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『ルフィアさん パート3』

2017年03月31日 19時55分08秒 | -ためぞう の ぼうけん。- (仮)

   『ルフィアさん パート3』


 (まだ後半部分が校正出来てません。^^:)



 エグラート帝国の主星ニューアースは、

 かつて存在したとされる『地球』という惑星を元に、

 テラフォーミングされた、美しい青い星です。


 そのデーターが、一体何処から得られたかという事は、

 前サードラル帝と、彼に付いてこの星を旅立った、

 選りすぐりの将校たちしか知らない謎でした。


 かつて、現在の帝国の礎となる、

(第二次)ミストレウス帝国時代末期、


 サードラル帝はこんな予言を残して、

 銀河の未踏破域へと去って行ったのです。



 - 空に二つ目の月が現れた時、

   それは、この星の民たちを導く、

   新たな時代への幕開けになるのだろう・・・。


   恐れる事など何もない。


   人の想いが未来を切り開くと信じ、

   もし人々が失望するような危機が訪れようならば、

   私は舞い戻り、その危機を救うと約束しよう、


   愛しき子らよ、

   進むは容易くなかろうとも、その手を繋ぎ、

   決して孤独ではないと勇気を信じ、

   自らの手で、その道を開く事を、

   私は切に願おう。 -



 そして予言は、現実として起こるのです。


 ある日、見上げるその夜空に、

 二つの月が煌いていることを、

 一際明るい夜の光景から、人々は気付かされます。


 この頃、エグラート帝国では、

 銀河統一から約10年の月日が経っており、


 ようやく整備された、銀河ネットワークが構築され、

 帝国に参加する全ての国々が、その恩恵に与り、

 人々の生活や治安が安定期に入った時期の事でした。


 執務室の外へと出る、

 タルスメフィー帝とルフィア近衛隊長。


 皇居とは別に造られたこの巨大な議事堂に残っていた、

 他の元帥たちも、騒がしさと物見遊山(ゆさん)で、

 宮殿の庭へと誘われます。


ライエン元帥
「ほほーっ、

 これでお月見が二倍になるのでしたら、

 それはめでたい事ですなぁ・・・。」


マイオスト元帥
「早速、酒盛りの準備と団子でも用意しましょうか。

 他につまみが入用なら、何でも調達いたしますよッ!」


 浮かれる二人のバカ元帥の後ろから、

 10年前より、23才独身を続けている、

 エリス元帥がやって来て、

 その明るい夜空に言葉を失っています。


マイオスト元帥
「おや?

