ダークフォース続き(仮)新規 Twitterは@14ayakosan です

ダークフォースDFと続きに仮セカンド。Twitterは @14ayakosan 新規とDF追加再編です

12年くらいまえの設定なので長文ですが💦

2021年05月17日 16時02分59秒 | 書き物置き(自分が確認する程度です💦)
2009年の記事の再掲で
訂正してないので
相当変わってるかもやら、うん,ノリで書いてるなぁみたいなお恥ずかしいとこもありますが
長いので

略するとライトフォースとダークフォース誕生(発見?
のDF前の使わない設定ぽいのです

地球が起源で随分未来の話飛んでます
過去の話で

古のとか古い話ですがちょいハイテクで勢いで書いてるのを懐かしいやらで💦

ここからです。


 『ダークフォース』の起源

 それは、
 遥かなる太古の時代。
 とある太陽系の第三惑星に起源を持つとされた。

 その惑星『テラ』は高度に発達した文明を有しており、
 星々を駆ける船を生み出し、
 それらを、テラ太陽系外に発して
 銀河の版図を広げていった。

 しかし、一定の段階でその星の船の時代も、
 人類は光速を超える航法を発見出来ずに、
 銀河の地図作りもしばしの停滞の時を迎える。

 惑星テラを発った人々は、
 その閉塞感から脱する為、次々とテラ圏から独立し、
 幾つもの惑星国家を参加させた共同体を構築するに至る。

 こうして、
 テラを中心とする『テラによる銀河帝国』と、
 そのテラに反旗を翻した国家群による『惑星国家連合』
 との対立の時代を迎える。

 人々は星の船を戦艦へと作り変え、
 小さな銀河の覇権を争う事で、その忙しさを増した。
 戦いに勝利する為に、次々に新型の戦艦が生み出され、
 その艦列を星の海へと並べる事に、人々は陶酔していった。

 だが光速を超えられない船で争ったところで、
 その「のろまな亀」では、、
 箱庭のような小さな銀河の地図すら塗りかえる事など出来ず、
 所詮は小競り合いと意地の張り合いだけを
 何世代と飽くこともなく繰り返した。

 そして、突然、変化は訪れる。

 惑星国家連合は、銀河帝国を外巻くように存在していたが、
 (図で言うと、タマゴの黄身(帝国)と白身(連合)のような構造)
 突如、その幾つかの惑星国家と連絡が取れなくなる。
 連合はその調査の為に(帝国の侵攻の可能性)
 大規模な船団を幾度かに渡り派遣するが、
 一隻として、戻ってくる船は存在しなかった。

 結果を得られぬ連合は苛立ち、
 さらに大規模な最新鋭艦を揃えた編成で調査に挑む。 

 そして、それは少しばかりの成果を連合にもたらした。
 ・・・ただ、聞こえたのは
 光の速さで連合へと伝えられた、
 船団からの悲鳴であった。

 連合はそのメッセージを受け取ると、
 即座に帝国との和平の使者を使わした。
 連合の判断は賢明だったが、帝国はそれを疑った。

 船団からのメッセージはこうである。
 「我、正体不明の敵と遭遇せり、
  すでに我が艦隊は十万隻が撃破され、
  残った僅か三千隻が壊走中である。
  ・・・我らはこの宙域で再度体勢を立て直し、
  今一度、Unknownと決戦する。
  ・・・どうせもう、逃げられはしない。
  出来る限りの情報を集め、全チャンネルで送信する。
  敵の数は、僅か1である。
  これが帝国の生み出した破壊兵器でないことを、
  ただ、神に祈ろう・・・。」と。

 帝国が連合のメッセージを疑う間にも、
 連合に加盟する国家は、次々とその数を減らしていった。
 連合は猶予ならない事態に、
 独力でそれに対する艦隊を編成し、
 幾度も敗北を積み重ねながら、敵データの収集に全力を注いだ。
 数百万という艦船を失い、連合国の数をほぼ半数に減らした時、
 僅かにだが、その『敵』の正体を知る事が出来た。

 敵は未知のテクノロジーを操る外宇宙からの侵入者で、
 体長は僅か数メートルの、異形の生き物。
 光を重力で屈折させている為、正確な外観(イメージ)は入手出来てはいない。
 この敵に対し、現時点の水準の戦艦をぶつけた所で、
 ただ、動かぬ的(まと)をくれてやっているようなものであった。

 連合は、
 その主星である『ニューアース』に迫られても
 なお抵抗を続け、
 ついにはそのニューアースすら失ってしまう。
 多大なる犠牲を払いつつも、主を失った連合国は
 更に抵抗を続ける。

 この時点で、帝国側の星系にも
 その敵の影響は及んでおり、
 被害者となって初めて帝国は、
 連合のメッセージをようやく理解した。

 だが、もう遅い。
 帝国は、未知なる敵に対する手段を
 何ら持ち合わせてはいなかったし、
 テラの人々は、他国が犠牲になっている内に、
 逃げ出す算段をする始末。
 敵はどこまでも追跡してくるというのに、

 その対応に飽きれた帝国の各国は、テラ圏から次々に離反し、
 崩壊寸前の連合側に付いた。
 テラは孤立し、連合側に回った国々は、テラの行為を許そうとはせず、
 大艦隊を集結させて、テラ宙域を完全に包囲した。
 テラ星系を、未知なる敵との最終決戦場に定めたのである。

 ここに、虚しくも銀河帝国の枠組みは崩壊し、
 人類は強大なる敵を前に、強く結束する。
 しかし、人類の生存圏をまるで根絶やしにするように
 螺旋状に侵攻して来る敵の存在により、
 人類の描いたその小さな銀河の地図は、約七割を消失させていた。

