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ひからびん通信

日頃思ったことなどについてコメントします。

郵便不正事件,広がる闇の解明はできるか。

2010年09月23日 | 事件・裁判
改ざん「上司に報告」 前田容疑者、村木氏初公判の直後(朝日新聞) - goo ニュース

 最高検は、9月21日夜、大阪地検特捜部主任検事の前田恒彦を,押収にかかるフロッピーディスク(FD)のデータを改ざんしたとして証拠隠滅容疑で逮捕するという異例の強制捜査の着手に踏み切った。
 
 このFDは2009年5月26日村木厚労省元局長の部下であった同省係長上村被告の自宅から押収されたものであり,同FD内には上村被告が実体のない障害者団体「凛の会」側からの依頼で発行したとされる偽証明書の作成日時等のデータが保存されていた。

 そして前田容疑者は,村木元局長の起訴(2009・7・4)の1週間後の2009年7月11日ころ,インターネットでダウンロードした専用ソフトを使用して上記偽証明書の作成年月日が「04年6月1日午前1時20分」とあったのを「04年6月8日午後9時10分」に書き換えているが,その動機が何であったかが問題となる。

 検察の描いた構図(ストーリー)については,前回紹介したが,検察は村木氏が上村被告に偽証明書作成の指示をしたのは,同人らの供述等をもとに04年6月上旬としていたのに,FD内の偽証明書の作成日時のデータは「04年6月1日」になっていたことから,上村への指示は当然6月1日より前でないと辻褄が合わなくなってしまう。
 また郵便局が凛の会に証明書の提出を促したのが,早くても6月8日であることが郵便局員の事情聴取から判明していたという事情もあった。

 そこで前田容疑者は,検察のストーリーにすり合わせようとして,上村に指示した時期とFDの証明書の作成の時期との整合性を図るためFDデータの改ざんを試みたとみるのが自然である。
 
 しかし,すでに押収したFDの検証を行って証明書の作成は6月1日に行われた旨の検察事務官作成の捜査報告書が作成済みである上,前田容疑者は,通常判決が確定するまで返還されない証拠品のFDを改ざんの3日後である7月14日にわざわざ郵送で上村被告の母親方に返還している。

 なぜ前田容疑者がこのよな不自然とも思われる行動に出たのかは,前田容疑者が真実を語らないとその詳細は分からないが,あえて推測するならば,前田容疑者は,データが改ざんされたFDが弁護側に返還されれば,「改ざん」には気付かないまま,弁護側が,検察のストーリーに沿う客観証拠として証拠申請してくれるのではないかと期待したのではないか思う。

 しかし仮に証明書の作成が6月8日とするFDが証拠採用されたとしても,上記捜査報告書の作成経緯が問題視されれば,FDのデータ解析が行われて,改ざんの事実が判明してしまう危険がある。
 現に前田容疑者は,最高検の取調べに対し,上記捜査報告書があるのだから,故意にFDのデータを改ざんする必要はないなどと供述して犯意を否認しているそうである。

 ではなぜ前田容疑者は,上記捜査報告書がありながら,これと矛盾するデータの書き換えを行ったのか不可解と言えば不可解である。

 ただ前田容疑者は,公判部において,消極証拠になりうる上記捜査報告書を証拠請求することはないのではないかと思っていたのかもしれない。
 またデータが改ざんされたFDがそれを知らないまま弁護側から証拠申請してくれれば,自らがデータの改ざんに関与したことが分かりにくくなるのではないかと思い,あえて起訴後間もない時期にデータの改ざんをしてすぐにこのFDを弁護側に返還して,その証拠請求を促していたのではないだろうか。

 これはあくまで想像の域を出ないが,この点は最高検の捜査に委ねるしかない。

 確かに,前田容疑者は,共犯者らの供述により村木元局長の共謀立証は固いと考えて起訴したものの,FDのデータが自らが描いた事件の構図を崩しかねないという不安を抱いていて,FD改ざんの持つ重大さの認識が希薄なまま,このような挙に出たのかはないか。

