の肉体にはそれが浸潤している。時にはそれは物質に近い状態になり、「エクトプラズム」として見えるようになったりもする。まあ非常にややこしい話ですけど、あるんですね。(あるのかよ)
そんな「半物質」を想わせる質感なのですねえ。(ほんとかねえ)

奇妙ですねえ。翡翠は輝石グループの一員。しかしほかの輝石、たとえばエンスタタイトやダイオプサイド、スポデューメン(クンツァイトなど)なんかには、こういう質感は感じたことがない。
いわんや、「インド翡翠」を始めとするカルセドニー/アゲートにも、こういう質感はない。オパールはちょっと近いところがあるけど、やっぱり違う。白濁したベリルにはそういう感じがあるかな。

質感というのは不思議なもので、同じような色合いのものでも質の違いを人間は見分ける。豆腐とアイスクリームが同じ色をしていても、どっちかはだいたいわかる。(ほんとかねえw)
どうやっているのか。単純な光学的問題ではなさそうな気もする。
石の美は、形、そして色。いやそれだけではなく、質感というものもあるのだ。そしてその質感というものはけっこう大きな要素なのだ。
いくら美しい色や形の石を写真で見ても、満たされなさは残る。それは質感を感じ取ることができないからだ。
そんなことも思った次第。

翡翠は特別な質感を持った、魔力のある石。そんなふうに思えるのです。


シバリンガム

2022-09-26 19:52:02 | 単品

こう書かれると何のことだかわからない。シヴァ・リンガ。シヴァ大神のチンコ。(もうちょっと穏当な表現にしたらどうだ?)
五反田さんで売っていたのは知っていたけど、パスしていた。閉店セールで失礼ながらついでに小さいものを一つ。何と250円。(値段を強調しなくてよろしい) 小さいのが好き、というわけではない。(こら)

材質的にはアゲートっぽいけど、柔らかさがある。堆積性のものか。茶色の模様は鉄分由来らしい。それをサナギっぽい形に磨いたものだけど、まあいわくが深い。

シヴァはヒンドゥー教でブラーフマー、ヴィシュヌーと共に三主神とされる神様。実際はもっとややこしくてわけわかめ状態。とにかくものすごく人気のある神様。仏教では大黒天。
なんでそのチンコか、というとまたいわくが深い。

《インドで崇拝された男根像。男根崇拝は、アーリア人以外の先住民族の間で、地母神崇拝と合体して広く行われていた宗教であるが、やがて、シャクティ派的な考えから、宇宙の最高神であるシバ神の象徴であるとされた。リンガ像は、普通、女陰をかたどった皿のような台の上に、その女陰を貫く形で立っているが、それほど即物的な形象をもっていない。信者はこれをシバ神とみなし、花を捧げ、ギー(乳脂肪)を注ぐ。当初、リンガ崇拝は土着の宗教として低くみられていたが、8世紀の不二一元論ベーダーンタ派の開祖シャンカラなどによって、ヒンドゥー教のなかに高く位置づけられるようになった。それとともに、生殖、子孫繁栄というストレートな願望の対象ではかならずしもなくなり、あくまでもシバ神の象徴としての性格を強くもたされることになった。現在の信者は、リンガ崇拝を性器崇拝であるとはすこしも思っていない。》日本大百科全書

少しも思っていないかどうかは、ちょっと疑念がないでもないけど。

まあ男根崇拝は世界各地に見られるもので。ギリシャにもありますしね。日本も縄文の昔から今に至るまで、けっこう盛ん。ご興味のある方はたとえば「かなまら祭」でもググってみてください。生命エネルギーの化身ですからね。それを変だと思うのは逆に近代人の歪みでしょう。

で、シバリンガムは、聖地ナルマダー川で一年に一度採取され、シヴァ神への供物として、あるいは家で祭る神籬として、あるいはお守りとして珍重されるもの。らしい。
ナルマダー川はインド中央を東から西に流れる大河で、デカン高原文化と北インド文化との境界ともなる重要な川。全長約2700㎞で日本最長の信濃川367kmの7倍以上。(余計)