 誰もがそれを恐れ、
 また『人類』という存在そのものの為に、
 人々は、決死の覚悟で戦った。

 ヒトという種を未来へと繫ぐ為に。

 人類滅亡のシナリオが着々と進行していく中で、
 ついにニューアースの生き残りの科学者たちが、
 未知なる敵の、その強大な強さの秘密を解き明かした。

 それこそが、
 『ダークフォース』である。

 敵は恐ろしく高度に発達した科学力を有しており、
 暗黒物質と呼ばれる質量とそのエネルギーを、
 己の力に変換する器官を備えており、
 無限とも思われる圧倒的な力で、
 今まで、人類を駆逐して来ていたのだ。

 科学者たちは、
 そのダークフォースを現在の技術で人類が保有するのは
 不可能と判断し、
 より安易に力を取り出す事が出来る
 『ライトフォース』の方に着目した。

 こうして、ライトフォース発生器官を搭載した
 新型戦艦の試作が開始された。

 その設計図は各国に送られたが、
 あまりのその巨大な発生器官の設計に、
 既存の戦艦では運用が不可能であった。
 当時の戦艦は約3000メートル級が主流であったが、
 その発生器官は全長10キロにも及んだ。

 それを搭載する戦艦の新造など、物理的に厳しく
 試作一号艦「エクサー01」だけは、
 それを搭載して完成したが、
 各国はその発生器官を完成させるだけでも限界に近く、
 既存の艦船を牽引するように十数隻を発生器官へと繋ぎ、
 急ごしらえの大型艦を完成させた。
 この手法で完成された船は「ギーガ」級と呼ばれる。

 このライトフォースリアクター搭載の船は、
 光速を超える航行が可能となり、
 それら大型艦が、エクサー01を軸に艦隊を編成するには、
 さほどの時は必要なかった。

 決戦の地は、惑星テラの太陽系。
 集結したのは、エクサー01とギーガ級十数隻。
 事前に集結していた既存の戦艦は、その盾なる布陣を敷き
 その数は500万隻に達した。

 こうして、人類は最終決戦に望む。

 結果、人類はその未知なる敵に多大な犠牲を払って勝利するわけだが、
 その敵の正体が、たまたま人類の生存圏に接しただけの、
 外宇宙からの、ただの一匹の尖兵にすぎなかった事実に愕然とする。
 (現在の下級ギーガ一匹分の戦力)

 人類はこの後、
 ライトフォースの発生器官を軽量、小型化することで
 通常艦に搭載することを可能にした。
 そのリアクターを搭載した船で、星の海へ次々と乗り出した。

 人々は共存することを強く願い、
 全国家を参加させた、『銀河共和国』を設立する。

 さらに技術的進歩が、
 ついにはそれら器官を、ヒトの体内に取り込む事に成功する。

 『戦士』の誕生である。

 ただ、その戦士能力(遺伝子)は全ての人間が手に入れられるものではなく、
 当時、一億人の人口に対して一人というのが限界であった。
 戦士の当時の呼称は、『ネオ・エイジ』であり、
 戦士という呼び名が定着するのは、もっと先の話になる。

 人の限界を大きく超えた、それらネオ・エイジたちは、
 自らを直接、星の船のライトフォース発生器官と
 リンクすることが可能であった為、
 船乗りとして非常に重宝された。

 彼ら、ネオ・エイジたちの活躍により、広大なる銀河地図も
 少しづつではあるが、着々と完成させられていく。
 と、同時にそれはまた危険な賭けでもあった。

 いつ、外宇宙の敵と接触するかという可能性を秘めていたからだ。
 故に、ネオ・エイジたちはその叡智を結集させ、
 ついには、銀河の大いなる謎である
 ダークフォースの秘密を知るに至る。

 そのあまりの膨大なエネルギーを実体化したら、
 星は、星系ごと消失してしまうのではないかという
 その制御領域外の力に、
 ネオ・エイジたちを含む人類は恐怖を覚えたが、
 それは同時に、外敵という厄災から身を守るという
 究極の手段とも成り得ることから、
 慎重に研究開発が進められ、
 ついにその技術の獲得に成功する。

 ダークフォースリアクター搭載型超大型艦、
 『エクサー01 -改ー』を完成させたのだ。

 エクサー級は、その凄まじいまでの出力で、
 一気に、星の空を駆けることの出来る能力を備えた。
 一度、人類が足を踏み入れた場所には、
 その受け皿となる装置さえ完成させれば、
 一瞬にしてその場に飛べるようになる、
 いわゆるワープ航法を実現させたのだ。

 さらに就役したエクサー級02号艦との連携で、
 お互いを受け皿にしてワープする事にも成功させる。

 以降、第03号艦から、第10号艦までが就役し、
 大銀河の全貌が明らかになるのは、
 もはや目前とさえ言われた。
 この時期から、人はその銀河の名を
 『ゼリオス』と呼称するようになる。

 しかし、科学を魔法と呼べる力に変えるには、
 まだ幾多の試練が待ち構えた。
 エクサー級の不安定さが原因により、
 船ごと星系そのものを失う事故が生じたのである。
 これにより、エクサー級の三隻が失われ、
 人類に進むべく道に、暗い影を落とした。

 エクサー級には更なる改良が加えられ、
 欠番となった、04、06、10号艦も新技術により、
 再び、就役することになる。
 こうして、再び合計十隻となったエクサー級により、
 大銀河ゼリオスは、その姿を次第に明らかにしていった。

 エクサー級同士が張り巡らせたワープ網を使い、
 ギーガ級を数多の遠い星々に送り届け、
 いよいよ人類の、フロンティアへの入植が始まる。

 こうして、銀河ネットワークが形成されていくにつれ、
 ゼリオス銀河とは、
 また別の銀河の存在の可能性が指摘され始めた。

 先の戦いで人類を滅亡の危機へと追いやった、
 その『敵』(前回の敵は『ソーサラー級』と命名されている。)と
 一度も遭遇しなかったことである。

 エクサー級は、建造に莫大な費用と労力と時間を必要とする為、
 以降の第11号艦から第20号艦は、
 いまだロールアウトされてはいなかった。

 そうして、最も銀河の端へと達していた
 エクサー級第05号艦が、ついにその敵と接触する。

 敵はやはり別の銀河から現れていることが判明し、
 第05号艦は独自の判断で、
 その銀河ネットワークを切断し、孤立した。
 連結状態を維持していれば、
 敵にそれが利用されるという判断である。

