貧乏石好き

つれづれなるままに石をめぐりてよしなきことを

ローザサイト

2024-01-31 20:14:52 | ややレア

Rosasite。亜鉛孔雀石。
左右38㎜。かの有名なオハエラ鉱山産。

ロゼライトとかロードライトとかロードナイトとかローディザイトとかローデサイトとか、わけわからんね。これらはバラ rose とかギリシャ語のバラ色 rhodizein とかに由来する赤系の石。
ローザサイトは似たような名前だけど全然違う青の石。発見地イタリア・サルデーニャのローザス鉱山に由来する。まぎらわしい。

組成は (Cu,Zn)2(CO3)(OH)2。銅と亜鉛の炭酸・水酸塩。またまたですな。はいおさらい。
  アズライト(藍銅鉱) Cu3(CO3)2(OH)2
  マラカイト(孔雀石) Cu2(CO3)(OH)2
  ローザサイト(亜鉛孔雀石) (Cu,Zn)2(CO3)(OH)2
  オーリカルサイト(水亜鉛銅鉱) (Zn,Cu)5(CO3)2(OH)6
何度書いても覚えないw
この中でローザサイトは割合レアみたい。以前、例の「ホシノカケラ」サイトで素晴らしい青の結晶を見て、以来ずっと欲しいなと思っていたのだけど、なかなかぴったり来るもの、手の届く価格のものがなかった。今回、夕星庵さんできれいなのが比較的お安く出たのでようやくゲット。
カルサイトとの共生クラスター。キラキラして、透明感のある独特の青の輝きがとても素晴らしい。細かく見るとウニ状の結晶もある。



銅の鉱物を追っかけるのはもうやめようと思っているのだけど、この手の青にはどうしても惹かれてしまう。たまにはキラキラした標本も欲しいしね。
ともあれ念願の石を入手できてよかった。


佐治川石『峰引き』

2024-01-28 10:08:57 | 国産鉱物

盆石・水石の続き。
どうもこういうのの総称としては水石のほうが優勢らしい。水に濡らして鑑賞するからという説もあれば、「山水石」の略だという説もある。盆石だと盆栽に近すぎてジジ臭くなるからかも。(君にぴったりではないかい) あちきも多きに流れて水石と書くことにする。

同じヤフオク「信濃美術石博物館」さんから、佐治川石。銘は『峰引き』。

全長31センチと大きい。重量は3.18kg。
佐治川というのは全国にあるけれど、佐治川石の佐治川は鳥取県。日本三大銘石の一つとされることもあるけれど、この「三大」は人によってばらばらで決まったものではなさそう。
玄武岩の変成岩が水で刻まれたものらしい。

もとは大阪のコレクターの蔵品で、館主の無粋庵さんが直接仕入れたそう。それにしては安く落札できた。石底は朱漆で塗られていて無粋庵さんの銘書きが入っている。

これの写真を見た時、妙に惹かれたのです。なんかいい姿だなあ、と。普通に見ればバランスが悪い感じだけどそのバランス悪さが妙に魅力的で。(正道をはずすのがお得意かな?)

で、落手してからよくよく考えてみると、これ、「日本鑑賞石の筆頭」、日本最初の石コレクター後醍醐天皇のナンバーワン・コレクション、「夢の浮き橋」に少しばかり似ている。徳川美術館蔵。

片方に山がある。水石の道では、山は6:4の位置にあるのがいいとされるらしいけど、これはかなり偏り過ぎ。しかしそれが味。
ちなみにこの「夢の浮き橋」という銘は、あるサイトでは「真ん中が少し浮く」から「浮き橋」だろうと書かれているけれど、そうではなくてこれ、藤原定家の名歌「春の夜の夢の浮き橋途絶えして峰に分かるる横雲の空」から来ているのではないでしょうかね。後醍醐天皇はもちろん和歌にも精通していて定家は大好きだったはず。この先細りに延びた姿は雲なのではないかと。まあわかりませんが。

「夢の浮き橋」の良さを理解しているわけではないけれど、この「峰引き」の少しバランスの悪い横延びの姿は、日本水石筆頭の石の「本歌どり」と言えなくもない。
石底に朱漆が塗られ銘書きがされているところは「夢の浮橋」も同じ。無粋庵さんも意識していたということかな。
まあそれは素人の推察。本歌どりであろうとなかろうと、姿が気に入ればそれでいいのですよ。