 エリスの姐さんは、あれが何だかお分かりなんですか。

 勿体付けずに、教えて下さいよっ。」

ライエン元帥
「興味深いですな、


 エリス様のその何時にない生真面目な、

 月明かりにダブルで照らされた、

 その麗しいナイスバディーなお姿・・・。


 私でよければ、愛人の末端にでもして頂けませんか?」


 そんな二人の声すら届いていないのか、

 まるで魅入られたように、

 新しく現れた月を見つめて動かない、

 エリス元帥。


 どうやら、ただ事ではないような雰囲気ですが、

 バカ二人は、空気など読まずに、

 勝手に月見酒の準備に取り掛かってる始末です。


 いつの間にやら、

 コンパニオン風の衣装に着替えさせられた、

 宮殿の綺麗どころの給仕、

 数名に、社長並みの接待を受け、

 勝手に酒盛りを始めてしまいます。


エリス元帥
「・・・ルシファーVII(セブン)。」


 エリス元帥が呟いたその短い言葉を、

 バカ二人は聞き逃してはいませんでしたが、

 その慣れなさが実に初々しい、

 美女たちに鼻を伸ばし、

 完全に、祝杯モードに突入しています。


 エリス元帥同様、神妙な面持ちで、

 突如として現れた、もう一つの月を見つめるルフィア姫。



 そのただならぬ雰囲気に、

 タルスメフィー帝は、彼女の事をつい心配してしまいますが、

 かける言葉が浮かびません。


 タルスメフィー帝も、このただならぬ状況が、

 吉兆の前触れなのか、あるいは災厄をもたらすものなのか、


 多くの人々を守らねばならないという、

 逃げ場の無いその立場から、

 まずどう行動すべきかという事を見極め、迷い、

 また覚悟を決めなければならないと、

 目を逸らす事無く、その星々の中で煌く、

 二つの月を見上げていました。


 すると暫くした後、ルフィア姫が、

 ゆっくりとタルスメフィー帝の方へ振り返ります。


 その二つの月明かりにライトアップされた、

 幻想的なまでに美しい、ルフィア嬢の姿に、

 思わずハッと、息を呑んでしまうタルスメフィー帝。


 そして、彼女は彼に語り始めますが、

 どうもいつもの凜とした、ルフィア姫の雰囲気ではありません。


 そう、まるで何かに身体を操られているような、

 焦点の合わない虚ろな瞳と、普段ほとんど見せる事のない、

 優しげな、温かみさえ感じる表情・・・。


 刹那、眩い光輝の球体が目の前に出現し、

 そこから女性らしき人影が現れますッ!!


光の中の女性
「私の名前は、『アリスアリサ』。


 始まりの星、『テラ01』にて、

 星々の子等を見つめる者です。」



 この時、タルスメフィー帝のその背筋に、

 何か嫌な予感のようなものが駆け抜け、


 ルフィア姫の前に現れた、その恐るべきものに、

 アダマンのつるぎをその手に握り、

 身構えるように、彼女に対峙しました。


タルスメフィー帝
「誰だか知らんが、ルフィア姫に何した!!

 妖異の類なら、引きずり出して、

 消し去ってくれるわァ!!!」


 タルスメフィー帝の周囲に、

 凄まじい闘気が、竜巻のような勢いで、

 青白く取り巻き始めますッ。


 彼が本気になれば、この世ならざる者さえも、

 瞬時に消し去る事の出来る、

 鬼神の如き力を発揮する事も容易なのです。


 彼は仮にも、銀河皇帝の名に相応しいほどの、

 高次元の戦闘力を秘めた、戦士の中の戦士です。


 愛する者が危機的状況にあると感じたなら、

 ただ一人の男として、

 この強大な破壊的な力を、躊躇わず行使する事でしょう・・・。


 ・・・タルスメフィー帝は、

 10年もの歳月をかけて、愛おしいルフィア姫から、


 「私の傍に、ずっといて欲しい。」という、


 その言葉の答えを、やっと引き出していたのです。


 結ばれるだろうという周囲の期待を、

 応えられるかも知れない希望の中での、

 この出来事です。


 だからこそタルスメフィー帝は、僅かな事でも、

 ルフィア姫の事に関しては、臆病に動じてしまう、

 そんな心境にありました。


 故に、余計に先走って行動してしまうのです。


 愛しい彼女の返事を聞いてからの、

 煌くような日々は、

 重かった彼の肩の荷を、羽根のように軽くしてくれました。


 そんなタルスメフィー帝が、ついに感情を抑えきれずに、

 ルフィア姫から生気を奪った、者へと立ち向かおうとした、

 その瞬間ッ!!


 姉のような存在のエリス元帥が、彼の前へと現れ、

 我を忘れて暴走する彼を、強引にねじ伏せ、

 硬い大理石の石畳にドシッ!っと、強烈に押し伏せたのですッ!!!


