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『ルフィアさん パート3』

2017年03月31日 19時55分08秒 | -ためぞう の ぼうけん。- (仮)

   『ルフィアさん パート3』


 (まだ後半部分が校正出来てません。^^:)



 エグラート帝国の主星ニューアースは、

 かつて存在したとされる『地球』という惑星を元に、

 テラフォーミングされた、美しい青い星です。


 そのデーターが、一体何処から得られたかという事は、

 前サードラル帝と、彼に付いてこの星を旅立った、

 選りすぐりの将校たちしか知らない謎でした。


 かつて、現在の帝国の礎となる、

(第二次)ミストレウス帝国時代末期、


 サードラル帝はこんな予言を残して、

 銀河の未踏破域へと去って行ったのです。



 - 空に二つ目の月が現れた時、

   それは、この星の民たちを導く、

   新たな時代への幕開けになるのだろう・・・。


   恐れる事など何もない。


   人の想いが未来を切り開くと信じ、

   もし人々が失望するような危機が訪れようならば、

   私は舞い戻り、その危機を救うと約束しよう、


   愛しき子らよ、

   進むは容易くなかろうとも、その手を繋ぎ、

   決して孤独ではないと勇気を信じ、

   自らの手で、その道を開く事を、

   私は切に願おう。 -



 そして予言は、現実として起こるのです。


 ある日、見上げるその夜空に、

 二つの月が煌いていることを、

 一際明るい夜の光景から、人々は気付かされます。


 この頃、エグラート帝国では、

 銀河統一から約10年の月日が経っており、


 ようやく整備された、銀河ネットワークが構築され、

 帝国に参加する全ての国々が、その恩恵に与り、

 人々の生活や治安が安定期に入った時期の事でした。


 執務室の外へと出る、

 タルスメフィー帝とルフィア近衛隊長。


 皇居とは別に造られたこの巨大な議事堂に残っていた、

 他の元帥たちも、騒がしさと物見遊山(ゆさん)で、

 宮殿の庭へと誘われます。


ライエン元帥
「ほほーっ、

 これでお月見が二倍になるのでしたら、

 それはめでたい事ですなぁ・・・。」


マイオスト元帥
「早速、酒盛りの準備と団子でも用意しましょうか。

 他につまみが入用なら、何でも調達いたしますよッ!」


 浮かれる二人のバカ元帥の後ろから、

 10年前より、23才独身を続けている、

 エリス元帥がやって来て、

 その明るい夜空に言葉を失っています。


マイオスト元帥
「おや?

 エリスの姐さんは、あれが何だかお分かりなんですか。

 勿体付けずに、教えて下さいよっ。」

ライエン元帥
「興味深いですな、


 エリス様のその何時にない生真面目な、

 月明かりにダブルで照らされた、

 その麗しいナイスバディーなお姿・・・。


 私でよければ、愛人の末端にでもして頂けませんか?」


 そんな二人の声すら届いていないのか、

 まるで魅入られたように、

 新しく現れた月を見つめて動かない、

 エリス元帥。


 どうやら、ただ事ではないような雰囲気ですが、

 バカ二人は、空気など読まずに、

 勝手に月見酒の準備に取り掛かってる始末です。


 いつの間にやら、

 コンパニオン風の衣装に着替えさせられた、

 宮殿の綺麗どころの給仕、

 数名に、社長並みの接待を受け、

 勝手に酒盛りを始めてしまいます。


エリス元帥
「・・・ルシファーVII(セブン)。」


 エリス元帥が呟いたその短い言葉を、

 バカ二人は聞き逃してはいませんでしたが、

 その慣れなさが実に初々しい、

 美女たちに鼻を伸ばし、

 完全に、祝杯モードに突入しています。


 エリス元帥同様、神妙な面持ちで、

 突如として現れた、もう一つの月を見つめるルフィア姫。



 そのただならぬ雰囲気に、

 タルスメフィー帝は、彼女の事をつい心配してしまいますが、

 かける言葉が浮かびません。


 タルスメフィー帝も、このただならぬ状況が、

 吉兆の前触れなのか、あるいは災厄をもたらすものなのか、


 多くの人々を守らねばならないという、

 逃げ場の無いその立場から、

 まずどう行動すべきかという事を見極め、迷い、

 また覚悟を決めなければならないと、

 目を逸らす事無く、その星々の中で煌く、

 二つの月を見上げていました。


 すると暫くした後、ルフィア姫が、

 ゆっくりとタルスメフィー帝の方へ振り返ります。


 その二つの月明かりにライトアップされた、

 幻想的なまでに美しい、ルフィア嬢の姿に、

 思わずハッと、息を呑んでしまうタルスメフィー帝。


 そして、彼女は彼に語り始めますが、

 どうもいつもの凜とした、ルフィア姫の雰囲気ではありません。


 そう、まるで何かに身体を操られているような、

 焦点の合わない虚ろな瞳と、普段ほとんど見せる事のない、

 優しげな、温かみさえ感じる表情・・・。


 刹那、眩い光輝の球体が目の前に出現し、

 そこから女性らしき人影が現れますッ!!


光の中の女性
「私の名前は、『アリスアリサ』。


 始まりの星、『テラ01』にて、

 星々の子等を見つめる者です。」



 この時、タルスメフィー帝のその背筋に、

 何か嫌な予感のようなものが駆け抜け、


 ルフィア姫の前に現れた、その恐るべきものに、

 アダマンのつるぎをその手に握り、

 身構えるように、彼女に対峙しました。


タルスメフィー帝
「誰だか知らんが、ルフィア姫に何した!!

 妖異の類なら、引きずり出して、

 消し去ってくれるわァ!!!」


 タルスメフィー帝の周囲に、

 凄まじい闘気が、竜巻のような勢いで、

 青白く取り巻き始めますッ。


 彼が本気になれば、この世ならざる者さえも、

 瞬時に消し去る事の出来る、

 鬼神の如き力を発揮する事も容易なのです。


 彼は仮にも、銀河皇帝の名に相応しいほどの、

 高次元の戦闘力を秘めた、戦士の中の戦士です。


 愛する者が危機的状況にあると感じたなら、

 ただ一人の男として、

 この強大な破壊的な力を、躊躇わず行使する事でしょう・・・。


 ・・・タルスメフィー帝は、

 10年もの歳月をかけて、愛おしいルフィア姫から、


 「私の傍に、ずっといて欲しい。」という、


 その言葉の答えを、やっと引き出していたのです。


 結ばれるだろうという周囲の期待を、

 応えられるかも知れない希望の中での、

 この出来事です。


 だからこそタルスメフィー帝は、僅かな事でも、

 ルフィア姫の事に関しては、臆病に動じてしまう、

 そんな心境にありました。


 故に、余計に先走って行動してしまうのです。


 愛しい彼女の返事を聞いてからの、

 煌くような日々は、

 重かった彼の肩の荷を、羽根のように軽くしてくれました。


 そんなタルスメフィー帝が、ついに感情を抑えきれずに、

 ルフィア姫から生気を奪った、者へと立ち向かおうとした、

 その瞬間ッ!!


 姉のような存在のエリス元帥が、彼の前へと現れ、

 我を忘れて暴走する彼を、強引にねじ伏せ、

 硬い大理石の石畳にドシッ!っと、強烈に押し伏せたのですッ!!!


エリス元帥
「早とちりしてるんじゃないよッ、

 このバカ野朗がッ!!」


タルスメフィー帝
「ね、姉さん・・・。」


 すると、ルフィア姫の生気によって現れたように見えた、

 そのアリスアリサなる者が、

 エリス元帥とタルスメフィー帝の二人に、

 こう言うのです。


アリスアリサ
「彼を放してあげて下さい、

 まず、彼を誤解させた事を、

 私は、お詫びしなくてはいけないのですから。」


 優しく語りかけた声は、ルフィア姫のその声と、

 重なって聞こえるようでした。


 そう、ルフィア姫は生気を抜かれたというより、

 自ら進んで、彼女に依り代を与えたいう印象です。


 光輝に包まれるアリスアリサに対して、

 エリス元帥は、深々と頭を垂れて、

 従順の意を示しています。


 ある二人を除いては、

 誰に対しても屈する事のなかった、

 エリス元帥のこの態度に、

 ただただ困惑する彼女の義弟、タルスメフィー帝。


 彼女が以前、服従の意を示した相手など、

 偉大なる帝王サードラル帝と、

 その実弟でタルスメフィー帝の父王である、

 剣帝トレイメアスの、二人のみです。


 義姉のその態度が、目の前の存在を、

 タルスメフィー帝を遥かに超える存在だと、

 否応なく彼に告げるのです。


 仕方なくつるぎを床に置き、

 立ち尽くしたタルスメフィー帝。


 彼は、その正体不明の彼女に、

 従順にしてやる気など、とても持てなかったのです。


 花々たちが二つの満月に照らされて、

 幻想的に美しい、タルスメフィー帝とルフィア姫の、

 プライベートガーデン。


 硬直するように立つルフィア姫の姿は、

 確かに望んでそうしているようにさえ見えました。


 次第よ鮮明な姿を見せる、アリスアリサ。


 美の女神としか例えようもない、

 長いプラチナブロンドの髪の、絶世の美貌を持つ、

 ルフィア姫を超えて美しい、

 麗しき美少女の像・・・。


アリスアリサ
「さすがは、ルフィアさんですね。


 こうも高次元に私の姿を投影出来る、その高い能力・・・。


 ・・・以前のその力は、さらに磨きがかかっているように、

 みなぎる強い想いを感じます。」


エリス元帥
「もしや、この場所で顕現されたお姿を拝謁出来るとは、

 光栄の極みです。


 我らが創世主、アリスアリサ様。」


タルスメフィー帝
「・・・どういう事だよ、

 あんたとルフィア姫が、

 何の関係が、あるってんだよッ!!