 しかし,前田容疑者は検察のストーリーに沿う捜査を強行するあまり,客観証拠の吟味を疎かにしていることを留意しないまま,関係者だけの供述が揃いさえすれば起訴できると思い込んでいた可能性が高く,捜査全体を鳥瞰できていなかったことが,このような愚行を導いてしまった原因と言えるのではないか。

 なお,前田容疑者は,その後同僚検事に「時限爆弾をしかけた」などと言ったとする旨の報道があるが,これが犯行の動機の核心を示唆するのではないだろうか。

 いずれにしても前田容疑者は,パソコンの知識には詳しくなく,後にFDの改ざんが見破られるとは少なくもその時点では考えていなかったのだろう。改ざん工作がばれることが分かっていたらこのような行動はなかったはずだ。

 FDのデータ改ざんは,村木元局長が起訴された2009年7月4日の1週間後の7月11日であり,その後前田容疑者がFD改ざんをほのめかすようになるのが,村木元局長の第一回公判が開かれる2010年1月27日の直後である。

 前田容疑者は,東京地検特捜部に応援派遣中,村木裁判の第1回公判でFDの最終更新日時が問題になっていることを同僚検事から電話で知らされ,そのときデータの書き換えの可能性があることを打ち明けたのである。

 そして前田容疑者がFDのデータを改ざんした事実は,特捜幹部さらに地検次席・検事正も把握することになった。
 
 もちろん検事正以下の幹部は,FDデータ改ざんに対する何らかの協議を行っているはずであるが,結局その後村木元局長の無罪判決がでる2010年9月までの約7か月間,データの徹底検証等をしないまま放置した。

 おそらく検察は,村木裁判の公判中にFDデータが改ざんされていることが公になったときに検察が受けるダメージがあまりに大きいことに恐怖し,いまさら引き返すこともできないという進退両難の窮地に陥ったまま時間だけを経過させてしまった可能性があるものと思う。

 今回のFDデータ書き換え疑惑は,自ら描いたストーリーに固執し過ぎた特捜部が客観証拠との矛盾という蟻地獄に陥りながら,最後まで村木元局長の有罪立証に向けて突き進んでしまった末の愚行と言うしかない。

 それだけでなく検察は,前田容疑者がどのようにしてデータの改ざんをしたのか,改めてFDの所有者からFDを任意提出させて検証するなどの措置を講じることなく,これを隠ぺいしてしまった疑いがあるのであって,それは検察の存立基盤を揺るがしかねず,世間は,今,最高検による捜査の進展を固唾を飲んで見守っている。
 
   
 
 

 
 
 
 

郵便不正事件無罪判決が提起する問題点

2010年09月13日 | 事件・裁判
村木元局長に無罪=検察構図を全面否定―障害者郵便悪用事件・大阪地裁(時事通信) - goo ニュース
 まず,障害者団体向け割引郵便制度悪用事件がどのような事件であったかを振り返る。
 障害者団体とされる「凛の会」や「健康フォーラム」は,2006年から2008年ころ,大手家電量販会社,紳士服販売会社等のダイレクトメールを障害者団体の発行物と装い,11社の広告主のダイレクトメール約3180万通を違法に発送し,正規に払うべき料金との差額約37億5000万円の支払いを不正に免れたというのが郵便法違反事件である。
 
 一連の捜査により,広告代理店役員,DM発行会社関係者等多数の関係者が略式起訴されるなどし,さらに厚生労働省元局長の村木厚子が,平成16年6月,実態のない障害者団体「凛の会」に郵便料金の割引を認める厚労省の偽の証明書を部下の上村係長に指示して作成させたとして,同年7月4日,有印公文書作成・同行使罪に問われて起訴された。
 そして逮捕後,約5カ月にわたる勾留を経て保釈され,その後平成22年9月10日,大阪地裁は,村木被告が部下に指示して偽証明書を作成させた事実は認められないとして無罪を言い渡した。
 