 こうして、エクサー級第05号艦隊と、
 未知なる敵、『ウィザード級』との戦闘が開始される。
 今回の敵は複数で、ウィザード級一匹を数十匹のソーサラー級が
 取り巻いているという構成であった。

 共和国は他のエクサー級を全艦救援に向かわせる計画を立てたが、
 当時、共和国でナンバー1のネオ・エイジである、
 『アリスアリサ』が、
 エクサー級第05号艦のその想い尊重し、
 その計画自体を白紙にさせた。

 彼女こそ、エクサー級第01号艦専属のネオ・エイジであり、
 その銀河ネットワークの中心にいる存在だった。
 当人は隠していたが、
 彼女にはダークフォースを
 制御できる能力が発現しており、
 当時、戦士レベル換算20~30の時代に、
 彼女のレベルは289にまで達していた。

 つまり、彼女は単身で、
 接敵したウィザード級を駆逐出来るほどの能力を持つ
 真の意味での『戦士』と呼称するに相応しい存在であった。

 第05号艦隊は単独で敵との決戦に挑み、
 結果、その戦いに勝利する。
 艦隊の損害は甚大であることが予想されたが、
 戦闘集結までに、完全に銀河ネットワークから外れてしまった為、
 共和国から分離された第05艦隊の生き残りは、
 共和国からの一切の支援すら受けられない状態にあった。

 そのエクサー級第05号艦隊の専属ネオ・エイジは、
 アリスアリサの実の弟であった。
 アリスアリサは、その表情を一つとして変えることはなかったが、
 誰もいない場所にいる時には、
 ある一定の方向の夜空を見上げていたという。

 時は流れ、エクサー級超大型艦が第20号艦まで就役する頃になると、
 アリスアリサを中心とするネオ・エイジのグループが、
 極秘である計画を進めていることが判明した。
 弟の犠牲もこの計画の一端であったとされ、
 アリスアリサは他のネオ・エイジたちの説得を拒絶し、
 愛する弟まで失う覚悟で、その計画の青図面を描いていた。

 その計画は、
 後に『S・A・R・V・A(サーヴァ)』計画と呼ばれる事になる。

 共和国は結束することで、その世界を守ろうとしていたが、
 ダークフォースの力に目覚めた彼女、アリスアリサは、
 銀河の向こう側にいる真の敵には、
 その方法では勝ち目がないという事を強く悟る。

 進化には時間が必要だった。
 誰もが、自分と同じ能力を手に入れるには、
 途方もない時間がかかるであろうと。
 仮に、もし現存のネオ・エイジ全員が自分のクラスに達しても
 それでも、ゼリオス銀河を守り抜くには
 あまりに脆弱であると彼女は知っていた。

 故に、人類は何としても生き残る必要があった。
 相手が強力なまでの魔法使いである以上、
 こちらも、それ相応の科学の魔法を持たなければ太刀打ち出来ない。

 アリスアリサはその計画を『千兆の希望』と呼んだ。
 ゼリオス銀河にヒトが在り続ける限り、
 奇跡は起こせると。
 ゼリオス銀河には大小、一千兆個の星々があるとされており、
 その、どの星たちもが、希望に成りえる光なのだと。

 アリスアリサの完璧なまでに描かれた
 その青図面を見せられた時、
 共和国はその予想だにしない広大な計画を、
 受け入れざるを得ないと納得した。

 こうして、銀河ネットワークは
 共和国の意思によって崩壊し、
 各エクサー級を軸としたフロンティアも、それぞれに孤立した。

 これは、人類という種が根絶やしにされない為の、
 ただの時間稼ぎ。

 アリスアリサは、その全てを人類の為に捧げ、
 人であって、ヒトでない。
 現在のエクサーの、
 その雛形ともいえる形に姿を変え、
 自らを、テラ太陽系と一体化し、
 無にして有、
 人々を守る見えない盾となり、
 無限ともいえる時の中で、
 時間の牢獄に、美しく、可憐なその身を捧げながら、
 サーヴァ計画を実行していく。

 人にとって、彼女の存在は希望であり、まさしく神そのものと言えた。

 アリスアリサはその瞳で、世代を重ねていく人類を見つめながら、
 その人の温度に触れることも出来ない自分の、
 その選択を、一度として後悔などしたことはなかった。

 こうして、人の記憶の中から、アリスアリサの名も
 次第に消えていく。

 アリスアリサは、それで十分であった。
 何かの犠牲の上に、今、自分が立っているという思いを、
 愛する星々の子らに感じて欲しくはなかったのだから。

 これ以後の人類は、
 どこでどの星系が侵略を受け、
 どう興亡の歴史を積み重ねていったのかは
 定かではない。

 ただ、
 その結果として、
 人類は『戦士』と呼ぶに相応しい能力に次々と目覚め、
 ゼリオス銀河の至る場所に、
 サーヴァと名づけられた生存圏を獲得した。

 こうして、人類は魔法とも呼べる
 ライトフォースや、
 ダークフォースという、禁忌の力すら
 その手中に収めるのである。

 星々の中で生まれてゆく光を
 アリスアリサは今でも感じ続け、
 そして、人類の進むべき場所が、
 希望という明かりで灯されている事を、
 願い続けているのだろう。


 アリスアリサの心は、
 他の誰よりもピュアで、
 その姿は、
 他の何者よりも美しい。

   - サーヴァ1725
     エルザーディアの記憶より抜粋 -

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ある少女の物語 I(仮題 ※7.19 微修正)((誤字など修正がまだです💦))

2019年07月12日 15時13分39秒 | 書き物置き(自分が確認する程度です💦)

 これは、ある中世期の時代の、何処にでもあるような、
そんな戦禍の中の語られることも無い、小さな戦いの記憶。
多くの人々は生きる事に必死に戦い、その日も逃げ出す者たちの影があった。

土まみれの服の男「ひ、ひぃ!!」

 人目を避けた獣道で、盗賊らしき一団に待ち伏せを受け、襲われる村人達。
近くで起こった戦を避けるように、街道から離れた抜け道を通る一行を、
目を付けていた盗賊たちが、前後から抜け目なく取り囲む。

 盗賊たちは倒れた兵士の装備を奪い、強力に武装している。
これでは彼らの数倍といる村人たちとて、ただ散り散りに逃げ惑うしかない……。

 ザシュッ!!!