 姉さんもちょっとおかしいぜ。

 オレ一人、置いて、

 何、勝手に話進めちゃってんだよ。」


 タルスメフィー帝は、乱暴な態度に出ることはありませんでしたが、

 その感情の持って行きようもなく、

 イライラしたような表情で、

 言える最大限の言葉を吐いて、

 少し、顔を背けるのです・・・。


 この時、マイオスト元帥もライエン元帥も、

 遠くで、いざとなればタルスメフィー帝の盾となる覚悟で、

 見守る姿がありました。


 そして、彼らだけではなく、

 タルスメフィー帝に恩義を感じている、ウィルハルト聖剣王や、

 彼の元の師であった、ハイン元帥も、

 同様に彼の為に、その状況を遠い場所から見守っています。


 それにすでに気付いているアリスアリサは、

 その張り詰めた緊張の糸を優しくほぐすように、

 タルスメフィー帝にこう言ったのです。


アリスアリサ
「貴方の心をかき乱して、

 まずはそれをお詫びしたく思います。


 私はあなた方の『敵』ではありません。


 貴方の心の拠り所である、ルフィアさんのこの清い心は、

 必ず、お返し致します。


 彼女は私の為に、

 たくさんの力を与えてくれていますが、

 ルフィアさんはご無事ですので、

 どうかご安心下さい。


 では次の瞬間、

 力なく倒れ行くルフィアさんのその身体を、

 その手に受け止めてあげて下さい・・・。」


 その時、アリスアリサの映像のような姿が、

 一瞬だけ乱れます。


 タルスメフィー帝は、ルフィア姫の身体を、

 とても大切に受け止めると、

 その表情は、以前の彼女のものへと戻っていくのでした。


 初めて抱きしめた、彼女のその柔らかな身体。

 彼の肩にかかる、その長い桜色の髪が、

 とてもいい匂いを彼に届けます。


 タルスメフィー帝は、それだけで赤面するような自分を、

 抑えるのに必死でした。


 それと同時により鮮明になる、

 アリスアリサ本来の姿が投影された、

 エーテルのようなビジョン。


 彼女、ルフィアの力は、

 そのアリスアリサの姿の投影に使われているのだと、

 腕の中で眠り、甘い吐息を感じさせながら微笑む、

 ルフィア姫の表情から、彼は納得せざるを得ませんでした。


アリスアリサ
「改めて、(第二の世界の)銀河皇帝陛下にご挨拶申し上げます。


 私は、遠い小さな世界の蒼い星、

 『テラ01』に生を受けた科学者の一人、

 『アリスアリサ=クラウス』と申します。


 私の使命は、

 愛すべき揺りかごである『大銀河 ゼリオス』を、


 ・・・異界よりいずる『ハイデス』という名の脅威より、

 全ての人類の、叡智と結束によって守り抜く、

 その手助けを成す事です。」


 少しだけ浮いたように見える、

 麗しき金髪の少女のホログラム映像は、

 タルスメフィー帝に、優しげな雰囲気で語りかけます。


 その本人は、気丈にこそ振舞っていますが、

 内心、ルフィア姫の事が心配で、

 アリスアリサの話を半分も聞き取れていない状態です。


 それを察してか、義姉のエリス元帥が、

 金髪の少女の映像に対して、深々と一礼した後、


 タルスメフィー帝の両肩を強く掴むや、

 激しい口調で、こう言い放つのですッ!!


エリス元帥
「ここじゃ、身分も何も関係ねぇ、

 いいか、ルフィアはお前の為に、

 かの偉大なる先帝様であらせられる、

 サードラル陛下のお言葉を辞退し、


 お前のために、この場所に残ったってんだッ!!


 ルフィアは、当時たいした功績も実力もなかったお前が、

 自分を好いてくれているのを知ってだな、

 トレイメアス師匠の辞退で、

 空席となりそうだった帝王の座という、

 とてつもない重責を任されたお前がよ、

 失恋の失意でガッカリとさせないように、


 ・・・そして、ハンパなく重いその肩の荷を、

 実力ではサードラル陛下に次ぐと言われた、

 事実上のナンバー2としての力で、

 影からこっそりと悟られぬよう支える為に、


 一度として逆らった事のない、

 敬愛してやまないサードラル陛下の言い付けを、

 初めて断ったってんだよッ!!!」


 誰よりも信頼している姉から発せられた、

 知り得なかった真実に、

 驚きと動揺を隠せないでいる、タルスメフィー帝・・・。


 それは遠くで、コソコソと様子を伺っている、

 ライエン元帥やマイオスト元帥たちの酔いを醒ますのにも、

 十分な言葉でした。


エリス元帥
「ほら、マイオスト! ライエンッ!!

 盗み聞きしてんだったら、とっととこっちに来いッ。


 お前らはまだ、アリスアリサ様の事は知らなかったよな。

 今から勉強して、しっかりと働くんだよッ!!!」


マイオスト元帥+ライエン元帥
「は、はいっ!!!」


 こうして、光輝の中の美少女、

 アリスアリサを囲む輪の中に、

 エリス直属の重臣である二人の男たちが、

 加わるのでした。


 アリスアリサのその姿は、

 遠くからでは、ぼやけて見えましたが、

 初めて目にする、これほどに美しい少女を前に、

 二人は、言葉さえ失ってしまいます。


エリス元帥
「ったく男どもは、これだからなぁ。


 ・・・あたしのプライドを傷付けて、

 そんなに愉快かい?」


間の抜けた二人
「いえ、滅相もございませんっ!!


 ほら、私らにとっては感動のオープニングシーンみたいな、

 そんなもんじゃないですかネッ?


 ・・・。

 言い訳になっていませんなぁ・・・。」


エリス元帥
「部下どもが失礼致しました、アリスアリサ様。」


アリスアリサ
「いえ、


 お二方も、私にとっては、

 共に道を照らす事になるかも知れない、

 かけがえのない同志に、なられる方々かも知れません。


 私に代わって、お二人の賢人を呼び寄せてくれた、

 エリス様には、感謝しております。」


 アリスアリサはそう言うと、

 優しく微笑みながら、エリス元帥と男二人に、

 丁寧にお辞儀をしました。


 そのとんでもない美貌と優しさに、

 完全に魅了された男二人は、

 二つ返事で、彼女アリスアリサにこう答えました。

マイオスト元帥+ライエン元帥
「何処までも、お供いたしますッ!!

