「ロストジェネレーション」第6章 出口のない迷路 その16

今日で三月もお終いか・・・。

年度の終わり、
事務室の人達も異動があり、
休憩室には、今日で
博物館を離れていく職員さんが
丁寧に挨拶に訪れた。

常勤スタッフも。
ニシダさんが今日を持って
任期満了。

「今日までお疲れさまでした。ありがとうございました。」
皆で、ねぎらいと感謝の言葉をかける。

まあ、ニシダさんに関しては、
このままアルバイトに入るのだし、
これまでと変わりなく、お話したりできるんだけどね。

日付変わって四月。
新しい年度の始まり。
五分咲きぐらいに桜の咲く街。

転職活動は、先日面接で不採用になったきり
ストップしている。
やっぱり、この体で新しい職場を求めるのは無理。

「何よりも、健康が第一だからな。」
お父さんの鶴の一声で、
八月まで、
非常勤職員でいられる間は、健康を立て直すのに専念する事になった。

作業のせいで、私は病気になった。
自分たちのポリシーを破り、
何度も持ち場の変更を申し出たのに、応じなかった。

そんなボランティアに対して、
責任をとってもらうにはどんな方法があるか。
あれからずっと。自分なりに、パソコンで調べていて・・・

裁判。
辿りついた言葉はこれだった。

法廷で闘って、
団体、そして、責任者の過失を立証し、
損害賠償をしてもらう。

なるほど。これなら正当な手段だ。
でも、実際こんな事できる？
弁護士さんに相談しに行くお金もないのに。
ましてや裁判なんて。

多額の費用がかかるうえに、
時間だって相当かかる。
世間の人だって、絶対いい顔はしないだろうし。

それでも、私は戦い通せる？

無理だ・・・
ヒカルはため息をついた。
考えれば考えるほど、これしか方法がないんだけど、
同時に、一番実現不可能な方法でもあるのだ。

結局、泣き寝入りしかないのか。
ううん、もっといい方法はあるはず。
諦めずに探そう。
ヒカルは自分を支えなおした。