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『ルフィアさん パート2』

2017年03月17日 19時35分49秒 | -ためぞう の ぼうけん。- (仮)

   『ルフィアさん パート2』


 - 夢や希望、

   そして、裏切りや野心に溢れた、

   そんな混沌の色濃い、戦国の時代・・・。


   その中に在って、最も広大な領土を築き上げた、

   一人の英雄がいました。


   彼の名は、大覇王タルスメフィー。

   数多の銀河の星団や列強を、その傘下に治め、


   一王のすらも、遥かに超える権限を与えられた、

   二十名を超える、星々の大元帥たちをその軍門に連ね、

   「向かう所、敵なし!!」と、意気高い家臣団。 


   大銀河・ゼリオスの統一に、

   最も近いと言われた、そんな大皇帝のお話です。


   ですが、彼はその力を増すほどに、

   人々の輪から、遠く離れて行くしか術は無く、

   王者の孤独の中にありました。 -


 そこは、大神殿のように大理石で造られた謁見の間。

 部屋と呼ぶにはあまりに広く、


 麗しい装飾のなされたその白の空間には、

 選ばれし者しか、歩む事を許されない、

 一本の幅の広い、鮮やかな赤いカーペットが、

 遠くを見るような距離まで伸びており、

 その先から玉座を崇めるもの達は、

 その椅子の主の姿さえ、

 瞳に捉える事も、かなわないでしょう。


 部屋を二つに分ける、その赤い道の両脇に立つのは、

 将軍以上の将校で、

 それぞれが我が君の御前にて、ただならぬ強者の雰囲気を、

 放っています。


 その将軍の数も二千はゆうに超え、

 参列する仕官の数も合わせると、数万は下らないようです。

 ですが、窮屈に並んでいるわけでもなく、

 それだけでも、この謁見の間が広大かという事がわかるようです。


 さらに玉座に近付くと、

 各々に壮麗な衣を纏った、十名ほどの男女がいます。

 彼らがどうやら、星々の大元帥たちのようであり、

 その先頭に眉目秀麗で、赤の衣を纏った長身の青年、

 『ウィルハルト聖剣王』が、立っていました。


 彼だけが赤いカーペットの脇で、

 玉座に最も近い位置に立っており、

 その椅子の主との距離は、目と鼻の先という位置で、

 他の大元帥との格の違いを際出させています。


 そして、数段上がった玉座付近には、

 十名ほどの近衛が左右に立ち、


 その隊長とおぼしき、この世のものとは思えないほどの、

 絶世の美女が、その腰に長さの違う二つの剣を携えて、

 聖剣王と玉座の間の等位置の、

 右手側に立っています。


 その近衛隊長の女性の髪は、虹糸のように美しく、

 幾つもの色彩に変化させる事が出来るらしく、

 今は、僅かに淡いピンク色の長く艶やかな髪を、

 腰の辺りまで、ゆるやかにおろしています。


 彼女は、敬意と尊敬の念を持って、

 人々からこう呼ばれています、

 『虹色の髪の戦乙女(ワルキューレ)、ルフィア様』と。

 その彼女が護る一本のつるぎ、

 それは覇王のつるぎ、『カストラ』という名の宝剣です。


 玉座の主は、彼女にそのつるぎを預けるほど、

 彼女の事を信頼している証でした。


 一本の覇王のつるぎが、

 他の列を成す者たちとは別の位にある事を示しています。


 その彼女、ルフィアと対等に位置に、

 立つ事を許された者は、

 ウィルハルト聖剣王、ただ一人のみです。


 そして、玉座の後ろの扉が開き、

 奥の執務室から出て来たのは、

 一人の若い、金髪の青年。


 彼こそが、この大銀河ゼリオスにおいて、

 最大勢力を誇る『エグラート帝国を中心とする、大銀河帝国。』

 の若き覇王、タルスメフィー帝、その人でした。

 (現、古蔵さん。)