 アリスアリサ様ァ!!!」


 妖精の女王と比喩しても、足らないほどに、

 絶世の美少女である彼女、アリスアリサに、

 魅了されない男の方が、むしろ異常なくらい、

 その可憐さと美しさは神々しさに満ちています。


 それには、ある理由がありましたが、

 それを知るのは、彼らにとってはまだ遠い未来の話です。


 なんと彼女のその容姿は、

 求めるその最高の理想像として、人々の目には映るのです。


 幻覚のようにも感じられますが、

 今でこそ、自らの意思で、

 人としての形を失っている彼女、

 アリスアリサですが、


 その彼女の、オリジナルの少女の姿は、

 さらにその幻想の姿を超えていると、

 彼女を知るごく一部の人々は知っています。


 その心を魅了してやまない、理想の美少女像でさえ、

 ピンボケして見えるという、驚くべき真実を、

 彼らが今後、知り得るかまでは不明でした。


 二人が現れたおかげで、我を取り戻したタルスメフィー帝。

 この二人は、彼にとって特別な友人とも呼べる存在です。


 エリス元帥は、愛すべき義弟の為に、

 本来、ここにいる資格を持たないこの二人を、

 それだけの為に呼び寄せたわけですが、


 アリスアリサもその気遣いを悟って、

 彼女の意思を尊重するような態度を見せるのでした。


 エリス元帥自身も、彼女を直視して、

 同性でありながらも、彼らと同じように激しく魅了されているのですが、

 平然とした態度を保っています。


 理性という壁を柔らかに越えて、

 本能そのものを魅惑するその絶世の容姿は、

 性別など関係はありませんでしたが、


 アリスアリサ自身、

 そんな目的で今の姿をしているわけではありませんでしたし、

 美しさというものは、いずれは慣れてしまうものなのでした。


 彼女のオリジナルを目の当たりにして、

 それが当てはまるかは、言い切れませんが、


 アリスアリサ自身、

 そんな事よりも気持ちで、想いで繋がりたいと、

 今も純粋に想い、彼らに接しています。


 その彼女自身は、とても善良でお人好しな女性ですが、

 この空に広がる星たちに降りかかろうとしている、

 破滅的な災厄に対する為にも、


 望まなくても、実行し続けなければならない、

 そんな使命を負わされています。


 エリス元帥とルフィア姫、

 そして、先にサードラル帝の要請を拒んだ、

 ウィルハルト聖剣王、


 さらには、タルスメフィー帝の父王であるトレイメアス剣帝、

 ウィルハルト聖剣王の父王、バルマード剣王の五名だけは、

 その事を、とても深く理解していました。


 つまりは、真にアリスアリサと接する事の出来る、

 選ばれし者たちに、

 当のタルスメフィー帝は含まれてはいません。


 ただ、彼女アリスアリサの、

 一人としての女性の優しさとその寛容さが、


 タルスメフィー帝のその心と記憶を、強制的に上書きし、

 ルフィア姫の存在、そのものへの想いを消し去る事を、

 とても許すことが出来なかったのが、その理由でした。


 ルフィア姫もエリス元帥も、

 彼女アリスアリサと共に、愛すべき星々を滅ぼそうとする、

 破滅的なまでの脅威に立ち向かえるだけの、

 次元さえ超える『力』を持ち合わせています。


 その二人、正しく言えば彼ら五人の力を、

 アリスアリサはその立場から、必要としています。


 ただ、アリスアリサはそれを一度として、

 誰にも強要した事はありません。


 ルフィア姫も、エリス元帥も、

 知りながらもその事実を、タルスメフィー帝に伝える資格も、

 勇気もありませんでした。


 何より、アリスアリサ自身が、

 辛い現実を見せるより、ただの簒奪(さんだつ)者として、

 憎まれてもいいという、その覚悟を持っていたからです。


 孤独に永遠の時を、一人で戦い続ける、

 そんなアリスアリサの力になりたいと、

 その五人の誰もが、そう思っていないわけではありませんでしたが、

 それぞれの理由で、二つ目の月が現れる、

 今までは留まっていました。


 何も知らないタルスメフィー帝は、

 そんなアリスアリサに、こう言うのです。


タルスメフィー帝
「オレは、ルフィアを渡さない・・・。


 全てを賭けても、義姉さんが止めようが、

 絶対に、やってたまるものかァ!!!」


 その叫びに、誰もが沈黙します・・・。


 彼の言っている事は、当たり前の事です。

 それを否定する資格は、誰にもありません。


 ただ、その純粋さと、

 彼の若さから来る無謀な勇気が、

 ただただ、いたたまれないだけでした・・・。


 アリスアリサがそっと瞳を閉じると、

 その輝きと姿が、少し薄くなっていきます。


 と、同時に、

 彼の腕の中にいる、ルフィア姫が、

 少し苦しいような表情へと変わるのです・・・。


タルスメフィー帝
「!?・・・どうした、ルフィアァァッ!!


 一体、ルフィアに何をしやがったッ!!!」


エリス元帥
「いいから、黙ってろッ!!

 何も知らないガキがァ!!!」


 止めに入ろうとしたエリス元帥を、

 少し存在が消えかかっているアリスアリサが静止します。


アリスアリサ
「彼の言っている事は、正しいのですから、

 どうか叱らないでやって下さい。」


 ルフィアの想いが不安定になっている事を、

 アリスアリサもエリス元帥も、感じています。


 ルフィア姫は志願して、アリスアリサを見ることの出来ない、

 タルスメフィー帝の為に、

 その想いと生命の力を使っています。


 それは電池のように、

 消費されてしまうようなものではないのですが、


 じっと落ち着いていなくてはいけない、

 その彼女の身体を抱きとめる、タルスメフィー帝自身が、

 彼女そのものを乱れさせ、苦しめているのです。


 アリスアリサは、彼に少しだけ申し訳ないような顔をして、

 最後に、僅かな微笑みを浮かべて消えてしまいます・・・。


 タルスメフィー帝と、残された二人の元帥たちの前から、

 消滅した、アリスアリサ・・・。


 そんな彼女がまだ側にいるのを感じているのは、

 苦しみが和らぐように目を覚ます、ルフィア姫と、

 苦い顔をした、エリス元帥だけです。


 突然の事にスッと我に帰って、

 ルフィア姫を抱きしめる自分に、恥ずかしくなってしまう、

 タルスメフィー帝・・・。


 エリス元帥が顔を歪めるように、厳しい表情で、

 周囲を見ているのに、勘のいい二人の部下はすぐ気付きます。

 しかし、そんな表情の彼女に、

 何を言っても無駄なのを最も知る人物が二人であるからこそ、

 二人は動けずに、ただ立ち尽くすしかありませんでした。


 今、この瞬間、

 やってはならない『禁忌』を、

 タルスメフィー帝が犯してしまったのです。


 本来、アリスアリサという大いなる存在に、

 出会う事が許される者は、選ばれし者のみです。


 彼女と言葉を交わす事が許されるのは、

 彼女の存在を、媒体なしで感じることの出来る、

 『限界を超えた力』を持つ者のみなのです。


 ルフィア姫とアリスアリサが見せていたその奇跡は、

 条件付きになりますが、意義を唱える者など存在しません。


  - 伝承を残す者と、語られるその道標。 -


 それは、伝説のような特例で、

 何処にあってもおかしくない話で片付けられるでしょう。


 ですが、自らその道標を折るような事があれば、

 大事を察し、アリスアリサを守る者が、

 その愚行を決して、許しはしないのです。


 エリス元帥に残された選択肢は、ただ一つ・・・。


 誰かが駆けつけるよりも早く、

 自身とアリスアリサ、そしてルフィアの記憶を、

 この世界の全てから、抹消するという手段なのです。


 急を知った、聖剣王とその父王、

 そして、愚行を犯した者の父である、剣帝トレイメアスも、

 エリスやルフィアたちを守る為に、

 瞬時に周囲を囲むように、身構えています。


 恐らく、真っ先に賭け付け、

 その三人の存在を消し去りに来るのは、

 剣帝の兄、覇皇サードラルです。


 他者に介入を許すくらいなら、身内の不始末は、

 自らの手で握り潰しに来る事でしょう・・・。


 目覚めたルフィア姫は、素早く彼の身体を突き飛ばすと、

 瞬時に、アリスアリサの像を復活させ、

 同時に石畳の床に崩れ落ちます。


 そのタルスメフィー帝とルフィア姫の間に、

 目にも留まらぬ速度で入った、エリス元帥は、

 遠くに聞こえるほどの声で、

 タルスメフィー帝に、こう言うのですッ!!


エリス元帥
「あんたは、ルフィアの大切な想いを、

 本気で消し去る気なのかいッ!?


 いいから、黙ってそこでじっとしてろッ!!


 でないと、あんただけじゃなく、

 そこのマイオストもライエンも巻き込んで、

 かのサードラル陛下に、一気に消し去られるぞッ!!!」


 すでに二人の元帥たちはすでに、

 その気配に気が付いたように、落ち着いています。


 自分が消されるかどうかの狭間で、

 もう臣下も身分差も、何も関係はありません。

 ですが、運命ならば受け入れるという覚悟の表情が伺えます。


マイオスト元帥
「ええ、この場所を、

 かの三強が鉄壁の防御で守っていますねぇ・・・。


 大体の事は、それで察しが付きますよ。

 アハハハハァ・・・。


 ・・・ごめんな、ハイン。」


ライエン元帥
「見てはならない、知ってはいけない知識を、

 見学させてもらっていたのですから、

 義理人情よりも、ルールが優先されてしまうのは、

 仕方のない事です・・・。


 でもまだ見込みはあります、よねっ?」


 ライエン元帥がそう言って振り返ったのは、

 眩い光輝の中から再臨した、アリスアリサの方でした。


 ですが姿が違っています・・・。


 とても、ルフィア姫に似ているのです。


アリスアリサ
「ルフィアさんの機転で、間に合ったようですね。


 どうか、心配しないで下さい。

 サードラル様にも、他の皆様にも、

 これで一応の名目が立ちます。」


エリス元帥
「フウッ・・・。


 あと数瞬遅れていたら、

 いくら外側の三人が強くても、あっという間に突破されてた。


 やっぱお前ら、運がいいのな!

