チコの花咲く丘―ノベルの小屋―

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時は管理教育「この時代を」第3章 ユウの苦悩 その9

2014-10-05 19:36:58 | 時は管理教育「この時代を」
 朝八時。プルルルル・・・
「あ、おはようございます。一年一組のタカクラユウの母です。はい、お世話になっております・・・・」
ユウ、今日は休むって!
「はい、本当に申し訳ありません。どうぞよろしく。」
受話器を持ちながら何度も頭を下げて。もう!親だから仕方ないんだけど!
 今朝、またジャージを着ていこうとしたのよ。で、主人と一緒に制服に変えさせようとしたら、
『学校に行かない!』
引っ張って行っても無駄でしょうし、今日は休ませたわ。ト、ト、ト、ト・・・階段を上がる音。お母さんだ。頭からすっぽり布団をかぶる。部屋のドアが開いた。
「ユウ!学校に電話しておいたけど。本当にあんたって子は!」
バシャン!
 ト、ト、ト、ト・・・これ以上の言葉はかけずに、階段を下りていく。本当に!中学生は制服を着るものなのよ!女の子は女の子の!
『ピピー!』
あ、洗濯物ができたわ。夏物になってきて、量が少なくて助かる。ユウの学校指定の下着・・・やっぱり、白無地って中学生らしくてすがすがしいと思うわ。よいしょ!高い物干しにバスタオルを干して。保護者会なんかでよく聞くけど、女の子って、
『オシャレばっかりに興味を持って、困っています。服ばっかりほしがるんです。』
中学生になったらユウもそうなると思っていたのに。オシャレに凝ってほしいって思っているんじゃないけど。だけど、どうしてかしらね?ユウはオシャレに興味がないどころか。
 庭にある手作り簡易のサッカーゴール。ユウスケのためにお父さんが作ったんだけど、ユウも気に入って・・・
『お母さん、今日はみんなでここでサッカーする!』
幼稚園の時から、放課後には男の子をいっぱい連れてきてた。そうだったわ。遊びも男の子のを好んでいたわよね。女の子のおもちゃには、見向きもしなかった。
 ユウはやっぱり、ユウスケの生まれ変わりなの?ううん、親の私がそんなこと言っちゃダメよね。ユウは私たちの娘よ!それなのにどうして!
『嫌だっ!』
成長が早いっていいことなのよ!どうしてそこまで嫌がるの?
 子どもが学校を休んでいるのに、本当はしたくないけど、ついつい、いつもの習慣でテレビを付けてしまう。ニュースやってるわ。
『続いては、今日の特集。心と体の性別が一致しない、性同一性障害について紹介します。』
冷や汗が出る・・・これ、ひょっとしたら、ユウはこれなのかしら?