チコの花咲く丘―ノベルの小屋―

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時は管理教育「この時代を」第5章 キョウコの思い その14

2014-11-17 19:29:28 | 時は管理教育「この時代を」
 部活動停止期間、生徒は皆帰った第一中学校、その、職員室。
「校医さんからも言われてたんですよ!運動は、部活動は休んでくださいって!」
抗議しているのは、二年生男子生徒の母親。サッカー部所属。六月の末に予防接種を受けて、その日は激しい運動を控えるように言われていたのに、学校の先生たちが部活を休むことを許さず、練習を強制した。
「うちの息子は、注射の跡がぶくっと腫れ上がったんですよ!元に戻らないって言われたんですよ!」
 期末テスト二日前。夏休み前に、休暇中の子どもたちの過ごし方について、講堂で保護者会が行われた。壇上に立ち、マイクを持つ生徒指導主任。
『長い休みは、どうしても気持ちが緩みがちになると思います。そのためにも、夏休み期間中も校則は厳守と、ご家庭で指導をお願いします。まず、中学生にはきちんと校則に従わせること、それが教育の第一歩であり、非行の防止でもあります。』
そうそう・・・ざわめく保護者。知ってる?隣の中学かしら?万引きがあってね。だけど、制服だったからどこの学校の子かすぐわかって、歩道に繋がったんですって!そう!それは良かったですね・・・
『あの、お話は保護者会が終わってからということで、お静かにお願いします。えーと、夏休み期間中にも部活動、プール学習で登校しますが、その時も規定通りの制服、頭髪で登校させてください。』
その後は夏休み中の事務的な届け出についてとか、一般的な話を少し。そして、最後。
『夏休みは、お子さんを学校から家庭にお返しする期間です。事故やトラブルのないように過ごさせてください。』
 保護者会終了。ぞろぞろと行動を出る。
「あの先生何なの?子どもを家庭にお返しするってどういうこと?」
マコトちゃんのお母さん、かなり腹を立てて。うちのユウとよく似てるわ。むしろ、マコトちゃんのお母さんとのほうが、本当の親子みたい。
「タカクラさん、この話知ってる?」
キョウコちゃんのお母さんが。
「二年生の男の子でサッカー部なんだけど、予防接種して運動は休めって言われてたのに先生がね、部活を休むのは許さないって無理やり参加させて、注射の跡がブクブクに膨れ上がったのよ。」
「え!そんなことありましたの!」
「そうなのよ!親御さん、相当に怒ってたわ。教育委員会に訴えるって。」
 セミの鳴き声が聞こえ始める・・・そして、一学期の期末試験が始まった。
 
 

時は管理教育「この時代を」第5章 キョウコの思い その13

2014-11-16 19:24:34 | 時は管理教育「この時代を」
 今日は七夕。お昼休み、いつものように仲良し三人で私の席に固まってるんだけど。
「ユウちゃん、いつまでも幼稚園みたいな歌、やめない?」
マコトちゃんの言葉にユウちゃんが、
「え?何で?」
かなり不満気。私も、
「ほら!皆見てるじゃない、恥ずかしいよ!」
とか言ってみるんだけど、こういうことを堂々とできるのが、ユウちゃんの良さなんだよね。
「あ、そうだ。あのさ、今度の期末テストの英語の範囲だけど・・・」
 中学校なんだからさ。私たち、中学生なんだからさ。話題にする内容も変わって当たり前。生活のスタイルもすっかり変わって、勉強だって受験を目指して。
「じゃ、またあとで。がんばってね。」
体育の時間。今日は水泳か・・・私は一人、保健室へ行く。小学校の時からずっとそうだったし、いつものことって自分でもわかってるはずなんだけど、この頃、私だけが置いて行かれているような気がして。
 保健室で借りてるデスク。ここに座っていると、ちょうど左のほうが窓で、その先がちょうどプールになってる。もともと透明じゃないガラスが嵌めてあるから、影しか見えないけど。皆・・・クロールとかバタフライとか。あと、長距離を泳いだり。どんどん身に着けていってるんだろうな。ううん、スポーツだけじゃない。吹奏楽部で楽器ができるようになった子とか、
『タナカさんってさ、いつも塾の模擬テスト一番なんだよね。』
タナカさんって、ちょっとだけ知ってる。同じ小学校だった子。あの子、小学校の時は勉強ができるタイプじゃなかったのに。

やっぱり私、置いて行かれている!