素人ながら思うことは、いろいろなサイトの写真なんかを見ていると、平らな部分、あるいは凹んだ部分がある石は、魅力があるように思えるのですねえ。そこにいろいろな情景をイメージできるから。
尖った石は尖った石でいいのですけど、ちょっと張り詰め過ぎで遊びがない。平面や凹みがあると、そこで想像力が遊ぶことができる。前記事で上げた遠山石は、遙かな連山の姿としてはいいのだけど、そういう遊びはない。平らな部分を持つ「段石」とか「ドハ」という石が評価されるのは、そういうことと関係しているのではないか。
この石も、山があり、平らな所がありで、実に楽しい。

これは山頂。平らなところがあって、そこは天上の桃源郷。

山頂下の岩窟群。修行者が籠る怖い場所。

山の下の池。実際水が溜まる。

中央部の「盆地」。人の住む里ですな。窪みの中央には小山があって面白い。水を入れれば湖になる。



突出部の「岩鼻」。荒波と戦う岬の姿。地の果て。

モノクロの世界と思いきや、頂上裏側の絶壁部分には緑と赤茶の模様が見える。緑色片岩?

実に楽しい。
けどでかいのであちきの貧居の中では収まりが悪い。仕方なくベランダに小さな机を出して、お盆を敷いて、いかにもそれらしく眺めておるのであります。(枯淡の境地かなw)

ううん、なかなかいいですよ。水石の世界。
キラキラ石好きの方々も、一つくらいはこういう日本的鑑賞石もお持ちになってみてはいかがかなと。(余計なお世話)


遠山石

2024-01-24 20:10:00 | 国産鉱物

まさかこんな方向へ手を出すとはね。(他人事みたいに言うね)

盆石。山型石。
安倍川石とのこと。

横17.5㎝。ヤフオク信濃美術石博物館さんより。

なんかね、ネットショップやツイッターで華麗なる結晶標本ばかり見ていると、だんだん食傷気味になってきて。で、ヤフオクを眺めているうちに、どうもこういうしぶーい「日本的鑑賞石」に目が行くようになって。ちょっと一つ安いのを買ってみようかな、などと。でこれを2100円で落札。
安いものだけど、なかなか。ごつごつした肌もいいし、生意気に「溜まり」つまり池状の窪みもある。爪で弾くと金属的な音がする。ちょっと讃岐のカンカン石みたい。安山岩質の溶岩なのだろうか。

盆石とか水石とか言われる世界は、まあディープな世界です。蘊蓄が深い。産地がどうだの、姿がどうだの、肌がどうだの、といろいろ論がある。あちきにはわかりません。入門はこちら。あんまり深入りするつもりはない。(ほんとかね?w)
江戸時代の「弄石」ブームに淵源があるのだろうけど、どうも60年ほど前に「水石ブーム」があったらしい。でも今はレッドデータに載りかねない。まあ「日本水石協会」というのがあって展覧会をやったりしているけど、あまり話題にはならないですね。
しかし、盆石か水石か、どっちかにしたらどうかと思う。流派とか作法とかあるらしいけど、こういう「日本的観賞石」の総称がないというのは、ちょっとお粗末では。(なま言うな)

けれど、こういった色のない、曖昧な姿の石を眺めていると、何か心に動くものがある。日本人の血なんでしょうかねえ。
「景色」としては、水墨画のような山河を思わせる姿のものがわかりやすい。こういうなだらかな姿は「遠山型」と呼ばれるようで。確かに遥か向こうの連山を眺める風情です。初心者には受け入れやすいものだと言われるけど、どっこい「盆石・水石は遠山に始まり遠山で終わる」とも言われるそうで。あれ、どっかで同じ言い回し見たな。
でも遠山型というのはあんまり出ない。富士山型のおむすびみたいなのが多い。お安く入手できてラッキー。

そう言えば、昔々あちきがおぼっちゃまだった頃(またかよ)、庭の大きな石を眺めて、そこにミニチュアの山河をイメージしていたことがある。山があって、谷があって、川が流れ、人の住む里がある。それはイマジネールな理想の風景、「桃源郷」だったのかもしれない。けれど何にも知らないガキが(お、事実に戻ったね)どこでそんな想像力を育てたのか。集合的無意識か。前世からの持ち越しか。
盆石、盆栽、箱庭(州浜)なんていう芸術は、どれもそういった「想像の風景」を紡いで楽しむもののようですね。
ううむ、どことなく懐かしく、趣のある世界ですなあ。(迷い込むなよw)


