『ダークフォース』(DF)とか、 あとは読み物、落書き、日記などのブログ。

DFなどのブログを始めてみました。

小説というより、かなりテキスト寄りです。
更新遅めですが、よろしくです。^^

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今日の日記 6・25

2010年06月25日 20時51分46秒 | 日記
エスト「こんばんは、
 『美少女』枠から漏れても、
 一生懸命に今を生きている、
 エストと申します。」

エスト「はじめまして、の方にも
 この場をかりて、まずは自己紹介を。」


・長く、柔らかで、ツバキの力を感じる艶やかな緑の髪。
・桜色の頬に、淡い清水のような瞳がパチりと輝く。
・自称、16歳。
・前作では、超ヒロイン級の扱いだった。
・少し、ヒアルロン酸を失いつつある。

エスト「・・・。」

エスト「・・・多くのものを失っているのが、
 自分で言ってて、悲しいですネ。
 フフッ・・・。」

エスト「ちなみに、先日、
 愛しい王子さまに、告白をかねて、
 夜這いをしかけたのですが、
 ヒゲのお父さんに、返り討ちにあいました。」

エスト「・・・。
 懲りずに、また頑張ってみたいと思います。
 シャバと牢獄を隔てる、
 あの塀を越えるような気持ちで。」

エスト「・・・。
 現在、ヒゲパパに、
 説教部屋へとぶち込まれています。
 算数ドリルを100冊解くと、
 地上へと開放される、『ドリルの刑』です。」

エスト「謎解きはあまり得意ではないのですが、
 頑張って、問題を解いてみたいと思います。
 ヘアピン一本で、部屋の鍵や、宝箱を開ける、
 シーフ並のテクは持っているのですが、
 アホな娘と思われている上、
 バカな娘だと思われたくはありませんので、
 この小学三年生の算数ドリルの全ての謎を、
 解き明かしてやろうと、そう思います。」

エスト「・・・。
 せめて、六年生の問題なら、
 カギ開けのテクを見せてもよかったのですが、
 私の知力をなめているのか、
 小3のドリルを前に、逃げ出すわけにはいきません。
 ちなみに私の知力ならば、
 小5のドリルでも楽勝なはずです。」

エスト「では、今日の日記。」


今日は、算数の問題を解いています。

部屋の隙間から差し入れられた朝食は、
『ド根性パンケーキ』と、『ダブル厚焼きタマゴ』です。

体力+20の効果です。

どうせなら、
知力アップの食事がいいなと思いつつも、
美味しくいただきました。

昼食は、イナリ寿司(ガリ付き)です。
緑茶と一緒にいただきました。

イナリ寿司も好きですが、
おにぎりも好きです。

解いた問題用紙の裏に、
『おにぎり』の絵を描いて、
部屋の隙間に差し入れました。

おかかと、鮭と、昆布の絵です。

違いの分かるヤツの手に渡ることを、
期待しています。

夕食は、とり飯のおにぎりが来ました。
おにぎり四個に、たくあん三枚です。

期待とは違っていましたが、
たくあんを一枚多く、
タッパに入れてくれていたことに、
細やかな心遣いは感じました。

明日の朝食を期待しつつ、
今日は、ぐっすりと寝たいと思います。

問題は、まだ解けていませんが、
急がば回れ、の精神で、
余裕しゃくしゃくな所を、
看守たちに見せ付けてやろうと思います。

問題終了まで、あと99冊と、29/30ページ。


エスト「・・・。」

エスト「・・・明日は、ちゃんと頑張ります。」



ではでは、おやすみなさい。
      またです~~~。^^
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今日の日記 6・23

2010年06月23日 00時23分34秒 | 日記
こんばんは、井上です。

第三章の降順が気になっていたので、
並び替えをさせていただきました。

新作を投稿したっぽい表示になってて、すいません。^^:

風見さんにコメントを頂いた、オリジナルの第三章・Ⅲは、
日記のカテゴリーの方に移動させていただきました。

記事の並び替えをうまく出来たらよかったのですけど、
操作に不慣れなもので、申し訳ないです。^^:


もう少しで、第三章の中編が幾つかアップ出来そうなので、
その前に記事のソートをしておきたくって。

中編の記事も、出来上がった順で並べていく予定ですので、
まとまった時点で、並び替えさせていただこうかなと思っています。

あと、カテゴリー内で表示出来る記事数を、
5から10へと変更しましたので、
読みやすくなっていればいいなぁ、って思っています。

一からブログというものを始めさせていただいて、
まだまだ、初心者の域を脱せてはいないです。^^:
お手数をおかけして、ほんとすいません。


えっと、DFの話なのですが、
剣王国編が長くなりそうなので、
第三章の続きは、中編・後編にさせていただこうかと思っています。

剣王国編は、やっぱりおっさんくさいです。
ヒゲパパに、ヒゲ師匠ヤマモトに、マイオストと、
平均年齢が上がっていて、
法王国のような色気のある話しが少ないです。
エストもオヤジくさいので、おっさん率は高いです。

早く、ウィルを法王国へと連れて行って、
青春ラブストーリーへと移りたいのですが、
(多少、歪んだ展開の青春ですが。)
まだまだ、おっさんゾーンの最中にいます。

おっさんは、フレッシュさはありませんが、
年輪刻んでいますので、なかなか手ごわいです。

剣王国編は、美少女キャラがいないのも悩みです。

エスト「・・・。」

いないのが、残念です。

エスト「・・・。」


では、今日の日記。

エスト「日記ですか、
 美少女には該当しない私は、
 スルーされるのですか?」

昨日の朝食は、カレーヌードルでした。
カレーは、ヌードルもライスも大好きです。

エスト「ちなみに、私の朝食はモーニングセットAです。
 トーストとコンソメスープに、コーヒーがセットになっています。
 体力つける為に、炭水化物は多めにとります。」

