jurgen's Heurige Blog (ゆるげんのブログ)

I will, I will いっぱい足りないの切なくて
I feel, I feel いっぱい会いたいのボクだって

パイロット・イン・コマンド/内田 幹樹

2008年04月04日 | 読書
『機長からアナウンス』で有名な元全日空の機長内田幹樹さんの航空小説。
1997年の第14回サントリー・ミステリー大賞で優秀作品賞を受賞した作品。

以前にも書いたが、わしは航空モノにヨワイ。
ヨワイったらヨワイ。
飛行機を知り尽くしている人が書いているだけに、
機内の様子は迫力に満ちているしリアルな恐怖。
何ヶ所か飛行機好きの急所をつくところがあって、
そのたびに涙ボロボロ。
電車の中で人目も憚らずウルウル。
そういえば何年か前TBSで放送されたキムタクのドラマ『グッドラック』でも、
急所を突かれまくりで毎回ウルウルになってしまったっけ。

パイロットと管制とのやりとりもホンモノの言い回しだから、
リアルだしわかりやすい。
翻訳の航空モノでまずコケるのは、このパイロットと管制とのやりとりの場面。
知識のない翻訳家が意味をわからないまま訳すものだから、
よけいわけのわからない訳になってしまう。
おそらく編集者もわかっていないから違和感だらけの訳もスルーされてしまう。
これまで何冊か翻訳の航空モノを読んだけど、
今のところズッコケ率は100%。

これから航空モノを訳す方がいらっしゃったら、
訳す前にぜひ内田さんの小説や専門書を当たってホンモノに触れて欲しい。
できれば、ホンモノのやりとりを聴いて欲しいところだけど、
そこまでは望みますまい。
素人の方でも、ユナイテッド航空の機内オーディオで聴けるので、
乗る機会があったら興味のある人は試して欲しいな。

というわけで、
日本に航空モノの作品が少ない理由がわかったような気がした。
一夜漬け的な付け焼刃の生半可な知識で航空モノを書こうとすると、
あちこちにボロが出てしまうにちがいない。
ただでさえ最近の航空機はハイテクのカタマリである。
甘い気持ちで挑戦すると痛い目に遭うかも。
航空業界出身の作家がこれからいっぱい誕生してくれるとうれしいのだが。。

ちなみに、
『機長からアナウンス』によると紅のタヌキこと砧機長のモデルは実在するらしい(笑)。
それと、
マイケル・クライトンの『エア・フレーム』について、
内田キャプテン(笑)の伝え話によって登場する場面があるので、
マニアの方は発見したらこっそりニヤニヤしてください。



パイロット・イン・コマンド(Pilot in command)
内田 幹樹
出版社: 原書房; 新装版版 (2005/10)
ISBN-10: 4562039639
ISBN-13: 978-4562039630
発売日: 2005/10