ふりかえれば、フランス。

かつて住んでいたフランス。日本とは似ても似つかぬ国ですが、この国を鏡に日本を見ると、あら不思議、いろいろと見えてきます。

ヨーロッパの長寿大国・フランス。悩みは尽きぬ。

2010-11-05 21:13:00 | 社会
平均寿命の伸びに伴い、100歳以上の人口が増えていく。この傾向、特にいわゆる先進国で顕著ですが、フランスも例外ではありません。世界最高齢だったフランス人女性が114歳で亡くなったばかりですから、納得できますね。

ところで、10月27日の『ル・モンド』(電子版)が100歳以上の人口についてのある予測を紹介しています。それは、L’Insee(l’institut national de la statistique et des études économiques:国立統計経済研究所)が10月26日に発表したデータです。今年初めに1万5,000人だった100歳以上の人口が、50年後の2060年には20万人と13倍になる! すごい増え方ですね。今年の時点で、100歳以上の高齢者は人口の0.02%だそうですが、2060年には0.3%にまで増える予想です。なお、今年の100歳以上の高齢者数は、50年前、1960年の数のこれまた13倍。50年ごとに13倍、13倍と増えているそうです。

因みに、日本の100歳以上は、平成元年(1989年)に3,078人(女:2,448人、男:630人)だったのが、20年後の昨年(2009年)には4万399人(女:31,952人、男:5,447人)に急増。日本はわずか20年で13倍です。100歳以上の人口の増え方、何かと13倍に縁がありますね。今私たちの社会では、人口3,156人に1人の割合で100歳以上のご高齢者がいることになります。日仏の比較では、総人口は日本がフランスの約1.8倍、100歳以上では日本がおよそ2.7倍ですから、実数にしても、総人口比にしても、日本の方が100歳以上の方々が多いということになります。それだけ日本の方が高齢化が進んでいるということですね。

しかし、それでも、ヨーロッパではフランスは高齢化の最も進んでいる国だそうです。何事も一番ではないと気が済まない大国主義のフランス(二番ではダメなんですね)、いろいろなデータを見つけ出しては、フランスが世界で、あるいはヨーロッパで一番だ、と叫ぶことがよくありますが、今回持ち出したのは、1967年に60歳になった人たちのうち、1万人当たりで何人が2007年に無事100歳を迎えることができたか、というデータです。フランスは1万人当たり102人が100歳の仲間入りをしましたが、スペインでは89人、イギリスで62人、ドイツは45人、ロシアに至ってはわずか17人しかいない。フランス人がヨーロッパでは圧倒的に長寿だ!

ところで、Inseeの予想は平均寿命の伸びなど現在の傾向に沿って立てられたもので、医療の発展とか暮らしぶりの変化などによって、当然、増減します。例えば、高齢者に多数の死者が出た2003年の猛暑の後、さまざまな対策がなされましたが、そうした対応も100歳以上の人口の急増につながっていると言われています。

また高齢者に女性が多いことは、フランスも例外ではありません。100歳以上では10人中ほぼ9人、つまり90%近くが女性で、90歳代では77%、80歳代で65%と、高齢になるほど女性の割合が増えています。上記にご紹介したように、日本では100歳以上の79%が女性。ということは、フランス男性より、日本男性の方が頑張って長生きしているということですね。あるいは、より楽をさせてもらっているということでしょうか。仕事はそれなりに大変なわけですから、家庭で楽をさせてもらっているということになりますね。女性の苦労のお蔭です。感謝。

ただ、高齢者が増えれば、そのケアについても、対応が迫られます。フランスの100歳以上の人たちの約半数は自宅で暮らしているそうですが、この割合は、健康な高齢者が増えるに従い、同じように増えてきている。そして4人に1人は自宅で、それも一人で暮らしており、4%がカップルで暮らしているとか。ということは、100歳以上の全ての人の50%が自宅で暮らしており、25%が一人暮らし、4%がカップルですから、50―29=21%で5人に一人は家族と自宅で暮らしているということになりますね。日本はどうなのでしょう、家族と暮らす100歳以上の方の割合はもっと多いように思われますが、日本は社会の変化が大きいですから、確信は持てません。

また、Inseeのデータによると、自宅暮らしであろうと施設で暮らしていようと、90歳代の人の約半数が日常生活に不自由をきたしているというデータがあります。トイレ、着替え、食事・・・一人では満足にできないことが増えてくる。どう支援していくか、フランスでも喫急の課題になっているようです。

因みに、110歳以上の“supercentenaires”(スーパー100歳)と呼ばれる人の数も、フランスでは現在の10人前後から50年後の2060年には1,500人ほどになるだろうと予想されています。長寿は喜ばしいことですが、高齢者を社会としてどう支えていくか・・・国境を越えた世界共通の課題なのだと思います。特に、自分が高齢者の仲間入りをするのもそう遠くはないと思うだけに、いっそう切実です。
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