はぶて虫のささやき

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(旧:はぶて日記)

史上最高のミステリー!?

2020-05-04 | 日記
最近往復の通勤電車内で本を読むことが多くなった。

特にハマっているのが警察小説だ。

中でも好きなのが、堂場瞬一・佐々木譲・今野敏あたり。

旬な人、というよりは、すでにその地位を確立した人たちばかりだけど、ハマったのが遅かったおかげで、シリーズものが一気に読めるのがいい。

旬の作家だと、「次回作はいつになるんだろう」と気持ちがはやるのだが、一度に7~8冊まとめて読むと、時間の経つのも早い。

通勤がこれほど楽しい(?)と思ったことはない。

もともと推理小説は好きだった。

だけど、名探偵ものは何となく飽きてきた、というのか、名探偵が成り立つのは、基本的に「警察が無能」という前提がなければならないので、年を取ってくると(?)何だかバカらしくなってきたのである。

そんな中、たまに本屋に行っていろいろと物色していると、様々な形で「この本はいいよ」とか帯に書いてあるので、迷うことが多い。

そういう時のために「このミステリーがすごい!」という案内本があるので、これを参考に何冊か読んでみた。

今日はその中の一つ、先日読んだ「2017年度のこのミス第一位!」に輝いた竹本健治の「涙香迷宮」について触れてみたい。

もちろん、わざわざ取り上げるのにはワケがある。

それは・・・トンデモないほど「くだらない!」と思ったからだ。

黒岩涙香という明治時代の作家がいるそうなのだが(私は知らなかった)それを題材にしたミステリーである。

本の帯には「空前絶後の謎解き!」と書いてある。

こういうのに簡単にダマされるほどやわではないつもりだけど、少なくとも面白い内容なのだろう、と期待はしていた。

主人公(名探偵)は、IQ208と言われる天才囲碁棋士である。

IQ208という時点で、実は心配はしていた。

東大王で「天才」と言われる鶴崎修功がIQ165と言われているので、それよりも遥かに頭がいいということになる。

しかし、問題はそういうところではなかった。

つまり、主人公が「そんなに頭がいいとは思えない」というわけではなく、その内容と展開に唖然としたのである。

まず文体。

登場する警察のエラい人の、主人公に対する言葉遣いが、異常に気持ち悪い。

「いやあ、さすがです」とか「いや、すばらしい」とか、とにかく持ち上げるので、読んでいて嫌悪感がハンパない。

それでなくても、囲碁の腕前は超一流の上に、いい男でモテモテだから、近寄る女性たちの黄色い声も飛んでくるので、読み進めるのが大変(?)だった。

だから、我慢しながら先を進むと、帯に書いてある通り、とにかくスゴい!

いろは48文字を1文字ずつ使って作る「いろは歌」が、何と48通りも出てくるのだ。

つまり、「い」で始まるもの「ろ」で始まるもの・・・など、48の異なる文字を頭に持ってきて、48文字すべてを使って歌を作っているのである。

しかも、最後は48の「いろは歌」を逆に使って(?)もう一つ作る、という離れ業までやってのけている。

「この作者は、いったい何者なんだ」と驚いたのは事実だけど、それぞれの歌に対する説明が長いので、途中から飛ばすようになった。

たとえ「この歌が、犯罪のトリックを暴くための重要なキーになっている」という設定であったとしても、わかんなきゃ前に戻ってもう一度読み返せばいい、と思ったからである。

ところが、何と・・・

・・・これらの歌は、犯罪とはまったく関係ないのである。

じゃあ、何のために「いろは歌」が49も出てきたのか、と言うと・・・

・・・実はわからなかった。

たぶん読み飛ばしているのかも知れないが、今となってはどうでもいい話だ。

しかも、肝心の犯罪というのが、何ともショボくて、主人公が明快な推理でもって犯人を暴く、という流れでもない。

主人公としても、犯人は誰だかわからなかったので、犯人をおびき出す形で現行犯を狙った、という形になっている。

それもまあ、ミステリーの一つの形ではあるとは言え、何のためのIQ208なのか、さっぱりわからない。

しかも、犯人を暴くという重要な場面の描写も、ハラハラ・ドキドキ感はほとんどなく、犯人の犯行動機もたいしたことがない(?)と思えるようなものだった。

結局大量に出てきた「いろは歌」って、作者が「オレはこんなことができるんだぞ」という自慢をするためだけに作った(?)としか思えなかったのである。

もし「いろは歌」が重要な意味を持つのであれば、それを読み飛ばした私には、結末はさっぱり理解できないはずだけど、まったく違和感なく読み終えたし。

別の意味の違和感は終始残ったままだったけど・・・

これを「第1位!」に選んだ人たちは、このミステリーのどこがどうすばらしかったのだろうか。

驚異的な「いろは歌」の数々はいいとして、推理小説としてみたら、登場人物の言葉のやり取りや、犯人を暴く過程に「これはすばらしい」と思えるものは、ほぼなかった。

「最高!」と言われる推理小説が、読んでみてそれほど面白くなかった、という例は今までにもあった。

クロフツの「樽」とか、アガサ・クリスティーの「アクロイド殺し」とか。

ただ、読後にこれほどまで「何じゃ、これは!」と思った小説は、かつてなかった。

そういう意味でも、ゼヒ記録として残しておきたかったので、読んでからちょっと時間は経っているけど、今回取り上げてみました。

皆さんも、ゼヒ読んでみてください!?

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