 マイオスト、ライエンッ!!」


マイオスト元帥+ライエン元帥
「信じてましたぜっ! 姐さんッ!!」


 ルフィア姫のその身体を、

 とても大事に抱えるエリス元帥。


 その表情は、まるで実の妹を見るかのように、

 優しさに満ちています。


エリス元帥
「よく頑張ったよ・・・。

 こんな芸当、ルフィアくらいじゃないと、

 絶対無理だからな。」


 桜色の長い髪の、美しい少女となった、

 アリスアリサは、その言葉に頷くようにこう言いました。


アリスアリサ
「ええ、脅威の能力と言ってもいいでしょう。


 私の知る同志たちの中にも、

 はたして、これほどの潜在能力と瞬発力を、

 同時に覚醒させ、操作出来る方は、

 いないと言って過言ではありません。


 まさに、奇跡と呼べるほどの驚くべき力です。


 私のエーテル体を一瞬で再構成し、

 容姿こそルフィア様に似ていますが、

 間違えなく、私の光の身体の器を生み出してくれた。」


 彼女、アリスアリサから感じ取れる雰囲気は、

 以前のものとまったく変わらないように、感じられます。


 その姿が、ルフィア姫に似てしまった事を除いてですが。


 そのせいか、とてもおとなしく話を聞いている、

 タルスメフィー帝です。


アリスアリサ
「今から少しだけ、タルスメフィー様とルフィア様の、

 対話の場を設けたいと思います。


 そこは、私さえ立ち入ることの出来ない、

 二人だけの世界です。


 皆様は、タルスメフィー様の意識が、

 消えたように感じるかもしれませんが、

 ほんの少しの時間なので、どうか見守ってあげて下さい。」


 そのアリスアリサの言葉に、

 エリス元帥も、他の者たちも一斉に頷きます。

 それは、危機の去った事を知る、

 外の三人の猛者たちも同じでした。


ウィルハルト聖剣王
「本当に良かったです。」


剣帝トレイメアス
「まったく・・・、


 おなご一人、口説けずにもたもたしおって。

 本当にワシの息子かどうか、


 間違えて取り違えたかの?」


バルマード剣王
「その息子可愛さで、

 あんな滅多にない絶好のチャンスを棒に振って、

 麗しき姫君とのランデブーよりも、

 子守を優先されたくせに・・・。


 ですよね? 師匠。」


剣帝トレイメアス
「・・・。

 ワシの青春を返せーーーッ!!


 バルマード、お前さんは、

 ゆっくり再会を楽しんでおいていいから、

 ワシは、速攻で戻らせてもらうぞぃ!!」


 クラサン親父が、見苦しい逃走しようとした刹那、

 その紺の作務衣の襟を、ガシッっと掴み上げる、

 たくましい体格のヒゲの大男、バルマード剣王。


バルマード剣王
「少しは、私の帰郷にも付き合って下さいよ。」


剣帝トレイメアス
「ええい、その手を離せぃ、

 初孫のようにわが子を愛する、

 ゆとり親父がぁ・・・!!!


 ・・・うっ、コテッ。」



 アリスアリサは、エリス元帥に、

 その瞬間の訪れを、微笑んで伝えます。


エリス元帥「おい、マイオスト、ライエン!!


      しっかり義弟(おとうと)の身体を支えてやってくれよ。

      みっともねえ格好は、させたくないからな。」


マイオスト元帥+ライエン元帥
「は、はいっ!

 エリス姐さんッ!!」


 そんなやり取りを見つめるアリスアリサは、

 少し羨ましそうな感じで、

 エリス元帥にこう言ったのでした。


アリスアリサ
「素晴らしい賢人や、頼もしい仲間たちに、

 囲まれているのですね。」


エリス元帥
「いえ、それは錯覚ですッ!!


 こいつら、アホばっかりで苦労しますよ・・・。」


 そうしたやり取りをしている内に、

 タルスメフィー帝が脱力するように気を失い、

 それは、外にいる剣帝トレイメアスの知る所となります。


剣帝トレイメアス
(多大なるご恩、決して忘れは致しませぬ、

 未来の我が主にして、偉大なる創世主よ・・・・。)



 アリスアリサはルフィア姫の力を借りている内に、

 彼女の秘める内なる想いに、

 気が付いてしまっていたのです。


 それは、ルフィア姫が彼、

 タルスメフィー帝と過ごした、温かで穏やかな日々。


 そして、時は絆となり、

 気が付いた時にはもう、

 彼の事を強く意識している彼女がいた事です。


 と同時に、

 これ以上の、募る想いを残していては、

 旅立ちの決断が鈍ると気付いていた、ルフィア姫。


 その想いを自身と重ねたアリスアリサは、


 そんな彼女が、

 『愛する世界と人々を守る為』、

 果ての無い戦いへとその身を投じるという、

 その限りなく強い意志を、


  - 彼、タルスメフィー帝に、

           繋ぎ止めて欲しい。 -


 とそう願ったのです。



               その『パート4』に続きます。

書き込み。 2017.3.27

2017年03月27日 17時16分41秒 | -ためぞう の ぼうけん。- (仮)

 季節が流れ行くのは、早いですねー。

 本年度も残す所、あとちょっとです。


 春になったと思う時は、

 陽射しが暖かくて、自転車こぎやすいなぁ~とか思って、

 チャリの過ぎていく景色が、

 おお凄いVRだ、とかフッと思ってしまう時なんかですねー。


 去年がVR元年だったせいか、

 自分が持ってないせいなのか、


 さらに数年後はどんな風に進化してるんだろーって、

 楽しみになります。


 あ、もちろん現実との区別はとっても大事ですネ!


 最近スマホを使うようになってきて(ちょっと慣れてきたのかな?)、

 便利がとても身近になったなぁーって、

 感じます・・・春、関係なくなっちゃってますね。^^:


 とはいえ、春でもやっぱり寒いときは寒いですね。

 未だに暖房の温もりからは、離れられません。

 外でかける子供たちとの体力差を、感じちゃいます。


 それと、毎度の事ですが、

 更新が遅れてるという理由で、本日の書き込みとなっております。^^:


 うかつにも少々、体調が微妙なってしまい(寒暖差とか、軽いかぜかな?)とか、

 理由を付けては、テキストを打てていない自分に、またも反省です。


 一番大事なのは体調管理と、

 常々、やらかした後に思う自分です。


 「ルフィアさん パート3」は、

 そこそこ仕上がってはいるのですが、

 横道にそれて、だいぶ遅れています。

 書いてる量は、たいしたものではないのですが・・・。



 では、この辺で、

 近いうちに更新したいと思います。



 では、またー。(^-^)

『ルフィアさん パート2』

2017年03月17日 19時35分49秒 | -ためぞう の ぼうけん。- (仮)

   『ルフィアさん パート2』


 - 夢や希望、

   そして、裏切りや野心に溢れた、

   そんな混沌の色濃い、戦国の時代・・・。


   その中に在って、最も広大な領土を築き上げた、

   一人の英雄がいました。


   彼の名は、大覇王タルスメフィー。

   数多の銀河の星団や列強を、その傘下に治め、


   一王のすらも、遥かに超える権限を与えられた、

   二十名を超える、星々の大元帥たちをその軍門に連ね、

   「向かう所、敵なし!!」と、意気高い家臣団。 


   大銀河・ゼリオスの統一に、

   最も近いと言われた、そんな大皇帝のお話です。


   ですが、彼はその力を増すほどに、

   人々の輪から、遠く離れて行くしか術は無く、

   王者の孤独の中にありました。 -


 そこは、大神殿のように大理石で造られた謁見の間。

 部屋と呼ぶにはあまりに広く、


 麗しい装飾のなされたその白の空間には、

 選ばれし者しか、歩む事を許されない、

 一本の幅の広い、鮮やかな赤いカーペットが、

 遠くを見るような距離まで伸びており、

 その先から玉座を崇めるもの達は、

 その椅子の主の姿さえ、

 瞳に捉える事も、かなわないでしょう。


 部屋を二つに分ける、その赤い道の両脇に立つのは、

 将軍以上の将校で、

 それぞれが我が君の御前にて、ただならぬ強者の雰囲気を、

 放っています。


 その将軍の数も二千はゆうに超え、

 参列する仕官の数も合わせると、数万は下らないようです。

 ですが、窮屈に並んでいるわけでもなく、

 それだけでも、この謁見の間が広大かという事がわかるようです。


 さらに玉座に近付くと、

 各々に壮麗な衣を纏った、十名ほどの男女がいます。

 彼らがどうやら、星々の大元帥たちのようであり、

 その先頭に眉目秀麗で、赤の衣を纏った長身の青年、

 『ウィルハルト聖剣王』が、立っていました。


 彼だけが赤いカーペットの脇で、

 玉座に最も近い位置に立っており、

 その椅子の主との距離は、目と鼻の先という位置で、

 他の大元帥との格の違いを際出させています。


 そして、数段上がった玉座付近には、

 十名ほどの近衛が左右に立ち、


 その隊長とおぼしき、この世のものとは思えないほどの、

 絶世の美女が、その腰に長さの違う二つの剣を携えて、

 聖剣王と玉座の間の等位置の、

 右手側に立っています。


 その近衛隊長の女性の髪は、虹糸のように美しく、

 幾つもの色彩に変化させる事が出来るらしく、

 今は、僅かに淡いピンク色の長く艶やかな髪を、

 腰の辺りまで、ゆるやかにおろしています。


 彼女は、敬意と尊敬の念を持って、

 人々からこう呼ばれています、

 『虹色の髪の戦乙女(ワルキューレ)、ルフィア様』と。

 その彼女が護る一本のつるぎ、

 それは覇王のつるぎ、『カストラ』という名の宝剣です。


 玉座の主は、彼女にそのつるぎを預けるほど、

 彼女の事を信頼している証でした。


 一本の覇王のつるぎが、

 他の列を成す者たちとは別の位にある事を示しています。


 その彼女、ルフィアと対等に位置に、

 立つ事を許された者は、

 ウィルハルト聖剣王、ただ一人のみです。


 そして、玉座の後ろの扉が開き、

 奥の執務室から出て来たのは、

 一人の若い、金髪の青年。


 彼こそが、この大銀河ゼリオスにおいて、

 最大勢力を誇る『エグラート帝国を中心とする、大銀河帝国。』

 の若き覇王、タルスメフィー帝、その人でした。

 (現、古蔵さん。)


