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エリザベス~ゴールデン・エイジ~(シェカール・カプール監督)

2008-11-04 | Weblog
キャスト:ケイト・ブランシェット、ジェフリー・ラッシュ、クライブ・オーウェン、サマンサ・モートン、アビー・コーニッシュ、リス・エヴァンス、ジョルディ・モリャ

 評価:☆☆☆

 コメント:今から10年前の「エリザベス」の続編。キャストもスタッフもほぼ前作と同様だが、ケイト・ブランシェットが受賞は逃したものの、この映画でもアカデミー賞にノミネートされる。作品自体はアカデミー賞衣装デザイン賞を受賞したが、やはりケイト・ブランシェットの着ているドレスはどれもただものの衣装とはやはり思えず衣装スタッフの苦労が報われた瞬間だろう。映画自体はもうケイト・ブランシェット抜きにしては語れないほどケイト頼みの展開で、数十秒間ケイト・ブランシェットを360度から撮影するだけでコメントも何もないシーンがあるが、こうした無言の撮影をこなしてしまうあたりがこの大女優の才能ゆえか。

 けっして絶世の美女というわけでもないのに、「ロード・オブ・ザ・リング」であれ「ギフト」であれ「コーヒー&シガレッツ」であれ、シーンにはまりこんだ自然体の演技を展開してくれる名優だが、今後の俳優人生もさらに長いだけにさらにとてつもない俳優へと進化していく様子がうかがえる。俳優頼みの映画という点ではフランシス・ウォルシンガムを演じたジェフリー・ラッシュも素晴らしいし、ウォルター・ローリーを演じたクライブ・オーウェン、メアリー・スチュワートを演じたサマンサ・モートン、エリザベスの侍女を演じたアビー・コーニッシュなどいずれも素晴らしく、キャスティングの素晴らしさだけでも映画は成立するということを証明した作品。俳優だのみの映画はあまり好きではないのだけれど、この映画に関しては別物だ。

 エンドタイトルには「エリザベス1世 1533年-1603年」とのみ表示される画面が圧巻。  カソリックと英国国教会の融和については映画の中でも苦慮する様子がうかがえるが、礼拝統一令などでどちらの面目も立つような形の英国国教会を確立。フェリペ2世のスペイン大使が求婚にあらわれる場面もあるが終始独身で通した理由も結果も映画の中で描写されているが、いわゆるオランダ(ネーデルランド)やフランスなどへの新教徒援助のシーンは徹底して省略されている。一方、フェリペ2世についてはスペイン海軍歴史上稀な敗北をきしてその10年後に財政赤字とともに死亡という見もフタもないコメントが画面に映し出される(英国作成の映画なのでやむをえないのかもしれない)。ただけっして無能な王ではなく、ハプスブルグ家カール5世の息子であり、レパントの海戦ではトルコに圧勝。スペインの世界大帝国を築いたという点ではやはり偉大な指導者だったが、ちょっと英国びいきが過ぎるかな…というのは映画からの印象。オランダ独立戦争の敗北と無敵艦隊の敗北が痛手だったが、いずれもエリザベス1世の策謀が影にみえる。リドルフィ事件やバビントン事件などもきめ細かく描写されておりエンターテイメント性も維持。ただ歴史的著述に相当「圧縮」した部分がでてくるのはやむをえないだろう。
 その中でサー・ウォルター・ローリーの存在感が強調されているのが興味深い。映画の中でもローリーが運んできたアメリカ大陸の「タバコ」をエリザベス女王が試しに吸う場面や「ヴァージニア州」(ローリーが命名したとされているが…)を紹介する場面がでてくるが、ダドリー卿の話はでてこない。是は一種の政治的バランスかもしれない。いずれにせよ英国ルネサンスが花開く時代の一断面を切り取るとともにケイト・ブランシェットの魅力を発揮したこの作品、さらに続編が実は楽しみだ。    

ストーリー:映画は1585年から始める。状況としては世界最強を誇るスペイン(カソリック教)が世界を制覇しつつあったが、それに唯一抵抗していたのがイングランド。フェリペ2世はイングランドに対する戦争の「大義名分」を探索しつつ、一種の「聖戦」としてイングランド侵攻のチャンスをうかがっていた。占星術では二人の女王の誕生を告げていたが、一人はイングランドのエリザベス1世。もう一人はスペインのイザベラ女王を指しているものと推定され、占星術師もまたどちらが覇権を握るのか決めかねていた。一方、ファザリング城に幽閉されているスコットランド女王メアリ・スチュワート(カソリック)についてはスペインが支持を表明。「英国」内には国民の半分に相当する人間がカソリック教を支持しており、「信念だけでは国民を罰することはない」とするエリザベス1世の政治基盤を揺るがす土壌ともなっていた。またドーバー海峡の壁の補修代もままならないほど財政が逼迫していたのもエリザベス1世の悩みの種だった。一方、フェリペ2世はきたるべき戦争に備えてスペインの森をつぶして大艦隊の製造に乗り出す。あとは「大義名分」と一つの「きっかけ」さえあれば一触即発の状況に入っていく…
(参考:「イギリス王室物語」(講談社現代新書 小林章夫著 1996年)、「世界史辞典」(平凡社 1983年)

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