ふりかえれば、フランス。

かつて住んでいたフランス。日本とは似ても似つかぬ国ですが、この国を鏡に日本を見ると、あら不思議、いろいろと見えてきます。

負け続けるフランス・・・オリンピックとの関係は?

2011-07-07 21:07:24 | スポーツ
2018年の冬季オリンピック開催地が、韓国のピョンチャン(平昌)に決定しました。南アフリカ・ダーバンで行われた第123回IOC総会において立候補していた3都市の中から選ばれたわけですが、第1回投票で63票と過半数を獲得する圧勝でした。因みに、ミュンヘンが25票、アヌシーが7票でした。

「2回の失敗を教訓にして準備を徹底した平昌は、冬季スポーツが深く根付いたドイツのミュンヘン、フランスのアヌシーとの激しい競争を勝ち抜いた。最後のプレゼンテーションは白眉だった。李明博(イ・ミョンバク)大統領が直接ステージに上がり、IOC委員らに平昌招致を訴えた。バンクーバー冬季五輪女子フィギュア金メダリストのキム・ヨナ選手は投票者らの心を溶かし感性を濡らした。
 これで韓国は2018年冬季五輪、1988年夏季五輪、2002年サッカー・ワールドカップ、2011年世界陸上の4大国際スポーツ大会をすべて招致した5番目の国になった。これまでこの記録を持つ国はフランス・ドイツ・イタリア・日本の4カ国だけだ。」
(中央日報・日本語・電子版)

感動的な文章からも、韓国での欣喜雀躍ぶりがよく伝わってきます。

ところで、あっさりと敗れてしまった、フランスのアヌシー(Annecy)。以前から招致委員会の問題などが指摘されており、難しいのではないかという声も上がっていましたが、わずか7票の惨敗。これほどまでに支持が少なかった原因はどこにあるのでしょうか。

敗退するのは既定の事実とばかりに、IOC総会での投票を前に、アヌシーが敗れたとしたら、どこに敗因があるのか、というインタビュー記事を6日の『ル・モンド』(電子版)が載せていました。日本にも共通するような原因が挙げられています・・・

7日17時に、IOC(仏語ではCIO:le comité international olympique)は2018年冬季オリンピックの開催都市を発表する。フランスからアヌシーが立候補しているが、ミュンヘン、ピョンチャンという競争相手に対して不利な状況にある。アルマン・ド・ランダンジェ(Armand de Rendinger)は、国際スポーツ・コンサルタントとして30年ほどの経験があり、オリンピックの立候補にも数十回、携わってきた。また、2006年には“Jeux perdus”(『敗れたゲーム』)という本も出版し、2012年を目指したものの敗れ去ったパリの敗因を分析している。

アヌシーの誘致活動はエドガー・グロスピロン(Edgar Grospiron)が委員長を辞任し、数週間後にシャルル・ベグブデール(Charles Beigbeder)が後任として就任した頃が、最悪な状態だった。ド・ランダンジェは、組織力の弱さとロビー活動の少なさを問題点として指摘していた。今回、改めて、アヌシーの問題とたぶん開催都市に選ばれるであろうピョンチャンの成功要因を語ってもらった。

(あと数時間で開催都市が決定されるが、アヌシーは選ばれないだろうと大方が予想している。驚きの結果は期待できるだろうか?)

人生が続く限り、希望はある。意外な結果になる可能性もあるが、もしアヌシーが選ばれたなら、それは前代未聞といったくらいのサプライズになるだろう。

(シャルル・ベグブデールに代わっても、不利な状況は大きくは変わらなかったが・・・)

今年1月の大きな変革、特にベグブデールが招致委員長についた後、オリンピックを歓迎する新しい風が吹き始めた。ベグブデールは3つの目標を掲げた。より良いロビー活動でIOC委員を説得すること、予算をまかなうため、民間の資金を活用すること、より多くのスポーツ関係者との関係構築、という3点だ。

しかし、2点目と3点目は達成できなかった。スポーツ大臣は、追加された予算は国からの支援だけだと不満を示していた。また3点目に関しては、ジャン=クロード・キリー(Jean-Claude Killy:1968年のグルノーブル・オリンピックで、滑降、回転、大回転の3冠を達成、IOC委員)やギー・ドリュ(Guy Drut:1976年モントリオール・オリンピック、110mハードルで優勝、後に下院議員、市長、IOC委員などを歴任)など影響力のあるIOC関係者からも批判が出されていた。IOC評価委員による調査はうまく切り抜けたものの、その後の活動は停滞してしまった。地域住民との関係も、常にぎくしゃくしており、ベグブデールはその独断的な振る舞いが非難されていた。第一の目標については、結果が示してくれるだろう。

(ここ数週間、アヌシーは自分たちこそオリンピック本来の価値のある大会を開催することができる。他の2都市はあまりにビジネスライクだと言っていたが・・・)

アヌシーがオリンピック本来の価値を守ることができると言うことは、他の2都市はできないと言っているようなもので、競争相手を中傷することは効果的だとは思わない。アヌシーの問題は、立候補よりも前の時点で、なぜアヌシーがオリンピックを開催するのか、どのような点を評価してIOC委員はアヌシーに投票するのか、という問いに明確な答えを用意できなかったことだ。こうした肝心な点を抑えずして、勝利することは不可能だ。

(フランスの繰り返される敗退から学ぶべきことは?)

