『秋の日のエリスねーさん。 パート II 』
長崎ドラゴンタウンの新たなランドマーク、
ネクサスビルの25Fの展望テラスでくつろぐ、
エリスねーさんたち。
同席するツキノさんは、そのプレッシャーを感じていたようですが、
階下の1Fのゲームセンターで、
よくわからない熱い戦いが始まってすでに、
30分の時が経過していました・・・。
30分とはいえ、ゲームの中の戦場では、
数時間の時が経過したような体感がありました。
サフィリアさんの部隊を中心とする、
『ネクサスビル・長崎ドラゴンタウン店』の、
ゲーマーたちの熱過ぎるその戦いぶりは、
全国の数多の猛者たちの侵攻をこちらへと誘い、
当初の戦力を、半分にまで減らしています。
ですが、席が空けば後詰めはたくさんいるので、
どんどんファイターは補充されます。
サフィリアさん「皆さん、無理はなさらないで下さいね。
十分に休憩を取られて、
せっかくのバトルを、思う存分に楽しみましょう!」
最も激しい消耗戦に、
さらされているハズのサフィリアさんですが、
その言葉は優しく野郎たちの心に響き、その笑顔はとても爽やかです。
これでは野郎共も、のんびり休憩している訳にはいきませんがッ!
参加者多数で、再度、行列へと並ばなければなりません・・・。
ウワサを聞きつけた会社員さんたちが、
適当に理由を付けて会社を早退し、
ちゃっかりと前の列に並んじゃっているのですっ。
J氏「フハハッ、
リアルプリンセスたちとの、その想い出メモリーに刻みたければ、
気合を入れて勝ち残る事だなッ!!
カァーッ、この高揚感は何ともたまらねえぜッ!!!」
J氏は、新兵を鍛えるプロフェッショナルです。
個人的な戦闘力自体は、たいしたことはありませんでしたが、
戦場での生き残り方だけは、誰よりも熟知しています。
このJ氏の激により、奮起した野郎共は、
通常の数倍の力を発揮し、同時に魂のエナジーを、
激しく消耗させられてます。
J氏「役立たずで悪かったなッw」
レミーアさん「あ、いえいえ。
軍曹さんには、指揮を上げてもらって助かってます。
・・・あの、当たらないで下さいネ。」
高速で移動し、J氏のマシンを援護するレミーアさんが、
すばしっこい彼を囮にして、撃墜数を稼ぎまくっています。
結果そうなっているだけですが、
持ちつ持たれつで、サフィリアさんチームは、
6連勝中の今も、その味方の数を一機も減らしてはいません。
でも何故か、技術でJ氏に劣るはずの、
A氏とB氏が、まるで何かに憑り付かれた様に、
快進撃を続けていますッ!!
A氏「敵の副将を、討ち取ったニャーンッ!!」
B氏「我輩のレールキャノンが、唸ってるんだニャン!」
・・・戦っているのは、
サフィリアさんのネコちゃん達のようです。
A氏「さすがは、歴戦のガゲカツ殿だニャン。」
B氏「いえいえ、カネツグ殿の突破力のおかげなんだニャン。」
J氏「どーなってんだYOォ!!」
これって、本物のA氏とB氏の想い出メモリーは、
どうなっているんでしょうね。
結果、素晴らしい戦果を挙げていますし、
J氏もまさかここまで粘れるとは、想像していなかっただけに、
そこには誰も触れては来ないようです・・・。
サフィリアさん(・・・エリスさんに、いい所を見せたいのです。
本当に、ごめんなさいネ。)
レミーアさん「ネコちゃんたち、やるっすねッ!!
サフィリアさんは、いい側近に恵まれてるなぁ。」
レミーアさんのうっかりは、スルーです。
ネコちゃんの部分は、聞こえていない、聞こえていないの法則で。
こうして、サフィリアさんチームは、
次々と勝利を重ねて行きます。
これも、他の皆さんが勝ったり、負けたりして、
他のプレーヤーたちの、店内への挑戦を防いでいるおかげです。
サフィリアさんチームに勝てそうな相手には、
次々と望んで敗北を重ねまくり、疲弊させた状態で、
サフィリアさんチームにバトンタッチです。
たまに味方がピンチになると、フッと1Fの店内に現れる、
将棋好きな、グラサンのおじいさんと、
ジェネシス! 連呼しまくってる、中年のエプロンおじさん。
そして、オーナーから参加を許可された、
バイトのリナさんがチームを組み、
わずか三機で、敵集団の中心へと殴り込み、
二十を超える大部隊を相手に、猛烈な戦果を挙げています。
旧式の量産型ロボを、超絶技巧で操る、
世直し旅をお供と共に、やっていそうな、
イカしたグラサンの、黒いスーツのおじいさん。
グラサンおじいさん「カッカッカッ!