 大元帥以下の臣下は、彼の登場に一斉にかしずき、

 少し高い位置にある、玉座の段から見るその光景は、

 選ばれた者のみが見ることの出来る、

 あまりに壮観で、筆舌に尽くしがたい、

 王者の高みを味わえる事でしょう。


 タルスメフィー帝が座したその玉座は、

 これほどの帝王には、あまりに貧相な作りの椅子で、

 貴族のアンティーク調の腕木付きの椅子と、

 大差ありません。


 彼は、その衣さえ他の将校の物と大差なく、

 即時に戦地へと赴けるような、実用的な服を身に着けています。

 それだけに、彼にかしずく多くの臣下の中に紛れてしまえば、

 まったく見分けが付かなくなるでしょう。


 タルスメフィー帝は、端正な顔立ちにその長い金髪が美しい、

 帝王というには、あまりに若すぎる美青年です。

 士官用の制服に、ただ皇帝の証を勲章に見立てただけの、

 飾り気のない帝王の証が、胸の左側に付いただけの装いです。

 彼は自分が『帝王』や『大覇王』と扱われるのを、

 仕方なく受け入れているといった感じでした。


 それを決して表情には出しませんが、

 次の瞬間、彼がこう発すると皆が一斉に起立するのです。


タルスメフィー帝
「そう気を使うでない、皆面を上げるのだ。」


 そうして立ち上がり彼に敬礼するのは、

 広大な謁見の間に居合わせた、ほんの一部の前列の者たちだけです。

 そう、その奥には彼の声が届かないほどに、

 各々の星団中から、臣下が列席しているのです。



 正直、彼タルスメフィー帝は、

 こういう行事はあまり好みではありませんでした。

 用意された舞台に役者を欠いては、

 臣下が動揺するのです。


 彼の軍門に下った、銀河中の数多の王候貴族たちは、

 そんな彼を執拗に守り立てようとするのです。


 タルスメフィー帝の想いを知る、ウィルハルト聖剣王は、

 この大役を進んで背負ってもらった彼に義理があります。


 その眼差しは、そんな彼に対する忠義心で溢れ、

 強い光を放つ眼光で、実質上のナンバー2として、

 無言ながらも、この集団を威圧する空気を生み出し、

 自らの身を、玉座の下に置いていました。


臣下一同
「この度の全銀河統一、

 真に見事であられました、皇帝陛下!!