 この裁判において,大阪地検特捜部が,描いた事件の構図(ストーリー)は次のようなものであった。
 自称障害者団体の「凛の会」の元会長・倉沢邦夫は,2004年2月,かつて秘書として仕えた参議院議員石井一に,凛の会が障害者団体であることの証明書の発行を厚労省に口利きしてほしいと依頼した。
 その後,石井議員は当時厚労省の塩田幸雄部長に証明書発行の口利きをし,塩田部長が当時部下の村木課長に証明書の発行の指示を行い,さらに村木被告が部下の係長・上村勉に証明書作成を指示をして,上村が虚偽の証明書を作成してこれを村木被告に渡し,さらにこれが村木被告から倉沢に渡したというものであった。

 そして検察は,このストーリーにしたがって,倉沢,塩田,上村ら厚労省関係者らおよび村木被告を取り調べ,否認と続けた村木被告を除く関係者全員から,検察のストーリーに沿った供述調書を作成した。

 しかし,公判ではそれら検事調書の取調べは弁護人から不同意となり,証人として出廷した倉沢,上村らは,一転して捜査段階の供述を翻して否認し,「調書は検事が勝手に作成した作文であり,強引に署名を押し付けられた」旨証言した。
 
 ここで問題となるのは,検事調書の任意性と信用性の有無降り調べメモを廃棄していることだ。

 取調べにあたり,各検事は,その都度取調べの状況,内容等をメモとして作成し,このメモを参考にしながら具体的に供述調書を作成していく。また取り調べメモは直接証拠として裁判に提出されることは少ないが,裁判において,調書の任意性や信用性が争われたときには,任意性・信用性の立証に供する補助証拠として用いられる。

 なお,簡単な事件ではメモの作成が省略されるケースが多いが,本件は政治家への波及を念頭に置いた重要事件であり,メモは必ず作成されていたと思われる。

 報道でも明らかなように,最高検も,取り調べメモは証拠開示の対象となるものであって,供述の任意性・信用性の立証に重要なものであるから,その保管は慎重に行うように通達している。

 しかし,公判廷に出頭した6人の検察官は,一様に作成した取調べメモは廃棄した旨証言した。
 廃棄の理由には合理的な説明はなく,裁判所は取り調べメモの廃棄は不自然と考えて検察に不信感を抱いた。
 そのことと相まって,偽の証明書の作成日が上村のフロッピーディスクの記録と齟齬すること,村木被告が倉沢に偽の証明書を渡した厚生労働省の課長席前の位置関係・状況が客観的状況と食い違うこと,倉沢が石井議員に口利きを依頼したという日時石井議員は千葉のゴルフ場にいたというアリバイがあること等から,供述調書の内容は客観的証拠と合致しないなどとして,各調書の証拠請求を却下し,無罪判決する至った。

 きわめて明快な無罪判決であり,検察の描いたストーリーは砂上の楼閣のように崩れた。

 取調べメモも文字によって表示された思想の記載であり,捜査ならびに裁判において証明に供されるものであることは明らかであり,現に裁判所においても,検察官に取り調べメモの提出を促している。
 
 したがって,もし検察官が取調べメモを正当な理由なく廃棄したとすれば,公用文書毀棄罪(刑法258条,3月以上7年以下の懲役)の罪責を問われる恐れがある。

 また,弁護側も,当該取調べメモは,今も大阪地検庁舎内に保管されているのではないかという疑念も持っていたのではないか。
 最高検から取り調べメモの保管・管理を指示されていながら,各検察官が勝手に自分の判断だけで廃棄することは考えられないのであるから,仮に取り調べメモが,廃棄されておらずまだ存在しているとすれば,検察官は公判廷で偽証(刑法169条,3月以上10年以下の懲役)したことにもなってしまう。
 