昼食は、チルドのから揚げです。
レンジでチンが、便利です。
少し、アジシオを振ったりして食べてます。

エスト「私の昼食は、おにぎりです。
 体力をつけるのに、おにぎりはベストなフードだと思います。」

夕食は、おばあちゃんの家に出かけて、そこで頂きました。
親戚寄りの、ちょっとした宴会ぽい感じだったので、
ビールを注いだり、注がれたりの食事でした。
大瓶で、二本くらいは飲んでいたと思います。

エスト「私の夕食は、カツ丼です。
 体力をつけ、勝負に出る際には、最適なチョイスだと思います。」


エスト「では、みなさま、
 おやすみなさい。
 私はこれから、冒険の旅に出ます。
 夜は、ウィルハルト様の部屋にも忍び込み易いので。
 ヒゲパパに返り討ちに合わない様に、
 気をつけたいと思います。」

エスト「それでは、みなさま、
 よい夢を。
 私も、夢を叶えたいと思います。
 では、またいつか。」


では、おやすみなさい~~。
  またですーー。^^
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ダークフォース 第三章 Ⅰ

2010年06月23日 00時11分17秒 | ダークフォース 第三章 前編
   Ⅰ

 この世界には、
 『魔王』と呼ばれる存在に、対なすように存在する者がいる。
 人々は、彼の事を人類の希望と呼び、過度の期待を込めてこう呼称する。

  『勇者・アレスティル』と。

 本人の意思など無視して、彼は勝手に英雄に祭り上げられ、そしてその行いは常に称えられた。
 彼はただ、自由に生きたかっただけなのに、人々の視線はそれを許しはしない。
 また、彼にはそれなりの実力もあった。
 アレスティルという名の青年は、ギーガと呼ばれる厄災にたった一人で立ち向かい、助けを乞う人々の為に、手にしたその剣を振るう。
 彼の所持する剣は、名を『聖王剣・エルザード』という。
 その鞘は未知の宝飾で彩られており、それは見る者の誰をも魅了するほどの細工で、その片刃の刀身は、氷よりも冷たく青い光を湛えており、不思議なことにアレスティル以外には、その剣を抜くことは出来ない。
 まさに、『聖剣』と呼ぶに相応しい剣だ。
 だが、その聖剣を手にしていたおかげで、いつの間にか彼の勇名は高まっていき、それにつれて周囲の期待もますます高まっていった。
 アレスティルは正直、この剣のことを疎ましく思ってもいたが、何故かそれを手放すことが躊躇われた。
 こうして聖剣と共に戦いの日々に明け暮れていたアレスティルだったが、人々から頼られては感謝され、そして事が過ぎて平穏が戻ると人々から、アレスティルの存在は忘れ去られ、また困ったときは、思い出したかのように神頼みされてしまうという事を、ごく最近まで繰り返していた。
 アレスティルは人々が言うように、自分がもしこの世界を救えたなら、その時、おそらく自分は不要になるであろうし、また救済した後も新たに起こり得るであろう厄介ごとに巻き込まれていくのだろうな。と思いつつも、その身を常に危険に晒しながら、人々の期待に応える働きをしていた。
 彼自身のことを少し語ると、彼、アレスティルは、色白の金髪碧眼の美男子で、線が細く、長身である。
 ただ、本人は口下手なだけなのだが、その印象はとてもクールで、まるで絵に描いたような美しい勇者像をしている。腰に帯びた聖剣もそれに華を沿え、その存在感は他を圧倒する。
 根が純朴はわりに頭は切れるので、人々の善意も悪意も感じ取った上で、利用されるがまま、ギーガを討伐してきた。
 その名声を高めるにつれ、自然と誰も見たことのない高みを目指させられている自分の背中に気付くアレスティル。それは、彼をさらに辛い戦いへと追い込む試練でもある。
 その時、彼はこう自分に言い聞かせて、自身を納得させていた。
「能力があるのならば、行使すべきである。それが良い結果をもたらしているのであれば、私の行動にも意味があるというもの」、と。
 アレスティルは孤独だった。
 彼には過去の記憶というものがほとんどない。
 気が付いた時には、彼のその手には聖剣があり、どうしてもそれ以前の過去が思い出せないのだ。
 外見もその時からほとんど変わってはいない。五年は経つというのに、外見は16~7歳のままだ。
 アレスティルは何かの呪いでも受けているのだろうと、その事を深く考えもしていなかったが、それよりも悲しいことは、思い出せる人というものが、頭の中に誰一人としていないという事だった。
 私は一体、誰の為に、戦っているのだろう。
 アレスティルは、そんな弱気になる自分の心に言い訳をしては、変わらない日々をただ繰り返していた。
 そう、・・・あの日までは。