エリス元帥
「早とちりしてるんじゃないよッ、

 このバカ野朗がッ!!」


タルスメフィー帝
「ね、姉さん・・・。」


 すると、ルフィア姫の生気によって現れたように見えた、

 そのアリスアリサなる者が、

 エリス元帥とタルスメフィー帝の二人に、

 こう言うのです。


アリスアリサ
「彼を放してあげて下さい、

 まず、彼を誤解させた事を、

 私は、お詫びしなくてはいけないのですから。」


 優しく語りかけた声は、ルフィア姫のその声と、

 重なって聞こえるようでした。


 そう、ルフィア姫は生気を抜かれたというより、

 自ら進んで、彼女に依り代を与えたいう印象です。


 光輝に包まれるアリスアリサに対して、

 エリス元帥は、深々と頭を垂れて、

 従順の意を示しています。


 ある二人を除いては、

 誰に対しても屈する事のなかった、

 エリス元帥のこの態度に、

 ただただ困惑する彼女の義弟、タルスメフィー帝。


 彼女が以前、服従の意を示した相手など、

 偉大なる帝王サードラル帝と、

 その実弟でタルスメフィー帝の父王である、

 剣帝トレイメアスの、二人のみです。


 義姉のその態度が、目の前の存在を、

 タルスメフィー帝を遥かに超える存在だと、

 否応なく彼に告げるのです。


 仕方なくつるぎを床に置き、

 立ち尽くしたタルスメフィー帝。


 彼は、その正体不明の彼女に、

 従順にしてやる気など、とても持てなかったのです。


 花々たちが二つの満月に照らされて、

 幻想的に美しい、タルスメフィー帝とルフィア姫の、

 プライベートガーデン。


 硬直するように立つルフィア姫の姿は、

 確かに望んでそうしているようにさえ見えました。


 次第よ鮮明な姿を見せる、アリスアリサ。


 美の女神としか例えようもない、

 長いプラチナブロンドの髪の、絶世の美貌を持つ、

 ルフィア姫を超えて美しい、

 麗しき美少女の像・・・。


アリスアリサ
「さすがは、ルフィアさんですね。


 こうも高次元に私の姿を投影出来る、その高い能力・・・。


 ・・・以前のその力は、さらに磨きがかかっているように、

 みなぎる強い想いを感じます。」


エリス元帥
「もしや、この場所で顕現されたお姿を拝謁出来るとは、

 光栄の極みです。


 我らが創世主、アリスアリサ様。」


タルスメフィー帝
「・・・どういう事だよ、

 あんたとルフィア姫が、

 何の関係が、あるってんだよッ!!