 このように今回の判決は,判旨の中で直接検察の捜査の在り方を批判することはなかったが,検察捜査に対する根源的な問題を提起していると考えざるを得ない。

 これまでにも捜査の在り方について,志布志事件や氷見事件の検証も行われてきたが,その成果はまだ見えていないのであって,失われた検察の信用を回復するために何をすべきかをもう一度考え直さなければならない。

 なお,判決後の記者会見で,村木さんは無罪判決があったことの喜びを素直に表し,あえて検察の取調べの不当さなどを非難するようなことはなく,逆にこれからも検察を信頼していきたい旨語った。
 そのような村木さんの人柄に触れることができたのが,今回の事件の救いだったような気がする。
 
 
 

実質犯と形式犯の区別

2010年02月01日 | 事件・裁判
 政治資金規正法第12条は,政治団体の会計責任者は,当該政治団体にかかるその年のすべての収入・支出を記載した収支報告書の提出をを選挙管理委員会に提出しなければならないと定める。小沢氏の資金管理団体の会計責任者であった元秘書の石川衆議院議員は,世田谷区深沢の土地購入代金に関する4億円の収入を収支報告書に記載をしなかったのであるから,同法12条(虚偽記載)に違反することとなる。

 ところで,同条の適用を巡っては,まず同条が形式犯なのかそれとも実質犯なのかの議論が聞かれる。実質犯であるか形式犯であるかは,現職の国会議員による政治資金規正法違反事実の起訴価値に影響するのであって,単なる形式犯であるとすれば,起訴の正当性を裏付けるそれなりの理由が必要になってくるからである。

 一般に,一定の法益の侵害または侵害の危険の発生が内容とされている犯罪を実質犯と呼び,実質犯の中には,法益が現実に侵害されることが必要とする殺人,傷害のような侵害犯(実害犯)と,単に侵害の危険の発生だけで足りる危険犯とに分類でき,さらに危険犯は,法益侵害の具体的危険,すなわち現実的な危険の発生を要件とする往来危険犯のような具体的危険犯と,抽象的危険,すなわち,一般的に法益侵害の危険が存在するとみられれば足りる放火,失火のような抽象的危険犯に分類区別できる。

 このような実質犯に対し,法益侵害の抽象的危険すら必要とされない犯罪を形式犯と呼ぶ。たとえば,食品衛生法における不衛星食品貯蔵・陳列罪などがそれであり,貯蔵・陳列については,単純にその行為自体を処罰するものである。

 そこで政治資金収支報告書への収入の不記載が単なる形式犯であるかを検討する。
 上記定義に照らすと,同条が形式犯であることは明らかである。
また同条の文言からも,一定の法益侵害ないしその危険の発生は要件とされていないのであって,単純に会計責任者が会計帳簿にすべての収入の記載をしなければただちに同規制法違反にあたるのです。
 収支報告書に不記載なり虚偽の記載があることにより,国民の政治活動の公明さ・公正さに対する信頼が害されて政治不信を招くことがあろうとなかろうと犯罪の成否には影響しないのです。

 ただし犯罪が成立するとしても,当該犯罪につき現職の国会議員を起訴するのが相当かどうかの判断は残るのです。
 この判断にあたり考慮される事情が悪質さということになるのでしょう。何をもって悪質であるかは,目的,計画性,規模等の諸事情を総合的に考慮して判断するのであり,巷で伝えられるように4億円の原資は何か,原資の中に水谷建設からの裏献金が入っているか,不記載・虚偽記入の手口・計画性等の要素がポイントになるわけです。
 そしてこの悪質性が認定されて初めて行為の重大さが認識され,形式犯であっても石川議員による虚偽記載事実の起訴価値が認められるのです。