 アレスティルがティヴァーテ剣王国を抜け、その北西に位置するセバリオス法王国の領内に入った時、アレスティルは「彼女」と出会った。
 どの国にも同じようなことが言えるのだが、国境付近ともなると都から離れている為に、守備軍の数も少なく、防備は手薄である。
 ノウエル帝の名の下、各国は帝国という形でまとまっている為、逆にその辺りへの軍備の増強は、隣接する国といらぬ緊張を高めることにもなる。
 よって、仮に人の暮す集落にギーガが現れても、その規模によって見捨てられることも決して珍しくはない。
 どの国々も戦力は有限で、まして数人から多くて十数人という小さな生存圏を守る為に、貴重な高レベル戦士や数百、数千の軍隊を、多大なる犠牲を覚悟してまで派遣しようなどとは思わないし、そんなことは第一、都に住む数百万の人々が自分たちの身を守ることを優先して、許さないだろう。派遣しただけ中央は脆くなるのだから。
 実際に、正義感を振り回してギーガ駆除に総動員をかけた国家が、瞬く間にその兵数を打ち減らされ、滅びた例もある。
 大陸最強の名を冠するティヴァーテ剣王国や、それに並び立つ北東の軍事国家・レムローズ王国は、戦士数も兵力も充実している為、独自の対応策でそれに当たっているが、各国がかの大国らのように有り余る兵力を有しているわけではない。
 アレスティルにとって、辺境で人々がギーガの被害にあっているのを目撃するのは、そう珍しいことでもなかったし、むしろ、その性格上、救済を求める人々の方へと吸い寄せられているようなアレスティルであった。
 独自で高い防衛力を誇る都になど彼は興味はなかったし、大勢の人々から英雄様や勇者様だと煽てられて、お守り代わりに長期に渡る滞在を求められるのもあまり好きではなかった。
 故にアレスティルは、こうして流浪の旅を続けながら、水と食料を分けてもらう為に、しばしば人の暮らす集落を訪れていた。
 そして、僅か数件の民家の立つその荒野で、アレスティルは目を疑うような光景に出くわした。
 少女が、・・・たった一人のプリエステス(女僧侶)が、一個大隊をも潰滅させるほどに強力なギーガを複数相手に戦っていた。
 人々を守るようにして、自らを盾としてギーガの強撃を防ぎ、手にしたメイスで襲い掛かるギーガどもを振り払う。
 基本、ギーガは黒い塊のような不安定な存在だが、彼女が相手にしているそれは、獣や人型に近いシルエットをしている。それだけの形状を維持出来ているというだけでも、アレスティルは過去の戦闘経験から、いかにそれらが強敵であるかということを容易に見て取れた。
 アレスティルが聖剣の柄に手をかけ、抜刀の姿勢を見せると、それに気付いた少女はアレスティルに向かって、こう言った。
「お心遣い、感謝します。私は大丈夫です、それよりみなさんを安全な場所に。そして、あなたも早くこの場から離れて下さい。・・・誰も守れなくては、この力に意味はないのですから」
 その言葉に、アレスティルはその蒼い瞳を大きく見開き、言葉を無くした。
 彼女は『戦士』だ。
 それも、とても気高い心を持った。
 アレスティルは迷った。
 彼女の為に、戦いたい。
 しかし、それは彼女の意思に、戦士としての誇りに反することになる。
 アレスティルは、生まれて初めて、自分を守ると言われたことに手が震えた。
 こちらを見て微笑む彼女に、初めて人の温度を感じさせられたような、そんな瞬間だった。
 傷だらけになりながらも、法衣を纏うその栗色の髪をした天使は、微笑みを見せてくれている。
 きっと、いまこの瞬間も、苦しいに違いない。何度となく死線を潜り抜けてきたアレスティルには、それがわかる。
 アレスティルは冷静に周囲を見回すと、生まれて初めて目にする悪魔との戦いに、震えて身動きすら出来ない人々に向かって、
「さっさと立ち上がれッ!! 生き残りたければ自分の足で逃げろ!!!」
 と、声を荒げる。
 住民たちはアレスティルの大声に、まるで悪夢から覚めたかのように我に返り、子供たちを抱えて、小道を奥へと逃げ出していった。
 アレスティルは全員が見えない距離へと逃げ切るまで、その場でじっと立っていた。
 その立ち姿は威風堂々としており、人々はそのアレスティルの姿に、助かる希望を見出した。
 アレスティルとしては、別にそういう意味で立っていたわけではなく、ただ彼女が危機に陥る事があるようなら、有無を言わさずギーガどもをなぎ払うつもりでいた。
 そのつもりでアレスティルは、一閃でケリを着けられる間合いにギーガどもを捉えていた。
 アレスティルはこの時すでに、聖剣へと静かなる錬気を始めており、抜刀と同時にその奥義によって敵を殲滅出来るように、静寂にも似た沈黙を保っていた。
 その姿を見て彼女は言う。
「あなたも、どうか早く」、と。
 死闘を演じる彼女には、アレスティルの姿がぼやけて見えている。
 彼女はアレスティルにさえ、ギーガどもの攻撃の余波が届かぬように、背面にライトフォースの盾を形成していた。これは彼女にとっては、かなり不利な条件である。
 アレスティルがその場に留まれば、彼女は全力でギーガにあたることは出来ない。
 しかも、彼女は僅かにだが押され始めている。住民たちを長時間にわたって守り続けていたしわ寄せだ。
 アレスティルに、彼女のその守りの壁は、あまりにも心地が良すぎた。
 まるでそう、天使の羽にでも包まれているかのように。
 彼女が次の言葉を言いかけた、その刹那。
 アレスティルは道理ではなく、心で動いた!!

 アレスティルの碧眼に、銀光が流れる・・・。
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ダークフォース 第三章 Ⅱ