 姉さんもちょっとおかしいぜ。

 オレ一人、置いて、

 何、勝手に話進めちゃってんだよ。」


 タルスメフィー帝は、乱暴な態度に出ることはありませんでしたが、

 その感情の持って行きようもなく、

 イライラしたような表情で、

 言える最大限の言葉を吐いて、

 少し、顔を背けるのです・・・。


 この時、マイオスト元帥もライエン元帥も、

 遠くで、いざとなればタルスメフィー帝の盾となる覚悟で、

 見守る姿がありました。


 そして、彼らだけではなく、

 タルスメフィー帝に恩義を感じている、ウィルハルト聖剣王や、

 彼の元の師であった、ハイン元帥も、

 同様に彼の為に、その状況を遠い場所から見守っています。


 それにすでに気付いているアリスアリサは、

 その張り詰めた緊張の糸を優しくほぐすように、

 タルスメフィー帝にこう言ったのです。


アリスアリサ
「貴方の心をかき乱して、

 まずはそれをお詫びしたく思います。


 私はあなた方の『敵』ではありません。


 貴方の心の拠り所である、ルフィアさんのこの清い心は、

 必ず、お返し致します。


 彼女は私の為に、

 たくさんの力を与えてくれていますが、

 ルフィアさんはご無事ですので、

 どうかご安心下さい。


 では次の瞬間、

 力なく倒れ行くルフィアさんのその身体を、

 その手に受け止めてあげて下さい・・・。」


 その時、アリスアリサの映像のような姿が、

 一瞬だけ乱れます。


 タルスメフィー帝は、ルフィア姫の身体を、

 とても大切に受け止めると、

 その表情は、以前の彼女のものへと戻っていくのでした。


 初めて抱きしめた、彼女のその柔らかな身体。

 彼の肩にかかる、その長い桜色の髪が、

 とてもいい匂いを彼に届けます。


 タルスメフィー帝は、それだけで赤面するような自分を、

 抑えるのに必死でした。


 それと同時により鮮明になる、

 アリスアリサ本来の姿が投影された、

 エーテルのようなビジョン。


 彼女、ルフィアの力は、

 そのアリスアリサの姿の投影に使われているのだと、

 腕の中で眠り、甘い吐息を感じさせながら微笑む、

 ルフィア姫の表情から、彼は納得せざるを得ませんでした。


アリスアリサ
「改めて、(第二の世界の)銀河皇帝陛下にご挨拶申し上げます。


 私は、遠い小さな世界の蒼い星、

 『テラ01』に生を受けた科学者の一人、

 『アリスアリサ=クラウス』と申します。


 私の使命は、

 愛すべき揺りかごである『大銀河 ゼリオス』を、


 ・・・異界よりいずる『ハイデス』という名の脅威より、

 全ての人類の、叡智と結束によって守り抜く、

 その手助けを成す事です。」


 少しだけ浮いたように見える、

 麗しき金髪の少女のホログラム映像は、

 タルスメフィー帝に、優しげな雰囲気で語りかけます。


 その本人は、気丈にこそ振舞っていますが、

 内心、ルフィア姫の事が心配で、

 アリスアリサの話を半分も聞き取れていない状態です。


 それを察してか、義姉のエリス元帥が、

 金髪の少女の映像に対して、深々と一礼した後、


 タルスメフィー帝の両肩を強く掴むや、

 激しい口調で、こう言い放つのですッ!!


エリス元帥
「ここじゃ、身分も何も関係ねぇ、

 いいか、ルフィアはお前の為に、

 かの偉大なる先帝様であらせられる、

 サードラル陛下のお言葉を辞退し、


 お前のために、この場所に残ったってんだッ!!


 ルフィアは、当時たいした功績も実力もなかったお前が、

 自分を好いてくれているのを知ってだな、

 トレイメアス師匠の辞退で、

 空席となりそうだった帝王の座という、

 とてつもない重責を任されたお前がよ、

 失恋の失意でガッカリとさせないように、


 ・・・そして、ハンパなく重いその肩の荷を、

 実力ではサードラル陛下に次ぐと言われた、

 事実上のナンバー2としての力で、

 影からこっそりと悟られぬよう支える為に、


 一度として逆らった事のない、

 敬愛してやまないサードラル陛下の言い付けを、

 初めて断ったってんだよッ!!!」


 誰よりも信頼している姉から発せられた、

 知り得なかった真実に、

 驚きと動揺を隠せないでいる、タルスメフィー帝・・・。


 それは遠くで、コソコソと様子を伺っている、

 ライエン元帥やマイオスト元帥たちの酔いを醒ますのにも、

 十分な言葉でした。


エリス元帥
「ほら、マイオスト! ライエンッ!!

 盗み聞きしてんだったら、とっととこっちに来いッ。


 お前らはまだ、アリスアリサ様の事は知らなかったよな。

 今から勉強して、しっかりと働くんだよッ!!!」


マイオスト元帥+ライエン元帥
「は、はいっ!!!」


 こうして、光輝の中の美少女、

 アリスアリサを囲む輪の中に、

 エリス直属の重臣である二人の男たちが、

 加わるのでした。


 アリスアリサのその姿は、

 遠くからでは、ぼやけて見えましたが、

 初めて目にする、これほどに美しい少女を前に、

 二人は、言葉さえ失ってしまいます。


エリス元帥
「ったく男どもは、これだからなぁ。


 ・・・あたしのプライドを傷付けて、

 そんなに愉快かい?」


間の抜けた二人
「いえ、滅相もございませんっ!!


 ほら、私らにとっては感動のオープニングシーンみたいな、

 そんなもんじゃないですかネッ?