心臓は・・・病気は、中学になって特に悪くなったって言われてない。だけど、制限されることはどんどん増えているじゃない!
 放課後。今日からテスト期間前で部活動は停止。
「さ!帰ろう!」
ユウちゃんが。続けてマコトちゃんが、
「そうね。早く帰らなくちゃ。勉強しなくちゃいけないし。」
そして、私、
「私も。家庭教師の先生の宿題、まだ残ってるんだ。今夜までにやってしまわないと。」
この後、ユウの表情が曇った。勉強・・・やらなくちゃいけないのはわかってる。でも、遊びたいよ、私。どうしよう、キョウコちゃん、マコトちゃんに置いて行かれている。どうしよう、どうしよう・・・
 
  
 



時は管理教育「この時代を」第5章 キョウコの思い その12

2014-11-15 19:33:57 | 時は管理教育「この時代を」
 頭の先から足の先まで。何もかも、皆、同じであるように。校則校則って、先生たちは私たち子どもが、まるで、怖いものみたいに取り締まりに走り回る。
「タカクラ!今言ったことは何だ!来い!」
ユウちゃん、さっきの発言を先生に聞きつけられて、
「痛い!何するんだよ!」
抵抗もむなしくまた連行。
 今日のこの出来事を知ったのは、夜、うちに掛かってきたマコトちゃんからの電話で。
『ユウちゃん、相当にやられたみたい。』
「教室には帰ってこなかったの?」
『うん。どこに行ってたかはわからないけど、放課後に陸上部とは別に走らされてるのは見たわ。』
ありがとう、わかった。ううん。キョウコちゃん、明日は来れそう?うん、たぶん。
「また、テストの範囲も教えて。ありがとうね、おやすみ。」
電話終了。はぁ・・・ため息をつきながら、その場で壁にもたれ、天井を仰ぐキョウコ。
 校則は必要だと思う。制服も。うんと小さい時から、中学校は制服って思っていたし。だけど・・・先生たちに強制的に丸刈りにされて、其れから学校に来なくなったコモリ君。女の子にも、ユウちゃんだけでなくて、生まれつき茶色い髪なのに、先生たちに無理矢理黒く染められた子がいるし・・・他にも、ボタンが一つ外れてたとか、靴下の長さが規定と一ミリ違ったとか、たったそれだけのことなのに、注意する前に先生たちは殴る。
「こっちはコウスケの、こっちはキョウコのね。キョウコ、お兄ちゃんの、ハンガーにかけてあげて。」
私たちの制服にアイロン掛けしてくれているお母さん。
「制服って、生地が安物よね!」
いつも文句を言っている。
「ただいま。」
お兄ちゃんが帰ってきた。
 おかえり!部活の練習で、朝早く夜遅いお兄ちゃん。
「ユニフォーム、洗濯して!」
「もう!自分で部分洗いぐらいしなさいよ!」
アハハ。うちのお兄ちゃん、めんどくさがりだから。お母さんとのやり取りもいつものこと。それはいいけどさ、これで冬服も夏服も着て・・・制服って、寒い時には寒く、暑い時には暑くできてるよね。 

 
 