2010年06月23日 00時08分02秒 | ダークフォース 第三章 前編
   Ⅱ

 「凍結剣・絶対零度」

 その言葉と共に、世界が蒼く没する。
 彼女には、アレスティルが何をしたのかが分からない。
 ただ、吸い込まれるように美しい光を放ち続ける聖王剣・エルザードに見入ってしまったその瞬間、彼女の背後から煌びやかにダイヤモンドダストが舞った。
 アレスティルが静かに剣を鞘に収めると、世界は元の色を取り戻し、彼女をプリズムで照らすかのように、複数の氷の結晶が砕け散る。
 彼女がその正体がギーガどもであるということに気が付くには、少しだけ時間がかかった。
 アレスティルは、きょとんとした表情でその場にへたり込んだ彼女を残して、その場から立ち去ろうとした。
 戻ってきた人たちが、自分のことを英雄だの勇者だのと扱うのはなんとなく遠慮したかったし、アレスティルは初めて感じたその心地良さを記憶に留める為に、彼女に自分の正体が悟られる前に、彼女から離れたかった。
 自分がその「アレスティル」であるという事の彼女か気付けば、彼女の態度は一変するだろうし、そんな作られた視線を浴びるのは、彼としては避けたかった。
 アレスティルは、何の見返りもなく戦士として生まれたことを理由に、人々を純粋に守ろうとする彼女のその姿が見れただけで、心が少しだけ満たされた感じがしたのだ。
 それは、孤独を感じていたアレスティルにとっては、嬉しいことなのだから。
 救えば、忘れられ、でも求められれば何度でも戦う。
 そんな戦士は、数えるほどしかいないだろうし、直に目の当たりにしたのは、初めてだった。
 こうして、アレスティルが人々が逃げ出したその反対側にある小道の方へと振り返ると、彼女の方がすくっと立ち上がって、アレスティルにこう尋ねてきた。
「あの~、私、さっきまで戦っていましたよね?」
 その妙な質問に対して、アレスティルはコクリと頷いた。
 彼女はさら続けて、こう言った。
「えっと、旅芸人のお兄さんが、そのイリュージョンっていうんですか? えっと手品で、青くキラーンって光らせたって思ったら、氷が砕けるのと同時にギーガがいなくなってしまっていたのですが。だとしたら、それは世界平和的芸ですよね。凄いです、芸人さん!!」
「えっ・・・」
 アレスティルは自分が氷漬けになったように固まってしまった。
 冗談を言ってからかわれているのかとも思いたくなるが、彼女の表情は真剣そのものである。
 確かにアレスティルは、常日頃から他者に対して、己の実力を隠すようにしている。
 それは知られることで、状況が不利になることを事前に防ぐ為のものだ。
 アレスティルの場合、その勇名から、無理矢理に勝負を挑まれたり、場合によっては不意打ちをしてまでも名を上げようとする者さえいる。
 常にその身を狙われているアレスティル。
 彼は普段、麻の外套を纏い、深々とフードを被っている。
 その彼を倒し、伝説の剣とまで呼ばれる『聖王剣・エルザード』を手にする事で、勇名さが天地に知れ渡ることに間違いはないだろう。使えるかどうかは別問題だが。
 故に、かなりの距離まで近付かないと、自分が戦士であるさえを容易に悟られないように細工しているが、それでもこの距離だ。アレスティルの内から溢れ出す、その抑えきれない強大な力は、同じ戦士である彼女には感じられて当然のものだろう。
 微妙に混乱させられた発言をした彼女に向かって、アレスティルは問う。
「よかったら、君の戦士レベルを教えてくれないか?」、と。
 誰もが正確に相手の戦士としての力を見抜けるわけではない。
 名のある戦士や、各王家に仕える戦士たちは、無用な争いを避ける為、大抵、それを公言してはいるが。
 アレスティル当人も彼女のそのつかみどころの無さに戸惑うも、大体これくらいだろうということで、目見当は付けている。
 アレスティルが感じた彼女の戦士レベルは6~70台。
 これは、なかなかの数字といえる。
 すると彼女は、屈託のない笑みを見せ、その問いに答えた。
 しかも、バカ丁寧だ。
「はい、私はセバリオス法王国に使えるプリエステスで、名をレーナといいます。年齢は19歳、ぎりぎりでティーンなのです。はい、戦士レベルの件ですね。質問にお答えします。私の戦士レベルは86です」
「たかっ!!」
 思わず素でそう叫んだアレスティルだったが、一応、クールなイメージで通してあるので、すぐさま表面を取り繕った。
 しかし、予想外の数字だった。
 そのクラスの戦士なら、どの国でも将軍クラスの実力だ。かの超大国レムローズを治める苛烈候・ハイゼンですらそのレベルは87だというのに。
 少なくとも、野良でウロウロしているクラスの戦士ではない。
 今度はレーナと名乗ったその少女。もとい、少し幼くは見えるが19歳の立派なレディ。
 その彼女からの質問を、今度はアレスティルが受けることになる。
「はい、私は名乗ったのですから、あなたも自己紹介をお願いします。人に言えないような事は流してもらって結構ですので。あ、あと・・・出来れば、芸人レベル付きで。えへっ」
 えへっ、とか言われても・・・。と、アレスティルは何だか訳のわからない事態になってきたなと悩み始める。
 大体、自分は芸人ではないし、この距離で自分を見ても、その正体がわからないという人間に初めて出会ったのだから。
 アレスティルは、その腰に帯びた剣に気付いて下さいョ、と言いたくもなったが、気付かれていないならいないで、それは新鮮なことだったし、嬉しくないといえば嘘になった。
 ただ、当然ながら、バカ正直に自己紹介をすれば、その正体をバラしてしまうことになるし、どうせさっきまでここにいた人たちが戻ってくれば、結果的にそれを彼女に知られることになる。