 ・・・。

 言い訳になっていませんなぁ・・・。」


エリス元帥
「部下どもが失礼致しました、アリスアリサ様。」


アリスアリサ
「いえ、


 お二方も、私にとっては、

 共に道を照らす事になるかも知れない、

 かけがえのない同志に、なられる方々かも知れません。


 私に代わって、お二人の賢人を呼び寄せてくれた、

 エリス様には、感謝しております。」


 アリスアリサはそう言うと、

 優しく微笑みながら、エリス元帥と男二人に、

 丁寧にお辞儀をしました。


 そのとんでもない美貌と優しさに、

 完全に魅了された男二人は、

 二つ返事で、彼女アリスアリサにこう答えました。

マイオスト元帥+ライエン元帥
「何処までも、お供いたしますッ!!

 アリスアリサ様ァ!!!」


 妖精の女王と比喩しても、足らないほどに、

 絶世の美少女である彼女、アリスアリサに、

 魅了されない男の方が、むしろ異常なくらい、

 その可憐さと美しさは神々しさに満ちています。


 それには、ある理由がありましたが、

 それを知るのは、彼らにとってはまだ遠い未来の話です。


 なんと彼女のその容姿は、

 求めるその最高の理想像として、人々の目には映るのです。


 幻覚のようにも感じられますが、

 今でこそ、自らの意思で、

 人としての形を失っている彼女、

 アリスアリサですが、


 その彼女の、オリジナルの少女の姿は、

 さらにその幻想の姿を超えていると、

 彼女を知るごく一部の人々は知っています。


 その心を魅了してやまない、理想の美少女像でさえ、

 ピンボケして見えるという、驚くべき真実を、

 彼らが今後、知り得るかまでは不明でした。


 二人が現れたおかげで、我を取り戻したタルスメフィー帝。

 この二人は、彼にとって特別な友人とも呼べる存在です。


 エリス元帥は、愛すべき義弟の為に、

 本来、ここにいる資格を持たないこの二人を、

 それだけの為に呼び寄せたわけですが、


 アリスアリサもその気遣いを悟って、

 彼女の意思を尊重するような態度を見せるのでした。


 エリス元帥自身も、彼女を直視して、

 同性でありながらも、彼らと同じように激しく魅了されているのですが、

 平然とした態度を保っています。


 理性という壁を柔らかに越えて、

 本能そのものを魅惑するその絶世の容姿は、

 性別など関係はありませんでしたが、


 アリスアリサ自身、

 そんな目的で今の姿をしているわけではありませんでしたし、

 美しさというものは、いずれは慣れてしまうものなのでした。


 彼女のオリジナルを目の当たりにして、

 それが当てはまるかは、言い切れませんが、


 アリスアリサ自身、

 そんな事よりも気持ちで、想いで繋がりたいと、

 今も純粋に想い、彼らに接しています。


 その彼女自身は、とても善良でお人好しな女性ですが、