 臣下一同、何処までも陛下の為にその身を尽くし、

 此度の偉業の大成を、謹んでお喜び申し上げますッ!!」


 繰り返される、彼への賛美と忠義の言葉。

 彼らがこれほどまでに尽くす理由は、

 その身の栄達を望んでの事です。


 当初、共和制を説いたタルスメフィー帝でしたが、

 信頼に足る重臣たちの意見により、

 帝政にする意見に押し切られて、現在に至ります。


 帝王が誕生すれば、その周囲を固める者たちの権威は、

 例えその身が王座になくとも、

 周辺星域の王たちより、遥かに強力な力を誇示出来ます。


 ただ唯一、タルスメフィー帝の提案が受け入れられたのは、

 その帝位が、世襲ではないという特例です。


 これを強く支えたのは、ウィルハルト聖剣王を筆頭に、

 戦女神と謳われたエリス大元帥などの、

 圧倒的貢献度を持つ、ごく一部の諸侯の賛同です。


 帝政を押すが故に、数の論理は強者に廃され、

 これに意義を唱える者など、その臣下に存在すらしません。

 反すれば、間違いなく身の破滅が待っているのです。


 結果、次期帝位は諸侯による選挙によって、

 選出される事になり、

 新たに『選挙候』という身分が追加されたのです。


 その名の通り、選挙候の立場は、

 他の諸侯とは大きく異なり、

 次期皇帝は、この選挙候の中から選出されるという事になります。


 その為、選挙候となった者は、皇帝に次ぐ権威を持ちます。

 さらに選挙候は枠にとらわれず、

 傘下のどの国に所属していようが、

 その椅子を得る事が、選挙候たちの3分の2の賛同で、

 得る事が出来るのです。


 故に、これまで頻繁に起こっていた、

 それぞれの国の対立や争いは、

 選挙候の資格を持つ諸侯に取り入るという行為に取って代わり、

 些細な内乱は形を変えて、いかに選挙候らの機嫌を取るかという、

 奉公合戦へと、その矛先を変えたのです。


 つまりは、ここに集まる臣下たちの多くは、

 皇帝の椅子の周囲に立ち並ぶ、選挙候という特別な権威への、

 憧れと野心を秘めたものと成り果てています。


 在位する帝王にも、その票は一票と選挙候と変わらぬ為、

 より容易に近付くことの出来る、

 選挙候へと関心が集まって行くのは必然でした。


 しかし、狡猾な者やより賢き者にとって、

 銀河皇帝のその威信は、

 遥かに選挙候のそれを超えています。


 皇帝が多くの選挙候から支持されている以上、

 その権威は数字で図りきれるものではないのです。


 例え選挙候に成れずとも、美しき姫を皇帝に捧げる事により、

 いずれ生まれ来るその子が、選挙候の誰かに気に入られれば、

 その一族により強い絆が生まれるのです。


 皇帝との絆というだけでも、十二分にその対価は得られ、

 自らの周辺地域において、彼らは飛び抜けた影響力を、

 手に入れる事でしょう。


 タルスメフィー帝自身は、捧げられる乙女たちが、

 憐れでなりませんし、

 何より、彼には想い人がその傍ら近くに立っているのです。


 近衛を仕切り、帝国の双剣と称される、

 美髪候ルフィアは、その強さだけでなく、

 容姿や性格も、ずば抜けて優れており、

 誰からも憧れる、唯一無二の存在でした。


 もう一人の帝国のつるぎ、ウィルハルト聖剣王と、

 麗しき彼女が一太刀交えれば、

 どちらがより優位に立つのかという疑問は、

 二人の関係からも実現こそしてはいませんが、

 多くの臣下が、その結果を見てみたいと思わせるほどに、

 麗しき天使のような理想の近衛隊長の存在は、

 強い憧れの対象と言えたでしょう。


 こんなにも近くて遠い存在、

 彼女の方に振り返る勇気が、なかなか持てない、

 タルスメフィー帝の姿がそこにはありました。