 だがどうしても、『芸人』というところは否定したかったので、アレスティルはどう自分のプロフィールを捏造して芸人レベルを否定したものかと悩み、天真爛漫な彼女のその天然ぶりで、微妙に曲がったその美しい記憶も、まだ鮮度の高いうちに持ち帰って、この場を立ち去りたかった。
 瞳をキラキラと輝かせて、アレスティルを見上げるレーナ。
 アレスティルは190センチを超える長身なので、見上げるレーナの首も少し痛そうだ。
 傍から見たら、大人と子供である。
 レーナは懐から取り出したメモ帳を片手に、このヴィジュアル系芸人の事を、やっぱり綺麗だなぁ、などと思いつつ、アレスティルの顔の特徴や背格好に至るまで細かくメモメモしている。
 その仕草はどこか手馴れていて、まるでドラマの刑事(デカ)の様だ。
 何か言わないとマズイ、時間は限られていると、その表情を少し引きつらせる感じで、アレスティルはこう答えた。
「私は、世界を旅する探求者。いろんな不思議を発見してはいるが、どちらかといえば世界遺産巡りに近い方。決して、芸の道の探求はしていないのでそこは強く強調する」
「えーーーーっ!! あれだけの才能を埋もれさせるつもりですか!!!」
 本気でガッカリした様子のレーナだったが、そこに絡んでいくと、きっと話がヘヤピンカーブを描いてドリフトしていくだろうなと思い、アレスティルは淡々と自己紹介を続けた。
「私は、秘密結社『魔王の穴』に追われる身で、実を言うと今すぐにでもこの場所を離れなくてはならない」
 アレスティルのバカな作り話に、素直の聞き入るレーナ。そのいたいけな姿がアレスティルには、チクチクと痛い。
「どうして追われる事に?」
「・・・借金だ」
 レーナは一瞬、真顔になって言った。
「・・・働いて、ちゃんと返した方がいいと思いますよ」
 レーナの言うことはもっともだったが、彼女のペースに巻き込まれては危険だと、口下手なりに、アレスティルはそう感じた。
 が、すでに遅し。
 慈愛に満ちた表情をするレーナの質問攻めを、今度はアレスティルの方が喰らうことになる。
「はい、ではまず名前と年齢を教えてください。迷える者を救うのも、神に使える者の使命です。迷ってますよね? いえ、迷っているハズです!」
 アレスティルはこういう変化には、とことん弱い。
 自分の頭の中で描いていた偽造プロフィールも完全に吹っ飛んでしまい、まるで事情聴取でも受けるような気分で、ひたすらメモを走らせているレーナのその問いに答えた。
「名は、アレスティル。歳は15、6、くらいかな」
「なるほど、アレスティルさんですね。15~6歳ですか、少し曖昧ですネ。では、15歳と六ヶ月ということにしましょう。でも、よく育ちましたね~。私にも少しその背を分けて欲しいですね。・・・あ、私の方がお姉さんってことになりますネ。・・・というか、その歳で、よくお金貸してもらえましたね・・・」
 変な嘘を付くんじゃなかったーーーーッ!!
 アレスティルには、そのレーナから浴びせられる同情の眼差しが痛くてたまらなかった。
 このお人好しのレーナから、仕事の世話をしてあげましょうか? と言われる始末だ。
 確かに、自分はある意味無職だ。アレスティルは、そこは否定できない。
 英雄だの、勇者だの言われているが、安定した収入があるわけではない。もちろん、借金なんて有りもしないのだが、何らかの職を手に付けておいた方がいいのかな、などと普通に思わせられてしまったアレスティルだった。
 この変な空気に翻弄されるアレスティルだったが、自分の名を出してもその正体に気付かれていないのは幸いだと思った。
 同姓同名の人間など、この世には幾らでもいる。腰に帯びたこの剣だけは、世界に一本しかないのだが、これならば住民たちが戻って来る間に、立ち去ることも可能だ。
 アレスティルは、さらば美しき思い出をくれた人よ。と、有無を言わさすダッシュで逃げ出すつもりだった。このままでは、変な方向へと押し流されてしまうに違いない。少しでもその記憶に、なるだけ変な成分が混ざりこまない内に、と。
 ところがその時!!
 自らをその視線に捉える影があることに、アレスティルは気付いた。
 ヨボヨボのじいさんが、手を震わせながらその杖をアレスティルの方に向けて、しまりのない口でこう絶叫した!!
「おおぉ!! やはり伝説の、ゴホ・・、勇者、ゴホ・・ゴホ、アレスティル様じゃぁぁぁぁあああ!!!」、と。
 レーナはその声の方向に振り返る。
 アレスティルは、頭を抱えてその場に蹲った。
 ・・・なんで、あんなに腰の曲がったじーさんが、誰よりも早く戻って来る。
 しかも、自分が予想していたよりもかなり早いスピードで戻ってきたのが、ショックに追い討ちをかけた。
 どんだけ足が速いんだよ!! などと思いつつ、アレスティルは、額の汗を拭って、何食わぬ顔で立ち上がる。
 やはり他には、じいさん以外の人影はなく、アレスティルが予想したのと同じくらいの時間で、じわじわと人々が戻ってきた。
 じいさんは、栗毛の天使に「お怪我はありませんか?」などと手厚い保護を受け、ご満悦のようだ。
 アレスティルはこのじいさんが、ただ逃げ遅れていただけなのかとも思ったが、確かに逃げ出すスピードが他の者たちより遅かったせいもあるが、長年の経験で、これくらい逃げれば安全というのがわかっていたらしく、慌てて余計に遠くに行った人たちよりも、早く帰って来たというだけのことだった。
 そうして戻ってきた人々は、アレスティルを取り囲むように集まってきた。
 アレスティルの立ち姿は、神々しいほどに美しい。
 その金髪に流れる陽の光は、プラチナ色のラインを描き、蒼い色のその瞳は、海の底よりも深く、見つめられれば吸い込まれそうになる。
 雪花のような白い肌に、端整に整った顔立ち。
 その雰囲気に気圧されるかのように、人々は一定の距離までしか、彼に近づくことは出来ない。
 
