老い生いの詩

老いを生きて往く。老いの行く先は哀しみであり、それは生きる物の運命である。蜉蝣の如く静に死を受け容れて行く。

332;浴槽から青空を眺める

2017-08-24 17:18:45 | 老いびとの聲
浴槽から青空を眺める 

朝風呂の習慣で
今日は浴槽で短い脚を伸ばし
ゆったり気分で入浴
解放された浴室の窓からは
青い空と白い雲が見え最高の気分

(温泉だったらもっとよかったのに)

331;時間がこぼれる

2017-08-24 11:03:52 | 読む 聞く 見る
朝陽に光る阿武隈川上流

時間がこぼれる 

 高見順『死の淵より』講談社 文芸文庫 は
私にとっての心の詩集
そのなかに「過去の空間」という詩の最初の連を気に入っている(94頁)


  過去の空間

手ですくった砂が
痩せ細った指のすきまから洩れるように
時間がざらざらと私からこぼれる
残りすくない大事な時間が


あと数箇月の生命と癌告知をされ
指のすきまから砂が洩れるように
時間がざらざらとこぼれてゆく
残りすくない大事な時間


痩せ細った指のすきまから洩れるように
時間がざらざらと私からこぼれる


海辺の砂浜で
砂遊びをしていると
手ですくった砂が
小さな指のすきまからざらざらと洩れ落ちてゆく
そんな光景が目に浮かぶ
砂を時間になぞらえ
残りすくない時間に
大切さと寂しさを覚える
残りすくない時間に
私は砂時計を連想してしまう


高見順自身が食道癌を患い
死と対峙されるなかで
書かれた言葉(詩)だけに
私の心に強く残った
『死の淵より』を手にしたのは
32歳のときであった
いまでも
机の前に立てかけときどき紐解いている
自分は老いに入ったいま
残りすくない時間を
気にしている




330;夫は死顔でも笑っていた

2017-08-24 00:24:20 | 老いの光影
夫は死顔でも笑っていた

84歳の婆さんは
うつ病と認知症が混ざり合い
同じ話を何回もして頂いたので
物覚えが悪い私ですが
ストーリーは言える
姑は、嫁のことを働き蜂だと思って
「嫁は働いていればいい。喰わせるのを惜しんだ。喰わせないのは一番ひどいと思った」
もう婆さんは亡くなっていないが
亡くなっていい人はいない
齢をとり病気を患い、寝たきりになっては「迷惑をかけるから死ぬ」しかない
あの世に逝った夫は
夫は、(病院で)亡くなる日はとても元気になった
握手ができ、夫はあの世に逝った
あの世から夫が戻ってきたら
もう一度一緒になりたい
夫は死顔でも笑っていた