 形式だけの謁見を行った後、

 タルスメフィー帝は、再び奥の執務室へと戻ります。

 皇帝の座に就いてからというもの、

 彼は、多忙な執務を一日として欠かした事はありません。


 彼の駆け出しの頃を知る者たちは、

 そんな勤勉な彼の行動が、理解出来ない者を多くいました。

 広大な謁見の間の隣には、元帥たちが語り合うのに十分な、

 落ち着いた雰囲気の、木目を基調とした休憩所が設けられてあります。


 そこには各種飲み物や軽食を提供する、

 腕利きのコックやソムリエたちが待機しており、

 オールドスタイルの装いの美しいメイドたちが、

 元帥たちをもてなすように、行き交っていました。


 その洋式の室内の、特に日当たりの良い場所に、

 テーブルを占拠するエリス元帥と、

 その彼女のご意見番の元帥たちが、

 それぞれの好みに合った飲み物を片手に、

 語り合う様子が伺えます。


エリス元帥
「あいつ、皇帝になって真面目になったよな。

 地位や責任ってやつが、

 そんなに人を簡単に変えるもんなのかねぇ。」


 甘ったるい砂糖水のような紅茶を手にそう言った女性は、

 雰囲気こそ、気のいい姉さんのような感じですが、

 その容姿は桁外れに美しく、まるで地上に舞い降りた、

 艶やかな長い新緑の髪の、天上の女神のようです。


 その彼女は、タルスメフィー帝にとってかけがえのない、

 頼りになる姉のような存在でした。

 それも理由の一つかも知れませんが、

 彼女自身が備える気安さと、そのカリスマ性で、

 立場において、ウィルハルト聖剣王にも肩を並べる、

 元帥の中の大元帥です。


 さらに彼女は、独身という事もあり、

 この場にいる者たちに限らず、

 数多の王候諸侯たちが憧れを抱く者も多く、

 選挙候ではないものの、それと同等かそれ以上の、

 発言力を有する、重臣の中の重臣です。


ライエン元帥
「さて、それはどうでしょうかな。

 誰だって意中に相手には、自分をカッコ良く見せたいものでしょう。


 陛下と一緒に執務室に居られるお方想えば、

 この私だって、いいとこ見せたくなるでしょうがね。」


 レモンソーダをストローで飲みながら、

 そういう不精ヒゲの中年の男は、

 帝国でも一、二を争う智将のライエン元帥です。


 同席する銀髪の青年元帥のマイオスト卿と共に、

 享楽に興じる不真面目な男ですが、

 大事に至れば、最も頼れる元帥の一人ではありました。


マイオスト元帥
「まあ、私の場合は(愛するハインがいるので、)、

 そう気軽にはいきませんがネ。


 あの中途半端な男が、真面目を演じているのであれば、

 しばらくは、我らも休暇を有意義に過ごせることでしょうなぁ。」


エリス元帥
「マイオスト、お前の言葉の一部が良く聞こえんが、

 あたしの悪口じゃないだろーね。


 どいつもこいつも、どうしてこんなガラクタみたいなヤツしか、

 あたしの前には出てこないかねぇ。


 大体の予想でそう仕向けたが、

 あいつ、やっぱりルフィアの事が好きなのか?


 変態のお前らが言う事が、なんだかまともに聞こえたのは、

 やっぱ男同士にしかわからん、そういう類のやつなのか??」


マイオスト元帥+ライエン元帥
(この人、性格さえちゃんとしてれば、

 魅力的なんだけど、どこまで鈍いのか、

 わからないからなぁ・・・。


 ・・・行き送れる分には、楽しいんだが、

 いい女性(ひと)なのに、

 それだけでこんなに惜しくなるなのか。


 高嶺の花のまま売れ残るのは、

 少し可愛そうなので、私たちがリア充を達成した後にでも、

 合コンに誘って上げよう。


 ・・・嫁(未定)に気取られず、遊ぶスリルは、

 なかなか刺激的で楽しそうな気はする。)