 なお先日テレビで,特捜出身のヤメ検弁護士である若狭勝氏が,政治資金規正法の立法趣旨を強調して,収支報告書の虚偽記載は実質犯ある旨を,同郷原信郎氏が,形式犯であるが実質犯としての側面も持つ旨それぞれ説明していましたが,形式犯であるか実質犯であるかの議論と起訴価値の議論は一応分けて考えるべきです。形式犯であっても十分起訴価値がある場合はあるのであり,特に若狭氏の説明はやや強引かなと思いました。
 

陸山会裏献金問題の落とし所(2)

2010年01月24日 | 事件・裁判
 昨日東京地検特捜部による小沢幹事長の事情聴取が千代田区のホテルニューオータニで行われた。午後から4時間程度の事情聴取になったようだが,小沢氏は事情聴取後同ホテルの宴会場において,事前に用意したペーパーを報道陣に示しながら,世田谷区深沢の土地取引代金4億円の原資が,長年にわたり蓄財した自己資金等であり,水谷建設からの不正な資金提供等はなく収支報告書に記載しなかったのも,具体的な事務は担当の者が行ったので,実務的な点まで立ち入って関与していなかったなどと特捜部による事情聴取の内容を説明した。
 
 この記者会見はコンパクトにまとまられており,土地代金4億円の原資の一部に家族の預金を充てたということや,不記載の実務は秘書がやっていたため自分は全く分からなかったという点は鳩山首相のケースと類似するところがあるが,小沢氏の会見はおおむね功を奏した言えるだろう。

 しかし特捜部が,今後石川議員らの取り調べを継続し,押収した関係証拠を精査検討したとしても,小沢氏の主張を覆して4億円の原資の中に裏献金が入っていたことや小沢氏が収支報告書の不記載に関与していたことを立証をすることは相当困難と思われる。
 政治家が,土地代金の支払いや登記さらに収支報告書の作成等の実務を秘書に任せていることは周知の事実であり,収支報告書の詳細をすべて自ら確認することはないと言われたらそれを以上の反論は通常できない。同じようなことは,一般家庭において夫が家計の処理を妻に,会社の社長が経理等を会計担当者に任せているという社会実体があることと同様なのである。

 産経新聞の報道だったが,石川議員の逮捕の前からすでに法務省側から小沢氏サイドに,今回の特捜部による捜査は,小沢氏が任意の事情聴取に応じることを条件に石川議員の起訴をもって終結させる旨の意向が示されていたことが明らかになっている(このことは小沢氏サイドから公表することはしなかった)。

 ところがその後,石川議員の自殺の危険性が起きたことなどの事情の変化に伴い,現場の特捜部が上層部を突き上げて強制捜査が行われることになり,出来レースの観があった展開は一気に小沢氏と検察の全面対決の構図が変わってしまった。

 法務検察の組織全体の足元を見て取った小沢氏が,囲碁の名人と囲碁の試合をしたりして,なかなかセレモニーとしての検察の事情聴取に応じず,特捜部を感情的にさせて上記のように強制捜査に至らせる原因を作り,それがこの問題の落とし所のタイミングを誤らせてしまったのかもしれない。
 
 石川議員の逮捕直後,小沢氏は検察に対し極めて強い態度で対決姿勢を鮮明にさせていた。しかしその後の小沢氏の対応は常に冷静で自信に満ちていた。それは側近に「近々,この問題は終息する。一時検察との対応に時間を取られるかもしれないが,その後は幹事長職を全うし夏の参議院選に臨むたい」などと言っていたことからも窺うことができる。
 