 この空に広がる星たちに降りかかろうとしている、

 破滅的な災厄に対する為にも、


 望まなくても、実行し続けなければならない、

 そんな使命を負わされています。


 エリス元帥とルフィア姫、

 そして、先にサードラル帝の要請を拒んだ、

 ウィルハルト聖剣王、


 さらには、タルスメフィー帝の父王であるトレイメアス剣帝、

 ウィルハルト聖剣王の父王、バルマード剣王の五名だけは、

 その事を、とても深く理解していました。


 つまりは、真にアリスアリサと接する事の出来る、

 選ばれし者たちに、

 当のタルスメフィー帝は含まれてはいません。


 ただ、彼女アリスアリサの、

 一人としての女性の優しさとその寛容さが、


 タルスメフィー帝のその心と記憶を、強制的に上書きし、

 ルフィア姫の存在、そのものへの想いを消し去る事を、

 とても許すことが出来なかったのが、その理由でした。


 ルフィア姫もエリス元帥も、

 彼女アリスアリサと共に、愛すべき星々を滅ぼそうとする、

 破滅的なまでの脅威に立ち向かえるだけの、

 次元さえ超える『力』を持ち合わせています。


 その二人、正しく言えば彼ら五人の力を、

 アリスアリサはその立場から、必要としています。


 ただ、アリスアリサはそれを一度として、

 誰にも強要した事はありません。


 ルフィア姫も、エリス元帥も、

 知りながらもその事実を、タルスメフィー帝に伝える資格も、

 勇気もありませんでした。


 何より、アリスアリサ自身が、

 辛い現実を見せるより、ただの簒奪(さんだつ)者として、

 憎まれてもいいという、その覚悟を持っていたからです。


 孤独に永遠の時を、一人で戦い続ける、

 そんなアリスアリサの力になりたいと、

 その五人の誰もが、そう思っていないわけではありませんでしたが、

 それぞれの理由で、二つ目の月が現れる、

 今までは留まっていました。


 何も知らないタルスメフィー帝は、

 そんなアリスアリサに、こう言うのです。


タルスメフィー帝
「オレは、ルフィアを渡さない・・・。


 全てを賭けても、義姉さんが止めようが、

 絶対に、やってたまるものかァ!!!」


 その叫びに、誰もが沈黙します・・・。


 彼の言っている事は、当たり前の事です。

 それを否定する資格は、誰にもありません。


 ただ、その純粋さと、

 彼の若さから来る無謀な勇気が、

 ただただ、いたたまれないだけでした・・・。


 アリスアリサがそっと瞳を閉じると、

 その輝きと姿が、少し薄くなっていきます。


 と、同時に、

 彼の腕の中にいる、ルフィア姫が、

 少し苦しいような表情へと変わるのです・・・。


タルスメフィー帝
「!?・・・どうした、ルフィアァァッ!!


 一体、ルフィアに何をしやがったッ!!!」


エリス元帥
「いいから、黙ってろッ!!