 大元帥以下の臣下は、彼の登場に一斉にかしずき、

 少し高い位置にある、玉座の段から見るその光景は、

 選ばれた者のみが見ることの出来る、

 あまりに壮観で、筆舌に尽くしがたい、

 王者の高みを味わえる事でしょう。


 タルスメフィー帝が座したその玉座は、

 これほどの帝王には、あまりに貧相な作りの椅子で、

 貴族のアンティーク調の腕木付きの椅子と、

 大差ありません。


 彼は、その衣さえ他の将校の物と大差なく、

 即時に戦地へと赴けるような、実用的な服を身に着けています。

 それだけに、彼にかしずく多くの臣下の中に紛れてしまえば、

 まったく見分けが付かなくなるでしょう。


 タルスメフィー帝は、端正な顔立ちにその長い金髪が美しい、

 帝王というには、あまりに若すぎる美青年です。

 士官用の制服に、ただ皇帝の証を勲章に見立てただけの、

 飾り気のない帝王の証が、胸の左側に付いただけの装いです。

 彼は自分が『帝王』や『大覇王』と扱われるのを、

 仕方なく受け入れているといった感じでした。


 それを決して表情には出しませんが、

 次の瞬間、彼がこう発すると皆が一斉に起立するのです。


タルスメフィー帝
「そう気を使うでない、皆面を上げるのだ。」


 そうして立ち上がり彼に敬礼するのは、

 広大な謁見の間に居合わせた、ほんの一部の前列の者たちだけです。

 そう、その奥には彼の声が届かないほどに、

 各々の星団中から、臣下が列席しているのです。



 正直、彼タルスメフィー帝は、

 こういう行事はあまり好みではありませんでした。

 用意された舞台に役者を欠いては、

 臣下が動揺するのです。


 彼の軍門に下った、銀河中の数多の王候貴族たちは、

 そんな彼を執拗に守り立てようとするのです。


 タルスメフィー帝の想いを知る、ウィルハルト聖剣王は、

 この大役を進んで背負ってもらった彼に義理があります。


 その眼差しは、そんな彼に対する忠義心で溢れ、

 強い光を放つ眼光で、実質上のナンバー2として、

 無言ながらも、この集団を威圧する空気を生み出し、

 自らの身を、玉座の下に置いていました。


臣下一同
「この度の全銀河統一、

 真に見事であられました、皇帝陛下!!


 臣下一同、何処までも陛下の為にその身を尽くし、

 此度の偉業の大成を、謹んでお喜び申し上げますッ!!」


 繰り返される、彼への賛美と忠義の言葉。

 彼らがこれほどまでに尽くす理由は、

 その身の栄達を望んでの事です。


 当初、共和制を説いたタルスメフィー帝でしたが、

 信頼に足る重臣たちの意見により、

 帝政にする意見に押し切られて、現在に至ります。


 帝王が誕生すれば、その周囲を固める者たちの権威は、

 例えその身が王座になくとも、

 周辺星域の王たちより、遥かに強力な力を誇示出来ます。


 ただ唯一、タルスメフィー帝の提案が受け入れられたのは、

 その帝位が、世襲ではないという特例です。


 これを強く支えたのは、ウィルハルト聖剣王を筆頭に、

 戦女神と謳われたエリス大元帥などの、

 圧倒的貢献度を持つ、ごく一部の諸侯の賛同です。


 帝政を押すが故に、数の論理は強者に廃され、

 これに意義を唱える者など、その臣下に存在すらしません。

 反すれば、間違いなく身の破滅が待っているのです。


 結果、次期帝位は諸侯による選挙によって、

 選出される事になり、

 新たに『選挙候』という身分が追加されたのです。


 その名の通り、選挙候の立場は、

 他の諸侯とは大きく異なり、

 次期皇帝は、この選挙候の中から選出されるという事になります。


 その為、選挙候となった者は、皇帝に次ぐ権威を持ちます。

 さらに選挙候は枠にとらわれず、

 傘下のどの国に所属していようが、

 その椅子を得る事が、選挙候たちの3分の2の賛同で、

 得る事が出来るのです。


 故に、これまで頻繁に起こっていた、

 それぞれの国の対立や争いは、

 選挙候の資格を持つ諸侯に取り入るという行為に取って代わり、

 些細な内乱は形を変えて、いかに選挙候らの機嫌を取るかという、

 奉公合戦へと、その矛先を変えたのです。


 つまりは、ここに集まる臣下たちの多くは、

 皇帝の椅子の周囲に立ち並ぶ、選挙候という特別な権威への、

 憧れと野心を秘めたものと成り果てています。


 在位する帝王にも、その票は一票と選挙候と変わらぬ為、

 より容易に近付くことの出来る、

 選挙候へと関心が集まって行くのは必然でした。


 しかし、狡猾な者やより賢き者にとって、

 銀河皇帝のその威信は、

 遥かに選挙候のそれを超えています。


 皇帝が多くの選挙候から支持されている以上、

 その権威は数字で図りきれるものではないのです。


 例え選挙候に成れずとも、美しき姫を皇帝に捧げる事により、

 いずれ生まれ来るその子が、選挙候の誰かに気に入られれば、

 その一族により強い絆が生まれるのです。


 皇帝との絆というだけでも、十二分にその対価は得られ、

 自らの周辺地域において、彼らは飛び抜けた影響力を、

 手に入れる事でしょう。


 タルスメフィー帝自身は、捧げられる乙女たちが、

 憐れでなりませんし、

 何より、彼には想い人がその傍ら近くに立っているのです。


 近衛を仕切り、帝国の双剣と称される、

 美髪候ルフィアは、その強さだけでなく、

 容姿や性格も、ずば抜けて優れており、

 誰からも憧れる、唯一無二の存在でした。


 もう一人の帝国のつるぎ、ウィルハルト聖剣王と、

 麗しき彼女が一太刀交えれば、

 どちらがより優位に立つのかという疑問は、

 二人の関係からも実現こそしてはいませんが、

 多くの臣下が、その結果を見てみたいと思わせるほどに、

 麗しき天使のような理想の近衛隊長の存在は、

 強い憧れの対象と言えたでしょう。


 こんなにも近くて遠い存在、

 彼女の方に振り返る勇気が、なかなか持てない、

 タルスメフィー帝の姿がそこにはありました。


 形式だけの謁見を行った後、

 タルスメフィー帝は、再び奥の執務室へと戻ります。

 皇帝の座に就いてからというもの、

 彼は、多忙な執務を一日として欠かした事はありません。


 彼の駆け出しの頃を知る者たちは、

 そんな勤勉な彼の行動が、理解出来ない者を多くいました。

 広大な謁見の間の隣には、元帥たちが語り合うのに十分な、

 落ち着いた雰囲気の、木目を基調とした休憩所が設けられてあります。


 そこには各種飲み物や軽食を提供する、

 腕利きのコックやソムリエたちが待機しており、

 オールドスタイルの装いの美しいメイドたちが、

 元帥たちをもてなすように、行き交っていました。


 その洋式の室内の、特に日当たりの良い場所に、

 テーブルを占拠するエリス元帥と、

 その彼女のご意見番の元帥たちが、

 それぞれの好みに合った飲み物を片手に、

 語り合う様子が伺えます。


エリス元帥
「あいつ、皇帝になって真面目になったよな。

 地位や責任ってやつが、

 そんなに人を簡単に変えるもんなのかねぇ。」


 甘ったるい砂糖水のような紅茶を手にそう言った女性は、

 雰囲気こそ、気のいい姉さんのような感じですが、

 その容姿は桁外れに美しく、まるで地上に舞い降りた、

 艶やかな長い新緑の髪の、天上の女神のようです。


 その彼女は、タルスメフィー帝にとってかけがえのない、

 頼りになる姉のような存在でした。

 それも理由の一つかも知れませんが、

 彼女自身が備える気安さと、そのカリスマ性で、

 立場において、ウィルハルト聖剣王にも肩を並べる、

 元帥の中の大元帥です。


 さらに彼女は、独身という事もあり、

 この場にいる者たちに限らず、

 数多の王候諸侯たちが憧れを抱く者も多く、

 選挙候ではないものの、それと同等かそれ以上の、

 発言力を有する、重臣の中の重臣です。


ライエン元帥
「さて、それはどうでしょうかな。

 誰だって意中に相手には、自分をカッコ良く見せたいものでしょう。


 陛下と一緒に執務室に居られるお方想えば、

 この私だって、いいとこ見せたくなるでしょうがね。」


 レモンソーダをストローで飲みながら、

 そういう不精ヒゲの中年の男は、

 帝国でも一、二を争う智将のライエン元帥です。


 同席する銀髪の青年元帥のマイオスト卿と共に、

 享楽に興じる不真面目な男ですが、

 大事に至れば、最も頼れる元帥の一人ではありました。


マイオスト元帥
「まあ、私の場合は(愛するハインがいるので、)、

 そう気軽にはいきませんがネ。


 あの中途半端な男が、真面目を演じているのであれば、

 しばらくは、我らも休暇を有意義に過ごせることでしょうなぁ。」


エリス元帥
「マイオスト、お前の言葉の一部が良く聞こえんが、

 あたしの悪口じゃないだろーね。


 どいつもこいつも、どうしてこんなガラクタみたいなヤツしか、

 あたしの前には出てこないかねぇ。


 大体の予想でそう仕向けたが、

 あいつ、やっぱりルフィアの事が好きなのか?