 事情聴取後の記者会見で,小沢氏は検察に対する対抗姿勢は全く表に出さず,報道陣の質問に保護を荒らげることもなく,いつもの「剛腕」の顔は一切のぞかせなかった。
 そして最後に,カメラのフラッシュを浴びながら,刑事責任を問われた場合の対応を問われた時も「そうならないため,きょうは事情の説明をしたわけです」と言って苦笑いさえ浮かべたのである。
 このようにして,今回の会見は小沢氏の全面勝利を宣言する場になったものと思われる。
 いすれそう時間をかけずに問題は終息に向かうのだろう。
 なぜか逮捕前に石川議員が,知人に「こんなことで逮捕されるのかよ。本当のことが分かったらみんな何でこんなことで大騒ぎしていたんだと思うだろう。」などと言っていたことが思い出されてしまう。
 

 

 

小沢幹事長の資金管理団体「陸山会」の土地取引を巡る裏献金問題の落とし所を探る(1)

2010年01月20日 | 事件・裁判
 民主党の小沢一郎幹事長の資金管理団体「陸山会」が世田谷区深沢の土地を3億4000万円で購入するにあたり,不透明な経理操作を行って政治資金収支報告書に虚偽の記載がなされていることについては,連日報道がなされている。
 そして小沢氏の元秘書で国会議員の石川地知祐及び西松建設の違法献金事件で公判中の大久保保隆らが逮捕され,小沢氏も特捜部から任意の事情聴取を求められるなどして多くの国民の関心を集めているが,その着地点がどこに行き着くのかは判然としない。

 石川の供述等によると,陸山会は2004(平成16)年9月秘書の寮の建設予定地として小沢氏の自宅近くある世田谷区深沢の土地購入を計画し,翌10月上旬石川が陸山会の持っている資金では土地代金が足りないことから,小沢氏に相談して同人から都内の事務所で紙袋に入った4億円を受け取った。その後石川は10月5日手付金として1000万円余りを支払い,10月中旬以降残りの資金を一旦陸山会の複数の銀行口座に分散して入金した後1つの口座にまとめ,その資金を使って10月29日午前土地代金の残金3億3000万円を支払った。
 ところが石川は当日の午後,土地代金の支払い後他の小沢氏関連の政治団体から陸山会に計1億8000万円を移動させ,残っていた他の資金と合わせ4億円の定期預金を組み,この定期預金を担保に銀行から小沢氏個人名義で同額の融資を受けた(融資関係書類には小沢氏の署名がある)。
 その後融資された4億円をそのまま陸山会に貸付け,貸付金は05年,06年に上記定期預金を解約して小沢氏に返済されているが,その際陸山会は預金金利と融資利息の差額につき約500万円の差損を生じさせている。

 このように石川は,土地代金が支払われた直後に,別途4億円の定期預金を組んで同額の銀行融資を受けたり,小沢氏から受け取った4億円を複数の陸山会の口座に分散させて入金した後,1つの口座にまとめてから土地代金の支払いをする等不自然な資金移動を行っているが,この資金移動について,石川は,複数の陸山会の口座に4億円を分散入金したのは一度に入金すると銀行がびっくりすると思ったからであり,4億円を収支報告書に記載しなかったのは,民主党の代表選に立候補する予定の小沢氏が多額のお金を持っていることを公表したくなかったからであり,4億の預金を担保にして銀行から同額の融資を受けたのはできるだけ多くの資金があることを装いたかったからだなどと説明している。

 一方小沢氏も土地代金の原資は当初は4億円の預金を担保にして銀行から融資された資金を使って買ったといいながら,その後同土地は以前から個人的に蓄えてきた資金を使って買った旨異なる説明をしている。