 エグラート帝国の元帥たちは、そのほとんどが変わり者で、

 忠誠を誓うその理由が、面白いからだとか、

 面倒な領主になどなりたくないという、

 富や名声にまるで興味のない者たちばかりで構成されています。


 何事にも迅速に応じる事を建て前に、

 自由奔放な暮らしを送る者も多く、

 ごく一部の生真面目な者たちによって、

 その根幹は築かれていました。

 一見、その変わり者の分類されそうなエリス元帥や、

 最強の剣王と謳われるウィルハルト聖剣王たちが、

 その生真面目さんたちになるのですが、


 正直、聖剣王一人だけでも、帝国の全てを統べるだけの、

 実力を備えています。


 変わり者の集団ですが、ごく一部の者を除いては、

 利害関係や友誼(ゆうぎ)で結束しており、

 これから暫くの内は、この銀河帝国に杞憂の欠片もないという感じで、

 それぞれが程度に油断して、楽しんでいるようでした。


 ただ一つだけ、注文を付けるとすれば、

 聖剣王の父である、先代のバルマード剣王と共に、

 半ば強引に行動を共にさせられている、

 タルスメフィー帝の父、

 剣皇グランハルト=トレイメアス大帝の存在です。


 藍染の作務衣に袖を通し、トレンドマークのサングラスで、

 勝手に自身を、チョイ悪オヤジと勘違いしている、

 その迷惑なおじさんは、

 人生の全てを数多の美女に捧げるなどと、

 勝手気ままに、世の女性に手を出しまくる、

 危険なおじさんでした。


 その風来坊のスケベ親父のウワサは、

 タルスメフィー帝の威光と同時に、

 あらゆる場所へと広がっており、


 皇帝家と親族になれるのならばと、

 嫌がる可憐な乙女の、我が娘たちを、

 進んで差し出す諸侯に溢れ、

 それをブロックするのに、彼の愛弟子のバルマード剣王が、

 一役買っているという現実でした。


 成敗するにも、その武勇はまさに剣神という脅威の強さで、

 それに近い実力の者を監視に付けるくらいしか、

 現状に打開策がない、という事です。


 元帥たちの中でも、1,2を競う発言力を持つ、

 肝心のエリス元帥自身が、彼の弟子であり、

 そんな悲しいウワサは周囲の善意にかき消され、


 そのろくでなしの師に、時々とんちんかんなエリス元帥が、

 淡い恋心さえ抱かせているのを、

 ライエン元帥やマイオスト元帥がうやむやに誤魔化して、

 彼女の目の前を曇らせています。


 父帝の影響で、タルスメフィー帝も色欲の塊と、

 周囲に勝手に誤解され、


 捧げ物にされるかもしれない、

 王候貴族たちの麗しいご令嬢さんたち巻き込み、

 時々、たちの悪い悪夢へと誘っていたりして、

 健全な安眠を妨害し、寝付きを悪くさせている始末です。


 時代が移り変わろうとも、人というものの根本は、

 たいして変わらないように思えたりします。

 いつまでも物欲、色欲、名声などというものは、

 そのコミュニティーの大小に関わらず、

 あまり変わり映えのしないものでしょう。


 タルスメフィー帝は、古代史の文献をよく学び、

 過去を教訓に、その立場に合った見識を深めようと、

 努力する日々を送っています。


 そして、あの大宮殿のような謁見の間に比べ、

 あまりに質素に作られた執務室のテーブルで、

 今日も山済みの様々な案件に目を通し、

 それに丁寧に、皇印を押しサインをしています。


 日差しが柔らかに室内を明るく照らす、

 その幾つかの窓の先には、

 エリス元帥が造らせ、ルフィア近衛隊長の管理する、

 温室の庭園が広がり、いろんな花言葉を持つ、

 カラフルな花々が鮮やかに、その瞳を癒してくれる、

 そんな風景がありました。


 よく詰め込んでも、せいぜい十数名が限界の、

 銀河皇帝には、あまりに控えめに作られた室内ですが、

 そこには、少しでも日常の慌しさを軽くするような、

 配慮ある、静かで落ち着きのある書斎のような、

 ささやかな安息の場所として、造られています。


 そしてこの執務室にいるのは、

 やや重厚なアンティーク調のテーブルで、

 淡々と書類の山を減らして行く、タルスメフィー帝と、

 常に出入りが許されている、

 近衛隊長のルフィア姫の二人です。


 彼の斜め後ろの位置にルフィア姫は、軽装の甲冑を身に付け、

 そこで雑務をこなしながら、タルスメフィー帝の警護の任にあたっています。


 執事や給仕の者たちの姿は無く、

 ふわっと湯気立つ琥珀色のロイヤルティーや、

 片手間に食べることの出来る軽食の配膳などは、

 全て一人で、ルフィア姫が慣れた手付きで、

 彼が必要としたタイミングに、その手元にそっと置かれるのです。


 これは、彼の義姉にあたるエリス元帥が、

 不甲斐ない義弟の為に、意中の人との時間を過ごす事の出来るよう、

 お節介を焼いて、そう仕向けたのでした。


 絶世の美姫ルフィア嬢に、

 少しでも良い印象を与えようと、

 熱心に執務に専念する、タルスメフィー帝。


 彼女、ただ一人をその傍らに必要としている彼にとって、

 多くの王侯貴族から送られて来る、

 皇帝の妾を目指せと指示された、哀れな乙女たちは、

 彼にとっては気の毒な存在で、


 別の場所にある巨大な造りの皇居の大部分を、