もしアヌシーが落選した場合、肝心なのはその得票数だ。第1回投票であれ、第2回投票であれ、もし20票以下の得票数で敗退した場合、それは明確な敗北だ。パリが1992年、2008年、2012年を目指して敗れ、リールが2004年を狙ったが残念な結果に終わった。アヌシーは、それに引き続く敗北となる。これまでの落選においても、2008年を除いてはまずまずの好印象を与えることに成功はしていた。アヌシーは過去の失敗に学ぶことができると思われていたし、30票ほどの基礎票に頼ることができるものと思われていた。もし得票が基礎票に届かない場合、それは深刻な問題になる。フランスとIOCとの関係を見直さねばならないだろうし、それほどの大敗北の原因を解明する必要に迫られる。

(ミュンヘンとピョンチャン、どちらが有利か?)

ピョンチャンが選ばれなかったら、それこそ驚きだ。何しろ、プレゼンテーション、プロモーション、ロビー活動と、どれをとっても当初から完璧な対応をしてきたのだから。

(ピョンチャンの強みは何か?)

まず、3回連続の立候補ということだ。前の2回はいずれも第1回投票でトップにありながら、第2回目以降の投票で敗れていた。こうしたことから、ピョンチャンはIOC委員の間で知名度が高く、しかも、敗退後、その結果に怒らず、原因をしっかり学んでいたことが、IOC委員たちから高く評価されている。韓国とオリンピック関係者の間にしっかりした絆が結ばれているのだ。

もうひとつの理由は、サムソンだ。サムソンはIOCをはじめとするスポーツ界の主要スポンサーであり、ピョンチャン誘致活動に主要な役割を担っている。サムソンのお陰で1憶2,000万から1億3,000万ユーロ(約150億円)の活動資金があり、この予算はミュンヘンの2倍、アヌシーの4~5倍に達している。

また、冬季オリンピックの開催地選定には、経済的、地政学的背景が色濃く表れる。2018年の韓国開催はアジアでウィンター・スポーツを盛んにするのに絶好の機会であり、韓国自身、とても有望なマーケットだ。

(ということは、FIFAがカタールを選んだのと同じ背景があるのか?)

その通りだ。FIFA(国際サッカー連盟)にせよIOCにせよ、立候補や開催により新たな市場を開拓したいという意思を持っている。韓国が1981年の夏季オリンピック開催国に選ばれた際には、この国の政治体制を理由に反対する意見もあったが、この大会によってアジアにスポーツを振興させる絶好の機会となった。30年後、同じ課題とテーマだ。

・・・ということで、ピョンチャンの勝因としては、サムソンのサポート、ウィンター・スポーツのアジア・マーケット開拓に関する突破口、3回連続の立候補、IOC委員などオリンピック関係者との良好な関係、積極的・効果的なロビー活動、周到な準備などが挙げられるようです。

一方、アヌシーの敗因は、組織力の欠如、民間資金の活用ができなかったこと、スポーツ関係者の支援を得られなかったこと、そして何よりも、なぜアヌシーなのか、という問いへの答えを見いだせなかったことが挙げられています。

前回、東京が落選した際、確かに、今なぜ東京なのか、というアピールが弱かったのが、大きな敗因だったのではないかと思います。「南米初のオリンピック」には勝てません。ビジネスの面でも、南米初、そしてブラジルで開催されるオリンピックというのは、強いメッセージになっていたのではないでしょうか。

東京は2020年を目指して、再び立候補するようですが、ピョンチャンの例のように、継続は力、なのかもしれないですが、「なぜ東京か」への確かな答えは用意できたのでしょうか。震災からの復興の象徴と言っているようですが、9年後ではちょっと遠すぎやしないでしょうか。しかも、被災地から東京はちょっと距離がある。一部競技を被災地で、と言っても、取ってつけたような配慮にしか受け取られないかもしれません。要は、首長が自らの名を歴史に刻みたいと言う、個人的な理由が、「忍ぶれど、色に出にけり」になっているのではないでしょうか。

歴史に名を残したい・・・首相も都知事も、想いは同じようです。日本の政治、これでいいのでしょうか。でも、選んだのは国民、都民です・・・
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