ワシの店に攻めて来ちょる、連中に指南をしてやるのも、
オーナーの務めというものじゃッ!!
行くぞい、ジェネさん、リナさん!
勝てると見た勝負しか、ワシはしませんがのー。」
そのソウルに溢れるおじいさんを、
遠巻きに囲むように、ゴツイSPぽい方たちが、
警備に当たっています。
ジェネシスおじさん「うーん、ジェネシスッ!!
この上にエリスさんがいると想えば、
少しでも親密になりたいからねっ。
年の差なんて、ノー問題という、
エリスさんのその幅の広い異性の好みは、
ためぞう君の親父さんに憧れてた過去で、
すでに、証明済みだからねえッ!!」
おじさんは、イエローに塗装された重攻撃爆装ロボを駆使し、
一挙に敵部隊中央へと突っ込ませると、
大量に搭載したホーミングミサイルや、
多連装マシンガンを雨のように浴びせ、敵部隊を大いにかき乱しますッ!!
見た目は、ちょっとお腹が出てる感じの冴えないおじさんですが、
店内のディスプレイに色鮮やかに映し出される、
おじさんのその勇姿は、たしかにちょっとカッコイイです。
ただ、おじさんの声はやたら通るので、
言ってる事が、結構あちこちに聞こえています。
・・・おじさん叫んだ、ある情報に、
世の中年男性さんたちは、足を止め、
それが、こんな変なウワサとなって、広がっていくのです。
- あの素敵なエリスさんは、
年の差なんて気にしない、
心の広い女性(ひと)なんだなぁー。- 、と。
確かにエリスねーさんは、
自分の歳は気にするくせに、
お相手の年齢差なんて、まったく気にしない、
内面を感じ取れる、いいお嬢さんではあります。
(褒めてますよッ!!)
そのウワサは、光の速さで拡散し、
店内どころか、上の階にいるおじさま方へ、
有益な情報を伝えたのですっ!!
現時点では、ウワサはネクサスビル内だけに、
謎のブロックによって留まっていますが、
対戦相手が、ゲーム内で友人登録されていれば、
メッセージを送る事は可能なようです。
周囲に広まるのは、もはや時間の問題でした。
そこをブロック出来ていないのが、
謎のブロックの欠点のようにも思えますが、
意図的にそれを突破した者が、
何処かに潜んでいるのかも知れません。
A氏とB氏が、ゲームで使用しているとは違う、
別のマイクに、何やらつぶやいています。
謎のネコちゃんの声 < 「こちら、ブラボー III
・・・厄介なウォールだったが、
これで通信が回復したハズだ。」
> 軌道ネコジャラクシー「こちら、軌道ネコジャラクシー、
難解な任務、ご苦労だった。
貴殿らの活躍で、もたらされた情報には、
各提督方も、ご満悦のようだ。
これで私の給与も、上がるかも知れませんねッ!!」
ブラボー III < 「オ、オペレーターのお嬢さんッ、
本音とは隠してこそ、その結果への喜びが増すものだ。
浮かれる気持ちは、わからんでもないのニャン。
・・・。
ところで増援の方は、期待して良いのかな。」
> うっかりオペレータ嬢さん「残念だが、現有戦力を降下させようとしても、
こちら側へのブロックが、いまだ突破出来てはいない。
もう少し時間がかかると思われるが、
間に合うか? というその問いには、
今は答えられない。
ただ、健闘を祈るとだけ言っておこう。」
ブラボー III 「了解した。
ただちに任務へと戻り、我らが越後の姫様をお守りするとしよう。」
ただ、この時点で、
サフィリアさんたちは、まだ気付いていませんが、
このネクサスビルには、ゲームセンターの裏側に、
オフィス・マンションの方向けに、
駅ビル方面側の、立派なエントランスがあったりします。
マンションにお住まいの方は、
繁華街側のゲームセンターが入っている方と、
アクセスが便利な駅ビル方面側の、どちらの出口からも、
出入りする事が出来ましたが、
基本、ゲームセンターなどのテナントの入っている繁華街側は、
オフィスの方たちは、上司さんの手前、
土日利用の方が多くなりますネ。
ナイスなグラサン老人の亀吉さん(ワ、ワシとした事がぁッ!?
・・・うかつにも、
便利に作り過ぎたようじゃ。)
その頃、ウワサのエリスねーさんは、
25Fの展望デッキで、女子トークに花を咲かせていました。
すでにビルの最上階まで、エリスねーさんのウワサが広がっていますので、
その美女三人が座るテラスを見つめるギャラリーの数も、
おじさま多めで、数を増やしています。
ギャラリーの皆さんは挨拶を交わしながら、
エリスねーさんの攻略情報があちこち飛び回っています。
そのギャラリーの目線の先にいる、ツキノさんやファルさんも、
しっかりと耳を済ませて、その攻略ネタを仕入れています。
ツキノさん+ファルさん(情報がはっきりするまで、
もう少し、お話しを楽しみましょうね♪)
実家では険悪だった、ファルさんとツキノさんですが、
新天地のドラゴンタウンでは、
とっても仲良くなれそうです。
どちらとも、違う方向で優秀な特技をお持ちなので、
うまくやれば、あのセバリオスさんでも排除できそうですっ!