老人「グハッ!!
……早く、逃げるのじゃ!!!」

 勇敢な老人はその盗賊の一人にしがみつき、
他の者らを逃がそうと抵抗した。
しかし老人の抵抗など空しく、次のひと突きで絶命すると、
他の盗賊らによって、若い村人や娘たちは奴隷商に売り払われる商品のように、
キツくロープで縛り付けられ、その数は村人の亡骸と同じように増えていく。

 その光景(サマ)を一人にやにやと見つめる、仕立ての良い服の肥えた男。
こいつが盗賊を雇って仕掛けた張本人であることは、間違いないようだ。

 半刻とせずに彼らの蛮行は終わり、
その奴隷商らしき肥えた男は、金を弾むから手出しをするなよ、
と言ったかんじで捉えられた村娘たちを、下心丸出しの表情でニヤニヤと値踏みをする。

 その光景は、しばらく続くが盗賊たちも見せつけられると、
いくら金を弾むとはいえ、欲も出る。
が、その彼らに鋭い眼光を放つ、奴隷商の護衛の腕利きの傭兵。
護衛は一人だが、盗賊たちの腕で傭兵とやり合えば、
殺れたとしても、おそらくその半数は命を落とすだろう。

 その掛け合いの間、傭兵は気が付いていたが、
一人の老人の亡骸のローブに隠れる、一人の少女がいた。
容姿は村娘にしては端正な顔立ちだが、女としてみるにはまだ幼い。
無論、奴隷商がこの少女に気付いていれば、
他の村娘たちに固執などせず、真っ先に己の奴隷としただろう。

 傭兵には戦士として仕込まれ、送り出された戦場で致命傷を負った際、
教団のプリエステス(女僧侶)に癒やしの奇跡で命を救われた事がある。
少女は、その教団の衣を纏っていたのだ。

 傭兵は盗賊たちのそのちっぽけな忍耐が保たれている間に、
戦場を知らない愚かな主人に、さっさと仕事をして欲しかった。
武装はそれなりでも寄り集まっただけの盗賊程度、
怒り狂って武器をとった村人たちに比べれば雑魚に過ぎない。

 正直、襲撃前に遺体として転がる彼らにそういう期待も少しはしていた。
そうなれば、襲撃が失敗に終わったとしても、約束の金で母親への薬代は稼げた。
苦虫を噛みつぶしたような顔で、見慣れた戦場の光景を見つめる傭兵。
だが、次第に統率されていない欲深き獣たちの目に、
目の前の獲物を真っ先に奪うという渇望が湧き上がるのは、
傭兵の懸念が現実になるのを確信させる……。

 暴走すれば、奴隷としてさえ生き延びるチャンスを失い、
元の身分に戻る機会さえ残された村人たちは絶たれる。
さらにいえば、村娘たちは最悪の結末を迎えるだろう事は、
幼なじみがそうなった事で、兵士になる道を選んだ彼の逆鱗に触れる事だ。

 シュン! シュ、シュンッ!!!

 数閃の剣風で、盗賊たち数人の首が宙を舞う……。
彼らは瞬く間に我に返り、眼前の獅子に対してその生存本能が武器を取らせる。
 こうして、傭兵はその狩る者の眼光で盗賊たちを凍り付かせる。
これには、傭兵なりの思惑もあったが、予想以上に彼らは怯んでくれる……。

 この間、捕まった村人たちは仲間割れという状況の最中、
事に先んじて、傭兵が音も立てず彼らの足下に投げた一本の投刃を使い、
バレぬように協力しあって、憎らしいの拘束を解き始める。

 盗賊たちの中にも、そんな村人の行動に気が付いた者は一部いたが、
彼らが逃げても夜目に長けた賊は、再度彼らを捕らえる自信はある。
それに一部の者だけでやり遂げた方が、旨みが大きい。

 そんな中、他の盗賊たちの注意を逸らすように、
小賢しくその者たちが真っ先に望み及んだのは、
肥えて醜い雇い主に脅しをかけ、他の賊たちの混乱を煽る事だった。 

盗賊「き、貴様、主人がどうなってもいいのかッ!!」

 首に短剣を突きつけられた愚かな奴隷商は、その顔から一気に血の気が引いた。
こいつには、街での商才はあっても商人として必要な勘が備わってはいないようだ。

 もくろみ通りに事が流れ、残された村人たちにチャンスを与えた傭兵は、
フフッと口元を緩めニヤリと笑みを浮かべ、間髪入れずに大声で盗賊たちにこう放つ!!

 間を置くことなく、傭兵は盗賊たちにこう放った!!

