貧乏石好き

つれづれなるままに石をめぐりてよしなきことを

コキンバイト

2022-10-28 20:29:03 | ややレア

コキンバイト Coquimbite、コキンボ石。
AlFe3(SO4)6(H2O)12・6H2O
以前はFe2-xAlx(SO4)3・9H2O(x~0.5)、またはFe2(SO4)3・9H2Oとされてきたが、2019年にIMAによって再定義。Alは必須。(mindatより)
1841年にアウグスト・ブライトハウプトによって発見、原産地チリのコキンボ州から命名。
コキンバイトはグループ名でもあり、以下のサブタイプを含む。
 アルミノコキンバイト Al2Fe2(SO4)6(H2O)12・6H2O
 パラコキンバイト Fe4(SO4)6(H2O)12・6H2O(同形)
色は多様。世界各地で産出するが、近年採掘されているペルー産は美しい菫色を呈する。
冷水および冷鉱酸に可溶。極度に乾燥した空気中では白色粉末として風解する。

(なんか今回はやけに学術的っぽく始まったねw)

     *     *     *

金欠なので石禁していたのですけど、エヌズミネラルさんが25%オフのセールをしていたので、誘惑に負けて。(またかよ)
前々から美しそうなので欲しいと思っていたのですけど、何せ「水に溶ける」「極度乾燥で風解する」といったフラジャイルさなので、ずぼらなあちきでは溶かしてしまうだろうなあと思っていました。硬度も2と低いし。
ところが過日、ツイッターで買った人のツイートを見た。「溶けませんか?」と聞いてみると「乾燥剤を同封しているので今のところ大丈夫」とのご教示。ううむ、チャレンジしてみようか、と思い、25%オフに乗じて購入。
まあ、湿潤な日本ですし、ずぼらな持ち主なので、何年かしたら溶けるかもしれない。けど、こっちの寿命だってどうなるかはわからない。いや、この世界だっていつまで持つかわからない。(おい) なるようになれ、と。







ぱっと見は少し白っぽい。けど光を当てると、あるいはクローズアップだと、とても美しい菫色。小さい結晶がきらきらして表情も豊か。
溶ける云々を気にせず買ってよかった。この美が体験できるなら、将来溶けようが構わない。万物は流転す。生あるうちに味わえるものは味わうのだ。(大げさなw)

白色はMineralstreetさんの情報を参考にすればアルノーゲン(Alunogen Al2(SO4)3・17H2O)かもしれない。

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しかし「水で溶ける石」なんてあるのかよ、と初めの頃はびっくりしましたねえ。
有名なのは胆礬(たんばん、カルカンサイト、Chalcanthite)で、これもCuSO4・5H2Oと硫酸塩。硫酸塩だから溶けるのかというと、そうでもない。バーライト、セレスタインなど、溶けないものはたくさんある。
ところでこれ、普通に発音表記すると「キャルキャンサイト」が正しいみたい。Chalcopyriteもほんとはキャルコパイライトらしい。あちきはずっとチャルコと書いてきた。直さなきゃいかんね。英語は表記と発音が違うことがよくある結構厄介な言語ですな。
「水で溶ける石」で一番身近なのは食塩でしょうね。NaCl。あれも鉱物。毎日食っている。「塩はいいものだ。だが塩が塩気を失ったら何をもってこれを味つけよう」。塩がなければすべての料理はだめになる。けれど塩だけでは食えない。世に塩は必要だが、世の人がすべて塩になることはない。神の国の使徒とはそういうものだ。(何を言っているんだ?)

水で溶ける石が採れるということは、そこは水に浸されない場所。そんなところがあるものですかね。土の中だって水は浸み入るだろうに。
けど、コキンバイト自体は含水鉱物。なんか変ですねえ。

で、この石、単純に言えば、アルミ含有の硫酸鉄。
化学物質としての硫酸鉄には硫酸鉄(II)(FeSO4・7H2O)や硫酸鉄(III)(Fe2(SO4)3・5H2O)があるけど、鉱物になると、やたら複雑な構造のものになるみたい。mindatの結晶構造の説明を機械翻訳するとわけわかめでおもろい。
《すべて八面体配位を持つ3つの金属サイトは、等価ではありません。M(1)サイトは、通常Alによって完全に占められており、水によって配位され、M(2)は硫酸基のみによって配位されます。一方、M(3)は、硫酸基の3つの酸素と水分子に属する3つの酸素によって囲まれています。M(2)とM(3)サイトはFeによって支配されます。M(2)M(3)2(SO4)6(H2O)6個のクラスターがあります。これらのクラスターの形成に関与する硫酸基はコーナー共有です。追加の6つの水基は、水素結合のみで保持されます。水素結合を介したFe3(SO4)6(H2O)6クラスターの相互作用により、[001]に沿って不連続なジグザグ鎖が生じます。これらの鎖と孤立したAl(H2O)6八面体は、格子間水を含むケージを生成します。興味深い構造的特徴は、これらの水分子のシクロヘキサンのようないす形配座であり、アルミノコキンバイトでも観察されます。》
はは。図を見るともっとすごい。

こうやってみると、鉱物というのはすごいものですねえ。こんなに複雑な結晶構造を持っている。単なるアルミ混じり硫酸鉄じゃあない。こんなん、人間じゃ作れないでしょう。神秘神秘。
しかし結晶学はあちきには無理ぽ。


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