時は管理教育「この時代を」第5章 キョウコの思い その11

2014-11-13 13:24:53 | 時は管理教育「この時代を」
 お邪魔しました、失礼します。キョウコちゃん、また明日・・・夕方遅く、ユウちゃんは帰って行った。校則を変える。そんなことできるかな?でも、ユウちゃんが言うこと、私は正しいと思う。誰かが動かないと。
 夏の短い夜の始まり。マンションの居室にもたくさん明かりがついている。その一室。
「マコト。マコト?」
部屋のドアをノックする音とお母さんの声。
「はい。」
返事をすると開けて入ってきた。
「あら?勉強してたの?」
「だって。期末テストが近いし。」
二日も学校を休んだから、お母さん、心配してるんだと思う。学校を休んだのは、別に風邪とかじゃなくて。サボりたかったわけでもない。朝起きたら体が言うこと聞いてくれなくて。
「ま、顔色もいいし、安心したわ。六月は連休がないから、マコトも疲れたんでしょう。明日は、元気に行けそうね!」
明るく言って、私の部屋を出ていくお母さん。
 次の日。もう大丈夫でしょう。お母さんの明るさに押し切られるように制服を着て、通学鞄とバイオリンを持って。そして、たどり着いた教室。
「あ、マコトちゃん!おはよう!」
「ユウちゃん!おはよう。・・・あれ?キョウコちゃんは?」
「今朝、うちに電話があったよ。お休みだって。今日は暑すぎるからね・・・」
悲しそうな、睨むような目で窓の外を見ているユウちゃん。グラウンドには、制服のまま走らされている人が三人。遅刻のペナルティだ。
「遅刻するのが悪いのよ!」
「そうだけどさ。マコトちゃん、おかしいと思わない?」
「何が?」
「学校の校則!」
え!ザワザワ・・・集まる、教室の皆の注目。ユウちゃん、さらに表情険しく、
「あんな校則、辛抱できるほうがおかしいよ!何も言わないけど、ここにいる皆もそうじゃないの!」
ますます注目が集まる・・・ユウちゃん!
 
 
 

時は管理教育「この時代を」第5章 キョウコの思い その10

2014-11-10 19:27:44 | 時は管理教育「この時代を」
 一日の授業終了。これで帰りの会、そのあと部活動、だけど、茶道部の活動はないし。
「キョウコちゃん、お疲れ!」
帰ろう、帰ろうモードのユウちゃん。ユウちゃん、陸上部辞めちゃってからずっとこんな感じ。私と一緒に学校を出て、お迎え地点へ。車の窓からお母さんが、
「お帰り!・・・あ、ユウちゃんも。お帰りなさい。」
「ありがとう!失礼します。」
一緒に車に乗ってもらってるんだ。
 今日は塾もないんだって、だから、そのまま私の家へ。
「お邪魔します。」
「どうぞ。いつもキョウコと仲良くしてくれてありがとうね。」
ジャージ登校のことも陸上部をやめたことも、何も聞かずにいつもニコニコ対応のお母さん。
「着替えてくるね、ユウちゃん、待ってて!」
 小学校の時は、よくこうして一緒に遊んだ。あの頃はマコトちゃんも一緒に。つい、四か月ほど前のことなのに。私服姿の私から、炬燵のテーブルを隔てて向かい側に座っている、ジャージ姿のユウちゃん。
「あーあ。いったい何だろうね?中学って。私ら、犯罪者みたいにさ。」
校則校則って、それが絶対みたいに。ほら、私は体が悪いし、親も学校に掛け合ってくれてるけど、ユウちゃんはかなりきつくやられている。
「校則のせいで、何回殴られたかわかんないよ!授業もどんだけ休まされたか!スカート嫌いで何が悪い!」
 ユウちゃんが怒るのは当然だよ。私だって怒りたい。
「人間には個性があるよね!」
ユウちゃんの言う通り!
「私もそう思う。人間って、一人一人違っていて当たり前じゃない?ちょっと違うだけではじき出されるなんて。」
「そうだよね!キョウコちゃんなんか特に、れっきとした理由があるのに!」
 校則を盾に、何も悪くない人間が学校から追い出されてるんだ。
「コモリ君も、どうしてるのかな?」
前からだけど、かなり気にしてる様子のユウちゃん。
「気になる?」
ちょっとほっぺが赤くなった?
「いや、そういう意味じゃないけど。小学校から一緒だったし、事情も知ってるし・・・」
ユウちゃん、少し切り替えて、
「ねえ、キョウコちゃん、校則を変えるってできないのかな?」
「え!何言いだすの?いきなり?」
「変えさせるんだよ、校則を。あんなの可笑しすぎるよ!個人が個人として認められない校則なんて!」

