河田恵昭さんの講演をうかがいました。
(関西大学社会安全学部長 研究科長
元京都大学防災研究所所長)
<テーマ>
東日本大震災から「津波減災社会」構築の可能性
・午前中1時間の講演、このあと東京で平野防災大臣に
中央防災会議の最終報告を提出する日でした。
・1時間の講演の中から印象に残ったものを
書いています。
●被害と気象庁の問題
1.気象庁に大きな責任がある
・M7.9、津波高さ3mと聞いた沿岸住民は
海岸堤防で守れると考えて避難しなかった
・自治体消防職員、消防団員は水門閉鎖などの作業中、
10mを超える津波が来るとは思わなかったので、
261名が死亡した
→堤防の内側にいると、海が見えない
・地震直後に停電したために、その後に改訂された
警報の内容は住民に伝わらなかった
2.なぜ、気象庁は津波を過小評価したのか?
・地震が起こった時、宮城県沖地震と思い込んでしまった。
・もともと、気象庁が推定する地震マグネチュードは
8以上で低く推定されることがわかっていたが、そのことは
庁内の関係者しか知らされていなかった。
・広帯域地震計がほぼ全点振り切れ、9000キロ離れたイギリスの記録を使った。
・15時30分頃GPS波高計の記録が入り始めて、これを参考にして
警報の内容を切り替えた。
・気象庁には津波の専門家はいない。地震の専門家ばかり。
・震災後、気象庁長官のもとで気象警報の勉強会が11名の
専門家によって始まった。「報告は不要、結論も不要」というような
無責任な扱いになっている。
→平野防災大臣から気象庁長官に意見した。
●中央防災会議
4か月間で12回開催。
17名の委員を集めるため、ほぼ土日に開催。
報告は47ページ、資料を合わすと70~80ページになる。
中央防災会議 報告
●東海、東南海、南海地震に対して
・震源域が九州の日向灘まで広がる可能性
・地震発生のタイミングによる津波の大きさ
地形が東北のリアス式海岸と違い、
瀬戸内海に入る場所は、海峡の細いところが多い。
(ex.紀淡海峡、鳴門海峡、明石海峡、豊予海峡)
このため、同時発生だと津波が小さく、
地震発生の時間がずれて発生した方が
津波が大きくなる可能性がある。
シミュレーションの計算結果はでているが、
発表は影響が大きいので
政府の対策を含めて来年に発表予定。
・大阪市は対策に動いていない
大阪府、兵庫県は大震災後、津波の高さを概算で推計して
対策に動いている。
大阪市は結果が出てからということで動かない。
大阪の天保山では、津波の高さが2.6mが5mになる。
・大阪駅周辺は0m地帯
大阪は高潮対策の防潮堤、
防潮堤で防ぐということで、その中の川の堤防は防潮堤より
1m低い設計。
・大坂大津浪図
1854年安政南海地震
では、難波村まで水没している。
●東日本大震災
・親を失った子供1500人
両親を失った子供200名
・数百年に1回来る災害
自分の子供、孫の代に禍根を残さないよう
今、できる対策を行うべき。


仙台市若林区荒浜手前、津波が入った農地に壊れた車やがれきが、まとめられている。

石巻マンガランド前、ヨットが陸にあがり、後ろにマンガランド

石巻マンガランド付近の海に面した家屋
基礎だけが残っている。
(写真は8月に撮影)