階下のセバリオスさん「何だか、激しい乙女オーラを感じるねぇ。
レオクス君ほどでもないが、
私も、女子たちの熱い注目を集めてしまっているのかな。
ハッハッハッ!!」
秘書のセリスさん「平和なことで、なによりです~っ。」
セリスさんは、お気楽なテンションで振舞いながら、
こういう思いを巡らせていました。
セリスさん(切り札として使うには、
この絶大なる主に対しては、まだまだ未熟なようですが、
使い方によっては、
エリス様を、より幸せな方向へと、
お導き出来るかも知れません。
ワタクシの最大の喜びは、
この身がどれほど報われなくても、
エリス様が、誰よりも幸せであれば、
ただ、それで良いのです。)
セリスさんにとって、
セバリオスさんの存在は、ホントにどーでもいいみたいです。
ただ、最強の虫除けなのは間違いないので、
セバリオスさんを支えることは、理に叶ってはいます。
効き過ぎなのが、少々欠点ではありますが。
セバリオスさん「私は、セリスに絶対の信頼を寄せているよ。
今日も、お仕事ありがとうねっ。」
さすがに、神がかりな存在感を放つセバリオスさんを、
簡単に操る事など、セリスさんでも出来ないようです。
それが、何よりも難しい事もまた、
セリスさんは嬉しいように、ニコリと微笑んでこう返すのでした。
「いえいえー、
私こそ、素晴らしい上司さんに出会えて、感謝してます~~ぅ♪」
この二人の独特の雰囲気の前に気圧され、
セバリオスさんの会社の社員さん達は、
ひたすら頑張って、営業成績を上げているのです。
上では、ツキノさんとファルさんが、
女子トークを盛り上げて、しっかりと時間を潰してくれています。
陽射しが西へと傾き、水平線へと沈みかけた、
展望テラスから広がるその光景は、
とても落ち着きのあるオレンジの光を、
おだやかな波が反射させ、
青い空とのコントラスト差も、
次第に柔らかな夕焼け色へと、塗り替えられていくのでした。
真横から差し込むその金色のきらめきに照らされた、
三人の美女たち。
終業時間の5時を告げる、チャイムが鳴り響くと、
殿方たちは、彼女たちに魅せられながらも、
1Fのゲームセンターへと競うように、降りていきます。
どうやら、ゲームの上手な殿方を、
エリスねーさんが好むと誤解しているようです。
何処のウワサというものも、伝わり方で、
内容が聞き手にいいように変わってしまうようですね。
この頃には、ツキノさんもファルさんも、
ウワサの真相へと辿り着き、互いに頷きながら、
正確な情報を手にしたようでした。
エリスねーさん「何かあったのー?」
ツキノさん「えっと、1Fにゲームセンターありますよね。
そこで、大会並みに対戦ゲームコーナーが、
盛り上がっているようですねっ。」
エリスねーさん「ああ、みんながやってるあのゲームね。
あたしもたまにやるんだけど、
下手すぎて、いつもやられまくってるな~。
まあ、それでも連帯感とみんなでの達成感とかは、
好きな方かな。
でも、どちらかというと、
私にも出来る、クレーンゲームコーナーに居たりもする。
取れないけど、あれは楽しい。
てか、ノルン姐さんの影響で、
やっぱり、2Fのボウリングとカラオケが、
メインなんだけどねっ。」
ツキノさん「ノルンおねーさんにも、
後で、ご挨拶しなくっちゃいけませんね。」
エリスねーさん「多分、電話かかって来るから、
その時でいいんじゃないかな。
姐さん、あれで魚市場と道の駅の両方やってるから、
終わるのに、もうちょっとかかると思う。
それまで、ファルさんも一緒にいかがですか?」
ファルさん「ぜひ、お願いしますーっ。」
どうやらツキノさんとファルさんは、
エリスねーさんを簡単に、
熱く盛り上がった、1Fの闘魂のゲーセンへと、
行かせる気はなさそうです。
より長く、この貴重な時間を楽しみたいんですねッ♪
その頃、エリスねーさんが来るのを願って、
バトルに勝ち残ってる、サフィリアさんとレミーアさんですが、
突如として現れた強敵を前に、
苦戦を強いられているようです。
サフィリアさん「この巨大なユニットは、何ッ!?」
サフィリアさんたちの戦場に現れたのは、
たった一機の大型バトルマシーンです。
今は、空に浮かぶ船の形をしていますが、
母艦の三分の一はありそうなその巨体は、
なんと、人型ロボにまで変形出来ると、
一度、前線から退いて、サフィリアさんと合流した、
レミーアさんが告げました。
レミーアさん「サフィリアさん、気を付けるっすッ!!