 
 

時は管理教育「この時代を」第5章 キョウコの思い その9

2014-11-09 19:30:56 | 時は管理教育「この時代を」
 気が付けばもうすぐ七月。
「行ってきます!」
大きいお弁当を持って、家を飛び出していくお兄ちゃん。
「はい、気を付けて。もう!コウスケはいつもギリギリなんだから!・・・キョウコ、八時過ぎには出るわよ。」
「うん、わかった。」
今日は、通院日なんだ。通学鞄を持って制服で病院へ。
 だから、月に一回は確実に遅刻。だいたい、三時間目から登校することになり。
「おはよう。」
「キョウコちゃん、おはよう!」
あれ?マコトちゃんは?お休みだって・・・
「どうしたの?マコトちゃん。」
ユウちゃんは、
「わからない。何も聞いてないし。」
 ベルが鳴ったせいで、これ以上何も聞けなかった。マコトちゃんもこの頃、よく休んでる。どうしたのかな?体が悪いとも聞いてないし。そういえばこの頃、ユウちゃんのジャージ登校にも何も言わなくなった。ちょこちょこ校則違反している、ほかの子たちのことも。
『教室はいる時は右足からって言われてたでしょ!』
規則に忠実で、他の人にも守らせようとするマコトちゃん。
 授業が始まり、
「はい、教科書を開いて。」
机と机の間の通路を先生が巡回している教室。皆座ってると、誰が休んでるかよくわかる。結構空席だな・・・ついさっきまで私もいなかったから、人のこと言えないけど。
「タカクラ、次の問題を黒板に解いて。」
ユウちゃん、よかった。先生たちに無視されてるわけじゃないんだね。先生たちも、ユウちゃんを認めた感じはしないけど。
 それはそれとして、マコトちゃん。どうして休んでるのかな?そして、長く欠席状態の子たち。考えてみたら、小学校の時から学校に馴染んでなかった子が多いけど、そうでもない子もいるんだよね。


 
 
 

 

時は管理教育「この時代を」第5章 キョウコの思い その8

2014-11-08 19:34:11 | 時は管理教育「この時代を」
 お疲れ様でした。茶道部の活動終わり。道具と教室を片付けて、下校。まだ、吹奏楽部もサッカー部も陸上部も活動している中、下校していく。いつもの場所に、うちの車が来ていて。乗り込んだ私にお母さん、
「お帰り、キョウコ。どうだった?部活は。」
「うん。いつも通りだったよ。でもね、茶道部なのに、道具なんか全然ないし。」
「そうなの。もっと本格的なことしてるんだって思ってたわ!」
びっくり顔のお母さん。
 流れる車窓には、朝と同じ陸上部の練習風景。お母さんがびっくりするのは全然おかしくない。だって、私だってそう思っていたから。
『部活って、自分の好きな活動を選んで、本格的に教えてもらえるものなんでしょ?』
だけど、実際は全然。吹奏楽部に入ってるマコトちゃんも言ってた。楽器は皆、個人で買うんだって。マコトちゃんは、たまたまバイオリンを持っていたからよかったみたいだけど。
「キョウコ、部活には、部活の先生がついてくれてるの?」
「ううん。子ども同士で勝手にやってる感じ。」
一応、顧問の先生はいるけど、全然知識のない先生がやってる。しかも、活動を見に来ることもないし。そう。そういや、お兄ちゃんもそう言ってたわよね・・・そうそう。私も現実を見て、ユウちゃんが校則に反発してでも陸上部をやめたこと、正解だと思えることがあるんだ。
 家に到着。店で配達の準備をしているお父さんが、
「おかえり!キョウコ、どうだ、学校は楽しかったか?さ、配達に行ってくる!」
今度はお父さんが大急ぎで車に荷物を載せて。
「うちも、もう一台、小さい車があったほうがいいかしらね?キョウコの送迎用にね。」
 手を洗って、制服から私服に着替えた時、思わずため息が出た。私、お父さんお母さんに、お金だってたくさん使わせている。病気のこと、学校のこと、塾に行けないから、勉強は皆、家庭教師。きっと、普通の子より、お金がかかってるよね。 