 人々は、アレスティルと言う名の『存在』を見つめているのだ。
 彼という、『人間』を見ているわけではない。
 
 いつも見慣れたこの景色に、アレスティルは次第に心が冷えていくのを感じたが、全員が無事であったというその結果には、十分満足していた。
 その、人々と隔てられたサークルの中に、栗毛の彼女は不意に飛び込んでこう言った。
「もう、恥ずかしいじゃないですか! 私だけが知らなかったなんて。早く、教えてて下さいよっ!!」
 と、照れながらレーナは、アレスティルの肩をパシッ! っと叩く。
 レーナのその行為に、人々は凍り付く。
 ・・・なんて恐れ多いことを!! と。
 その瞬間、アレスティルがクスッと吹き出し、堪らず大声をあげて、
 アハハハハッと、大笑いをした。
「最初からあなたが、あの有名な勇者様だって知っていれば、私だってもっとちゃんとした態度を取っていましたよ。そりゃ、本人を前にして知らないなって、私の方が悪いかも知れませんよ。本当、ちょっとド忘れしてただけなんですから。・・・そんなに笑わないでくださいよ、もう」
「アハッ・・・ごめん。でも勇者様は、やめて。呼び捨てでいいから、名前の方でお願いします。レーナさん」
 そう言って髪を掻き揚げる仕草をしたアレスティル。
 その彼の表情が、どこか和らいだものに変わっていくのに、一つ外を取り囲む人々は驚かされた。
 見えない壁のようなものが解けていく、そんな感じだった。
 気高く神聖で、触れがたいオーラのようなものは、今のアレスティルにはなく、見入るほど美しいその顔の頬が、ほんのりと紅が色付いている。
 レーナはアレスティルに向かってこう言った。
「では、アレスティル君と呼びます。私のことは、お姉様と呼んでいいですよ」
 上から目線かよ!?
 と、住民たちが一斉にレーナの方に振り返る。
 再び、アレスティルが笑いだすと、彼自身にも見えない壁の向こう側にあったものに、気付けるだけのゆとりが生まれていた。
「怪我してるじゃないか、ちょっと見せてごらん」
 そう言ってアレスティルは、逃げる途中で足を枝に引っ掛けた少年の怪我の場所を軽く抑える。
 すると、何かの光を発してその傷を一瞬で治した。
 その小さな奇跡に吸い寄せられるように、人々はアレスティルを囲むようにして集まり、その子の母親からは、「ありがとうございます」の声が聞こえた。
 人肌が伝わる距離に、自分はいる。
 もうこの人たちは、自分を何か違う異質なものだと、警戒はしていない。
 アレスティルにとって、それはとても嬉しいことだった。
「アレスティル君ッ!! 何、一人で目立っちゃってるんですか。第一、治癒の専門家である私をほおっておいて、素人が勝手にそんなことして、破傷風にでもなったら、一体、どうするんですか!!」
 住民たちは、そんな彼女を見て笑い出した。
 レーナは何処からか救急セットのような物を取り出して、アレスティルに対抗しようとする。
 ペカッ、と光って傷を治せるなんて、勇者はズルいとか思いながら、レーナは人々に何処か悪いところはないかと聞きまくるが、大抵、帰ってくる言葉は、膝が痛いだの、腰が痛いだの、その辺りだった。

 こうしてアレスティル(と、レーナ)は、住民たちからの歓迎を受け、その集落を後にするのだった。
 人々は惜しげもなく貴重な食料を使い、盛大な宴を設けてくれたが、レーナは何処か納得のいかない表情をしたまま、アレスティルにお酒はハタチになってからです!! と説教しながら、自分はしっかりとリンゴ酒を片手に酔っ払っていた。
 聖職者でありながら、酒を飲むレーナの姿にアレスティルの方も、確か19歳って言ってたよね? と突っ込み返してやっていたが、レーナはキッパリ、女性に向かって歳なんか言うもんじゃありませんっ! と、いい加減な事を言っては、チキンをモグモグと口いっぱいに頬張っていた。
 アレスティルは薪の傍で頬杖を付きながら、その光景を眺めていてこう感じていた。
 笑顔が伝わってくる。こんなにも、自然に、と。
 二日酔いで頭を抱えるレーナ。この後、アレスティルは、据わった目をした彼女にこう告げられる。
「いいから、私と一緒に来なさい。おねえさんが、いい所に連れて行ってあげるから。うっぐ、・・・ホラ、女の子を待たせない! さっさと歩く!!」
 と、半ば強引に手を引かれて、彼女の居場所である『セバリオス法王国』へと、連れて行かれるアレスティルであった。
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ダークフォース 第三章 Ⅲ

2010年06月23日 00時04分26秒 | ダークフォース 第三章 前編
   Ⅲ

 北西のノウエル叡智王(皇帝)領と、南西のティヴァーテ剣王国に挟まれる形で存在している西の国、セバリオス法王国。
 アレスティルがレーナによってこの国に連れて来られてから、もう三年の月日が流れていた。

 大陸暦4096年。季節は、春。

 一昨年、争いによってスレク公国が滅ぼされていたが、
 このセバリオス法王国内は、そんなことさえ感じさせないほどの平穏を保っている。
 現在の法王が、歴代の群を抜く卓越した政治手腕の持ち主で、
 また商人たちの扱いも巧みな為、商業が盛んで国は富んでいる。
 現法王が女性であることから、国民や信者たちは彼女の事を敬愛の念を込めて、こう呼ぶ。

  『女教皇・アセリエス』と。

 彼女は主神であるセバリオスの神託によって選ばれた。
 神託によって女性が法王に選ばれたのは、アセリエスが初めての事であったが、彼女は忠実にその大役をこなし、実力でその地位の相応しさを人々に知らしめた。
 彼女の年齢は不明だが、見た目に二十歳くらいに見える。
 その外見は、端正な顔立ちに長い黒髪。
 とても美しく、華やいだ容姿の持ち主で、左右の目の色が違う。
 右目が緑で、左目は真紅。
 その神々しいまでの姿に信者は圧倒され、その美貌に憧れを抱かせた。
 在位して100年は過ぎたはずなのに、
 その艶やかさは失われるどころか、さらに磨かれている。
 それは、人々には奇跡のようにも見えたし、その姿は、まさしく神から使わされし、天使のようでもあった。
 中には、容姿の似た者を何代も入れ替えさせているのだと揶揄(やゆ)する者もいたが、
 そんな言葉を耳にする度に、アセリエスは嬉しそうに微笑んだ。

