010：桜（花夢）

今はもう泣くことはないさらさらと桜の雨が頬をかすめて

009：椅子（花夢）

くちびるがふと近づいて来てそして　　待合室の椅子が軋んだ

008：親（花夢）

神様を信じぬ祈り　親指の爪のあとだけくっきり残る

007：揺（花夢）

ストローで氷をつつき待つ午後の揺らぎながら溶ける決心

006：自転車（花夢）

あいされていないと気づく出来事は自転車置き場に捨てて来ている

005：並（花夢）

わたしではダメな理由をあいうえお順でただしく並べてほしい

004：キッチン（花夢）

キッチンのフローリングに君の染みが残らないのだ拒まれている

003：手紙（花夢）

悲しみの飛べない鳥へいたわりの手紙ばかりも書いてられない

002：指（花夢）

ほどかれるものなのだろう指切りを生み出したのはきっと大人で

001：風（花夢）

風らしい音がしている公園の古いぶらんこ君のくちぶえ