ごとりん・るーむ映画ぶろぐ

 現在584本の映画のあくまで個人的な感想をアップさせていただいています。ラブコメ、ホラー、歴史映画が好きです【^_^】

ティアーズ・オブ・ザ・サン(アントワン・フークワ監督)

2007-12-31 | Weblog
ストーリー;米国海兵特殊部隊大尉のウォーターズ(ブルース・ウィリス)は、民主制選挙で統治していたナイジェリア大統領が軍政クーデターによって転覆した直後のナイジェリア沖の空母から、主にアメリカ市民の救出作業をおこなっていた。アメリカ国籍の女医リーナ・ケンドリックス(モニカ・ベルッチ)救出を命じられるが‥。
出演;ブルース・ウィリス、モニカ・ベルッチ、コール・ハウザー
コメント;キリスト教徒であるアメリカ海兵隊員がイスラム教徒の暴虐をみかねて発砲するシーンを興味深くみた。これは逆の立場からでも描写は可能だが、このアクション映画では「内政干渉の批判を受ける‥」と海軍大佐が大尉に通信しており、おそらく意識的にやっているのだろう。戦争映画にありがちなラブロマンスなどは描写されなかったが、実際には宗教活動やボランティアをしている人間はもっとしたたかな生存哲学をもっているのではなかろうか。大虐殺が始まった場合にそこに踏みとどまるというのは「物語」としては面白いし感動的だが、あまり生産的ではない。とはいえ最近みた戦争物の中ではわりと面白い映画ではあった。特に中間管理職である海軍大尉が自らのプラトーン7人の掌握しており、海軍の中でも相当な意思決定能力をもっていたことがわかる。
 もともとナイジェリア自体が約250近くの部族と国民の5割近いイスラム教徒、4割近くのキリスト教徒(残りの10パーセントは地元の宗教とみられる)という宗教問題と民族問題の両方を抱えている。本来的にはカカオを中心とした農業国だったが、OPECに加盟する唯一のアフリカの国ということでその利権をめぐる北部と南部との争いもある。石油が出ない北部にはイスラム教徒が多く、石油がでる南部にはイボ族を中心とするキリスト教徒が住む。かつて朝日新聞の記者がビアフラというイボ族が建立した国家をめぐるルポを読んだが、すさまじい内乱で、映画で描写されていたのとさほど変わりがない残酷な内戦が続いていたようだ。ビアフラはイボ族の敗北で集結し、1975年に軍内部の民主改革派の革命が成功して、1977年に新憲法が制定される。おそらくこの映画で描写されていたのはその後の1983年のサニ・アバチャ将軍による軍政革命の頃ではないだろうか。通信アイテムも無線が中心で携帯電話などの使用の形跡はない。イギリス連邦に加盟しており、高等教育では英語が使用されている。映画の中で地元のシスターが英会話をするのだが、それはこのシスターが高等教育を受けていたことを暗示するもののようだ。その後ナイジェリアでは再び民政へ移行。隣国カメルーンとナイジェリアは石油の利権をめぐって争いを続けており、山脈をこえてカメルーンに向かうのは理にかなう。問題は広大なアフリカ大陸でしっかり検問所をとおりぬけるイボ族の人間だが、これは国境というものを視覚的に理解させるための映画的枠組みか‥。
 戦闘シーン自体はもう少しスローモーションを使って欲しかった。なんとなく「プラトーン」の二番煎じ的なにおいもするが、それでも撤収の状況や攻め込むときの計画的かつ迅速なフォーメーション、さらには管理職の行動などが妙にリアリティがある。モニカ・ベルッチがなにやら艶かしいのだが、それはまあそういう設定だし。でも博愛主義と残酷さは表と裏か‥。

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