 「ワタシを讃える声が、また聞こえるワ」、と。

 彼女は、セバリオスを祭るその大神殿の最深に在る。
 絢爛豪華な衣装にその身を包み、数多の金銀財宝を散りばめたその煌めく広間に、選りすぐりの美しい小姓たちを侍らせている。
 アセリエスは、その中でも最も豪華な細工のなされた赤い椅子の上で膝を組み、その指先を広げ、爪をお気に入りの近習に丁寧に磨かせている。
 彼女は、善人とは程遠い性格をしている。
 故に欲深くもあったが、賢くもあった。
 国益の為なら、平気で少数を見捨てる事が出来たし、より対価を与えてくれる者たちに、その慈愛を分け与え、何もくれない人々は、彼女のその異なる色をした両目には映ることすらなかった。
 彼女は豪商たちととても気が合ったし、些細な事を気にする方でもなかった。
 より多くの富を捧げる者により微笑み、彼等の見られたくない部分にはその瞳をそっと閉じてあげた。
 レーナは、彼女のこの性格を理解した上で、この女教皇に仕える道を選んだ。
 アセリエスはレーナの事を特に気に入ってもいなかったが、その能力は高く評価しており、彼女のその働きに応じて、弱者を救済するような真似もした。
 アセリエスは、取引に関しては至って誠実である。
 レーナの活躍が目覚しいものであればあるほど、アセリエスの慈愛は国の内外に高く鳴り響く。
 この頃のレーナの勇名は、他国に知れ渡るほど高まっており、女教皇アセリエスにとっても、その利用価値は日に日に高まっていた。
 彼女の、アセリエスの美しき世界を守る番犬として、いまや欠かせない存在になっていると言ってもいい。

 薔薇の宮殿と呼ぶに相応しいほど美しく飾られた大神殿内は、まるで主神セバリオスではなく、女教皇アセリエス自身を奉っていると言って程に贅の限りが尽くされている。
 彼女は美しいものを愛していたし、欲しいモノは奪ってでも手に入れる性格だった。
 そんな彼女の、悪趣味なまでに国の財産がつぎ込まれた豪華な一室で、アセリエスは一人の客の相手をしていた。
 部屋はさほど広くもないが、もぎたてのスウィーツのように甘く良い匂いのする香木がたかれており、赤一色に彩られたこの部屋を、とても居心地のよい場所に変えていた。
 部屋の色と反するように、緑のレトレア織のドレスをその身に纏ったアセリエスの姿は、高貴な貴族の婦人のようであり、俗物的である。
 一方、テーブル越しに座るのは、ノリのきいた白い礼服にその身を包んだ銀髪の男。
 魔王軍四天王筆頭の、マイオストである。
 アセリエスは給仕たちに茶の支度をさせると、即刻、彼等を退室させ、二人だけの空間を作った。
 アセリエスのその存在は、見る者の言葉を奪うほど圧倒的で、絶世の美しさである。
 そのアセリエスに向かって、マイオストは用意されたレトレアンティーを口にしながら淡々とこう言った。
「まるで、クジャクのような感じですな」、と。
 アセリエスは、その言葉にフフッと笑う。
「それは褒め言葉と受け取ってよいのかしら。ガイヤート卿には、この私は羽飾りという名の財を幾つも背中にさしたような女に映っているみたいだわ」
 マイオストはこちらの世界では『ガイヤート』の名で、希少品を扱う商人ということになっている。
 アセリエスにとって、彼との取引で得られる物は、大変な貴重品であり、その心を揺り動かされた。
 その果実を前に、アセリエスにとってマイオストの正体など、特に気を惹かれるモノではなかったし、他人の事情にむやみに首を突っ込まないその寛容さも、彼女の才覚の一つと言えた。
 マイオストは、女教皇の御用商人ガイヤートとして、このセバリオス法王国に度々、潜入している。
 アセリエスはその地位を利用して、巧みな情報操作を用い、各国に影響を与える抜群の政治手腕を持つ。
 故に大陸の動向を探るには、彼女の近くに居るのが手っ取り早いとマイオストは考えた。
 マイオストは、商人ガイヤートとして、彼女に向かってこう口を開いた。
「猊下には、このガイヤートに次は何を持てと仰られるのです? ありとあらゆる天上天下の財宝をすでにお持ちのようにも見えられますが」
 アセリエスは重厚で深みのある木製の椅子に座っており、その腕木に頬杖を付くと、無数の蝋燭の光を反射させた赤と緑の瞳で、マイオストの方を見つめた。
「アセリエスと呼ぶがよい。公務でもないのにそう呼ばれては肩がこる」
「では、アセリエス様。この私はあなた様の為に、次はどのような嗜好を凝らせばよいのでしょう。竜などを倒して、若返りの果実などを手に入れて来いと?」
 その言葉にアセリエスはニヤリと口元を緩めた。
「フフフッ、それでは私が自ら老い朽ち果てようとしていると、周りの馬鹿どもに言い触れて回るようなものだのぅ。・・・ククッ、そういう冗談が言えるから、そなたは私のお気に入りでいられるのだ。世の中には様々な悦楽がある。手に入れること、愛でること、時には指をくわえてただ眺めること、・・・そして、奪い、奪われること」
 マイオストは頭を掻きながら、アセリエスにこう答えた。
「お言葉に感謝いたします。・・・しかし、怖い方だ。あなた様が、かのティヴァーテを焚き付けて戦争までしたがるその理由とは、一体、何なのでしょう。そのような大事、我が身が知るには恐れ多いことではありますが」
 アセリエスはマイオストその言葉に顔色一つ変えずに、テーブルに置かれた小振りのリンゴを手にし、それを一口かじるとこう言った。
「今日もまた、運が良いようじゃ。実はみずみずしく、糖度も十分じゃ。何より、毒が入っておらぬのが良い。さあ、ガイヤート卿も召し上がられよ」
「ハハハハハッ! やはり肝が据わっておられますな。では、私はその白桃を頂くとしましょう」
 そう言ってマイオストは手にした白桃に勢い良くかぶりついた。
 とてもやわらかで、青い香りが鼻を抜ける頃には、じゅわっと甘い桃の味が口中に広がる。
 ただの成り上がりの豪商や、親の財を引き継いだだけの人間では、彼女の言葉に躊躇う者ばかりで、アセリエスの気分を冷ますだけだった。
 実際、この手のやり取りの中、死んでいった者の数は少なくはない。盛り付けられたどの果実に毒が仕込まれているかは、仕込んだ本人にしかわからないからだ。
 アセリエスの存在を疎ましく思う人間は、内にも外にも五万といた。
 彼女はその職務には至って健全であり、聖職者たちの不祥の行いを厳しく罰した。
 彼女はセバリオス教の教えに忠実であり、利権に腐る者たちは躊躇わずに粛清する。
 彼女が豪商たちと仲良くするのも、一つは治安を考えての事である。
 豪商たちは喜んで、聖都を守る兵を出してくれるし、交易の安全の為には金を出すのを惜しまなかった。
 こうして、儲かる者を儲けさせ、その利益をアセリエスは自らに貢がせた(大半は勝手に貢がれている)。
 その金額は巨額であり、アセリエス自身はその為、潤沢な資金を保有する。
 彼女は、法王国の公金に手を出す必要すらなかったし、その行為は、彼女の高いプライドが許さなかった。
 単にパワーゲームをアセリエスが好んでいるだけの事で、彼女は、そのゲーム自体にはとてもフェアである。不正は彼女を冷めさせるからだ。
故に、ささやかなれ教団内で権力を握った者たちにとっては、彼女の存在は強烈で、憎憎しいほどである。
不正を働こうにも、アセリエスを支持し、彼女の目となる者たちも多かったからだ。
彼女は、この蠢く欲の中で平然として生き残ることで、より赤く、美しく咲き誇っていた。
彼女の行いは強引だが、それによって救われた者も数を知れない。
 アセリエスは弱者たちからは比較的慕われている。それは、彼女の演出が巧みなせいだ。
 スラムの子供たちの為にわざわざ法衣を纏って会いに行き、明日の糧を施し、未来を生きる為の知恵を教えたりもする。
 その時のアセリエスの純白の法衣姿はまさに聖女であるが、高圧的な態度は変わらないし、言葉遣いも決して甘いものではない。
 近寄りがたさを持ちながらも、法王としての品格は保たれており、それが逆にアセリエスの存在を民たちに神々しくも魅せた。
 アセリエスは、合理的に信者を獲得する行いをしているだけで、特に信者やそこに暮らすものたちを愛しているわけでもない。
 彼等の心からの感謝の言葉も、アセリエスの耳に届いているかは分からない。
 アセリエスは人々の事をまるで物か何かの様に見ている為、施しという投資をした以上、それに対しての対価には期待をしている。
 効果的に、
 「ワタシの善政を触れ回りなさい」、と。

