ひからびん通信

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小沢氏の民主党代表選出馬の意味

2010年09月09日 | 政治問題
 小沢氏が,何故今回の代表選に出馬を決意したかについては,メディアにおいていろいろな憶測がなされている。
 そもそも小沢氏が代表選に出馬することについては懐疑的な見方が多かったが,3ヶ月前,鳩山首相の普天間問題を巡る迷走と鳩山,小沢両氏の政治とカネの問題にけじめをつける形による両氏の辞任劇が繰り広げられたころから,小沢氏は,すでに9月に行われる代表選出馬に向けての戦略を練っていたものと思う。

 小沢氏は,政権運営能力に問題のある菅政権は,ねじれ国会を乗り越えられず,来年3月には,審議に行きずまり,結局予算の成立と引き換えに衆院解散に追い込まれ,民主党は総選挙に大敗して政権を失ってしまうことを危惧した。

 そこで小沢氏は,2009年マニュフェストの原点回帰を唱え,もう一度民主党の浮揚を図ろうとした。

 しかし,小沢氏が代表選に出馬するためのハードルはあまりにも高かった。
 だからこそ,小沢氏は代表選に出馬することはないだろうと多くの人が考える一方で,小沢氏出馬の機運が高まるにつれ,党の分裂を危惧した鳩山氏らが代表選回避の動きに出たのである。

 政治とカネをめぐる問題(小沢氏は,検察に起訴こそされなかったが,本当は裏でゼネコン等から多額の不正な金をもらっていて,それが世田谷の土地の購入資金等に使われていたのではないかという不信が強く国民の間にあるという問題)は,裾野が広くで根深い性格を孕んでいる。
 
 政治資金規正法違反の被疑事実自体は表の金の出入りについての虚偽記載という事実にとどまるが,背景事情であるどうして政治家が何億もする土地を購入しなければならないのか,あるいは原資は何かなどと聞かれても,国民が納得するような説明はできない。
 
 そして検察の不起訴処分後も,メディアや野党の批判は一向に沈静化する気配はなく,可能性とはしては高いとは思わないが,10月にある検察審査会の決定で起訴が強制され,小沢氏が刑事被告人となることもありうる。

 また仮に代表選に勝って小沢内閣が生まれても,こんどは国民世論を背景にした野党の攻勢が予算委員会等で起こり,国会の審議が空転して結局解散に追い込まれるのではないかという事情も予想され,それが菅首相の続投を支持する要因となった。

 このような政治とカネの問題をめぐる蟻地獄に落ちてしまっていることは小沢氏自身もよく分かっているはずであるが,あえて代表選の出馬を決意した。
 
 普通なら,検察審査会の決定を待って,刑事被告人となる可能性がなくなるなど,一定期間の謹慎期間を経た後でなければ,小沢氏が民主党の代表となり,さらに総理大臣になることは,世論の批判が強く,許されない。
 
 小沢氏は,世論の逆風があっても,政治・経済の閉塞状況を打ち破るような結果を残すことができれば,世論の批判も沈静化し,公明党等の連立により国会運営も乗り越えられると考えたのだろうか。
 
 また,小沢氏がもう68歳という年齢に達していて,同氏の出馬を仲間の議員らから熱望されたという事情も代表選出馬を後押しした。

 そして小沢氏は,主党内の権力構造の変化に留まらず,民主党の政権転落つまり政治主導・国民主導による政治の実現そのものが崩壊の危機に直面することになってしまうと考えた末代表選の出馬に至ったと考えることができるのかもしれない。

 ところで,それにしても鳩山政権を引き継いだ菅首相の施策はあまりにおそまつなものだった。
 菅氏は,特に財務大臣就任後,ギリシャ問題が発生するころから,まるで人が変わったようにあっさりと政治主導の旗を降ろして,財務省主導のもと,消費税の増税を打ち出すなど財政緊縮路線に舵を切ってしまった。

 もちろん財政の健全化が重要なことは言うまでもないことだが,財務省の考える施策は中央の既得権益を温存させながらの緊縮財政でしかなく,それは穴のあいたバケツで水をくみ出そうとするものだと言える。

 必要なのは効率化された中央集権体制を確立することであって,かなりの額の財源の確保ができ,それが地域の活性化につながる。補助金の一括交付金化の議論もある意味で同じ考え方であると言える。

 さらに菅首相は,「雇用,雇用,雇用」と繰り返すだけ,マクロ経済の基礎理論さえも理解していないのではないかと思ってしまう。
 それまで菅首相は,「霞ヶ関の役人は,試験ではいい成績がとれるが,大ばかものだ。」などと言っていたが,それはついこの前のことであった。
   
 そして菅首相は,代表選に先立ち,鳩山首相に小沢氏との仲介を懇願したり,鳩山氏から「トロイカ+1」という案を示されて,一時は挙党一致の名の元にそれを受け入れた。
 しかし,その仲介案で仙石氏や前原氏を説得することはできず,逆に,前原氏から「人事で裏取引するようなら,私が代表選に立候補する。」などと言われて脅されると,急に態度を変えて,鳩山氏の仲介を断った経緯もある。
 
 菅首相は,一般会計と特別会計をあわせた約210数兆円の国家予算を優先順位をつけて組み替え,政治主導で予算の編成を根本から改めることを簡単に放棄し,財務省主導による財政緊縮政策に基づいた自民党時代と同じシーリング方式の23年予算の編成作業に入ってしまった。

 菅首相は,ねじれ国会は個別の政策ごとに野党と協議して予算関連法案等の成立を目指すというが,あまりにも甘過ぎるのであり,公明党等との連立を模索する術も能力も持ち合わせていない。
 このままだと管政権には展望が描けない。

 なお,代表選の行方は,残り1週間を切り,地方議員,党員・サポーター票が菅氏有利に推移しているようだが,土壇場まで結果は分からない。
 
 世界経済は,米国景気の減速懸念,欧州の金融危機の再燃等を背景にしたリーマンショック後の2番底を探る気配を漂い始めさせている。
 国内も少子高齢化社会の進行,デフレ経済よる経済の収縮,社会,地域,家族の崩壊現象等何一つ解決の糸口が見出せていない。

 今回の代表選では,制御不能の困難な状況に日本を陥らせないための議論をぜひ聞きたい。
 

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