貧乏石好き

つれづれなるままに石をめぐりてよしなきことを

合成エメラルド

2023-10-29 10:49:11 | 単品

もひとつ人工石。

エメラルドという石は、どうも厄介。
古来珍重されてきた石で、ある種の緑色の名前としても知らない人はいない。
けれどねえ、エメラルドなんていう鉱物はない。ベリル Be3Al2(SiO3)6 の中でクロムを含んで緑に発色するものをそう呼んでいるだけ。
だから、いろんな色合いのエメラルドがある。何でもそうだろうけど、エメラルドは、明るい色調のものや青に近いものまで、けっこう幅が広い。
しかもこの青みがかった緑というのは、ひじょーに認識しにくい。日本人は青と緑を混同するとよく言われていて、このあたりの弁別は大脳生理学的に難しいのだろうか。(んなわきゃないだろ)
だから、いろんなエメラルドを見て、「ああ、エメラルドね」と受け止めるけれど、さて、本当の「エメラルド色」というのはどういう色か、と思い返してみると、これがはっきりしない。
これまで、青っぽいのを買ってみたり、黄緑っぽいのを買ってみたりして、まあそれもきれいではあるけれど、どうもこれが本当のエメラルド色のエメラルドなのかと問うてみると、そうは言えない。
で、なんかもやもやして、「ええい、本当のエメラルド色のエメラルドはないものか!」となる。高級なものを買えばいいのだろうけど、えらく高い。しかも高いからといって、それが本当にエメラルド色のエメラルドかどうかは(ええい、ごちゃごちゃうざいわい!)

で、おなじみパフェさん(誰だよ)でお安い「合成エメラルド」が出ていた。そして思ったのでした。「わざわざ合成して作ったのだから、これが理想エメラルド色に違いない」と。
人工石ではあるけれど、いや、人工石であるがゆえに、これで「本当のエメラルド色」をはっきりと見ることができる、と。(大げさなw)

そうそう、これこれ。これがエメラルド色だよ。ブルーの入ったグリーン。
ダイオプテーズ、翆銅鉱も似た色だけど、なんかが違う。違うような気がする。(おいおい)
まあともかく、これを何度も眺めて「エメラルド色」をしっかり魂に刻みましょう。

     *     *     *

合成宝石、「シンセティック・ストーン」というのは、「イミテーション」「模造宝石」ではない。
人工ではあるものの、天然のものと化学的・鉱物学的にまったく同じ。
いろんなものが作られている。ダイヤモンド、ルビー/サファイア、エメラルド、スピネル、ルチル、トルマリン、さらには水晶やアゲートまで。宝飾・鑑賞目的もあれば、工業的目的もある。人造ダイヤなんて砥石みたいに作られてるしね。そういえば、先日ツイッター(まだその名前使う気か)であの美石フォスフォフィライトを人工合成しているという人がいた。すごいですね。
人工エメラルドは《1940年に C. Chatham によって合成されたものが有名であるが、近年、フラックス法および水熱合成法によって最大30カラットのものがつくられている》とのこと。しかし製造技術が難しく、宝飾目的なので美しさが求められるものらしい。へえ。

まあ、ダイヤやコランダム、スピネルなんかをわざわざ合成石で買う必要はないでしょう。
ただ、エメラルドだけは、「理想エメラルド」として価値がある。と思うのです。
(しかしぐだぐだとよくしゃべるねw)


モアッサナイト

2023-10-22 09:32:27 | 人工鉱物

人工石というのはあまり食指が動かなかったのだけれど、どうしても見てみたいと思ったものが出てきまして。
その一つがモアッサナイト。
言わずと知れた「ダイヤモンド類似石」。といってもダンビュライトなどの「安価な代用品」とは格が違う。人工石ではあるけれど性能としてはダイヤモンドを凌駕する。
・屈折率 モアッサナイト:2.65~2.69 ダイヤモンド:2.42
・分散度 モアッサナイト:0.104 ダイヤモンド:0.044
・ダイヤモンドは立方晶系で複屈折なし。モアッサナイトは六方晶系で複屈折あり。複屈折があると干渉による色彩変化や方向変色(多色性)が見られる。
まあ、つまりですね、「ダイヤよりすげえぜ」という石なのですね。
だから、実際に見たかったのです。で、夕星庵さんでお安めのが出ていたのでゲット。



(何だよこの写真)
いや、あちきの写真技術では写らんよ。つか、こんなん写真じゃ無理。だから買ったのだ。(居直ったな)

「どうだい、ダイヤよりきれいかね?」と聞かれると返答に窮する。そもそもダイヤなんて一つ格安品を持ってるだけであんまり見たことないから、比較の基がない。モアッサナイトにも品質の良し悪しはあるだろうし。それに、この手のものはカットの技術で大きく左右されるから、石そのものの美しさなんてなかなかわからない。(それじゃ意味なくね?)
けれど、やっぱり美しい。すごい。きらきら。色いっぱい。

モアッサナイトは SiC。こんな組成があってたまるか、みたいな組成。ウィキによれば《ダイヤモンド型の骨組みの中に炭素とケイ素が交互に積み重なっており、ダイヤモンドとケイ素の間を取ったような性質を示す》とのこと。天然に産出することはきわめて稀で、隕石に含まれていることがある。1998年にアメリカの企業が合成に成功。特許が2016年に切れたので、今は世界中でばんばん生産されているとのこと。

そう言えば、熱伝導率でも、ダイヤモンドの2000にはかなわないけど、モアッサナイトは490と図抜けている。トパーズは20くらいなのだけど持つと冷たい。モアッサナイトはどうか、と思ったけれど、こんなに小さなルースでは瞬時に温まってしまうからまったく冷たさは感じませんでした。笑い。

まあ、特殊な変な、きらっきらの宝石。それを手にすることができてとても満足しております。


ピカソ・ストーン?