 

時は管理教育「この時代を」第5章 キョウコの思い その7

2014-11-07 19:22:07 | 時は管理教育「この時代を」
 金だけの問題かよ!
「何だよ!皆と同じ、管理してるだけだろ!大体、皆が皆、洋服にばっかり関心あるって保障あるのか!」
「ユウちゃん!」
マコトちゃんと一緒に制止する。ユウちゃんは昔から、道徳の授業の後はものすごく機嫌が悪いんだ。やめときって!先生殴っても変わらないって!損するだけだって!・・・言いたいことをすぐに口に出すユウちゃん。いつも思うんだけどさ、普通なら、こういう人って、わがままで協調性がない人っていじめられそうだけど、そうならないのはどうしてなのかな?
 六時間目は体育。雨が降ってきたから体育館だって。
「じゃ、私たち行ってくるから。」
マコトちゃんとユウちゃん。体育はジャージでいいから、ユウちゃんはいつも嬉しそう。
「うん。がんばってね!」
私は、自習の道具を持って、皆と離れて保健室へ。春に運動場で見学させられて体調が悪くなった時、お父さんとお母さんが一生懸命、学校に言ってくれたんだ。保健室をノックして、
「こんにちは、一年一組ツチヤです。失礼します。」
「はい、どうぞ。」
 いつもと同じように、保健室にある、空きデスクにかけさせてもらって・・・皆に合わせたくないユウちゃん、何が何でも自分を皆に合わせようとしていくマコトちゃん、皆に合わせたくても合わせられない私。私たち、仲良し三人組でもこれだけ違うのに。教室とか、学校とかいう単位で、人間の数が多くなったら。
「ツチヤさん、体調はどう?お医者さんはどう言ってる?」
「はい、ありがとうございます。また、両親からお話しすると思います。」
心臓病のために配慮してもらってる私・・・だけど、中学に入ってから特に思うんだ。病気とかじゃなくても、わかってあげなくちゃいけない人がいるんじゃないかって。
 ユウちゃん以外にも、思いつくところでは、コモリ君。中学になって長髪を注意されて、先生たちに丸刈りにされてからもう、全然学校に来ていない。コモリ君には、怪我の跡を見られたくないって気持ちがあるってことじゃない?先生たち、そういう人の気持ちも、もっとわかってあげなくちゃいけないんじゃないかな?


 
 
 


時は管理教育「この時代を」第5章 キョウコの思い その6

2014-11-06 18:18:27 | 時は管理教育「この時代を」
 五時間目、道徳の授業。これは、どのクラスも担任の先生がする。うちのクラスのおっかない担任、クロダ先生が入ってきて。着席した皆が静まり返る。カツカツと黒板に書くチョークの音だけが響き・・・
『私のおしゃれ』
書き終えると、クロダ先生、
「日直!資料を配れ!」
相変わらず怖い!お兄ちゃんからも聞いてたけど、クロダ先生ってどうしてこんなにきついのかな?日直は男女一名ずつ、名簿順で回ってくる。言われるままに、クロダ先生から渡された授業のプリントを配っている・・・
「アオヤマ、読め!」