 変態のお前らが言う事が、なんだかまともに聞こえたのは、

 やっぱ男同士にしかわからん、そういう類のやつなのか??」


マイオスト元帥+ライエン元帥
(この人、性格さえちゃんとしてれば、

 魅力的なんだけど、どこまで鈍いのか、

 わからないからなぁ・・・。


 ・・・行き送れる分には、楽しいんだが、

 いい女性(ひと)なのに、

 それだけでこんなに惜しくなるなのか。


 高嶺の花のまま売れ残るのは、

 少し可愛そうなので、私たちがリア充を達成した後にでも、

 合コンに誘って上げよう。


 ・・・嫁(未定)に気取られず、遊ぶスリルは、

 なかなか刺激的で楽しそうな気はする。)


 エグラート帝国の元帥たちは、そのほとんどが変わり者で、

 忠誠を誓うその理由が、面白いからだとか、

 面倒な領主になどなりたくないという、

 富や名声にまるで興味のない者たちばかりで構成されています。


 何事にも迅速に応じる事を建て前に、

 自由奔放な暮らしを送る者も多く、

 ごく一部の生真面目な者たちによって、

 その根幹は築かれていました。

 一見、その変わり者の分類されそうなエリス元帥や、

 最強の剣王と謳われるウィルハルト聖剣王たちが、

 その生真面目さんたちになるのですが、


 正直、聖剣王一人だけでも、帝国の全てを統べるだけの、

 実力を備えています。


 変わり者の集団ですが、ごく一部の者を除いては、

 利害関係や友誼(ゆうぎ)で結束しており、

 これから暫くの内は、この銀河帝国に杞憂の欠片もないという感じで、

 それぞれが程度に油断して、楽しんでいるようでした。


 ただ一つだけ、注文を付けるとすれば、

 聖剣王の父である、先代のバルマード剣王と共に、

 半ば強引に行動を共にさせられている、

 タルスメフィー帝の父、

 剣皇グランハルト=トレイメアス大帝の存在です。


 藍染の作務衣に袖を通し、トレンドマークのサングラスで、

 勝手に自身を、チョイ悪オヤジと勘違いしている、

 その迷惑なおじさんは、

 人生の全てを数多の美女に捧げるなどと、

 勝手気ままに、世の女性に手を出しまくる、

 危険なおじさんでした。


 その風来坊のスケベ親父のウワサは、

 タルスメフィー帝の威光と同時に、

 あらゆる場所へと広がっており、


 皇帝家と親族になれるのならばと、

 嫌がる可憐な乙女の、我が娘たちを、

 進んで差し出す諸侯に溢れ、

 それをブロックするのに、彼の愛弟子のバルマード剣王が、

 一役買っているという現実でした。


 成敗するにも、その武勇はまさに剣神という脅威の強さで、

 それに近い実力の者を監視に付けるくらいしか、

 現状に打開策がない、という事です。


 元帥たちの中でも、1,2を競う発言力を持つ、

 肝心のエリス元帥自身が、彼の弟子であり、

 そんな悲しいウワサは周囲の善意にかき消され、


 そのろくでなしの師に、時々とんちんかんなエリス元帥が、

 淡い恋心さえ抱かせているのを、

 ライエン元帥やマイオスト元帥がうやむやに誤魔化して、

 彼女の目の前を曇らせています。


 父帝の影響で、タルスメフィー帝も色欲の塊と、

 周囲に勝手に誤解され、


 捧げ物にされるかもしれない、

 王候貴族たちの麗しいご令嬢さんたち巻き込み、

 時々、たちの悪い悪夢へと誘っていたりして、

 健全な安眠を妨害し、寝付きを悪くさせている始末です。


 時代が移り変わろうとも、人というものの根本は、

 たいして変わらないように思えたりします。

 いつまでも物欲、色欲、名声などというものは、

 そのコミュニティーの大小に関わらず、

 あまり変わり映えのしないものでしょう。


 タルスメフィー帝は、古代史の文献をよく学び、

 過去を教訓に、その立場に合った見識を深めようと、

 努力する日々を送っています。


 そして、あの大宮殿のような謁見の間に比べ、

 あまりに質素に作られた執務室のテーブルで、

 今日も山済みの様々な案件に目を通し、

 それに丁寧に、皇印を押しサインをしています。


 日差しが柔らかに室内を明るく照らす、

 その幾つかの窓の先には、

 エリス元帥が造らせ、ルフィア近衛隊長の管理する、

 温室の庭園が広がり、いろんな花言葉を持つ、

 カラフルな花々が鮮やかに、その瞳を癒してくれる、

 そんな風景がありました。


 よく詰め込んでも、せいぜい十数名が限界の、

 銀河皇帝には、あまりに控えめに作られた室内ですが、

 そこには、少しでも日常の慌しさを軽くするような、

 配慮ある、静かで落ち着きのある書斎のような、

 ささやかな安息の場所として、造られています。


 そしてこの執務室にいるのは、

 やや重厚なアンティーク調のテーブルで、

 淡々と書類の山を減らして行く、タルスメフィー帝と、

 常に出入りが許されている、

 近衛隊長のルフィア姫の二人です。


 彼の斜め後ろの位置にルフィア姫は、軽装の甲冑を身に付け、

 そこで雑務をこなしながら、タルスメフィー帝の警護の任にあたっています。


 執事や給仕の者たちの姿は無く、

 ふわっと湯気立つ琥珀色のロイヤルティーや、

 片手間に食べることの出来る軽食の配膳などは、

 全て一人で、ルフィア姫が慣れた手付きで、

 彼が必要としたタイミングに、その手元にそっと置かれるのです。


 これは、彼の義姉にあたるエリス元帥が、

 不甲斐ない義弟の為に、意中の人との時間を過ごす事の出来るよう、

 お節介を焼いて、そう仕向けたのでした。


 絶世の美姫ルフィア嬢に、

 少しでも良い印象を与えようと、

 熱心に執務に専念する、タルスメフィー帝。


 彼女、ただ一人をその傍らに必要としている彼にとって、

 多くの王侯貴族から送られて来る、

 皇帝の妾を目指せと指示された、哀れな乙女たちは、

 彼にとっては気の毒な存在で、


 別の場所にある巨大な造りの皇居の大部分を、

 その乙女たちに自由に開放し、

 城下街や庭園など、行き来を許可して、

 十分な財源で、彼女たちを一切拘束せずに、

 預かっているといった所です。


 その資金は勝手に親元から送られて来るので、

 適度に管理し、過度には与えず、

 彼女たち一人一人の将来の為に、

 積み立てているという、面倒見の良さです。


 親元に送り返すのは、彼女たちを悲運に突き落とすようなもので、

 出されてお手付きとなり、捨てられたと余計な誤解を招く事が、

 目に見えているからでもありました。


 タルスメフィー帝の機嫌を損なえば、どんな大王家であっても、

 ウィルハルト聖剣王辺りが、手を下さずには済まないでしょう。

 つまり、その娘が新たに子を成せば、

 タルスメフィー帝の隠し子というレッテルを張られ、

 野心ありと、あらゆる諸侯に嫉妬されるでしょうし、


 それを覚悟で、哀れな乙女を受け入れる勇者など、

 いれば統一の段階の時点で、

 どの元帥かが、その軍勢に招き入れていた事でしょう。


 タルスメフィー帝は新たに、特例の命令を下し、

 数の理論で受け入れきれない姫君たちに、

 皇都での自由恋愛の許可を、臣下たちに触れているのです。


 皇都レトレアには、星々の大元帥に連なる名家の将校や、

 現在の帝国の礎となった、前覇王サードラル帝に繋がる、

 数多の名家が城下に存在しており、


 地方の王侯諸侯の自尊心を十分に納得させるだけの、

 譜代の臣下たちが名を連ねているのです。


 以上のような理由で、タルスメフィー帝は、

 自身の自由を自分で縛ったような形となり、