・・・あれは、最近ロールアウトしたばかりの、
最新鋭の大型マシーンです。
その莫大なコストから、ゲーム内には、
それ一機しか配置する事が出来ませんが、
火力もシールドも、通常のマシーンの10倍を超える、
とんでもない化け物ですッ!!」
この巨大マシーンの登場により、
瞬く間に、店内の他チームの防御は破られ、
メインの戦場へと、乗り込まれてしまいます。
J氏「エース級の三人組みのチームがあっただろ!?」
強力な社会人プレーヤー出現を予知してか、
すでに5時前には、グラサンの亀吉老人は、
ゴツイSPたちを連れて、戦場を後にしています。
ジェネシスな花屋のおじさんも、
配達の関係で居なくなっており、
残されたリナさんだけが、順番待ちの他のプレイヤーさんと、
再度チームを結成し、健闘していましたが、
あの化け物を相手に退かされてしまっています。
バイトのリナさん「つ、強すぎましたね・・・。」
可愛い店員のリナさんと一緒に、貴重な時間を共有した、
常連のD氏、E氏、Iさん、Kさん達たちは言います。
一同「あれは、リナさんが居なければ、
壊滅だったっすよ!!
爆散せずに撤退出来ただけでも、最高っすッ!!」
リナさん「有難うございますーっ!
私も、とっても楽しかったですっ。」
その素敵なリナさんの無邪気に弾ける笑顔で、
関係ない周囲の方々も、つい常連さんになってしまいそうです。
つい、その輪に加わりたくなった、
VIPのJ氏は、そういう理由なら仕方ないと、
いち早く前線から引いて、二人の美少女のいる側へと寄っていました。
J氏は誰よりも早く、危険を察知出来るので、
生存率がとても高いのですッ。
・・・でも、まさか、
サフィリアさんとレミーアさんが倒されようとしている間に、
こっそり退却したりはしないですよね?
J氏「そんな事できるかーーッ!!
(A氏とB氏には悪いが、
確かに、速攻倒されるのはごめんだと、
思っちまったのは認めるぜ・・・。
相手の出方がわからねえ内は、
攻略しようもないからなッ!!)」
普段のA氏とB氏とは、思えない、
凄まじい機動性と、攻撃力を発揮してきたその二機は、
最前線の、中空に浮かぶ大型マシーンのその直下にいました。
A氏改「まずは当たってみないと、
わからないものだニャン!!」
B氏改「なんだな、
軽く接触して、出方を見るんだニャン。
後ろの母艦は、誰も守ってないので、
隙だらけなんだニャーッ!!」
と、二機が大型マシーンにターゲットを絞ったその時です!
シュン! と大地に向かって、一閃のレーザーが放たれると、
二機が同時に爆散しますッ!!!
J氏「は、反則だろォ!!!」
二つの爆煙が立ち昇る、その黒煙の中にある、
鈍い蒼色の大型マシーンは、まだこちらへと動く気配を見せません。
だだ、その圧倒的な存在感に気圧される、
サフィリアさんたちです。
ブラボー III <「こちら、ブラボー III
見たこともない閃光に、一瞬にて撃沈された。
後は、よろしく頼むニャ、ン・・・。」
同時に二機もの味方を失い、
サフィリアさんチームは、相当ピンチです。
そして、5時を過ぎたというのに、
エリスねーさんの姿はまだ見られません。
敗退した別チームも、
すでに再編成を終え、新たなる他の別のチャレンジャーたちの、
挑戦を受けるのに、手一杯の状況です。
レミーアさん「一瞬ですが、レーザーが発射される瞬間に、
敵のシールドが無効化されたのを感じたっす。
シールドを使わなければならない状況を保てば、
あの強力な一撃は、放てないと見たっすよ!!」
そのレミーアさんと、横のJ氏に、
サフィリアさんは、銀光に輝く女性騎士の機体から、
こう言うのです。
サフィリアさん「A氏とB氏の見せた、戦いを私たちは、
無駄にする事は出来ません。
私も母艦を離れ、先陣に立って、
お二人を守る盾となりましょう!!」
中央のメインディスプレーに映された、サフィリアさんの勇姿が、
他のプレイヤーを巻き込んで、その士気を高めますッ!!
きっと、そのサフィリアさんのその姿は、
戦場に咲く、一人の戦乙女として、
可憐で鮮烈に、皆さんの記憶に残ったことでしょう。
レミーアさんも、頑張って下さいネっ!
レミーアさん「わ、わかってるっすッ! w」
では、つづきますー。