 その乙女たちに自由に開放し、

 城下街や庭園など、行き来を許可して、

 十分な財源で、彼女たちを一切拘束せずに、

 預かっているといった所です。


 その資金は勝手に親元から送られて来るので、

 適度に管理し、過度には与えず、

 彼女たち一人一人の将来の為に、

 積み立てているという、面倒見の良さです。


 親元に送り返すのは、彼女たちを悲運に突き落とすようなもので、

 出されてお手付きとなり、捨てられたと余計な誤解を招く事が、

 目に見えているからでもありました。


 タルスメフィー帝の機嫌を損なえば、どんな大王家であっても、

 ウィルハルト聖剣王辺りが、手を下さずには済まないでしょう。

 つまり、その娘が新たに子を成せば、

 タルスメフィー帝の隠し子というレッテルを張られ、

 野心ありと、あらゆる諸侯に嫉妬されるでしょうし、


 それを覚悟で、哀れな乙女を受け入れる勇者など、

 いれば統一の段階の時点で、

 どの元帥かが、その軍勢に招き入れていた事でしょう。


 タルスメフィー帝は新たに、特例の命令を下し、

 数の理論で受け入れきれない姫君たちに、

 皇都での自由恋愛の許可を、臣下たちに触れているのです。


 皇都レトレアには、星々の大元帥に連なる名家の将校や、

 現在の帝国の礎となった、前覇王サードラル帝に繋がる、

 数多の名家が城下に存在しており、


 地方の王侯諸侯の自尊心を十分に納得させるだけの、

 譜代の臣下たちが名を連ねているのです。


 以上のような理由で、タルスメフィー帝は、

 自身の自由を自分で縛ったような形となり、

 元帥たちからは、各国の麗しき令嬢たちで、

 城下をより華々しく盛り上げたと感謝される裏で、


 内心、とんだ貧乏くじを引いたものだと、

 いい様に弄ばれている始末です。


 それでも、律儀に浮ついた事も無く、

 ただ日々の執務に足かせされた、タルスメフィー帝ですが、

 エリス元帥が、ルフィア前元帥を近衛に推し、

 彼に出来得る最大の恋の貢献をしたせいか、


 タルスメフィー帝は、そんな日々を、

 日々穏やかに、あと胸の高鳴りを抑えながら、

 斜め後ろの想い人を、想い続けているのでした。


ルフィア姫
「陛下も、即位なされて暫く経ち、

 この春を迎えられ、より頼もしく感じられるように、

 なられたと、小官は嬉しく思う所であります。」


 タルスメフィー帝とルフィア姫は、

 ほんの少し以前は、共に戦場を駆ける同士の関係でした。

 王と元帥の身分の違いはあっても、

 仲間意識は、他の元帥たち同様に強く結ばれ、

 同じ時代、そして歴史を刻んできた、

 かけがえのない存在でした。


 それが結果、異性をルフィア姫に意識させるチャンスを、

 奪っていたというのが、その中でも最大の幸運でした。


 もし色恋があったとして、

 彼より魅力的な異性は多くいましたし、

 さらにその当時のタルスメフィー王と結ばれようなど、

 わざわざ苦労を引き受けて、共に王道を歩むという、

 面倒に巻き込まれるだけで、


 新たな発見や旅路に夢を抱く、ルフィア姫にとって、

 その選択肢はまさに有り得ないと言い切る事が出来たのかも知れません。


 人は同じ環境に置かれると、

 友人や恋人とは少し違う、家族のような感情を、

 錯覚するのかも知れません。


 このまま帝国に大事さえ起こらなければ、

 二人の時間はもっと長いものになるでしょうし、

 普通の人々とは違い、

 特別な力をその身に覚醒させている、

 タルスメフィー帝とルフィア姫は、


 人の百年が、一年ほどにも感じないほど、

 その若さをほぼ悠久に維持することが出来るのです。


 帝国全土を安定させ、次の選挙候に帝位さえ譲れば、

 タルスメフィー帝は、この束縛から解放され、

 約束された地位と、幸せに溢れた日々が、

 その先に待っているだろうと、彼は夢見ているのです。


 その条件に、最低「ルフィア姫の心を自らの力で掴む。」という、

 前提があるのですが・・・。


 フフッ、っと笑ったタルスメフィー帝は、

 それに少し驚いてみせる麗しのルフィア姫に、

 こう言ったのです。


タルスメフィー帝
「なんだか、姉さんたちと一緒に、

 世界の広さなんて知らず、楽しくやってた日々が、

 今は、とっても懐かしいよ。」


 そんな和んだ表情を見せたタルスメフィー帝に、

 ルフィア姫は、その耳ざわりの良い美しいソプラノの声で、

 桜色の唇を少しだけ潤わせて、

 魅惑的にこう返したのでした。


ルフィア姫
「はいっ!

 とても楽しい日々でしたねっ。



 でも、今のこの暮らしにも、

 私はとても満足していますよ。」


 その愛しい想い人の言葉に、

 タルスメフィー帝は多くを救われたような気持ちになり、


 表情にこそ出しませんでしたが、

 その胸を躍らせながら、山済みの書類を、

 ペース良く処理していったのでした・・・。


タルスメフィー帝
(ありがとう、ルフィア・・・。

 いつかその名前を、人前でそう呼べるように、

 オレは、頑張るよ。)



             パート3に続きます。

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