さまざまな人権団体から、企業経営など決定権のある立場で活躍する女性が少な過ぎると指摘されているフランス。女性に優しいフランス男性・・・そんなイメージが日本では一般的に浸透していますが、聞くと見るとでは大違い。女性が出世の階段を上るのは男性とは比較にならないほど困難なようですし、同じ職種でも給与に歴然たる男女格差が存在しています。
一見女性に優しいが、肝心なところではフリーハンドを認めないフランス男性。そうした男性の一人なのかどうかは分かりませんが、ラフィック・スマティ(Rafik Smati)という作家が、3月8日の「国際女性デー」に合わせて、金融財政の分野で決定権を持つ女性が増えれば、経済危機も回避できるのではないか・・・という記事を書いていました。ちょっと昔、7日の『ル・モンド』(電子版)です。女性なら、どのように経済危機を回避できるのでしょう・・・
経済界における女性の立場は、国民的関心事だ。「国際女性デー」(la Journée Internationale des Droits de la Femme)の日に、女性資本主義(un capitalisme féminin)についての議論を深めるのは、まさに時宜を得たものと言えよう。トレーディング・ルームで働いているトレーダーたちのほぼ全員が男性であることは周知の事実だ。そこで、次のような疑問が生じた。もしトレーダーたちが女性だったら、私たちが経験している経済危機は同じように起きたのだろうか。たぶん、起きなかったのではないか。
まずは、現状を示すデータから。イギリス企業において、財務上の決定権を持つ女性はわずか17%であり、銀行や保険業界では経営陣に2.5%の女性しかいない。さらに印象的なのは、アイスランドだ。財政破綻に追い込まれたこの国は、銀行のトップに僅か一人の女性しかいなかった。その女性経営者も2006年にそのポストを追われた。
ケンブリッジ大学の研究者たちは、更に詳しく調べている。研究チームによると、女性たちは金融界、そしてそこで働く男たちの理不尽な振る舞いに愛想を尽かしているが、そのあきれ返る行動には、男性ホルモンの「テストステロン」が影響しているというのだ。
研究者たちはまず、トレーダーたちの唾液を採取し、テストステロンの含有量を調べた。その結果は実に示唆に富んだものだ。リスクを伴う取引のある日や、大きな儲けのあった日にはテストステロンの含有量が異常に増えているのだ。しかし、その因果関係は簡単には断定できない。リスクを取ることによってテストステロンが増えるのか、あるいはテストステロンが原因でリスクを積極的に負うことになるのか。両者がお互いに刺激しあって増加するのは間違いないようだ。従って、経済バブルは、ある意味、テストステロンの増加とリスクを取る行為が相俟って起きるのだと言える。
ここに、資本主義の危機の重要な点があるのは間違いないだろう。世界の経済は大部分が男性によって支配されているのだから。男性ホルモンであるテストステロンをもはや占領、戦争、狩猟などで使えなくなった男性が、そのはけ口をつねにリスクと隣り合っている株取引を中心とした金融界という新たな分野に見出しているのだ。
テストステロンの影響で人はリスクを取ったり利益を上げたりするが、そのリスクや利益は興奮や大いなる喜びをもたらす。そしてこの喜びによってテストステロンの分泌量がさらに増える。増えたテストステロンは人をさらに大きなリスクへと導いて行く。このようにして、トレーダーたちはリスクとテストステロンのスパイラル状態に陥るのであり、その結果が金融バブルを大きく膨らますことになる。
では、女性の資本主義とはどのようなものなのか。それは多分、より平和な資本主義とでも言えよう。短期ではなく長期の視点に立った資本主義、資金の限度をわきまえた資本主義、教育の重要性を認めた資本主義、より真面目で、より慎重な資本主義だ。
では、トレーディング・ルームや企業の役員会に女性の割当数を決めるべきなのだろうか。私は、長年「アファーマティブ・プラン」には反対だったのだが、それはいかなるものであろうと差別には不平等の芽が見て取れるからだ。しかし、テストステロンを豊富に持つ男性ばかりが集まるとやがて危機に至ることが分かった。