2023-10-15 13:24:42 | 単品

(また変なものをみつけてきたのかいなw)
ヤフオクで面白そうな丸玉が出ていたので、ちょとばかし高めだけどゲット。(何か変な方向に向かってないか?)
「ピカソ・ストーン」と銘打たれている。



ピカソ・ストーンは前に一つ買った。モノトーンのもの。

だいぶ違う。
そもそもピカソストーンとは何ぞや。
もちろん正式な岩石名ではない。ユタ州で出る模様入り「大理石」の商品名。ピカソ・マーブルとも呼ばれる。ピカソ・ジャスパーと呼ばれることもあるがジャスパー(玉髄)ではない。石灰岩が変成して大理石になった際に、いろいろな鉱物・元素が模様を作ったとされる。どうも誰かがピカソみたいだということで名付けて売り出し、その後いろいろと尾ひれがついたみたい。芸術的インスピレーションを導く石だとか、ピカソが携帯していたとかね。
前に買ったものはユタ産だから本物だろうけど、これはたぶん中国で加工されたもので、当然産地不明。大理石かどうかも不明。だからピカソ・ストーンと言えるかどうかはあやしい。
しかし変成堆積岩っぽい不透明なマット感がある。

で、まあ正体はともかくとして、実に面白いのです。

これはダリっぽい。

こちらはターナーかな。

こういうアブストラクトは誰だろう。



山水っぽい。



空に突然出現した未知の天体現象。

同じ面でも上下逆にするとまた違った味わいになったりする。ぐるぐると回して、ひっくり返して、とやっていると飽きない。

華麗・多彩なアゲートもいいけど、こういう石っぽい「絵の石」もいいと思うのです。


バイカラー・カイヤナイト?

2023-10-13 17:38:17 | ややレア

ヤフオクで変なものを見つけまして。安かったのでゲット。(また例の悪癖かよ)
「カイヤナイトの丸玉」なんですけど、なんと青とオレンジのツートンになっている。
通常の室内光だと沈んで紫に見えるけど、太陽光だとかなり鮮やかなオレンジないし朱色。それが混じり合っている。





は? ですね。バイカラー・カイヤナイトなんて聞いたことない。何じゃこれは?

カイヤナイトは前にも書きましたけど、繊細な青や緑が美しい石。とても好きです。
ところが、2009年のツーソンでオレンジのものが紹介され、新種として注目された。あちきも東サさんのミニ標本で一つ持ってます。タンザニア産。
カイヤナイトは Al2SiO5 でネソケイ酸塩(単独派)。とても単純な鉱物。主に高圧条件でできた結晶片岩中に産する。同質異形にアンダルーサイト、シリマナイトがある。
で、カイヤナイトの青は含まれているTi+4とFe+2との電荷移動によって発色、緑はFe+3によって発色。一方オレンジはマンガンが影響しているとのこと。こちら参照。
けど、オレンジと青が同居するなんて、ちょっとあり得そうもない。mindat やグーグル検索でも出て来ない。
出品者は中国からの仕入れがメインみたいな所。中国産で加工石だと、いろいろと疑惑が出やすい。ほかの国でもあるけど、中国は変に技術もあるから厄介。
知り合いの香港人の話では、広州には3つの大きなビルが全部石屋だという場所があるらしい。で、そこで売ってるものは「ほとんどニセモノ」とのこと。あくまでその知人の話ですけど。
まあこれも疑惑は動く。マンガンでも浸潤させたか? と。
しかし、細かく見ていくと、どうも人工着色ではないみたい。







青い結晶もあれば、朱色の結晶もある。一つ一つ染めていったとは思えない。
紫っぽくも見えるのでレピドライト(リチア雲母)かとも思ったけれど、少し赤すぎるような。

と調べていたら、別の出品者で、「カイヤナイト・イン・クォーツ」という名で、似たようなものが出ていた。石英? こんな結晶の姿とか色とかあるんでしょうかね。石英は千変万化だからありか。

結局、よくわからないです。
どなたかご存じの方いらっしゃいませんかね。
鑑別に出してみるのが一番だろうけど、まあとりあえず美しいからいいや。


ブルー・ブルーサイト

2023-10-11 21:15:15 | ややレア


もりとーいずみにー(やめなさい古すぎて誰も知らん)

ブルーサイトというと、まあ黄色。前に書いた。黄色の石は多くないなかで頑張っている。
こちらはブルーサイトのルース。黄色い宝石なんてちょっと不思議な感じがする。

と思っていたら、エヌズさんで澄んだライトブルーのが出た。美しそうで安かったのでポチっと。安いけどあんまり見ない。レア?

ブルーサイトは Mg(OH)。水酸化マグネシウム。
しかしこんなのが本当に鉱物と言えるのか。
たとえばお塩。NaCl。塩化ナトリウム。それが晶出したのがハーライト=岩塩。でも要するにお塩ですぜ。
なんかこういう「水が揮発して結晶になった」のは、どうも石とは違うような気がする。石というのは熱や圧力でぎゅっと固まったもの。そういう固定観念があるのでしょうねえ。その最たるのがエクロジャイトとか翡翠とか。
しかしそんなことを言うと、フローライトやカルサイトだって、似たようなものかもしれない。いや、ほかの「水成鉱物」の多くも。へたすりゃ水晶だって。
まあ、結晶してれば鉱物です。でも、鉱物と「石」とは少し違うような気もしないでもない。
だからどうだということではないですけど。

とああじゃこうじゃ言いましたけど、これ、美しいです。ちょっとびっくり。