 元帥たちからは、各国の麗しき令嬢たちで、

 城下をより華々しく盛り上げたと感謝される裏で、


 内心、とんだ貧乏くじを引いたものだと、

 いい様に弄ばれている始末です。


 それでも、律儀に浮ついた事も無く、

 ただ日々の執務に足かせされた、タルスメフィー帝ですが、

 エリス元帥が、ルフィア前元帥を近衛に推し、

 彼に出来得る最大の恋の貢献をしたせいか、


 タルスメフィー帝は、そんな日々を、

 日々穏やかに、あと胸の高鳴りを抑えながら、

 斜め後ろの想い人を、想い続けているのでした。


ルフィア姫
「陛下も、即位なされて暫く経ち、

 この春を迎えられ、より頼もしく感じられるように、

 なられたと、小官は嬉しく思う所であります。」


 タルスメフィー帝とルフィア姫は、

 ほんの少し以前は、共に戦場を駆ける同士の関係でした。

 王と元帥の身分の違いはあっても、

 仲間意識は、他の元帥たち同様に強く結ばれ、

 同じ時代、そして歴史を刻んできた、

 かけがえのない存在でした。


 それが結果、異性をルフィア姫に意識させるチャンスを、

 奪っていたというのが、その中でも最大の幸運でした。


 もし色恋があったとして、

 彼より魅力的な異性は多くいましたし、

 さらにその当時のタルスメフィー王と結ばれようなど、

 わざわざ苦労を引き受けて、共に王道を歩むという、

 面倒に巻き込まれるだけで、


 新たな発見や旅路に夢を抱く、ルフィア姫にとって、

 その選択肢はまさに有り得ないと言い切る事が出来たのかも知れません。


 人は同じ環境に置かれると、

 友人や恋人とは少し違う、家族のような感情を、

 錯覚するのかも知れません。


 このまま帝国に大事さえ起こらなければ、

 二人の時間はもっと長いものになるでしょうし、

 普通の人々とは違い、

 特別な力をその身に覚醒させている、

 タルスメフィー帝とルフィア姫は、


 人の百年が、一年ほどにも感じないほど、

 その若さをほぼ悠久に維持することが出来るのです。


 帝国全土を安定させ、次の選挙候に帝位さえ譲れば、

 タルスメフィー帝は、この束縛から解放され、

 約束された地位と、幸せに溢れた日々が、

 その先に待っているだろうと、彼は夢見ているのです。


 その条件に、最低「ルフィア姫の心を自らの力で掴む。」という、

 前提があるのですが・・・。


 フフッ、っと笑ったタルスメフィー帝は、

 それに少し驚いてみせる麗しのルフィア姫に、

 こう言ったのです。


タルスメフィー帝
「なんだか、姉さんたちと一緒に、

 世界の広さなんて知らず、楽しくやってた日々が、

 今は、とっても懐かしいよ。」


 そんな和んだ表情を見せたタルスメフィー帝に、

 ルフィア姫は、その耳ざわりの良い美しいソプラノの声で、

 桜色の唇を少しだけ潤わせて、

 魅惑的にこう返したのでした。


ルフィア姫
「はいっ!

 とても楽しい日々でしたねっ。



 でも、今のこの暮らしにも、

 私はとても満足していますよ。」


 その愛しい想い人の言葉に、

 タルスメフィー帝は多くを救われたような気持ちになり、


 表情にこそ出しませんでしたが、

 その胸を躍らせながら、山済みの書類を、

 ペース良く処理していったのでした・・・。


タルスメフィー帝
(ありがとう、ルフィア・・・。

 いつかその名前を、人前でそう呼べるように、

 オレは、頑張るよ。)



             パート3に続きます。

『ルフィアさん』

2017年03月08日 19時01分41秒 | -ためぞう の ぼうけん。- (仮)

   『ルフィアさん』


 セバリオスさんの紹介で、

 長崎ドラゴンタウンに住むことになった、

 ルフィアさん。

 来て間もないので、右も左も分からないといった感じです。


ルフィアさん
「お箸を握る方が、左で、

 お皿を持つ方が右っと。」


 ルフィアさんは、どうやらサウスポーみたいですね。

 今期、左腕のエースを欲しがっている球団スカウトマンには、

 良いアピールになったようです。


 という以前に、観光案内の地図の見かたや、

 東西南北すら分かっていらっしゃらないみたいですので、

 まるで、ポンと知らない町に放り出された迷子のようです。


 とはいえ、セバリオスさんの豪華5LDKの、

 リビング50畳、個人用温水対応プール、
 浴室3箇所にジャグジー付の、

 60F~以上の高さという眺望の、

 超一流のセレブ物件のプレゼントを丁重にお断りし、


 なんと所持金ゼロの状態で、

 この町で、一から始めたいという、

 今時関心なほどの、

 意気込みを見せたルフィアさんに、


 さすがにセバリオスさんも、彼女のその意気に感心し、

 現在の路頭に迷うという、

 なんとも不甲斐ない事態に至ったわけです・・・。


ルフィアさん
「・・・。

 (まだ、そう決め付けるのは、

  早いんじゃないかと思いますっ。)」


 町内は至るところに案内所や、駐在所、

 親切なおじさんやおばさんに、溢れてはいるのです。


 ですが、彼女が無意識の内に放っている、

 セレブ感漂う、無敵の美女オーラが、

 何とも一声かけにくい、独自の雰囲気を醸し出して、

 まさか、道に迷って困っているなんて、

 思いもよらない事でしょう。


 セリスさんに見立ててもらった春コーデを、

 モデルのように着こなし、

 歩く姿も、まるでファッションショーのランウェイ状態です。


 純白の生地に薄いピンクのアクセントが、

 まるで舞う桜を思わせる、品のあるトップスに、

 股下の長さで、さらに美しく魅せる、

 淡い白のレーススカート。


 そんな隙のない姿を見せられては、

 その類まれな容姿に吸い込まれるのを、

 何とか踏み止まるのが精一杯で、

 見惚れていた方が、また心地良かったりするのです。


 あの頃の伝説の美少女の、

 その君の想い出にふける(妄想ですが、)おじさんや、

 同様に、私だって若い時はと、

 過去の栄光が鮮明によみがえるように、

 想い出されるおばさんたちたち。(捏造されてますが・・・。)


 若者に至っては、あまりのその可憐さに、

 声をかける勇気すら持てない、

 まさに理想の先に望んだ美少女像が、

 なんとリアルに目の前を歩いているのです。


 ようは、その足跡に次々と花を咲かせるように、

 町内を意味も無く魅了している、ルフィアさんです。


 あの絶対的美少女のアリス会長さんや、

 聖クラウス学園に通う様々な美少女たちに、

 ある程度の耐性を付けられてはいるはずなのですが、


 最上級のサキュバス並みの強力な、サイクロン的吸引力で、

 この町の住人さんは、次々に魅了され続けています。


ルフィアさん
「(・・・セバリオスさんに、ああは言ったものの、

  あまりに考えが甘すぎました。 (>ω<)<クゥー!!」


 まったく迷子に見えない、黒髪の麗人ルフィアさんですが、

 知らないものを知る喜びの方が勝っているのか、

 その表情は、やさしく微笑んでいるようにも見えます。


 セバリオスさんは道案内などせず、

 あえて彼女に自由に、この町の自由さを、

 その肌と美しい町並みで楽しんでほしいと思い、


 困った時は、敏腕秘書のセリスさんに、

 それとなく支えるようにと、指示を出していたのです。


 ですが、セバリオスさんは結構天然ですので、

 まさか彼女が、案内板のその文字を読むことが出来ないなんてことを、

 想像すらしていませんでした。


エリスねーさん
「(えええっーーーー!?