傭兵「そんな肥えた豚になど情けはない、
さっさとやりたいようにやればいい。」

奴隷商「倍払う、いや十倍だッ!!
頼む、助けてくれッ!!!」

 混乱する盗賊たちに傭兵は弓を取り、
一撃のもとにその肥えた豚の心臓を正確に射貫いた。

 その技量は、選りすぐられた弓兵にも引けを取らない、
盗賊たちには見たことさえない、鋭い強弓であった。

 そんな矢の的になっては、拾った鉄鎧などただの紙切れだ、
これには慌てて、盗賊たちは素早く鎧の留め具を切り剥がし、
身軽になって構え、たった一人の傭兵に対した。

 数では傭兵に勝てる自信がある。
己さえ生き延びればいい、それに分け前が多い事に超したことはない。
彼らは仲間ではなく、互いが踏み台同士だ。

 それが盗賊の強みであり、またしつこさであった。
 傭兵にしても、一斉にかかられては剣は避けられても、
不規則に放たれるやっかいな矢の全てを見切る自信などない。

 ヤツらは、全員が捨て駒。
これまで何度となく経験した戦場の、味方を避けて敵を射る弓と違い、
その軌道はもう手当たり次第で、仲間ごと傭兵に放ってくる無茶苦茶なものだ。

 足音を立てず村人たちが散って逃げ行く様を伺っていた傭兵は、
長弓に数本の矢をつがえ、こうして盗賊たちとの戦端を開いた。

 けたたましく響く金属音!
傭兵のロングソードが火花を散らして、剣もろとも盗賊たちを叩き斬るッ!!

 盗賊たちは剣に手槍にと無数の刃を繰り出すが、
傭兵のロングソードの刃を欠けさせる事は出来ても、
軽く短めの鉄の剣は、重い鋼鉄のロングソードに叩き折られるか弾き落とされ、
手槍に至っては、突いては枝のように切り落とされ、
また奪われ、投げ槍として盗賊たちの身体を貫いた!

 巧みな剣さばきで、片手で重い鋼鉄のつるぎを、
演舞のように回して振るう傭兵に、盗賊たちはその足を止められる。

 後方から一斉に射られた矢も、盗賊らの数人を射貫いても、
傭兵のもう片方の手に握られた彼らが落とした軽い剣で、容易く弾かれてしまう。

 一進一退の攻防に盗賊たちは怯みもしたが、強さがかけ離れているとはいえ、
確実に傭兵には、少しずつではあるがその身にダメージを負わせて行った。
全員が捨て駒である彼らは、仲間ではなく目的が同じなだけの、
狡猾ながら単純で、犠牲を苦としない、私利私欲の集団だ。

 彼らに頭目がいれば、奴隷商の残した金品で傭兵とも話が付いただろう。
つまりは盗賊と言ってもはぐれ者も集団で、これまで傭兵が何度も見てきた、
戦場跡の物取りたちが大半だ。

 盗賊の頭からも見放され、群れて盗みを続ける彼らのような者たちは、
敗戦した領主の土地や辺境には、無数といるならず者だ。
その身一つが財産ならば、守るべきものはただ我が身と、
享楽を与えてくれる金品などの富だ。

 一度でも甘い汁の味を知った者たちは、その欲望に正直で、
野蛮にも拍車をかけて、強者に数で向かっていく……。

 根拠の薄い自信で勢い良く襲いかかる盗賊たちの中、
まぐれの一撃が傭兵に届いた! 

 クッ!!

 傭兵の脇腹を盗賊のスリングが撃つと、
彼が膝を落とした所に、流れ矢が右大腿部に突く!
すぐさまその矢を根元で折り、体勢を立て直して盗賊たち応戦する傭兵。

 簡単な作りの石の飛礫でも、額などに当たれば致命傷を負う一撃となる。
訓練された兵士たちなら、槍衾を盾に弓兵を置き、
突撃を止める手練れのスリング兵を槍先の保護で巧みに使い、敵の出鼻を挫く。
烏合の衆の盗賊たちの中の数人が矢は効かないと撃ったのか、
たまたまスリングに長けた者がまぎれていたのか、それは厄介な事だった。

 軌道の読める矢は、訓練された剣技で弾く事が出来ても、
混戦の中、矢に混じる飛礫を避けるほどの技量があれば、
彼はもっと良い雇い口に巡り会えたのだろうが。

使い古された鉄兜に垣間見える彼の素顔は、
その渋い声色とは真逆で、端正な顔立ちの青年だった。

 彼がその若さでその剣の技量を身に付けたのは、
彼の生まれが貧しく、少年時代から剣を握って敗戦国の戦場に立ち、
そして生き残ってきた経験であった。
運が悪いすれば、この時代に彼に情が深く、また良い師と出会えなかった事だろう。

 ザッ! シュン!! ギギ……、ズシュンッ!!!

 彼の剣の刃がこぼれる頃には賊たちもその数を半減させていたが、
常に視線の先に入れていたあの少女はどうやら上手く逃げ延びたようで、
重たく感じる剣を、そう悟られずに構え直して盗賊を狩る鬼のように、
彼らと対峙する。

 彼がもし何かに油断したとしたら、
それは少女を逃がせたという、その安心感だろう。
彼に味方がいれば、その痛々しい傷跡からじわじわと彼を削る出血に、
もう退く事を願ったろう……。

 残ったハイエナたちは、その事が最もわかる、
弱くても群れ、何人倒れようが我が身を守って生きていればいい、
そういう狡猾で愚からしいやり方で長らえた者たちだろう。

 彼の傷では、すぐに処置しなければ一日と持たないだろう。
気迫だけで立ち向かっている彼に、どれほど実力で劣ろうとも、
あと一押しとなれば、賊にとって甘い誘惑である、
あちこちに散らばる、奴隷商の金銀や宝玉を懐に得られる。

 刹那、油断した盗賊の尖兵の首を傭兵の剣がいくつか飛ばすッ!!