ヒンドゥー教徒でもない者がこういうものを持ってはいかん、という考え方もありだろうけど、外国人が神社でお守りを買ったりもするし。ちゃんと敬意を持って扱えばよろしいでしょう。
それに、ヒンドゥー教というのは、日本には関係ないみたいに思われているけど、必ずしもそうではない。日本の古層の信仰にはヒンドゥー古層信仰とのつながりを窺わせるものがある。京都の祇園祭の山車や諏訪の御柱なんかは、ヒンドゥー古層文化を保っているネパールにそっくりなお祭りがある。「湯立て神楽」で神様をお湯につけるのも、お湯ではないけどヒンドゥーの神招き儀式とそっくりで、バリなんかでもやっている。案外深い交流があったのかもしれない。

まあ、そんないろいろなことを夢想しながら、かわいい聖なる石を触る。
なんかすごく手触りがいいのですよ。独特で不思議。
リンガだからいろいろご利益もあるかもしれないし。(やめい)


リディコータイト

2022-09-25 09:29:31 | ややレア

もひとつ五反田セール品。
リディコータイトが500円! なあほな。

リディコータイト(Liddicoatite、リディコート電気石)は、リチア電気石(エルバアイト)の一種で1977年に発見された新鉱物。正式鉱物名としては未承認らしい。このあたりはめんどいからパス。ほんとトルマリンは種類も名前もカオスで、わけわからん。知らん。
一応標準的組成はこんな感じらしい。
エルバアイト   Na(LiAl)3Al6(Si6O18)(BO3)3(OH)4
リティコータイト Ca(Li2Al)Al6(Si6O18)(BO3)3(OH)4

ちなみにエルバアイトはエルバ島で発見されたことによる命名だから、エルバアイトが正しいのであって、エルバイトはちと不適切か。もう定着しちゃってるみたいだけど。

リディコータイトが有名なのは、いわゆる「ウォーターメロン」つまり外側が緑で中がピンクのバイカラーで、その中心に「ベンツ」のエンブレムを思わせる三角模様が入っているものがあるから。通称メルセデス。
いずれにせよレアだから高い。メルセデスなんて宇宙の彼方。つか、まず出て来ない。
まあ、それがなぜか500円。なあほな。

見た目はエルバアイトと区別できないんだからエルバでいいじゃないか、ということになるかもしれないけど、いや、これはレアなリディコートです、と自慢するために買った、わけではなく、リディコータイトが500円で手に入るんだったらすごいじゃないか、ということで買った。(何言ってるかわからん)

つうか、全体の景色がなかなか美しいのですよね。フルーツ入りヌガー。(うん、うまそうだ)
結晶はミニミニだけど、いい色。

そしてスイカの皮である緑もこきまぜて(お、古語)絢爛。スイカ割りでリキ入れ過ぎて砕け散ったスイカみたい。(譬えが絢爛ではないぞ)

メルセデスはどこかにないかとルーペで探した。(あるわけないだろw)
ありましたよ、メルセデスではなく、ワンコ。に見えないですか。

ワンコの心霊写真。おわかりいただけたろうか。(あほ)

まあ、500円でちょっと誇らしい気持ちになって、これだけ楽しめるんだから、実にいいお買い物だったと思うのです。(まあ楽しいのが何より)


エピドート

2022-09-24 19:57:32 | 単品

またややこしい石。
エピドート Epidote は、グループ名であり、また単独鉱物名。ソーダライトなんかもソーダったけど(やめれ) こういうのめんどいからやめてほしい。