コレクション・ケース新調

2024-01-21 20:38:18 | 漫筆

ようやくお引越しのドタバタも落ち着いてきまして、今日はお天気もよろしくないので一日石の整理をいたしました。
で、引っ越しの余勢をかって、コレクション・ケースを新調。(だいじょぶなんかあ?)
Jajan とかいう静岡のメーカー。ただしインドネシア製。
幅54センチ、高さ182、奥行き15。とてもよくできていて、奥行きが少ないのがいい。
ルースやブレスレットを除いてたぶん500点くらいあると思うのだけど、棚板を追加して、ぎちぎちに詰めて、何とか収まった。大したもんだ。いいですよ、このケース。
まだ少し余裕があるな。(もうよしなさい)

写真リストと照合しつつ100均のタックシールを使ってまだ貼ってないものの名前を貼った。覚えているつもりでもけっこう忘れるから危ない危ない。行方不明も一つ二つ。正体不明もいくつか。しかし無精者のあちきにしてはよく把握している。けど「あれ、こんなん買ってたんだ」というのも若干あることはある。手にしたらちゃんと味わって心に刻まなくてはいけませんね。

コレクション・ケースにしろ、アクリル板やルースケースにしろ、保管整理に必要なものはけっこうあって、だいぶそれにもお金を費やしている。無駄使いと言われそうだけどそもそも石集め自体が無駄使いなのだから今さらそんなことを言っても仕方がない。(ないかあ?)

     *     *     *

「しかしそちが冥土行きになったらこれはどうするのじゃ?」とヤマノカミがのたまう。
もちろん自分でも考えないではない。考えないわけではないがあまり考えたくない。
ヤフオクなんかに出してこつこつと減らしていくというのもえらく大儀だし、あちきのコレクション・レベルでは手間の方が高くつきそうだし。
二束三文でもいいからまとめて引き取ってくれる奇特な石屋さんはないだろうか。今から探しておくか。
標本なんかは学校へ寄付するなんて手もあるかな。受け取らないか。

こういう悩みを抱えている人は案外多いのではないかしら。誰か、「要らなくなった石を無償で引き取ります」というプロジェクトを始める人はいないだろうか。引き取ってどうするかはどうでもいい。売り直せるものは売り直して、値が付かないようなものはどこかへプールして子供たちが勝手に持っていくとか。どこか地方のお寺さんが「供養もします」とか言いながらやったら案外応じる人はいるかもしれない。などと変な夢想が湧いたのでした。

しかし、高価なものはほとんどないけど、これらの石たちはどれも美しく、いとおしい。いいですねえ、石集めは。


新潟石を探せ

2024-01-21 11:11:11 | ややレア

Niigataite。ニイガタアイト。新潟石。
2003年に糸魚川で発見された新鉱物で、組成は CaSrAl3(Si2O7)(SiO4)O(OH)。クリノゾイサイト(単斜灰簾石、Ca2Al3(Si2O7)(SiO4)O(OH))のカルシウムの半分がストロンチウムで置換されたもの。
名称は認定されたり廃止されたり二転三転したようだけれど、現在は正式鉱物名になっている。

エヌズさんの本店で以前から高価な標本が出ていたのは知っていた。
で、過日、エヌズ・ヤフオク版でえらく安いのが出ていて、つい出来心でポチってしまった。




《2002年に認定された新鉱物。ぶどう石-ダイアスポアからなるロディン岩中に灰黄緑色を呈して産します。乳白色はぶどう石で薄紫色はダイアスポア。黒色結晶は含ストロンチウム緑簾石です。採集自体が糸魚川産鉱物中で最も難しく入手困難な標本です。新潟県糸魚川市 宮花海岸 29x21x14mm 15g》

値段が一桁違うのだから、たぶん針の頭くらいの結晶だろう。
腹を据えて探すことにした。

ここには……ない。

ここにも……なさそう。

これは……違うなあ。

お、ここではないか? これに違いない。うむむむ?

ブラックライトを当ててみる。意味ないか。


ふう。
結論。素人の老眼の肉眼では、確信を持ってこれだと視認・断定できませんでした。
知識もないのにこういう超レア微細鉱物の世界に踏み込んではいけなかったのかな。(そういうの何て言うか知ってる?w)
まあ、アポフィライトとダイアスポアの共生標本として十分堪能できるから、いいのです。糸魚川ではめったに出ない石だし。(負け惜しみ乙w)

どなたかおわかりの方がいらしたら教えてくださーい。