傭兵「さっさと飛び込んで来いよ、
オレはいつになくこのクソ重てぇ甲冑を、これほど軽く感じた事はねぇんだ……。
フッフッフッ……、余計な言葉を吐くよりも、もっとお前らを狩るべきだったな。」

 彼の生存本能がそうさせたのか、彼の筋肉は熱い鉄のように色付いて盛りあがり、
その速さがそれまでと比較にならない!!!
それはまるで、飢えた猛禽の動きだ。

 まれに戦場に現わると云う狂戦士……。
その言葉を思い浮かばせるに十分な様相で、彼は一歩、一歩とその距離を詰めて来る。

盗賊たち「ヒ、ヒィッ!!!」

 飛礫も矢も全て受けながら、狂戦士は突進を止めないッ!!
そのほとんどを素早さでかわしてはいるが、受けた傷はもう見るに哀れなほどだ。
敵の武器を奪い、両手で閃撃を繰り出し武器が潰れてもその通り道でまた掴む。

 これで体勢は決した。
逃げ出す盗賊たちを彼は一人として逃さない、
彼らを生かす事は、あの癒やしの衣を纏った少女への危機に直結する。
命乞いも言い訳もいらない、彼らの言葉に騙された者たちは、
後に執拗な報復を受ける、それを彼は幾度も目にした。

 こうして残党を狩り尽くした彼は、
両手でボロボロの剣を地面に突き立て、そのまま動きを止めた。
彼の姿は以前のものに戻り、その傷ついた身体のあちこちからは鮮血が染み出す……。
壮絶な最期だったといってもいいかもしれない。
彼の蒼い瞳に生気はなく、立ったまま絶命しているようだ……。

 その姿を、逃げることなく茂みの中で見つめていた衣を纏う少女。
彼女は教団の見習いでもなければ、癒やしの奇跡も使えはしない、
ただ、生きるために法衣を手に入れなりすましていただけ。

 この時代、富や権力の庇護も無く生きるというのは、
男女を問わずきびしい時代だった。
善王で知られる南の剣王領ならば、精鋭の兵士たちに治安は保たれ、
何処よりも生きるに楽ではあるが、辺境の検問を通るには袖の下がいる。
中央に行くほど剣士たちは王に忠実で民を案じてはいるが、
それだけに流民する民から搾取しようとする地方官は兵士出身ではなく、
剣王の説く『民の為の剣であれ』の清い精神などカケラも無い、私利私欲の虫だ。

 そんな場所に身体一つで少女が通ろうなど思うなら、相応の財か対価がいる。
少女は数々の噂から真実を見分ける才に長け、どうせ行くならば、
生きていくのに偽善を振る舞っていけば良い、西の法王領を目指していた。

 少女はこの数多の亡骸が転がるこの惨状も見慣れたものという感じで、
ただ周囲の様子を伺い、これらに群がる盗人の気配がないかを、
注意深く観察して、命を賭して彼女を守った傭兵の青年だけには、
少なからずの感謝と、哀れさを胸に抱いていた……。

 癒やしの奇跡を持つプリエステスの見習いでもなければ、
高価な傷薬など持ち合わせのない無力な少女。
彼に唯一してあげられる事があるとすれば、無事に生き延び、
彼の勇姿の生き証人となることだけだと少女は悟る。

 恐ろしく知恵の回るこの少女の正体は、後に大陸全土に影響を与える、
偉大にして冷淡な孤高の知恵者とだけ、今は語っておこう。
彼女は決して冷たいわけでは無く、生き延びるための最善の策を取る過程で、
そうするしかなかった。彼女がもし感情的に動いていたら、
きっと、この彼女の英雄を無駄死にさせただけになる。

 少女は賢く何よりプライドが高いが、その奥底に慈愛を押し込め、
無力な自分が生き延びる術を必死に探していた。
年の割に考えは大人びて、力が無ければ何も出来ないという、
世の中の常を冷静に理解し、何か人々に助力出来ることがあれば、
その知恵を貸していたが、
村の大人たちは素直に小娘の意見に耳を貸すほど、大人ではなかった。
少女は小径から繋がる獣道には、
獣より危険な何かがあることを警告はしたのだ。

 ……結果、未来ある青年剣士の命を散らすことになった事を、
天の無慈悲さを痛みに感じつつ、心を込めて彼の事を祈った。
偽物でも、彼女を僧侶見習いと信じた彼に出来る、唯一の事だった。

 少女はしばらくその場に留まって、辺りの様子を伺っていたが、
どうやら人が通る気配は今のところない。奴隷商の持っていた望遠鏡が、
どういう目的で使われていたかは想像に容易かったが、
感情の起伏の少ない彼女は、抵抗なく便利に使いこなし、
日が暮れるまでに立ち去るのは分が悪いと感じた。
何処まで続くか分からない夜道を、獣たちに襲われるリスクで進むより、
物取りたちが来たとしても、目のくらんだそれらの方が危険を避けるには容易い。

 少女は簡易に小盾と木を使ってシャベルにすると、
周囲に気を付けつつ穴を掘り出した。せめて出来ることはやる、
それが彼女のルールだった。
その身を賭けて戦った彼へ十分な事はしてやれなかったが、
せめて彼を安眠をさせる場所を、なるだけ花の多く咲くところに作ってあげたかった。

 少女は音も立てずに、自身がすっぽり隠れてしまうほどの穴を、
数刻かけて掘り上げてしまう。
計ったように長方形に掘られたその場所の床を埋め尽くす花を探す為、
森の奥に入ると、突然、少女の後ろから得体の知れない煌めきが、
眩しくその少女の美しい全身を照らし上げた……。

少女(光魔法!? いつ、いやそんな事はいいッ!
早く対応しなければ、私はたやすく狩られるッ!!!)