【エピドート・グループ】二種類の陽イオン+(Si2O7)(SiO4)O(OH) ソロ(双結)珪酸塩
・エピドート(緑簾石)[Ca2][Al2Fe3+](Si2O7)(SiO4)O(OH)
・ゾイサイト(灰簾石)[Ca2][Al3](Si2O7)(SiO4)O(OH)
  赤はチューライト、青はタンザナイト
・クリノゾイサイト(斜灰簾石)
・ピエモンタイト(ピーモンタイト、紅簾石)
・アラナイト(褐簾石)

低温~中温の変成岩に見られる基礎的な鉱物。命名はかのアユイさん。
古くから知られていたが、1865年にオーストリア・ザルツブルク州のクナッペンヴァンド鉱山で巨大な美結晶が発見され、一躍コレクターズアイテムになった。同地産出の美品は家が2軒買えるほどのものもあるという。

前にミネラルマルシェだったかで1000円で5センチほどのきれいな結晶片が売られていたので、買った。すじすじがぴかぴかで美しい。(幼児か?)

その後、ツイッターで某コレクターの美結晶が上げられているのを見て、唖然。そんな類のものはとても手の届くところではないけど、面白いクラスターがお手頃であったらいいなとは思っていた。
で、五反田セールで発見! もともとは若干お高めだけど、何せ半額。嬉しい。

金属的な姿と輝きがとてもいい。ほぼ真っ黒でショールとどこが違うみたいな感じだけど。ショールは NaFe3Al6(BO3)3Si6O18(OH)4 でホウ酸入りか。CaじゃなくてNaなのね。

しかしこういうばらばらに積んだようなクラスターって、どうやってできるんですかねえ。わけわからん。

同族のゾイサイトはタンザナイトとしてやたら出まくっているのに、エピドートはあんまり。不透明で黒すぎるのかなあ。
美麗クラスターじゃなくても、とてもいいと思うんですけどねえ。


エクロジャイト

2022-09-23 11:02:35 | 単品

五反田お別れセールの石。
まずはエクロジャイト Eclogite。
前々から欲しかった石。あまり普通の店では見ない。
高圧変成岩。ノルウェー産。

《高温高圧下でできた変成岩(広域変成岩)。赤色の柘榴石(鉄礬柘榴石〜苦礬柘榴石)と緑色の輝石(オンファス輝石)を主成分とするため、榴輝岩(りゅうきがん)ともいう。化学組成は玄武岩とほぼ同一であり、玄武岩質の海底プレートが沈み込み、高圧により変成して生成したものといわれる。》ウィキペディア

《非常に高温高圧の変成作用(600~800℃、1万~数万気圧)ででき、ざくろ石類(ややマグネシウムを含むアルマンディン)、単斜輝石(主に透輝石)などからなり、緑れん石や石英なども含まれることがある。また、滑石とひすい輝石の共生体や藍晶石とひすい輝石の共生体などの特殊な鉱物組合せが存在したり、構成鉱物に異例の副成分が含まれることもある。これらはエクロジャイトが高圧条件でできたことを示している。》倉敷市自然博物館






ぱっと見は暗い石だけど、光を当てると実に美しく輝く。
緑はオンファス輝石なんだろうけど、所々に平らな結晶面を見せてきらきらと光る。
オンファス輝石はよく翡翠と一緒に出る。この前のミネラフェスで、泉という翡翠屋さんが出品していた「青いオンファス輝石のペンダントトップ」というのを見ましたけれど、とても美しいものでした。
アルマンディンは小粒だけど、特有のねっとりとした赤を見せる。
高圧でできたので密度が高く、ずっしりと重い。

こういう「基礎的な岩石」というのは、派手な美しさはないけれど、じっくりと見つめてみると、重厚で稠密な美しさを見せる。けっこう好きなんですねえ、こういうの。
ラルビカイトヌーマイト黒部の孔雀石チタナイト……。
玄武岩はマントルのマグマから直接生まれ、海洋地殻を形成する基礎中の基礎岩石。それが変成して美しく変身したエクロジャイトは、地球の骨格の精華とも言えるものではないでしょうか。