男性に偏ると危機を引き起こすことはトレーディング・ルームだけではなく、大企業の役員会でも見られる。役員のわずか9%しか女性がいないのだ。そこで、社員数1,000人以上の企業において、女性役員の割合を徐々に20%に増やし、やがて40%にまで上昇させる方法が理解されるようになってきている。実際、ノルウェーなどいくつかの国々では、すでに実施に移されている。
役員会は企業の決定機関であり、そこでは戦略が練られ、長期計画が決定される。明らかに、役員会に女性が増えることは企業経営とその将来に根本的な影響を与えることになる。従って、新興市場とはブラジル、ロシア、インド、中国ではなく、それは「女性」なのだ。これから先30年における経済システムの進展に女性が及ぼす影響力は容易に推し量ることができるであろう。
・・・とうことで、女性が経営陣や金融界に増えれば、長期的な視点に立った、穏やかな金融活動が行われ、バブルが膨らんだり、行き過ぎた投機が減ったりすることが期待できるようです。
そうですか、男性ホルモンが新たな闘争の場を株取引を中心とした金融活動の場に見出したことが、金融バブルの背景にあったとは・・・これはやはり女性ホルモンで中和しないといけないのではないでしょうか。しかし、あくまで、中和です。
今から25年ほど昔、「女の時代」という広告コピーに踊らされて、多くの企業に女性だけのチームができたり、中には女性だけの子会社まで作った企業もありました。しかし、これはおかしいと思っていました。男性だけのチームに弊害があるのなら、女性だけのチームにも、その種類は違うにせよ、やはり弊害があるのではないか。そんなことを言った記憶があるのですが、鼻先で笑われてしまいました。君、今は女性の時代なんだよ!
しかし、今でも、この世に女性と男性がいるのですから、それぞれの視点を生かした複眼のチームを作るべきなのではないかと思っています。その点、あまりにも少ない女性役員を40%まで増やそうというヨーロッパの試みには大賛成です。男性だけが問題なら、女性だけにも問題があるのではないでしょうか。両者の視点、意見を組み合わせる努力をすべきなのではないでしょうか。極端から極端に走るのは簡単ですが、どうか、その中間で止まって、新たな一歩を模索する努力をすべきなのではないでしょうか。そう思っています。
一見女性に優しいが、肝心なところではフリーハンドを認めないフランス男性。そうした男性の一人なのかどうかは分かりませんが、ラフィック・スマティ(Rafik Smati)という作家が、3月8日の「国際女性デー」に合わせて、金融財政の分野で決定権を持つ女性が増えれば、経済危機も回避できるのではないか・・・という記事を書いていました。ちょっと昔、7日の『ル・モンド』(電子版)です。女性なら、どのように経済危機を回避できるのでしょう・・・
経済界における女性の立場は、国民的関心事だ。「国際女性デー」(la Journée Internationale des Droits de la Femme)の日に、女性資本主義(un capitalisme féminin)についての議論を深めるのは、まさに時宜を得たものと言えよう。トレーディング・ルームで働いているトレーダーたちのほぼ全員が男性であることは周知の事実だ。そこで、次のような疑問が生じた。もしトレーダーたちが女性だったら、私たちが経験している経済危機は同じように起きたのだろうか。たぶん、起きなかったのではないか。
まずは、現状を示すデータから。イギリス企業において、財務上の決定権を持つ女性はわずか17%であり、銀行や保険業界では経営陣に2.5%の女性しかいない。さらに印象的なのは、アイスランドだ。財政破綻に追い込まれたこの国は、銀行のトップに僅か一人の女性しかいなかった。その女性経営者も2006年にそのポストを追われた。
ケンブリッジ大学の研究者たちは、更に詳しく調べている。研究チームによると、女性たちは金融界、そしてそこで働く男たちの理不尽な振る舞いに愛想を尽かしているが、そのあきれ返る行動には、男性ホルモンの「テストステロン」が影響しているというのだ。
