チコの花咲く丘―ノベルの小屋―

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ADHDとともに「君の星座」第9章 翼、もがれて その2

2013-12-22 18:59:44 | ADHDとともに「君の星座」
 本当に失敗してなかったの?それなのに、どうしてクビになるの!何回言ってもらってもわからない!私は何もかも仕事に注いでた!
 ハルカこちらが言えばいうほど激しい言葉で抵抗する。確かに、こちらがいくら詰問しても答えは変わらないのかも・・・主人と一緒に、こころのクリニックのドクターからお話を聞いたあの日。
『え?ハルカさんはもう、医療事務の仕事、根を上げられてますよ?』
ドクターには、「給料安いし」とハルカは言ったみたいけど・・・もしかしたら、かなり無理な仕事だったのかしら?まさか、普通に人ができることが出来ないなんて。
 翌日、ジョブサポートセンターへ。保健師マツウラさんだけど・・・前のカウンセリングの日に、WAIS(ウェイス)の結果を持っていきますって予約入れてたんだ。だけど、今日取っていたことが本当によかった。
「こんにちは。本当に、立て続けにこんなことになってしまうなんて・・・」
がっくりきている私に、
「まあまあ、そんなに気にしなくていいわよ。だって、前の整形外科のことでかなりショックだったでしょ?そのあとすぐ行ったんだもん、それだけでもすごいことよ。前のところ、かなりハードだったんでしょ?」
確かにそのとおり、事実上、三ヵ月で終わったけど、週四十二時間働かせて十万円にならないなんて。
「はい、そのあと熱出しましたし。そのあともなんとなく不調で。」
体の赤い発疹。これもひかないまま。薬も効果なし。
 あ、そうだ。私は一枚のコピーを取り出した。
「WAISの結果です。」
真剣に見ているマツウラさん。
「うーん、私も専門じゃないからあれなんだけど、どうだったの?」
「はい。知的には問題ないんですけど、不注意って言われました。で、診断は発達障害傾向と言うことで・・・」
そりゃ、マツウラさんがすっきりしないって顔するのは当たり前だろう。私もすっきりしなかったもん。
「まあ、その傾向があるってことだけですよね?」
「うーん・・・」
「だけど、不注意ってどういうことなんでしょう?ほら、私が困ってるのはコミュニケーションとか、空気が読めないってことじゃないですか。」
「そうね、その辺はじっくり主治医の先生に聞くしかないわね。」
本当にそうだよ。不注意だけで人間関係困るのかな?失職繰り返すのかな?だいたい、そんなの言われるの始めてだし。
「わかりました。そうします。では、また次回の予約ですけど・・・ニシカワさんの方にも・・・」
 カウンセリングは一時間。まだ夕方、家に帰る気はしない。帰らないわけにも行かないけど・・・結局、夜遅くにそっと帰宅。まだ暑いし、そのまま寝るわけにも行かない。シャワーを浴びて、洗面所のドアを締め切ってドライヤーする。突然ドアが開き、
「お前誰だ!」
お父さん。かなりアルコールが入っている。
「お前は誰だ!お前は誰だ!クビ?わしの子じゃない!」
二階からお母さんが降りてきて。
「あなた!お酒飲んで、やめて!やめてちょうだい!」
悲しすぎて、涙も出なかった。