ふりかえれば、フランス。

かつて住んでいたフランス。日本とは似ても似つかぬ国ですが、この国を鏡に日本を見ると、あら不思議、いろいろと見えてきます。

フランスの国債、保有しているのは誰だ?

2011-08-31 21:45:16 | 経済・ビジネス
EUの財政問題は、なかなかすっきりと解決しません。ギリシャ支援にしても、返済を保証する担保をフィンランドが求めたり、デフォルトの恐れが消えないと囁かれたり・・・ギリシャ問題は、さらにポルトガル、スペイン、イタリアへも波及する危険性がくすぶり続け・・・

しかし、EUの問題は決して対岸の火事ではありません。日本の債務残高は、EU加盟国の比どころではありません。何しろ、財務省が策定した平成21年度末での国債発行残高は692兆円で、地方債も含めると891兆円。赤字時計によると、8月31日時点ですでに国の長期債務残高が約678兆円、地方分を合わせると約878兆円。毎秒、かなりの勢いで額が増えています。また、借入金や政府短期証券を含めるとおよそ1,144兆円に達しています。

これだけの借金ですが、日本の国債は国内の貯蓄だけで賄ってもお釣りがくると言われ、長期国債金利も1.2%台。すぐにEUと同じような財政危機に陥ることはないとも言われています。

では、EU加盟国の国債はどのような状況になっているのでしょうか。フランス国債を例に見てみましょう。10日の『ル・モンド』(電子版)が伝えています。

フランスの国債を誰が購入し、誰が所有しているのだろうか。この質問は一見簡単そうだが、実は複雑だ。しかし、フランスの債務残高が、GDP比(仏語では、PIB:Produit intérieur brut)85%の1兆6,461億ユーロ(約181兆円)に達し、過去最高を記録。対前年で1,100億ユーロ(約12兆1,000億円)も増えている今、誰が所有しているかは戦略的にも重要なことだ。

国の債務残高は、3タイプに分けられる。中央政府が発行する国債、自治体が発行する地方債、行政法人などが発行する債券だ。

Insee(Institut national de la statistique et des études économiques:国立統計経済研究所)によれば、1兆6,461億ユーロの内訳は、大部分の1兆2,860億ユーロが国債で、地域圏(régions)、県(départements)、市町村(communes)の発行する地方債は1,560億ユーロ、社会保障関連の団体のものが1,910億ユーロ、そして中央官庁の外郭団体などが発行した債権が116億ユーロとなっている。

財政赤字が30年も積み重なり、現在フランス国債を所有しているのはさまざま機関になっている。外国政府、企業、大手銀行・・・こうしたところがフランスの長期国債の買い手となっている。フランスの誇る“AAA”という格付けのお陰で金利は低く抑えられている。国債を発行するフランス国債庁(AFT:Agence France Trésor)の最新の月例報告によると、償還期間によって1%から4%となっている。

国債は2種類に分類される。まずは長期国債。OAT(Obligatoires assimilables au trésor)で、発行済み国債のかなりの部分を占める。7年から50年までの償還期間で、固定金利、変動金利ともにある。次は、短期国債。償還期間が2年から5年のBTAN(Bonds du Trésor à intérêt annuel)と、5週から7週のBTF(Bonds du Trésor à taux fixe et à intérêt précomptés)の2タイプがある。

フランス国債のおよそ三分の一は国内の銀行やその他金融機関が購入している。特徴としては、銀行よりも、投資先として国債を購入する保険会社が全体の20%と多くを占めていることだ。他のEU諸国と異なり、フランスの銀行は自国国債の14%以下しか保有していない。

フランスの国債は65%以上が外国資本によって保有されている。2010年末ころには、70%ほどだったので、この数字は減少しているように見えるが、それ以前は、右肩上がりに増え続けていた。1993年には、わずか32%が外国資本に握られているだけだった。

EU内でフランスの立場は特徴的だ。シンク・タンク“Fondapol”(Fondation pour l’innovation politique:2004年4月に与党・UMPの支援で設立された財団で、経済成長、環境、価値観などについての研究、発表を行っています。名誉総裁は、ジャック・シラクの側近、Jérôme Monod)が4月に公表したデータによると、外国資本によって保有される国債の割合ランキングでは、フランスの65%は、ポルトガルの75%、ギリシャの71%に次いでEU加盟国では3番目に高くなっている。この点が、日本などの国との大きな違いとなっている。日本の債務残高はGDP比200%もあるが、その国債は基本的には国内の預金者によって保有されている。アメリカの場合は、債務残高の約三分の一が外国資本によって保有されている。

外国資本と一口に言っても、その形態はいくつかに分けられる。年金基金、大手銀行、保険会社、政府系ファンドなどだ。ではどの国がフランス国債を最も多く保有しているのだろうか。残念ながら、それを知ることは不可能だ。なぜなら、そうした情報を売り主以外に公表することは法律で禁じられているからだ。しかし、この点が問題なのだ。国債保有者がどこの誰なのかを知ることがいっそう重要になっているからだ。

国債の多くが外国資本によって保有されているという事実は、強みでもあり、弱みでもある。強みだというのは、それだけフランス国債に投資先としての魅力があり、市場が信を置いているということの表れだからだ。一方、弱みだというのは、世界の市場で売買されているだけに、フランス国債はいっそう世界の景気に左右されやすいということだ。フランスと同じように外国資本に多くの国債を依存しているギリシャとポルトガルはご存知のような状況になっている。

ユーロ圏の債務残高は、ユーロ圏内の国々によってお互いの持合いになっていることが多い。2010年には、外国資本によって保有されているフランスとドイツの国債の52%がユーロ加盟国によって保有されていた。従って、ユーロ建てによる決済が可能だ。また60%がユーロ圏にノルウェーやスイスなどを含めた広い意味でのヨーロッパ諸国によって保有されている。

このことは、財政危機が循環しないような対策を取ることができるという点で、安全だと言える。フランスは、7月21日の協定に従って、ギリシャ国債を買い足した。しかし、同時に、不安材料だとも言える。なぜなら、ユーロ圏のある国がデフォルトに陥ると、加盟各国と通貨ユーロが不安定な状態に追い込まれてしまうからだ。

外国資本によって保有されているフランス国債のうち、ヨーロッパ以外の国に保有されている、つまり国際市場に委ねられているのが40~48%になる。この部分が、景気のリスクや金融の変動に最も影響を受けやすい。

・・・ということで、日本でも報道されているように、日本の国債はほとんどが日本人や日本企業によって買われているので、市場で金利が急激に上昇したりする心配はないようです。一方、フランス国債は、その三分の二が外国資本によって保有されています。それだけ、いくら長期国債の格付けがトリプルAだと言っても、不安定になる可能性を否定できないようです。ひとたび、格付けが引き下げられれば、ギリシャの二の舞になってしまいかねない・・・

日本の国債をめぐる状況は、未だ鎖国状態とも言えるのかもしれません。だからこそ太平の眠りを楽しんでいられるのでしょうが、ひとたび黒船がやってくると・・・現状では、何も外国資本に日本の国債を保有してもらう必要もないのでしょうが、もしそうせざるを得ないような状況に立ち至った場合を想定して、対策を講じておくことは必要なのではないでしょうか。根拠のない楽観主義の上で惰眠を貪っていては、いざ事が起きた時に、効率的な対応ができないことは、今までの歴史が物語っています。

あまりに多い債務残高。瓦解する前に、どう解決するのか、国民的コンセンサスを得ることが急務なのではないでしょうか。政治の独断ではなく、国民との対話を通して、ぜひ新内閣には、解決の糸口を示してほしいと思います。
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