少女は為す術無く振り返ると、そこには幻想世界が広がっていた……。
天空から光が大地へとおり、そのまばゆいばかりの聖なる光の中心に、
まるで絵画に描かれたように美しい、一人の戦乙女がいたのだ。

 触れる事さえ自分にはおこがましいと思わせる、
そんな……至上のヴァルキリア。
少女は草陰に隠れるように身を隠し、その隙間から美しき天使を見つめた。
視線を逸らす事が出来ないほどに、少女は魅了される。

 淡く涼やかなグリーンの髪をたおやかに風に揺らす、
女神のように端正に整った顔は優しげで、何処か寂しそうな表情の乙女。
その彼女は立ったまま絶命している若き傭兵にこう言ったのだ……。

戦乙女「よく戦いましたね。
戦場にだけ勇者がいるわけでは無いと、私はそう思い知らされます。

 ……家族が心配なのですね、それは私が庇護しましょう。
だから今は安らかにお休みなさい。
この私が、貴方を再び大地に立たせる日が来る事を約束します。
そう、この私、『ジラ』の名において……。」

 その言葉と共に光は瞬く間に消え去り、
傷付き立ち尽くしたままの彼の姿も、共にその場から消え去った。

 少女はしばらく呆けたように、状況が理解できないまま固まっていた。
彼女にとってその瞬間は、まさに生まれて初めて、
『心』を揺り動かされた幻想の光景だった。

 少女が我に還った頃には、辺りはすっかり闇に包まれていた。
だが不思議なことに、獣の声一つしない静寂さが辺りにはまだ漂っている。
ジラと名乗った彼女の残したヴェールが、獣たちを静めたのだと少女は感じた。
そこにいなくても、非力な少女を守るだけの喩えようもない『力』が、
彼女を何故かとても安心させた。

 ……その後、少女は松明に火を灯して、
倒れた者たち全てを分け隔て無く、埋葬して祈りを捧げた。
その行為は数日に及んだが、この獣道を通る者たちも、
彼女のその行いには心洗われたし、少ない食料を分けてあげる事はあっても、
邪魔をしたりする者は一人として現れはしなかった。

 また、彼女を手伝おうとする者には、
柔らかな言葉で彼女はその気持ちだけを戴くことにして、
一人で昼夜問わず、花まで手向けて倒れた者たちを送り続けた。

 数日の内にその彼女の行いは、別の場所へと難を逃れた村民たちの間で広がり、
逃げ出した村人も動ける者たちは、先んじて彼女の元へと集まり、
噂を聞き付けた他の者たちまでもが、興味本位で集まり始めると、
ついには聖女様とまで讃え始めた。

 彼女はただ自分のルールに淡々と準じただけで、
特に何かを当てにして、善意を行っていたわけではなく、
やると決めたという、ただそれだけの理由だけで十分に、
その身に疲労が残るような事もなかった。

 ささやく祈りも適当で、何より洗礼も教えも受けていない彼女が、
手向けの祈りなど出来るわけはなかったが、その誠意だけは人々に伝わった。
それがたまたま褒められただけで、特に期待も何もしていないのだが、
褒められることは、それなりに心地の良い言葉には聞こえた。

 参じた村人たちが何をしていたかと言えば、
草木の生い茂るこの道を、少しずつ道として利用出来るようにし、
いつでもこの場所に祈りを捧げられるようにして、
聖女に見えた少女に、少しでも良い道を歩んで欲しいという、
そんな事がやる気へと繋がり、他の辺境の町や村からも、
噂を聞き付けた人々が集まり、彼らに協力した事で、
少女としては、事を成し終えているにも関わらず、
もうしばらく留まっていて欲しいと請われて、言われるままに付き合った。

 そもそも少女は、あの戦と慈愛の女神『ジラ』の影響が、
これほどの人を惹き付けたとだけしか思ってはいなかったし、
時には彼らに教えを請われても、資格の無い身でいい加減な事は語らなかった。

 その分不相応のプライドの高さが、彼女をより神聖視させた。
この聖女様は、他の聖女様と違って軽はずみで救いの言葉は言わないし、
教えを押しつけてくる事もない。
ただ、どうすれば良いかという問いを投げかけると、
適切でとてもわかりやすい答えを返してくるのだ。

 辺境の地まで教団の、ましてプリエステスが、
慈悲を施しに来る事は滅多にないというか、
いつもなら教会にまで赴き、包みを渡してして、
はじめて意見が聞けるというのが、それまでの常識であった。

 彼女のやっている行為は、教団の利益に反するだろうとは、
彼女自身、良く理解はしていて、適度にこっそりと置かれる包みは、
その身を守る為にも、多少は受け取る事にした。
正直、その日の食事さえあればあとはどうでも良かったのか、
困った者たちを察すると、その柔らかな唇に人差し指を押し当てて、
さりげなく横流しして、荷物にならないようにした。

 少女は大事になる前に、集まった者たちに書き置きだけ残して、
月明かりの少ない新月の夜に、その場を立ち去った。

 残されたメモには、彼らでも十分に利用出来る生き残る術が幾つか記され、
いつの間に周辺を探索したのかと思わせるほどの、
数多くの畑に使える土地や、水源となる泉など、
つまりは、隠里を作るために必要な知識が数枚のページに記されていた。

 これはとても価値のある情報で、危機に巻き込まれても、
災いが過ぎるまで無事でいられるという、貴重な贈り物であった。

 その後、法衣の少女はまた幾月かの時を経て、
こことは違う西方に姿を現す事になる。


 後に、多くの者たちからその少女は、
尊敬と畏怖の念を込めてこう呼ばれる事になる。
『女教皇アセリエス』と……。
コメント
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ー 序 ー (書いてみただけで、すいません^^:)

2019年06月16日 20時07分10秒 | 書き物置き(自分が確認する程度です💦)

   - 序 -

 そこは、ただ圧倒的なまでの光に満たされていた……。

 様々な彩りの光、
暖かく柔らかな抱擁のような、
羽根のように包み込む光や、安らげる陽光など、
知っている光もあれば、知らない光も、
全てが溢れそうなくらい、
そう、まるで光の海……。

 不快さなど微塵も無く、ただ、その居心地の良さと、
例え大きく瞳を見開いたとしても、決して眩しいというわけではなく、
夢だという一言で片付けられない、言葉には表わせないものだった。

 そうして呑まれていく自分が光の海の中、
意識という境界線は、まるで柔らかに包まれるように曖昧になり、
とても素晴らしい夢の中にいるような、
幻想的で優しさと温もりに溢れる感覚だけが、
永遠に続くような揺りかごに、その身を任せたくなる……。