私のおしゃれ

 私はハナコ。中学一年生です。今日は日曜日。学校で使っているノートの残りページが少なくなってきたので、買いに行かなければならなくなりました。私はいつも着ている、青いTシャツと白いスカートをはいて。
「行ってきます。」
家を出て、近所のスーパーを目指してどんどん歩いていきます。その時、
「ハナコちゃん!」
声をかけられて、振り向いたら、同じ中学の友達、ケイコちゃんでした。
 ケイコちゃんは私の服を見てい言いました。
「ハナコちゃんの服、オシャレだね。いいね。」
「あ、ありがとう。」
顔では笑っているけれど、私はとても悲しかった。
 どうしてっていうと、今日着ている服は、去年、やっと買ってもらえたとても安い服。私だってもっといい服が着たいけど、お父さんもお母さんもお金が大変で、服がほしいって言えない。だから、中学に入ってうれしかった。皆と同じ服が着られるから。小学校の時は服装のことが気になって毎日嫌だったから。
「おはよう!」
皆と同じセーラー服を着て、学校に行ける。毎日とても楽しくなった。

 授業の最後に、クロダ先生。
「はい。このお話のハナコさんのように、おうちの経済的な事情で、服がほしくても買ってもらえない人がいるわけですね。ハナコさんは中学生になって制服になって、皆と同じ服を着られることをうれしく思った。この学校にも同じように思っている人がいるはずです。制服が嫌って人もいますが、こういう人たちの気持ちを思いやってほしいと思います。」

 


 





時は管理教育「この時代を」第5章 キョウコの思い その5

2014-11-05 18:34:24 | 時は管理教育「この時代を」
 ブロロロロ・・・まったく!ひどいもんだな、学校は!本当ね、養護学校に行けなんて!扱いにくい子どもは放り出してしまえって態度丸出しだな!義務教育って意識ないのか、中学の先生は!

このこと、キョウコには黙っておいたほうがいいだろうな。

 三時間目の終わりから雨が降ってきて。お昼休み。皆、教室の中で過ごしてるんだけど、男の子たちなんか、こんな狭いところで暴れるもんだから、
「痛い!」
こっちは座ってるのに、大きい体でぶつかってきた。
「ごめん!」
低い声で謝ってくるのはまだいいほう。
「キョウコちゃん、大丈夫?」
マコトちゃんとユウちゃんが。
「ありがとう、大丈夫。」
表面では笑ってるけど、実は、結構堪えてる。私、急にぶつかられたりするのはもっと良くない。幼稚園でも小学校でもこういうことはあったけど、皆、体が大きくなって、当たられる時の力も強くなって。
「あのさ、この間出たゲームのことだけどさ。」
「うんうん!」
 三人で盛り上がりながらも、この頃、時々だけど思うんだ。
『私、もう、普通の学校に通うのは無理なんじゃないか。』
心の底で脈を打つように。そんなことない。そんなことない!心の中で言い聞かせて、対抗するんだけど。私、心臓は悪くても、勉強は皆と同じようにしたかった。だから、小学校も普通の小学校に行きたいって言った。お父さんもお母さんも学校に掛け合ってくれた。私だって、配慮してもらいながらも、できる限り皆に合わせてやってきた。だけど、どんどん合わせられないことのほうが増えてきて。
「そうだ、知ってる?この間、二組の男子がさ・・・」
マコトちゃんが。中学に入ってから、校則を破ってどんどん自分を押し通すユウちゃんと喧嘩ばっかりだったけど、この頃はそれもほとんどなくなってる。マコトちゃんが言っても無駄だってあきらめたのか、その辺はわからないけど。
 連休が終わったころから、制服も拒否するようになったユウちゃん。ユウちゃんにもたぶん、私と同じように、受け入れなくちゃいけないってわかっていても、受け入れられないことがあるんじゃないかな?