 何も知らないガキがァ!!!」


 止めに入ろうとしたエリス元帥を、

 少し存在が消えかかっているアリスアリサが静止します。


アリスアリサ
「彼の言っている事は、正しいのですから、

 どうか叱らないでやって下さい。」


 ルフィアの想いが不安定になっている事を、

 アリスアリサもエリス元帥も、感じています。


 ルフィア姫は志願して、アリスアリサを見ることの出来ない、

 タルスメフィー帝の為に、

 その想いと生命の力を使っています。


 それは電池のように、

 消費されてしまうようなものではないのですが、


 じっと落ち着いていなくてはいけない、

 その彼女の身体を抱きとめる、タルスメフィー帝自身が、

 彼女そのものを乱れさせ、苦しめているのです。


 アリスアリサは、彼に少しだけ申し訳ないような顔をして、

 最後に、僅かな微笑みを浮かべて消えてしまいます・・・。


 タルスメフィー帝と、残された二人の元帥たちの前から、

 消滅した、アリスアリサ・・・。


 そんな彼女がまだ側にいるのを感じているのは、

 苦しみが和らぐように目を覚ます、ルフィア姫と、

 苦い顔をした、エリス元帥だけです。


 突然の事にスッと我に帰って、

 ルフィア姫を抱きしめる自分に、恥ずかしくなってしまう、

 タルスメフィー帝・・・。


 エリス元帥が顔を歪めるように、厳しい表情で、

 周囲を見ているのに、勘のいい二人の部下はすぐ気付きます。

 しかし、そんな表情の彼女に、

 何を言っても無駄なのを最も知る人物が二人であるからこそ、

 二人は動けずに、ただ立ち尽くすしかありませんでした。


 今、この瞬間、

 やってはならない『禁忌』を、

 タルスメフィー帝が犯してしまったのです。


 本来、アリスアリサという大いなる存在に、

 出会う事が許される者は、選ばれし者のみです。


 彼女と言葉を交わす事が許されるのは、

 彼女の存在を、媒体なしで感じることの出来る、

 『限界を超えた力』を持つ者のみなのです。


 ルフィア姫とアリスアリサが見せていたその奇跡は、

 条件付きになりますが、意義を唱える者など存在しません。


  - 伝承を残す者と、語られるその道標。 -


 それは、伝説のような特例で、

 何処にあってもおかしくない話で片付けられるでしょう。


 ですが、自らその道標を折るような事があれば、

 大事を察し、アリスアリサを守る者が、

 その愚行を決して、許しはしないのです。


 エリス元帥に残された選択肢は、ただ一つ・・・。


 誰かが駆けつけるよりも早く、

 自身とアリスアリサ、そしてルフィアの記憶を、

 この世界の全てから、抹消するという手段なのです。


 急を知った、聖剣王とその父王、

 そして、愚行を犯した者の父である、剣帝トレイメアスも、

 エリスやルフィアたちを守る為に、

 瞬時に周囲を囲むように、身構えています。


 恐らく、真っ先に賭け付け、

 その三人の存在を消し去りに来るのは、

 剣帝の兄、覇皇サードラルです。


 他者に介入を許すくらいなら、身内の不始末は、

 自らの手で握り潰しに来る事でしょう・・・。


 目覚めたルフィア姫は、素早く彼の身体を突き飛ばすと、

 瞬時に、アリスアリサの像を復活させ、

 同時に石畳の床に崩れ落ちます。


 そのタルスメフィー帝とルフィア姫の間に、

 目にも留まらぬ速度で入った、エリス元帥は、

 遠くに聞こえるほどの声で、

 タルスメフィー帝に、こう言うのですッ!!


エリス元帥
「あんたは、ルフィアの大切な想いを、

 本気で消し去る気なのかいッ!?


 いいから、黙ってそこでじっとしてろッ!!


 でないと、あんただけじゃなく、

 そこのマイオストもライエンも巻き込んで、

 かのサードラル陛下に、一気に消し去られるぞッ!!!」


 すでに二人の元帥たちはすでに、

 その気配に気が付いたように、落ち着いています。


 自分が消されるかどうかの狭間で、

 もう臣下も身分差も、何も関係はありません。

 ですが、運命ならば受け入れるという覚悟の表情が伺えます。


マイオスト元帥
「ええ、この場所を、

 かの三強が鉄壁の防御で守っていますねぇ・・・。


 大体の事は、それで察しが付きますよ。

 アハハハハァ・・・。


 ・・・ごめんな、ハイン。」


ライエン元帥
「見てはならない、知ってはいけない知識を、

 見学させてもらっていたのですから、

 義理人情よりも、ルールが優先されてしまうのは、

 仕方のない事です・・・。


 でもまだ見込みはあります、よねっ?」


 ライエン元帥がそう言って振り返ったのは、

 眩い光輝の中から再臨した、アリスアリサの方でした。


 ですが姿が違っています・・・。


 とても、ルフィア姫に似ているのです。


アリスアリサ
「ルフィアさんの機転で、間に合ったようですね。


 どうか、心配しないで下さい。

 サードラル様にも、他の皆様にも、

 これで一応の名目が立ちます。」


エリス元帥
「フウッ・・・。


 あと数瞬遅れていたら、

 いくら外側の三人が強くても、あっという間に突破されてた。


 やっぱお前ら、運がいいのな!