 そんな中、光の泉と呼ぶべき世界に、
異端な一筋の小さな陰が現われる。
陰が大きく尾を引くと思いきや、それさえも光が包み、
一点の陰として人型を形取った。

 と、その陰の主がややクセのある声の男が、
この光の渦の中心に向かってこう発する。

陰の主「この私などに、何か御用ですか?
我らが盟主様。」

 自己を強く意識したように聞こえた、その男の声。
それは不遜にさえ感じられる、彼のその表情が想像にたやすかった。

 僅かな間を置いて、陰の声に反応したように、
光の世界は変化を見せる。

 大きな泉が噴くかのように、光の柱が立ち上り、
それは七つの虹の光彩が音を奏でるように混ざり合い、
より白く強く煌めいた。

 まさに言葉では表現しようのない、そうとしか言い様がない、
心を奪うほどに強烈に惹き付けて美しい、
光輝の起こした奇跡と呼ぶべき、一人の清楚で可憐な乙女が姿を現わす……。

 ただ圧倒されていては、これはもう呑まれ消えるしかない、
というしかないほどに、あまりにも尊く輝ける光の乙女に、
声を失うどころか、存在まで消えてしまいそうな、
無力な自分がいるのにとっさに気付くと、何とかこの幻想の中に留まれはした。

 と刹那に私とはなんなのだろう?と、
その疑問を抱いた思考は瞬きの内に溶かされ、ただ傍観する事のみが許された気がした。

 この時、自由に意思を持つことを許されるのは、
もっと遠い未来の事だと、まだ地上に生を受けていない、
光の潮流のただ中にいる私は、後にそれを知る事なる。

光輝の乙女「ここにあなたと私以外にも、
もう一つの意思がある事を、すでにお気付きでしょうか?
 …イ…ス…卿。」

 その名こそハッキリと聞き取れなかったが、
卿と呼ばれた陰の主は、即座に光輝の乙女にこう答える。

謎の男「!? おっ! おおぅ!!
……気付きませんが、正直どうでもいいことでありますっ!!

 私などにとって、御身に触れ……もとい、
邂逅(出会い)のチャンスが与えられた事に、夜空に輝く星々の数ほどの感謝こそあれ、
他のことなど、ホントどうでもいいです。

 もしや、お茶の席にでも招いていただけるのですか……?
ならばジェット! いえワープで礼服にチェンジして参りますぞッ。」

光輝の乙女「うふふっ……、
ではいずれそのような席を設けさせていただきますね。
さて、では本題をよろしいですか?

 このゼリオスの空はあまりにも広大で、
その全体を把握する事は容易ではありません。
私はその無力を感じながらも、無限とも思える
この空の地図を埋めなければなりません。

 ……そのさらに先にある強大な脅威に対抗するには、
この世界の可能性を信じ、さらに無数の可能性を開花させる事は、
何よりこの私の願うことです。
卿も周知の事でありますが、あえて、もう一度言わなければなりません。」

謎の男「……なるほど、
つまりはその原石を見出されたという事でしょうか。」

光輝の乙女「である事を期待し、望みはしますが、
はたしてかの大覇王が、優美で強きかの姉上を持たずに、
その場に立てたでしょうか?

 導き手がいてこそ、範を示すものがあってこそ、
大きく咲く花のように思えてならないのは、単なる杞憂で済ませてよいのか、
それを見識に秀でる卿に問いたかったというのがお呼びした理由です。」

 そっと瞳を閉じる光輝の女神。
すると僅かな間を置いて、陰の主を包み混むように光の円柱が次々と沸き立ち、
その光景は、神の祝福と言うほか例えようもない無限の光彩で、
男のシルエットを露わに描き出す。

謎の男「おぉ!! これはミルザ殿の時に見たことのある、
奇跡の祝福ッ!!! ……ついに私も何かの域に達したという事ですか!?」

 鮮やかに描き出されるその男の姿は、神の遣わした英雄のような神々しさがあった。
鮮明に見えた彼のその素顔を、この時、何故か記憶に留められない。
それは、誰もが経験した事の無い、未知の感覚だろう。
鮮やかに魅せる英雄像を、目をそらしただけで失いそうな不思議な感覚……。
まるで、夢の一部のよう。

英雄っぽく見える男「ぜひ、鏡に我が身を映したいものですが、
この福音だけでも感謝感激なのです。

 これ以上の欲は申しませんが、何の奇跡がこの身に付与されたかだけ、
ちょっぴりヒントをいただければぁ!!!」

光輝の女神「はい、答えましょうっ。
それは、私と遙か遠くに位置する場所へと誘うテレポーター(転移装置)です~、
しばらく、うーんと数千万年? 逢えなくともきっと心で通じていると、
そう信じますっ!!」

謎の男「わ、ワナでしたかぁーーーーーーーッ!!!」

 その叫びが残響となるが、収束する光の柱に封じ込められる様に、
男ごと光の柱も何事もなかったかのように消える。

 刹那、光輝の乙女が笑みを浮かべながら、こちらの方を向く!!

光輝の乙女「そんなに怖がらなくても良いですよ、
私は特にあなたに何かが出来るというわけでもないのですから。」

 柔らかなソプラノの声を紡いだ彼女は、
微笑むように優しい表情で、こちらをただ怖がらせないように、
光の絨毯から浮き出てきた極彩色の椅子に腰をかける。

 すると光の世界は緩やかに消え行き、そして私自身の意識も消える……。

 最後に残った記憶も、この後消えてしまうだろうが、
なんとも慈愛に満ちた表情で、こちらを見つめた光輝の乙女は、
我が子を見送る母親のような、そんな安息感をこの心に届けてくれた。


   - 命の潮流の中、生まれ行く子らを見守り続ける
               永遠のアリスのシーンより抜粋 -
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