 それマジですかーーーーッ!!)」


 ルフィアさんを影からコソコソ覗いてる、

 エリスねーさんです。


 ねーさんだけではありません、


 その他にも、アリス会長さんや、

 お隣の女子高生のレイカさんも、

 ねーさんのメリハリの効いたシルエットに、

 その身を隠すようにして、彼女の後を追っているのです。


アリス会長さん
「久しぶりに、ルフィアさんをお見かけましたが、

 何だか雰囲気があの頃より少し、柔らかくなったようにも感じます。


 とても頼りになる方ですので、

 私たちのチームの元へと、早く戻って来て欲しいとは思っていましたが、


 うかつに近づいて、勝負でも挑まれたら、

 ちょっと困ってしまいます、ネ。」


 そんな風に語った、金髪の絶世の美少女女子高生の、

 アリス会長さんのその表情は、

 まるでこの突発的なイベントを、

 新しいオモチャを与えられた、

 子供のように楽しむような、

 そんなワクワク感に満ちているようです。


 会長さんが手加減なしに、楽しくバトル出来る相手など、

 早々に見つかるものではないのです・・・。


 そんなアリス会長さんのキラメキに溢れた瞳を見て、

 もう一人の黒髪の美少女、となりの女子高生のレイカさんは、

 ちょっとおびえた様子を見せながら、

 スルッっといいとこ、エリスねーさんのその左手にすがり付くのです。


 アリス会長さんも、レイカさんも、

 何が起こっても、対処できるだけの力をこっそりお持ちなので、

 ガチで混乱するねーさんに、

 いい様に張り付いているといった感じです。


レイカさん
「わ、私、

 わけも分からず、あの方に、

 退治されちゃったりしてしまうのでしょうか。」


エリスねーさん
「い、いくら何でも、

 それはないと思うよ。


 ・・・。

 むしろ、私が気になっているのは、

 バッタリ、古蔵のヤツに会ったりしないかの方だよ。


 正直、気が気でならないけど、

 直球でその質問を聞く自信もないし、

 もし聞かれたら、どーしよーとか思うと、

 簡単に、近付けないんだよぉーーぅ。」


 この町に姿を現して早々、ルフィアさんは、

 その好奇心に溢れる中、自分が巻き起こしている、

 静かなる嵐のことなど、知り様もありません。


 空は晴れ渡り、春の訪れを告げるように、

 穏やかな日差しがその頬を優しく撫で、

 時折薫る潮風などを感じるだけで、

 心が豊かに満たされていきそうな、絶好の散歩日和です。


 ルフィアさんのこの町での親代わり? 的な存在の、

 セバリオスさんは、相変わらず何処かヌケていて、

 愛してやまない、エリスねーさんが、

 何気にピンチを迎えている事など露知らず、


 春の新作コーデのファッションモデルをやっている、

 エリナ先生の追っかけを、

 レオクスさんと一緒にやっている最中です。


 エリナ先生には、裏でこっそりとモデルの仕事を奪われ、

 その彼女の魅力に振り回され、

 以前の完璧さがびみょうな事になっている、

 セバリオスさんに、更に振り回されている、

 お人好しのエリスねーさんになります。


 その面倒見のいい性格が災いしてか、

 ますます混乱していく、エリスねーさんのその背後を、

 二人の麗しき女子高生たちが、

 ふと、にやけそうになりそうな表情を必至にこらえながら、

 付いて行ってるという状況です。


 ちなみに、セバリオスさんにルフィアさんの事を、

 一任されたセリスさんですが、

 実は、ちゃんとその依頼そのものは、

 完璧にこなしていたりします。


 ルフィアさんが無闇に繁華街などに近付けないように、

 先回りなどして、交通規制でブロックしたりと、

 その行き先を完全にコントロールし、

 権限の範囲内で、その様子を双眼鏡で楽しんでいます。


セリスさん
「さて、古蔵さん辺りでも、

 登場させてみましょうかーっ。

 ・・・うふふふふっ。」


 セリスさんがそう囁いたとたん、

 そのルフィアさんの進行方向に、まるで湧き出るかのように、

 宅配のバイトに励んでいる、

 爽やかなネコのマスクマン、古蔵さんが現れます!!


エリスねーさん
「い、いきなり現れやがったぞっ!

 ・・・や、やべえよぉ。」


アリス会長さん+レイカさん
「・・・。

 視覚遮断(隠れ身の術)をされているなんて、

 (浮かれるあまりに、

  面白くするのは、お互い、

  先を越されちゃいましたネ・・・。)」


 そして、唯一他の人たちとは違う雰囲気がする、

 古蔵さんのその背中に向かって、

 ルフィアさんは、少し恥じらいながらこう尋ねたのです・・・。


ルフィアさん
「あの・・・すいません。」、と。


 聞き覚えのある声に、大事な荷物を落とさないよう、

 ゆっくりと振り返る、古蔵さん。


 この時、二人の横を風で舞い散った花びらが、

 舞うように過ぎ去ったのです。


 古蔵さんが、その青い瞳を大きくして、

 何かを言おうとした時、

 その声が、どうしても出ない事に少し困ったような、

 仕草を見せたのです。


 真面目に答えてくれようとしている古蔵さんの言葉を、

 ルフィアさんは嬉しく想ったのか、微笑みながら待つのです。


 あの頃の君のその、

 あまりに鮮明で美しい姿に、

 古蔵さんは魅入られるように、景色がホワイトアウトして行きます・・・。


 絶対に忘れない、大切な時間。

 どんなに時が流れても、決して色褪せない、

 本物の想い・・・。


エリスねーさん
「やばいぞ、古蔵が、

 回想モードに突入しちゃうってーーっ!!」


アリス会長さん+レイカさん
「まあまあ、そう慌てずに、

 私たちは、その回想シーンを見守る事にしましょう。」


エリスねーさん
「な、なんで人の思い出なんて見れちゃうのっ!?」


 そうして、舞台は古蔵さんが、

 まだこの地に至る前の、その場所へと至るのです・・・。


エリスねーさん
「わ、私は見ないからねッ!!

 てか、古蔵の想いなんて、悲しくて見てらんねーよぉーーっ。」


 その美しい想い出の中には、

 孤高の覇王と、そんな彼の冷めそうな心を、

 穏やかに温かくしてくれる、

 一人の麗しき姫将軍の姿があったのでした・・・。



                       つづく。



エリスねーさん
「も、戻って来いっ!!

 ふ、古蔵ぉぉぉーーーッ!!!」

『エリスねーさんのお話は、ちょっと延期したいと思います。^^:』

2017年03月08日 18時11分33秒 | -ためぞう の ぼうけん。- (仮)

 こんばんは、井上です。


 よく思ったら、だいぶ先のお話に、

 ためぞう抜きで突入してしまうので、


 ちょっと延期か外伝辺りにしたいと思います。^^:


 あと、数章続く上、

 それを書いてたら、次に行けないまま数ヶ月経ってしまいそうなので。



 下記が、今後の展開の予定になります。



 ・ 戦いはヴァーチャルなどのゲームてはなく、

   実は本物の戦場に、途中から飛ばされているという事になっています。


   その事を、緊急降下して来る、

   鈴木さんの乗ってる高速巡航艦『エクスカリバーVII(セブン)』によって、

   告げられる予定です。


 ・ 展開された二隻の大型空母は、

   テラ01艦隊の最新鋭の空母で、

   一定の数の艦艇(キャリアー上限まで。)を、

   即時にワープアウトさせる事の出来る、

   強襲支援空母になっていますので、


   実際に、戦闘に戦士たち(エリスねーさんなどなど。)を、

   派遣したという事になり、

   上空の空で行われている、『対ハイデス・魔王級迎撃作戦』に、

   強制参加させられます。

   (戦力外の方たちは、事前に元の場所に送り返されています。)



 ・ そこでハイデスの魔王『サリア』と出会います。


   一度は、こちらの世界で生まれ、

   古蔵さん達と共に戦った人物ですが、

   転生後に、名前以外の全ての記憶を失っている状態です。



 ・ 高高度の空で戦っている理由は、

   星に近付ければ近付けるほど、

   相手である『魔王』の力が強大になるのを避ける為です。


   敵も味方も、星の質量をパワーに変えることができますが、

   相手は、その星を喰らう程の強大な力を先に手に入れてしまうので、

   そうさせない為の、


   拮抗し得る『戦士』の登場の救援状態を、維持する為の戦いです。

   ですが、その防衛ラインが次々に切り下げられ、

   地上のバトルに、干渉して来るという、

   接戦を避ける為に、エクスカリバーVIIが現れます。



 ・ ねーさん達が対戦していた大型の敵は、

   実は一機ではなく、


   空母を直衛する、シールドマシーンと、

   その存在を隠す為に過剰に攻撃を重ねる、

   攻撃大型ユニットで構成された、二人のチームになります。


   シールド側が、完全に遠距離攻撃を防ぎ、

   アタック側は、偽の被弾演出を、チャフを使って行っています。


   なので、仕組みが知れないように、

   戦場投下後の味方機が、

   空母に近付くのを避ける為に、リスク覚悟で、

   味方の防御タイプを、近付く素振りを見せた段階で、

   攻撃していたという事になっています。



   ちなみに、そのパイロット二人は未定のままでした。^^:

   初期所定では、覇王カロリナと、

   ねーさんの同級生の月乃さんの妹さんのどちらかということでした。



   こんな感じの展開予想でしたが、

   別の機会で、もっとまとめた感じで、

   本編に繋げたいと思います。^^:



   ということで、『ルフィアさん』の話が、

   次の話という事で、よろしくお願いします。



   でわーーー。 ^-^

日記 2017.3.2

2017年03月02日 19時02分53秒 | 日記

 こんばんはー、井上です。


 更新間隔が、思った以上に空いてしまったので、

 本日の書き込みとなります。


 ・・・。

 風邪を治りがけに、またも引いてしまいました。(>ω<)<ウギャー



 数日なんとも出来ず、ようやくの更新が、

 また遅れますのこの不甲斐なさ。


 最近は、風邪をしばらく引いていなかったので、(気付かないものも含みます。)

 そこそこの気構えだったのが、うかつだったのでしょう。


 次回更新は、もっとましな物にしたいものです。



 では、今日の日記です。


 朝ごはん クロワッサンとバターパン。

 昼ごはん あんぱん+コーラ。

 夕ごはん 雑炊と大根の酢の物を予定。


 ビタミン不足ですね! ・・・以後、気をつけたいと思います。


 みなさんも、風邪には気をつけてくださいね。



 では、またですー。 (^-^)