Along with the Mekong

メコン川の流れのように

雲南とコーヒー

2006年10月07日 | コーヒーネタ
雲南では、ネスレの息がかかった思茅(Simao)地域を除いては、コーヒー栽培熱は低下しているようだ。大体、農業そのものに人気がなくなっている。ヨソモノであり、なおかつ実に非力なワタシが乗り込んでいって、コーヒー栽培、しかも手がかかる上に収穫量の少ないティピカ種の栽培を提唱したところで誰が聞く耳などもとうか。

「本当に雲南はコーヒー栽培をすべき土地なのだろうか・・・」なかなか首を縦に振ってくれない農民の話を聞いていて、ふと思った。

ここには既にサビ病も入っている。コーヒー栽培の専門家であるS氏に相談したところ、特殊な農薬を散布し、シェイドツリーを伐採し通風をよくすることで、ある程度は抑制できるとのことだったが、現状では絶滅させる術はない。サビ病の胞子は風に乗って何十キロでも飛んでいくので、伝染を食い止めることもほぼ不可能だ。いくら自分達の農園は厳密に管理していても、周辺にはずさんな農園があるはずで、いずれそこからサビ病菌は飛んでくる。

葉の裏に黄色い粉を噴いた弱弱しいティピカの木。あぜ道を挟んだ向こうには、元気はつらつなカチモールがみずみずしい葉を広げている。そりゃみんなカチモールを植えたくなるわなぁ。

そのカチモールでもかなわないのが、害虫スタンボロだ。幹に巣食い、幹の芯を食い尽くす。食い尽くされたコーヒーノキの枯れ果てた姿を見ることは、雲南では珍しくない。ここはこの小さな害虫の天国なのだ。今のところ有効な防虫剤も殺虫剤もなく、農民が木の幹をチェックし、みつけるたびに一匹ずつつまみ出している。追いつくはずがない。スタンボロのために全滅した小さいコーヒー園もあるくらいだ。

コーヒー栽培が本格化する前にこんなに病害虫が入ってきてしまって、本当に雲南のコーヒー栽培の将来は明るいと言い切れるのだろうか。首を縦に振ろうとしない農民の勘は正しいのかもしれない。唯一可能性があるとすれば、国境を越えないところに世界最大の消費地が生まれる日が遠くないということだけではないだろうか。それだって、中国人の経済力が高まれば、日本人よりもブランド志向の強い中国の小金持ちたちは輸入豆を好むようになり、国内の豆はインスタントコーヒーや缶コーヒーの原材料としてしか使われないかもしれない。だとしたら、ティピカを育てることに無駄な労力を費やすのではなく、全力でカチモールを作っていればいいではないか。

雲南の生産者の利益と日本の消費者の要求は、すりあわせようのない方向に向いているような気がしてならない。奇跡のような香味を持った雲南カチモールが出来たらいいのになぁ・・・

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