 アセリエスは、かじりかけのリンゴを金の取り皿に置く。
 彼女は銀器を決して使わない。
 銀は毒を見抜くのには適しているが、いちいち毒見などをしていては、暗殺者により狡猾な知恵を付けてやるようなものと、彼女は、猿知恵しか持たぬ馬鹿者どもを鼻で笑っている。

 アセリエスは単に気まぐれで、マイオストのその問いに答えてやる事にした。
 どうして、争いの種を蒔きたがるのかという事に。
「フフフッ・・・。まさか、あのバルマード王が最愛の王子を皇帝に差し出すとは思わなんだが、我が国は皇都レトレアへの通り道である。とても美しい王子なので、暫く留め置くのもよいかも知れない。じゃが、これでは答えにはなっておらぬな」
 いえいえと謙遜するマイオストに、アセリエスは少し何かを思い出すようにして左上の方を見た後、こう話を続けた。
「正直、フォルミと戦いたかったのう。相手は誰でもよいのじゃ、我が国の戦士・レーナを倒してさえくれればのう」
 アセリエスの言葉は、マイオストには理解し難いものだった。
 自国の最高の戦士を失うことに、何の意味があるのか。
 彼女は優秀な戦士で、同じ戦士としては大きく実力の差のあるガルトラント王とも、御前試合で対等に渡り合ったほどの実力者だ。かの苛烈候ハイゼンにも、法王国に『戦乙女・レーナ』ありと言わしめた戦士だというのに。
 アセリエスは話の先を聞きたそうな顔を一瞬見せたマイオストに、口元を少し緩ませてこう言った。
「レーナは良い戦士じゃ。まさに天才じゃのう。さして嫌っているというわけでもない。じゃがの、私は生まれて初めて、欲しいと思ったものがある。その思いは願いとさえ言えるほどに強い」
 そう語るアセリエスの瞳と、マイオストの瞳が一瞬、交差する。
 この時、マイオストは、彼女の言葉の意味を理解した。

 その深く艶のある、
 まるでルビーとエメラルドの輝きを放つアセリエスの両の目が、
 彼女の渇望を映し出す。

 そう、
   「勇者、アレスティルが欲しい」、と。
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