 そこでこれまでに判明した事情を前提にすると,まず石川が小沢氏から受け取った紙袋に入った4億円は政治資金収支報告書に記載されていない簿外資金に当たるから,石川自身の収支報告書に4億円があったことを記載しなかったという事実は動かない事実と認定できる。
 次に小沢氏が石川の収支報告書の不記載に関与していたかどうかが問題となる。
 特捜部は,小沢氏が散歩の途中近所でこの土地を見つけ購入を指示していること,4億円の資金は小沢氏が提供していること,銀行の融資書類に小沢氏が署名していることなど一連の土地取引には小沢氏が深く関与しているので,小沢氏自身に収支報告の不記載につき共犯としての関与があったのではないかと疑っている。
 さらに水谷建設の元会長らが特捜部に対し,世田谷区深沢の土地取引のあった同じ04年10月に5000万円,05年4月に5000万円をそれぞれ小沢氏の地元の胆沢ダム工事に関してその下請け工事の受注ができた謝礼として石川に渡した旨供述していることから,特捜部は,そもそも石川が小沢氏から紙袋に入った4億円を受け取ったという供述内容の信用性を疑い,少なくとも土地購入代金の原資には04年10月に石川が水谷建設からの裏献金として受け取った5000万円が入っているのではないか(5000万円は3日後の銀行の翌営業日に陸山会の口座に入金)と見て,小沢氏からも紙袋の4億円の不記載の関与のほか同4億円の原資についても任意で事情聴取をしようとしている。

 小沢氏の4億円の不記載の関与は上記一連の不動産取引の経緯からすると強くその共犯性が推測されるが,石川が小沢氏から簿外資金の不記載を具体的に指示された旨供述でもしなければ,上記状況証拠だけで共犯の立件は行うのはなかなか難しいだろう。
 次に土地購入資金の一部に水谷建設の裏献金が使用されたかどうかについても,裏献金をしたとする水谷建設の元会長らは現在脱税事件で受刑中の身であり検察側に阿った供述をしている可能性がある上,佐藤福島県知事の実弟が経営する会社の土地を相場より高い値段で買って知事側に利益供与したことなどが問題となった別の裁判で水谷建設の元役員らの供述の信用性が否定されていることなどの事情に鑑みると,同人らの供述の信用性に問題があると言うべきである。
 もちろん石井らは水谷建設からの裏献金の受領を否定し,それを裏付ける証拠はない。

 さらに石井は逮捕前,知人に「こんなことで逮捕かよ。もし本当のことが分かったらこんなことで大騒ぎになっていたのかとみんな呆れてしまうだろう。わざと記載しなかった理由が分かったら小沢先生は激怒するだろう。」などと打ち明けている。
 そして逮捕直前の3回目の事情聴取が終わり,15日の4回目の聴取に応じることを約束して帰った後,石川は旧知の鈴木宗男議員に電話を掛けて「もう耐えられない。自分がいくら話しても信用してもらえない。死にたい。」などと涙ながらに話した。
 そこで鈴木議員が石川の自殺を危惧し,その旨検察に連絡したことから,急遽16日に石川の逮捕に至ったという経緯にある。
 なお石川が事前に小沢氏の了承を得ていた可能性があり,本日の読売新聞夕刊に,不記載については事前に小沢氏の了承があった旨の記事が掲載されたが,弁護人は強くこれを否定している。

 上記石川の弁解はなるほどと思わせる説得力はないが,あえて排斥できるほど不自然だとも言えない。
 資金の流れは紙袋の4億円の存在を隠すための巧妙な工作であると見ることができるが,逆に誰が見ても不自然さを覚えさせるような稚拙なやり方であると言える。複雑な資金移動等が簿外資金の存在さらに簿外資金に水沢建設からの裏献金が混入していることを隠すための偽装工作であったとするためには,どうしても偽装工作と簿外資金や裏献金とを繋げる石川の供述が必要であるが,石川は否認を続けている。
 
 特捜部は,陸山会の土地購入を巡る不自然な資金移動を発見するや,4億円の簿外資金の存在とその資金の中に水谷建設からの裏献金が入っているのではないかと色めき立ったことが想像できるが,証拠の客観的評価と整合性の検討を十分行って石川の取り調べを進めなければならないだろう。
 結局,現在のころ,土地代金の原資の一部に水谷建設からの裏献金が入っていることの立証は困難な状況にあると言え,今後ぎりぎりの攻防が続くことになる。