幻冬舎文庫版を読んだ。
「フラット」と「レリーフ」の2章構成。
ほのぼのとして、人の温かみを存分に感じる、護と徹子の幼馴染エピソード話が続く「フラット」。
徹子の謎の行動は気になるけど、全体を通してほっこりする展開が続く。
加納朋子らしい作品だなぁと思う。
でも、そんな単純な話で終わらないのも加納朋子作品らしさかな。
加納朋子作品はほとんど読んでいるけど、これがいちばん好きかも。
<以下、内容に触れているので、未読の方は特に注意を>
護の側から書かれた「フラット」。
幼少期から社会人になるまでの話が、幼馴染の徹子との関係を中心に描かれる。
幼なじみであり、親友でもある徹子に対する護の愛の深さを感じる話ばかり。
それが恋だと気づかない護が、なんかいい。
なんだかんだで二人は付き合うんだろうと思っていたら、徹子が結婚するらしいという護の母親の言葉が。
意外な展開、そして中途半端な感じで終わった「フラット」。
「レリーフ」では、同じエピソードを中心に徹子側から描かれる。
「フラット」のほのぼの感から一転、あまりにも辛い「レリーフ」。
徹子の謎行動の本当の意味が明らかに!
未来が、特にその人の悪い未来が見えてしまう徹子の苦悩。
苦悩なんてひとことでは表わせない、がんばりであり、あがきであり、もがきであり。
しかも、それはすべて人のためで、自分のためなんてことはひとつもない。
助けられなかった親友の子供を救うために、憎き相手との結婚まで!
たまたま、徹子とカタリの結婚披露宴の前まで読んで、続きをしばらく読めてなかった。
結果的にそれが大当たり。
披露宴から話が一気に展開。
人に助けを求められない徹子を愛する人たちが大集合して徹子を救った!
披露宴会場での展開は、涙なくしては読めなかった。
それでいて、ときおり笑っちゃうようなことも。
「あぁ、加納朋子、やっぱりすげぇなぁ」って。
「レリーフ」はずっとつらい話が続いただけに、その反動も手伝って、たまらんって感じになった。
さらに時間は進み、結婚した護と徹子にも別れの時が。
死が迫った護が最後に言った言葉に、「レリーフ」最初のエピソードを思い出させれて鳥肌が立ったわ。
ふたりが結婚して後の話は、おまけ的なものだと、ある意味油断して読んでいたら、最後の最後にとんでもない仕掛けを。
改めて「あぁ、加納朋子、やっぱりすげぇなぁ」と。
これは、読んで本当に良かった。