 マイオスト、ライエンッ!!」


マイオスト元帥+ライエン元帥
「信じてましたぜっ! 姐さんッ!!」


 ルフィア姫のその身体を、

 とても大事に抱えるエリス元帥。


 その表情は、まるで実の妹を見るかのように、

 優しさに満ちています。


エリス元帥
「よく頑張ったよ・・・。

 こんな芸当、ルフィアくらいじゃないと、

 絶対無理だからな。」


 桜色の長い髪の、美しい少女となった、

 アリスアリサは、その言葉に頷くようにこう言いました。


アリスアリサ
「ええ、脅威の能力と言ってもいいでしょう。


 私の知る同志たちの中にも、

 はたして、これほどの潜在能力と瞬発力を、

 同時に覚醒させ、操作出来る方は、

 いないと言って過言ではありません。


 まさに、奇跡と呼べるほどの驚くべき力です。


 私のエーテル体を一瞬で再構成し、

 容姿こそルフィア様に似ていますが、

 間違えなく、私の光の身体の器を生み出してくれた。」


 彼女、アリスアリサから感じ取れる雰囲気は、

 以前のものとまったく変わらないように、感じられます。


 その姿が、ルフィア姫に似てしまった事を除いてですが。


 そのせいか、とてもおとなしく話を聞いている、

 タルスメフィー帝です。


アリスアリサ
「今から少しだけ、タルスメフィー様とルフィア様の、

 対話の場を設けたいと思います。


 そこは、私さえ立ち入ることの出来ない、

 二人だけの世界です。


 皆様は、タルスメフィー様の意識が、

 消えたように感じるかもしれませんが、

 ほんの少しの時間なので、どうか見守ってあげて下さい。」


 そのアリスアリサの言葉に、

 エリス元帥も、他の者たちも一斉に頷きます。

 それは、危機の去った事を知る、

 外の三人の猛者たちも同じでした。


ウィルハルト聖剣王
「本当に良かったです。」


剣帝トレイメアス
「まったく・・・、


 おなご一人、口説けずにもたもたしおって。

 本当にワシの息子かどうか、


 間違えて取り違えたかの?」


バルマード剣王
「その息子可愛さで、

 あんな滅多にない絶好のチャンスを棒に振って、

 麗しき姫君とのランデブーよりも、

 子守を優先されたくせに・・・。


 ですよね? 師匠。」


剣帝トレイメアス
「・・・。

 ワシの青春を返せーーーッ!!


 バルマード、お前さんは、

 ゆっくり再会を楽しんでおいていいから、

 ワシは、速攻で戻らせてもらうぞぃ!!」


 クラサン親父が、見苦しい逃走しようとした刹那、

 その紺の作務衣の襟を、ガシッっと掴み上げる、

 たくましい体格のヒゲの大男、バルマード剣王。


バルマード剣王
「少しは、私の帰郷にも付き合って下さいよ。」


剣帝トレイメアス
「ええい、その手を離せぃ、

 初孫のようにわが子を愛する、

 ゆとり親父がぁ・・・!!!


 ・・・うっ、コテッ。」



 アリスアリサは、エリス元帥に、

 その瞬間の訪れを、微笑んで伝えます。


エリス元帥「おい、マイオスト、ライエン!!


      しっかり義弟(おとうと)の身体を支えてやってくれよ。

      みっともねえ格好は、させたくないからな。」


マイオスト元帥+ライエン元帥
「は、はいっ!

 エリス姐さんッ!!」


 そんなやり取りを見つめるアリスアリサは、

 少し羨ましそうな感じで、

 エリス元帥にこう言ったのでした。


アリスアリサ
「素晴らしい賢人や、頼もしい仲間たちに、

 囲まれているのですね。」


エリス元帥
「いえ、それは錯覚ですッ!!


 こいつら、アホばっかりで苦労しますよ・・・。」


 そうしたやり取りをしている内に、

 タルスメフィー帝が脱力するように気を失い、

 それは、外にいる剣帝トレイメアスの知る所となります。


剣帝トレイメアス
(多大なるご恩、決して忘れは致しませぬ、

 未来の我が主にして、偉大なる創世主よ・・・・。)



 アリスアリサはルフィア姫の力を借りている内に、

 彼女の秘める内なる想いに、

 気が付いてしまっていたのです。


 それは、ルフィア姫が彼、

 タルスメフィー帝と過ごした、温かで穏やかな日々。


 そして、時は絆となり、

 気が付いた時にはもう、

 彼の事を強く意識している彼女がいた事です。


 と同時に、

 これ以上の、募る想いを残していては、

 旅立ちの決断が鈍ると気付いていた、ルフィア姫。


 その想いを自身と重ねたアリスアリサは、


 そんな彼女が、

 『愛する世界と人々を守る為』、

 果ての無い戦いへとその身を投じるという、

 その限りなく強い意志を、


  - 彼、タルスメフィー帝に、

           繋ぎ止めて欲しい。 -


 とそう願ったのです。



               その『パート4』に続きます。

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