研究者たちはまず、トレーダーたちの唾液を採取し、テストステロンの含有量を調べた。その結果は実に示唆に富んだものだ。リスクを伴う取引のある日や、大きな儲けのあった日にはテストステロンの含有量が異常に増えているのだ。しかし、その因果関係は簡単には断定できない。リスクを取ることによってテストステロンが増えるのか、あるいはテストステロンが原因でリスクを積極的に負うことになるのか。両者がお互いに刺激しあって増加するのは間違いないようだ。従って、経済バブルは、ある意味、テストステロンの増加とリスクを取る行為が相俟って起きるのだと言える。
ここに、資本主義の危機の重要な点があるのは間違いないだろう。世界の経済は大部分が男性によって支配されているのだから。男性ホルモンであるテストステロンをもはや占領、戦争、狩猟などで使えなくなった男性が、そのはけ口をつねにリスクと隣り合っている株取引を中心とした金融界という新たな分野に見出しているのだ。
テストステロンの影響で人はリスクを取ったり利益を上げたりするが、そのリスクや利益は興奮や大いなる喜びをもたらす。そしてこの喜びによってテストステロンの分泌量がさらに増える。増えたテストステロンは人をさらに大きなリスクへと導いて行く。このようにして、トレーダーたちはリスクとテストステロンのスパイラル状態に陥るのであり、その結果が金融バブルを大きく膨らますことになる。
では、女性の資本主義とはどのようなものなのか。それは多分、より平和な資本主義とでも言えよう。短期ではなく長期の視点に立った資本主義、資金の限度をわきまえた資本主義、教育の重要性を認めた資本主義、より真面目で、より慎重な資本主義だ。
では、トレーディング・ルームや企業の役員会に女性の割当数を決めるべきなのだろうか。私は、長年「アファーマティブ・プラン」には反対だったのだが、それはいかなるものであろうと差別には不平等の芽が見て取れるからだ。しかし、テストステロンを豊富に持つ男性ばかりが集まるとやがて危機に至ることが分かった。
男性に偏ると危機を引き起こすことはトレーディング・ルームだけではなく、大企業の役員会でも見られる。役員のわずか9%しか女性がいないのだ。そこで、社員数1,000人以上の企業において、女性役員の割合を徐々に20%に増やし、やがて40%にまで上昇させる方法が理解されるようになってきている。実際、ノルウェーなどいくつかの国々では、すでに実施に移されている。
役員会は企業の決定機関であり、そこでは戦略が練られ、長期計画が決定される。明らかに、役員会に女性が増えることは企業経営とその将来に根本的な影響を与えることになる。従って、新興市場とはブラジル、ロシア、インド、中国ではなく、それは「女性」なのだ。これから先30年における経済システムの進展に女性が及ぼす影響力は容易に推し量ることができるであろう。
・・・とうことで、女性が経営陣や金融界に増えれば、長期的な視点に立った、穏やかな金融活動が行われ、バブルが膨らんだり、行き過ぎた投機が減ったりすることが期待できるようです。
そうですか、男性ホルモンが新たな闘争の場を株取引を中心とした金融活動の場に見出したことが、金融バブルの背景にあったとは・・・これはやはり女性ホルモンで中和しないといけないのではないでしょうか。しかし、あくまで、中和です。
今から25年ほど昔、「女の時代」という広告コピーに踊らされて、多くの企業に女性だけのチームができたり、中には女性だけの子会社まで作った企業もありました。しかし、これはおかしいと思っていました。男性だけのチームに弊害があるのなら、女性だけのチームにも、その種類は違うにせよ、やはり弊害があるのではないか。そんなことを言った記憶があるのですが、鼻先で笑われてしまいました。君、今は女性の時代なんだよ!
しかし、今でも、この世に女性と男性がいるのですから、それぞれの視点を生かした複眼のチームを作るべきなのではないかと思っています。その点、あまりにも少ない女性役員を40%まで増やそうというヨーロッパの試みには大賛成です。男性だけが問題なら、女性だけにも問題があるのではないでしょうか。両者の視点、意見を組み合わせる努力をすべきなのではないでしょうか。極端から極端に走るのは簡単ですが、どうか、その中間で止まって、新たな一歩を模索する努力をすべきなのではないでしょうか。そう思っています。